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ユジャ・ワン ピアノ・リサイタル(2013年4月21日)

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4月16日の水戸から始まったユジャ・ワンのピアノ・リサイタル(6日連続公演!)は,今日が最終日です。今日と言ってもこの記事を書き終える頃には昨日でしょうけれど。感想を書く前に,今回の予習に用いたCDをご紹介したいと思います。

スクリャービンの第2番「幻想ソナタ」は、ユジャ・ワン自身のCD(ソナタ&エチュード)があります。
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スクリャービンのソナタ第6番は、アシュケナージのCDを聴きました。
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プロコフィエフのソナタ第6番はポゴレリチです。実はこれしか持っていません。
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ラフマニノフのソナタ第2番はホロヴィッツとスルタノフの音源をスマホに入れました。
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演奏されるのは1931年改訂版の演奏なのですが、私がもっている2枚はどちらもホロヴィッツ版です。

スクリャービン,プロコフィエフ,ラフマニノフのピアノ・ソナタの名盤で,これがお薦めというCDがありましたら,ご紹介くださるとありがたいです。コメント,お待ちしております♪

2013年4月21日(日) 19:00開演
サントリーホール(大ホール)
ユジャ・ワン ピアノ・リサイタル

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番 嬰ト短調 op.19「幻想ソナタ」
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番 イ長調 op.82
(休憩)
リーバーマン:ガーゴイル op.29
ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.36(1931年改訂版)

ユジャ・ワン(ピアノ)

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明日は月曜日です。睡眠時間を削ってブログをやるわけにもいかないので,今日は簡単に書いて,明日以降に加筆したいと思います。

さすがにサントリーホールはでかいです。トッパンホール(408席)や埼玉芸術劇場音楽ホール(604席)に比べると,見慣れたサントリーホール(2,006席)が巨大に感じられます。

昨年の11月19日に,ユジャ・ワンのピアノ,マイケル・ティルソン・トーマス指揮のサンフランシスコ交響楽団でラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲を聴いたのですが,今日はユジャ・ワン独り。

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(リハーサル中のユジャ・ワン。KAJIMOTOさんのツイートから拝借。)

調律の音も,遠くから聴こえてきますが,実際ピアノが遠いです。実は,前回及び前々回は前から2列目の席でした。そして今回は3列目の席で,ピアノとの位置関係はだいたい同じような場所です。

でも,サントリーホールはステージが大きいので,3列目の席であってもピアノが(前2日より)遠いのです。どのような聴こえ方をするかというと,これが美しいんです。

トッパンホールの悪口を言うわけではありませんが,私が座った席はひどかったんです。低音がガンガン響いて中高音が全然飛んで来ない席でした。それで,スクリャービンの印象が悪かったのですが,サントリーホールは低音から高音までのバランスが非常に良く,ピアノの高音が濁りなく虚空に吸い込まれていくように響いていました。

音が多い箇所では混濁していましたが,それはそういう演奏だったのでしょう。他の曲ではそういう聴こえ方はしませんでしたから。いずれにせよ,スクリャービンは私の勉強がまだまだ足りませんね。

プロコフィエフのソナタ第6番は,京都コンサートホールとサントリーホールだけの演目になります。これが良かった! 予習用に聴いていたCDより断然巧いと思ったし,プロコフィエフらしい,ちょっとひねくれた,皮肉っぽい曲想と叙情性が(私にも)非常に分かりやすく再現されていました。3日間聴いて,この曲の演奏が一番良いと思いました。もしかして,ユジャ・ワンは,他の会場でもこの曲を弾きたかったんじゃないかな。

Yuja Wang - prokofiev sonata 6 finale

20分間の休憩の後は,前2日と同じ曲です。演奏が全く変わるわけではないので,さすがに今回は感想は省略したいです。ただでさえ語彙が乏しいので,違うことが書けないのです。

あえて,無理して書くと,リーバーマン「ガーゴイル」は彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールで聴いた演奏がもっと美しく,迫力もありました。ピアノが遠いデメリットと思いますが,耳に届く情報量が少なくなったようです。第3曲も,彩の国ではもっと美しかった。

また,ラフマニノフのソナタ第2番も,彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールでの演奏のほうが良かったです。響きは美しいものの,第3楽章Prestoの圧倒的な迫力は,サントリーホールでは物足りなさを覚えました。サントリーホールの演奏も十分素晴らしかったのですが……。

さて,先程サントリー・ホールの客席数を2,006と書きましたが,今回P席は使われていませんでした。また,他のブロックも音響が期待できなさそうな人気のない席は空いていました。若手ピアニストの中で最も話題性のあるユジャ・ワンでも,サントリーホールは満員にできなかったのですが,日曜日の夜ですし,プログラムも玄人好みですから,これでもさすがと言いたいです。

でも,ユジャ・ワンは昨日より緊張していたみたいでした。いや,疲れていたのかな。笑顔がぎこちないような気がしました。

さて,アンコールです。

1曲目は,シューベルト(リスト編):糸を紡ぐグレートヒェン
2曲目は,ビゼー(ホロヴィッツ編):カルメンの主題による変奏曲
3曲目は,グルック(ズガンバーティ編):メロディ
4曲目は,プロコフィエフ:トッカータ

5曲目は,ショパン:ワルツハ短調 op.64-2
6曲目は,ロッシーニ(ホロヴィッツ編):セビリアの理髪師(ってサントリーホールのHPに書いてあるけれど……?)

拍手しない偉そうな人もいましたが,サントリーホールの(後ろの方の)お客さんはノリが良いので,盛大な拍手と声援。ユジャ・ワンもそれに応えて6曲弾いてくれました。良かった! 千秋楽だからサービスしてくれたのかな?

ステージが広いと,何度も往復しなくてはいけないので,気の毒になりました。袖から出て来ていきなり弾き始めた曲もありましたね。どの曲を弾こうかと考えていて,お辞儀するのを忘れたのかも。

この公演も終演後はサイン会がありました。お客さんが多いので長蛇の列になり,ユジャ・ワンもひたすら機械的に書きまくっていました。サンキューのひと言を言う間もないほど(笑)

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今回はCDのジャケット(ライナー)にサインしてもらいました。
金色のサインペンが用意されていたので,uniのPOSCAが活躍する機会はありませんでした。

3日もユジャ・ワンのコンサートに行ってしまい,呆れる人がいらっしゃるかもしれませんが,1日目の記事の最後に引用したように「知之者不如好之者 好之者不如樂之者」という言葉に尽きます♪




J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲 BWV988」の名盤?(前説)

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ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
ゴルトベルク変奏曲
ゴルドベルク変奏曲
ゴルドベルグ変奏曲
ゴールドベルク変奏曲
ゴールドベルグ変奏曲
2段鍵盤付きチェンバロのための,アリアとさまざまな変奏曲から成るクラヴィーア練習曲
BWV 988

最もよく用いられているのはゴルトベルク変奏曲 BWV988」という名称なので,以下それで統一します。

ゴルトベルク変奏曲は,さまざまな鍵盤楽器のためのさまざまな様式を集めた「クラヴィーア練習曲集」の第4部(第4巻)です。

不眠症に悩む伯爵のために,バッハが作曲したという,誰もが知っている逸話があります。この伯爵は,ゴルトベルク伯爵ではなく,カイザーリンク伯爵(ザクセン選帝侯駐在の元ロシア大使)。ヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルクは,カイザーリンク伯爵のお抱えチェンバロ奏者(召使い)ですので,お間違えなきよう。
(よそのブログに「不眠症のゴルドベルク」とか書いている人がいるし!)

最初にアリアが演奏され,そのアリアとバス・ラインに基づいて30の変奏が繰り広げられ,最後に冒頭に戻る(ダ・カーポ)という,そういう曲です。30の変奏は前半と後半に分かれ,後半は第16変奏からで,そのためか,この曲は「フランス風序曲」になっています。

また,30の変奏は3つずつ,10グループに別れ,3曲目にはカノンが置かれています。
各曲は,2部構成で,前半後半をそれぞれリピートします。



アリア  3/4拍子

第01変奏 1段鍵盤 3/4拍子
第02変奏 1段鍵盤 2/4拍子
第03変奏 同度のカノン 1段鍵盤 12/8拍子

第04変奏 1段鍵盤 3/8拍子
第05変奏 1段または2段鍵盤 3/4拍子
第06変奏 2度のカノン 1段鍵盤 3/8拍子

第07変奏 2段鍵盤 6/6拍子 ジーガのテンポで
第08変奏 2段鍵盤 3/4拍子
第09変奏 1段鍵盤 4/4拍子 3度のカノン

第10変奏 フゲッタ 1段鍵盤 アラ・ブレーヴェ(2/2拍子)
第11変奏 2段鍵盤12/16拍子
第12変奏 4度のカノン 1段鍵盤 3/4拍子

第13変奏 2段鍵盤 3/4拍子
第14変奏 2段鍵盤 3/4拍子
第15変奏 5度のカノン アンダンテ 1段鍵盤 2/4拍子 ト短調

第16変奏 フランス風序曲 1段鍵盤  アラ・ブレーヴェ→ 3/8拍子
第17変奏 2段鍵盤 3/4拍子
第18変奏 6度のカノン 1段鍵盤 2/2拍子

第19変奏 1段鍵盤 3/8拍子
第20変奏 2段鍵盤 3/4拍子
第21変奏 7度のカノン 1段鍵盤 4/4拍子 ト短調

第22変奏 1段鍵盤 アラ・ブレーヴェ
第23変奏 2段鍵盤 3/4拍子
第24変奏 8度のカノン 1段鍵盤 9/8拍子

第25変奏 2段鍵盤 3/4拍子 ト短調
第26変奏 2段鍵盤 3/4拍子+18/16拍子 
第27変奏 9度のカノン 2段鍵盤 6/8拍子

第28変奏 2段鍵盤 3/4拍子
第29変奏 1段または2段鍵盤 3/4拍子
第30変奏 クオドリベート 1段鍵盤 4/4拍子

アリア ダ・カーポ 3/4拍子



聴き比べをするにあたって,以下の条件でCDを絞り込みました。

1.ピアノによる演奏とする(チェンバロ等による演奏は除く)。

2.グレン・グールドによる演奏は除く。

「2.」に特別深い意味はないのですが,グールド(1955年録音と1981年録音)を入れてしまうと,どうしてもそれらと比較したくなってしまいますので,今回は聴き比べの対象から外しました。

Variations Goldberg, Bach BWV 988, Gould, 1955

Glenn Gould: Bach Goldberg Variations 1981 Studio Video (complete)


冒頭にCMが入りますが,私のせいじゃありません。5秒後にスキップしてくださいね。

続く

J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲 BWV988」の名盤?

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続き

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
ゴルトベルク変奏曲 BWV988

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ヴィルヘルム・ケンプ 61分03秒
Deutsche Grammophon 1969年7月録音

他のCDに比べて録音年が古いし,最近のピアニストに比べると技巧的に聴き劣りがするような気がして取り上げるのを止めてしまったのだけれど,やっぱりご紹介しておきます。ベートーヴェンやシューベルトが評判の良いケンプだけれど,バッハが最高なのかもしれません。ネタバレになってしまいますが,冒頭のアリアの装飾音の少なさに驚きます。後述のセルゲイ・シェプキンの対極にある演奏。ごつごつしたタッチで,ひとつひとつの音をしっかり弾いていくタイプ(たどたどしいときもあるけれど)。全然スマートじゃないんですが,刺々しいところがなくて肌触りが良いです。テクニックに耳を奪われることがないので,結果として音楽が心に沁みます。そして,音(音楽)が暖かいので,心が温まるような錯覚を覚えます。ゴルトベルク変奏曲の,最も崇高な演奏といったら褒め過ぎでしょうか。


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マリア・ティーポ 63分42秒
EMI CLASSICS 1990年6月録音

マリア・ティーポについて検索すると,このブログが出てくるというぐらい,今ではあまり聴かれなくなってしまった人。どうしようかと迷ったけれど,ディアパソン・ドール賞受賞の名盤ですし,うちが取り上げずして誰が取り上げるということで書きます。録音のせいもあって,まず繊細な印象があります。そしてピアノの音色が実に愛らしく,とても美しい。微妙なルバートが若干古めかしいですが,ロマンティックでもあります。夜更けにステレオのヴォリュームを絞って聴いたらムード満点かもしれません。以前記事にしたティーポのバッハ5枚組が廃盤なのはもったいないです。もっと,聴かれてよい素敵な演奏なんですけれど,これだけ海千山千のゴルトベルク変奏曲が出てしまうと,主張が弱いと感じられるのもしれません。


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アンドレイ・ガヴリーロフ 74分19秒
Deutsche Grammophon 1992年9月録音

これを初めて聴いたときは,快演という二文字が浮かびました。ゴルトベルク変奏曲をピアノで弾いている演奏は特に珍しくもない(そのほうが多いですよね?)のですが,これほどピアノ(で弾いているということ)を意識させる演奏もないと思います。ここに聴くガヴリーロフのピアノはとても見事なもので,それを聴いているだけで耳にご馳走です。時間が経つのを忘れて聴き入ってしまいますが,それはテクニック一辺倒の演奏ではないから聴き続けることができるのです。ガヴリーロフというと,超難曲を豪快にバリバリ弾くイメージがあり,このCDでも曲によってはそれもありますが,このバッハは素晴らしいと思います。技巧だけでなく,ガヴリーロフの音楽性の最も良い面が出せた録音ではないでしょうか。彼の代表盤と言っても差し支えないのではないか,と。


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熊本マリ 53分11秒
FIREBIRD 1993年8月録音

グレン・グールドに「あなた以外,自分自身の才能と感性を判断できるものはいない。自分自身を信じなさい」という言葉をもらった熊本マリが「自然に感じたまま,二十八年間の自分というもの全てを,音に表現できた」という演奏であり録音。これはあまたあるゴルトベルク変奏曲の録音の中でも特別に素晴らしい1枚と断言できます。彼女はこの曲を録音するにあたり,周到に準備を重ね,ライナーの冒頭にグールドの言葉を掲げるに恥じない演奏をしようと決意したのではないでしょうか。叙情的な表現が多いのですが,1曲1曲に熊本マリの気迫が感じられ,精魂込めて演奏されており,そこから紡ぎだされる一音一音が実に魅力的です。彼女の他の録音はあまり(というかほとんど)聴いていないけれど,熊本マリが非凡なピアニストであることをこのCDが改めて教えてくれました。


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コンスタンチン・リフシッツ 79分02秒
DENON 1994年6月録音

これを聴いていると,若いって素晴らしいなと思います。リフシッツはこの曲を16歳のときからさらい始め,18歳のときの卒業試験で弾き,その3日後の録音だそうです。全体に瑞々しい感性が息吹いています。少々乱暴と感じられるときがないでもないけれど,恐れを知らないというか,自分の思うがままに弾き進めて行きます。一気呵成に弾き上げたというか,演奏に勢いがありますね。それが全く違和感なく普遍性を持って聴こえて来るのが好ましいと思いました。深みが無いと思う人がいるかもしれないけれど,元気が出る演奏で個人的には好きな演奏です。なお,Orfeoへの再録音(2005年)は未聴ですが,リフシッツがどのような成長を遂げたのか聴いてみたいです。


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セルゲイ・シェプキン 71分54秒
Ongaku Records 1995年1月録音

冒頭のアリア,美しい演奏だなぁと思って聴いていると,そのうちあれれ?と思うようになり,最初に聴いたときは,目が点になったというか,驚きました。ここまで好きに弾くのはいかがなものだろうかと,保守的な私はささやかな抵抗感を覚えたものです。今さら私ごときが書くまでもないのですが,まず,過剰ではあるけれど,センスの良い装飾音がユニークですし,ピアノの特長を最大限に生かしきった,(楽譜に手を入れることも厭わない)豊かで大胆な表現力には説得力がありますね。シェプキンには2008年の再録音もあって,そちらも聴かなければと思っているのですが,この旧録音で,もういいやという気持ちも正直なところあります。でも,ゴルトベルク変奏曲が大好きな人には必聴盤でしょう。


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エフゲニー・コロリオフ 85分13秒
Hanssler 1999年4月録音

CD2枚組です(※リピートを励行しても1枚に収まる演奏はあります)。ピアノを弾く人は弾かない人と少々違った感想をもつと思うのですが,この演奏はピアノを弾く人に好まれる演奏ではないでしょうか。いや,繰り返しをきちんと守っているとか,そういうことではなくて,なんだろう,とにかく完璧なのです。どこを取っても。ゴルトベルク変奏曲を自分で弾いてみたいと考える人にとって,この演奏はひとつの理想だと思うのです。各声部のバランスの良さ,特にバスがはっきり聴こえるのがありがたいと思うし,装飾音が自然でいやらしさがないし,ピアノの音がきれいだし,とにかく巧い。見事なバッハです。リゲティが「もし無人島に何かひとつだけ携えていくことが許されるなら,私はコロリオフのバッハを選ぶ。飢えや渇きによる死を忘れ去るために,私はそれを最後の瞬間まで聴いているだろう」と言ったのもわかるような気がします。


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マレイ・ペライア 73分27秒
Sony Classical 2000年7月録音

ずばり,今回の本命は,このペライア盤と次のシフ盤だと思っていました。予選の段階ではシフが優勢で,シフを聴いた後ではペライアは形勢不利と感じたのですが,改めて聴き直してみると,やっぱりペライア盤のほうが上かな。シフ盤は変奏によってアクがあり,その点,ペライア盤のほうがより万人向けというか,より普遍的であるように思います。それに,弱音がとてもきれい。じゃあこの演奏が究極のゴルトベルクかと言われると素直に首を縦に触れません。ピアノ演奏における到達点だと思うのですが,これ程の名曲ともなると,これもひとつの解でしかないような気もするのです。ゴルトベルク変奏曲は一筋縄ではいかない,それだけ奥が深い曲ということなのでしょう。


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アンドラーシュ・シフ 71分11秒
ECM 2001年10月ライヴ

名曲名盤本を眺めると,バッハの鍵盤楽曲のピアノ演奏は,いずれもグレン・グールド盤が決定盤なのですが,2位はシフのDECCA盤であることが多いです。例外は平均律クラヴィーア曲集とゴルトベルク変奏曲。前者はリヒテルやグルダの録音がありますし,後者はペライア盤その他の評価が高いのです。でも,私はシフの,この再録音盤が結構気に入っています。ゴルトベルク変奏曲のピアノによる録音では最も完成度の高い演奏のひとつではないでしょうか。このくらいの水準になると,ペライア盤とどちらが良いとは簡単には言えなくなってしまいます。変奏によっては,あのピアニストが良かったなぁとか,シフ独特の癖のようなものが気になったりもしますが,それでも総合的にはこのCDはトップクラスでしょう。録音が私の好みということもありますしね。


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高橋悠治 36分48秒
DENON 1976年10月録音

今回取り上げたCDはいずれも1990年以降の比較的新しい録音ばかりなので,このCDはどうしようか迷ったのですが,この機会に新旧盤を聴き比べてみたいという気持ちが勝りました。高橋悠治のゴルトベルク変奏曲というと,新録音が発売されて以来,そちらばかりが話題になっていますが,この旧録音も大変魅力的です。最初に聴いたときには結構ショックを受けました。それまではグールドばかり聴いていたのですが,この曲のそれまで気がつかなかったいろいろな魅力を教えられた気がします。早めのテンポによるノン・レガートの演奏は,ごつごつした肌触りですが小気味良く,作曲家によるピアノだからか,理知的・分析的。でも,けして無味乾燥な演奏じゃないんですよ。繰り返しを全て省略しているので36分48秒で駆け抜けます。


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高橋悠治 42分47秒
AVEX CLASSICS 2004年7月録音

時は流れて28年後のゴルトベルク変奏曲。がらっと変わってしまって,別人のようだけれど,紛れも無く高橋悠治の演奏そのもの。これを聴くと1976年は試行錯誤しながら弾いている部分があったようにも感じます。この演奏はいろいろな束縛から開放され,もっと自由で伸びやかです。ゴルトベルク協奏曲もいろいろな演奏があり,中にはとてもユニークな録音もありますが,このCDを聴くと,そういった演奏は小手先の技術でしかないようにも思われてしまいます。ゴルトベルク変奏曲というと,すぐにグレン・グールドの演奏が思い浮かびますが,これはそれに唯一伍する演奏ではないかと思いました。この演奏の含蓄の豊かさは比肩するものがありません。バッハの言葉を借りて高橋悠治が語っているよう。

追記:文字サイズを12ptに上げてみました。このほうが読みやすいですかね?
追記2:ケンプ盤を追加しました。

今週のひと(り)ごと 250512

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先月下旬から怠惰な生活(仕事はちゃんとしてます!)が続いたのですが,
そのためか,体がだるいです。遊びすぎでしょうか?
ビタミンB1,B2,B12,E,アリシンを摂れる食事を心がけていますが,
なかなか回復しません(汗)

聴き比べの記事を書く気力・体力がないので,今回は絵日記です。

4月20日(雨)

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神田カレー店巡り第2弾(前回はボンディ)は,エチオピアです。
本店(神田小川町)ではなく,御茶ノ水ソラシティ店に行きました。
FJさん,Hoさん,Lさんの4人でした(よね?)。
私は,野菜カリーを頼みました。
ビールはLさんの奢りでした♪

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その後は,神田伯剌西爾でお茶しました。
一杯目は神田ぶれんど,二杯目は仏蘭西ぶれんどをいただきました。


5月4日(晴れ)

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友人とドライブしました。
実家の近くの海で十分だったのですが,犬吠崎まで連れて行かれました。

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家族連れが多くて混んでいましたが,
久しぶりに海を見ることができてよかったです。
海は広いな,大きいな♪
潮の香りがいいなぁと思ったら,焼きイカの臭いでした。


5月9日(晴れ)

Pさん宅を訪問しました。2度目です。
今回も,HoさんとLさんが一緒。

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ピグモンちゃんが出迎えてくれました。

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昼食をご馳走になりました。
次から次へと出て来るご馳走に感謝感激♪

お腹がいっぱいになって眠くなりましたが,
オーディオ・ルームで音楽を聴きました。
(ゼロ戦とか自衛隊の録音から始まったような……。)

フリードリヒ・グルダ(p)による
「コンプリート・モーツァルト・テープス」から
ピアノ・ソナタ第15番ハ長調 K.545(1980年録音)を
最後にかけていただきました。
グルダが童心に返って弾いているような,
全く作為を感じさせない素晴らしい演奏でした。


5月11日(雨)

久しぶりに母校を訪れました。雨の中……。
以下,適当に撮った写真。

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私がいた頃は,もっとボロかったのですが……?

Aさん(仮称)が新しく本を出されたので,
(ささやかな)お祝いに参加しました。
場所は,学院構内にあるレストランです。
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急遽サイン会を開催!
講談社文庫からも近日刊行されますが,
発売日前に2刷が決定。すごいなぁ!

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二次会は某店で。私は初めてだったのですが,
積極的に訪問したいと思わせる素敵なお店でした。


まぁ,今回はこんなところです。



モーツァルト「交響曲第41番ハ長調 K.551 <ジュピター>」の名盤

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ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」
 第1楽章 Allegro Vivace ハ長調 4/4拍子
 第2楽章 Andante Cantabile ヘ長調 3/4拍子
 第3楽章 Menuetto (Allegretto) ハ長調 3/4拍子
 第4楽章 Molto Allegro ハ長調 2/2拍子



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ブルーノ・ワルター指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
SONY CLASSICAL 1956年3月録音

これは最初から良い演奏だと思っていました。何度聴き返してもそれは変わりません。これは「ジュピター」の決定盤でしょう。第1楽章はエネルギッシュで推進力があります。「ジュピター」の第1楽章はこうでなくちゃと思います。第2楽章は途中で飽きてしまう演奏が多いのですが,さすがワルターの演奏はたっぷりと旋律を歌わせ,聴かせてくれますね。第3楽章も同様ですが,ここにはどっしりとした力強さがあります。終楽章も充実の極み。味が濃いです。そんなわけで大変素晴らしい演奏なのですが,モノラル録音であることが惜しまれます。これがステレオ録音だったら,このCDとあともう1枚取り上げて「ジュピター」は終わりにすることができます。
【29分05秒】

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ブルーノ・ワルター指揮
コロンビア交響楽団
SONY CLASSICAL 1960年2月録音

2012年9月に発売された6枚組BOXに収録されているCDを聴きました。数分で聴くのを止めました。これは録音がひどい(このCDのリマスタリングのせい?)と思ったのです。左右にめいっぱい広がったステレオ録音は仕方がないとしても,キンキン響く金属的な高弦,異様に膨らませた低音は,聴くのが苦痛でした。聴き比べ2巡目で我慢して聴き続けたところ,そういう音にも次第に馴れまして,これはこれで良い演奏だと思えるようになりました。オーケストラの魅力という点では,薄っぺらい響きのコロンビア響はニューヨーク・フィルにとてもかないませんが,ステレオ録音のせいで,爽やかに感じます。さて,この演奏を取り上げた最大の理由は第2楽章。この演奏が私のツボにはまりました。今回聴いた中ではベストだと思ったのです。なんて寂しく孤独な音楽なのでしょう。2回目に聴いたときに,そう感じました。
【30分26秒】

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ジョージ・セル指揮
クリーヴランド管弦楽団
SONY CLASSICAL 1963年10月録音

聴く前にイメージしていたとおり,セルらしくきりりと引き締まった演奏です。特に終楽章の精密機械のような演奏は圧巻で,感動的ですらあります。どの楽章もプロポーション抜群で,まるでギリシャ彫刻のよう? あまりに申し分なさ過ぎて,感想が書きづらいです。セルの厳しい造型に触れた後では,ワルターの人懐っこい演奏が懐かしく思えます。いや,本当に素晴らしい演奏ですし,これからも機会あるごとに聴いていくであろう名演なのですが,毎日食べたくない料理ってあるじゃないですか。録音も,もう少し冴えたものであったら,また違った印象があったかもしれません。
【26分32秒】

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カール・ベーム指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Deutsche Grammophon 1961年12月,1962年3月

以前にも書きましたが,中~高校生の私にとって,ベームは神様のような指揮者だったのです。特にモーツァルト,シューベルト,ブラームスに関しては。そんな私にとって,ベームがベルリン・フィルとウィーン・フィルを指揮した2種類の録音がある場合,どちらを選べばよいかというのは切実な問題でした。両方買って聴き比べるなんて,とてもできませんでしたかね。こうして聴いてみると,「ジュピター」はベルリン・フィル盤を選んでおけば,その後のこの曲への接し方も変わっていたかもしれないと思いました。この頃のベルリン・フィルの藍色のサウンドと,ベームの逞しい音楽づくりが魅力的ですが,その一本気なところが今の私にはちょっぴり物足りなく感じたりもします。
【27分07秒】

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カール・ベーム指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
Deutsche Grammophon 1976年4月録音

そんなわけで,私が初めて買った「ジュピター」はこれです。今聴いてもウィーン・フィルの優美なサウンドが大変魅力的です。録音も良いので,オーケストラの響きが艶っぽくて,鮮やかで,とてもイイですね。特に第1楽章が立派です。響きだけ採れば,この第1楽章が一番好きかもしれません。問題は,この演奏,聴いているとき,ついつい他の事を考えてしまうのです。曲が長く感じられてしまうのですね。ベームの色気がない(男らしい? 漢って書くのかな?)指揮のせいなのか,私の集中力の無さによるものなのか,きっと後者だと思うのですが,実は買ってからあまり聴かなかったレコードなのです。
【28分20秒】

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1970年9月

それでは,カラヤンのベルリン・フィルとの2種の録音のうち,どちらを選ぶかというのも難しい問題です。カラヤンの解釈自体はそれほど変わらないと思うのですが,録音会場(イエス・キリスト教会)が違うし,音づくりも異なりますので,印象が結構変わります。木管楽器の聴こえ方もかなり違います。この頃の,当時最高水準にあったかもしれないベルリン・フィルの木管奏者の名技を堪能できるという点で,このEMI CLASSICS盤に軍配が上がるかもしれません。全体的にゴージャスで華やかなサウンドで,なんだかR・シュトラウスを聴いているような気持ちになりますが,これはこれでアリかも,と思います。
【28分20秒】

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Deutsche Grammophon 1976年5月録音

録音場所がベルリンのフィルハーモニーに変わりまして,レーベルもドイツ・グラモフォンとなりました。カラヤンの「ジュピター」を購入するのであれば,このCDだと思います。EMI CLASSICSの華美な印象が後退し,もっと引き締まった音楽を聴かせてくれます。録音が自然になったこともあるのでしょうね。カラヤンのモーツァルトというと敬遠する人もいますが,私は結構好きでよく聴きます。名曲名盤本には,私にはどこが良いのかさっぱりわからないCDが上位に顔を出すことがあるけれど,それらのCDよりカラヤンのほうがよっぽど聴き応えがあると思うのです。
【30分16秒】

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クラウディオ・アバド指揮
ロンドン交響楽団
Deutsche Grammophon 
1979年10月、1980年1月

これも良いですよね。現代オーケストラによる演奏では最も爽快な演奏ではないでしょうか。軽やかでよく歌う素敵な演奏です。「ジュピター」では重量感のある演奏が多く,このアバド盤も軽量というわけではないのですが,フットワークが軽いというか,小粋なのです。イタリア・オペラを聴いているように感じることもあります。ピリオド楽器による演奏は苦手なので,現代オーケストラによるCDを1枚紹介してほしいといわれたら,録音の優秀さも評価して,このCDを上げるかもしれません。余計なことですが,この演奏の第1楽章,カラヤンっぽくないですか?
【34分56秒】

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オイゲン・ヨッフム指揮
バンベルク交響楽団
ORFEO 1982年3月,11月

肉づきの良い,ふくよかなモーツァルト。育ちの良さを感じます。スリムで引き締まったスタイルが多い中,こういう演奏が逆に新鮮に感じられるかも。ヨッフムの指揮だと,そこそこメリハリもあるますので,ベートーヴェン的ですね。ベーム指揮の演奏に近いものがありますが,あちらはもう少し筋肉質でした。ヨッフムのほうがポッチャリしていて,私はこちらのほうが好きです。他の演奏の良いところだけを吸い上げて構築したような演奏で,そのような意味では中庸なのかもしれませんが,非の打ち所が無い演奏というのは安心して聴くことができるので,心地がよいものです。
【35分56秒】

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ニコラウス・アーノンクール指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
TELDEC 1982年録音

レコファンという中古ショップがありまして,このCDそこで購入した覚えがあります。初めて聴いたときは衝撃的というか,目からウロコでした。個人的にはこれが「ジュピター」の決定盤だと思っています。いろいろ言いたいことがあり過ぎて,それらを書こうとすると途方に暮れます。だから,ご紹介するだけ。モーツァルトの交響曲の場合,ピリオド楽器による演奏だと,へなへな~という貧乏くさい感じがすることがあるのですが,ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスではなく,名門コンセルトヘボウ管を起用したところが良いです。響きが立派で技術も確か。今聴いても全く古さを感じさせません。これは最も多く繰り返し聴いた「ジュピター」の録音で,最初に購入した中古CDが寿命を迎えてしまったため,4枚組のセットを新しく買い直して愛聴しています。何度でも買い直し,一生聴き続けます。
【41分35秒】

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ニコラウス・アーノンクール指揮
ヨーロッパ室内管弦楽団
TELDEC 1991年ライヴ

モーツァルト没後200周年記念演奏会のライヴ録音(ウィーン)です。先程,アーノンクール/コンセルトヘボウ管による演奏を絶賛しましたが,こちらのヨーロッパ室内管との録音のほうが評論家さんにはウケが良いみたいで当惑します。どちらが良いか。この判断は難しい。私はコンセルトヘボウ管盤が,よりアーノンクールらしくて,迫力のあるオケ(特にティンパニ)も指揮者の意図を十全に表現しているように感じられていたので,そちらのほうを推していたのですが,改めて聴き比べてみるとこのヨーロッパ室内管の演奏も,見通しのよい録音のせいもあって,表現が洗練されているように感じられますし,この瑞々しさは捨て難いものがありますね。うーん,一般にはこのCDのほうが良いかも。弱気。これも決定盤にします。
【40分51秒】

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フランス・ブリュッヘン指揮
18世紀オーケストラ
Philips 1986年5-6月ライヴ

ピリオド楽器による「ジュピター」。ブリュッヘンと18世紀オケによるCDは評価が高いものが多いです。とりわけモーツァルトの交響曲はいずれも名盤中の名盤的な扱いで,へそ曲がりな私は,それほどでもないんじゃない?って思ってしまいます。他の曲ならいざ知らず,「ジュピター」の場合,ピリオド楽器による演奏は響きが空虚な感じがして寂しい気持ちがするのです。結果としてはなかなか面白かったですし,これだけ力感のある第1楽章も珍しいと思います。そういう意味では単なる美しさの追求に留まらない第2楽章がユニーク。第3楽章は普通。第4楽章はやっぱり力強い演奏。
【41分14秒】

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マルク・ミンコフスキ指揮
レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル
ARCHIV 2005年10月ライヴ

ミンコフスキは才人指揮者というイメージがあって,何かやらかしてくれるのではないかと,いつも期待して聴いています。私見では,世評の高いブリュッヘン盤よりこちらのミンコフスキ盤のほうが魅力的なのですが,いかがでしょうか。20年近く後の録音だけあって,こちらのほうが新鮮です。録音も良いですし。アーノンクールに近いものがありますね。レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル(グルノーブル・ルーヴル宮音楽隊)って,古楽器オーケストラなのですけれど,こういう演奏だったらピリオド・オケでも全然OKです。第2楽章や第3楽章もユニークですが,おおっ!って思うのはやはり第4楽章でしょう。この第4楽章はスリリングでなかなか聴き応えがありますよ!
【37分04秒】



この記事,アップしてからCDを2回入れ替えています。
5,000文字制限ってやつは!


さよなら「東京クヮルテット(Tokyo String Quartet)」

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「東京クヮルテットのラスト・コンサートに行きます」と話したところ,「東京クヮルテットって,まだ日本人のメンバーがいるのですか?」「創設期のメンバーで残っている人はいるのですか?」「東京クヮルテットなのに日本ツアーって,おかしくないですか?」等の質問を受けました。それにどう答えたかは覚えていないのだけれど,この記事で回答を書きたいと思います。

彼らの熱心なファンとはいえない私ですが,書き留めておきたかったのです。なんだか,恥ずかしいのですけれど。



話は1965年に遡りますが,日光で室内楽の講習会(スポンサーはパン・アメリカン航空他)が開催され,12組の日本人カルテットが参加しました。その中には桐朋学園大学在学中の原田禎夫(vc)と原田幸一郎(vn)によるカルテットが含まれていました。

この講習会で,ジュリアード弦楽四重奏団のロバート・マンやラファエル・ヒリアーは,斎藤秀雄の教え子である原田らの技術の高さに目を見張り,渡米して本格的に室内楽を学んではどうかと誘ったそうです。

それがきっかけとなって、原田らはジュリアード音楽院にて,1969年9月に桐朋学園大学の卒業生4人によるカルテットを結成します。

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【1969年-1974年】
原田幸一郎(第1vn)
名倉淑子(第2vn)
磯村和英(va)
原田禎夫(vc)

このカルテットは、結成の翌年(1970年)に「東京クヮルテット(Tokyo String Quartet)」という名前で難関のミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門に参加し、見事第1位を獲得します。日本ではどのくらいのニュースになったかわかりませんが,これは画期的な出来事であったと思います。

そして、その年の10月にニューヨークのタウンホールでデビューします。そのときのプログラムは、アルバン・ベルクの弦楽四重奏曲作品3、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第10番「ハープ」作品74、バルトークの弦楽四重奏曲第1番でした。

以降,東京クヮルテットはドイツ・グラモフォンと契約してレコーディングを開始するとともに、世界中で演奏するようになります。1973年には大阪フェスティバルホールでの帰国コンサートも成功させました。

このように書くと、東京クヮルテットは順風満帆でスタートしたように見えますが、必死で練習し、多くの演奏会をこなし続ける(しかし全然儲からない)という、かなりハードな毎日だったようです。

【1974年-1981年】
原田幸一郎(第1vn)
池田菊衛(第2vn)
磯村和英(va)
原田禎夫(vc)

最初のメンバー交代は、第2ヴァイオリンで、名倉淑子から2歳年下の池田菊衛に代わりました。これは予定されていたことで、他のメンバー同様、池田菊衛も桐朋学園大学卒業後にジュリアード音楽院で学び,東京クヮルテットの練習にも参加していましたので、スムーズに引き継げたようです。

世界屈指のカルテットに成長した東京クヮルテットですが、この時代の代表的な録音はDGへの最初のバルトーク全集でしょうか。

【1981年-1995年】
ピーター・ウンジャン(第1vn)
池田菊衛(第2vn)
磯村和英(va)
原田禎夫(vc)

4人の卓越した合奏力が求められるといっても、やはりカルテットの顔は第1ヴァイオリンでしょう。原田幸一郎の退団は衝撃的な事件でした。

東京クヮルテットは、20歳年下のカナダ人でジュリアード音楽院で学んだピーター・ウンジャンを第1ヴァイオリンに迎えることになります。

それにより、東京クヮルテットは、原田幸一郎時代の切れ込みの鋭い鮮烈なサウンドから、繊細で気品のあるピーター・ウンジャン時代へと変貌します。そう簡単には言い切れないけれど,まぁそんな感じです。

レコーディングに慎重であった東京クヮルテットに、ベートーヴェン弦楽四重奏曲全集(RCA)の録音を促すなど、ピーター・ウンジャンが果たした役割は大きく,実りの多い時代となりました。

【1995年-1996年】
アンドリュー・ドース(第1vn)
池田菊衛(第2vn)
磯村和英(va)
原田禎夫(vc)

東京クヮルテットの第2の黄金時代を築いたピーター・ウンジャンでしたが、残念なことに左腕の故障で演奏ができなくなり、退団を余儀なくされます。

元オルフォード四重奏団のリーダーであったアンドリュー・ドースが助っ人として参加し,急場をしのぐ中、東京クヮルテットは新しい第1ヴァイオリン奏者を探し続けます。

【1996年-2000年】
ミハイル・コペルマン(第1vn)
池田菊衛(第2vn)
磯村和英(va)
原田禎夫 (Vc)

高名なボロディン弦楽四重奏団の2代目第1ヴァイオリン奏者であったミハイル・コペルマンが東京クヮルテットに加わりました。

【2000年-2002年】
ミハイル・コペルマン(第1vn)
池田菊衛(第2vn)
磯村和英(va)
クライヴ・グリーンスミス(vc)

東京クヮルテットの現在と自分の将来を熟考した末、創設以来のメンバーの原田禎夫が退団を決意します。そして、新たなチェリストとしてイギリス人のクライヴ・グリーンスミスが加入します。

【2002年-2013年】
マーティン・ビーヴァー(第1vn)
池田菊衛(第2vn)
磯村和英(va)
クライヴ・グリーンスミス(vc)

ミハイル・コペルマンが去り、トロント弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンであったマーティン・ビーヴァーが入団します。

再び安定し充実した演奏を取り戻した東京クヮルテットでしたが、池田菊衛と磯村和英が退団することになりました。

池田と磯村に代わる新たな第2ヴァイオリンとヴィオラを探し出すのは不可能とのことで、東京クヮルテットは2013年に活動を終えることになりました。

【おさらい】
第1ヴァイオリン
 1969年-1981年 原田幸一郎
 1981年-1995年 ピーター・ウンジャン
 1995年-1996年 アンドリュー・ドース
 1996年-2002年 ミハイル・コペルマン
 2002年-2013年 マーティン・ビーヴァー
第2ヴァイオリン
 1969年-1974年 名倉淑子
 1974年-2013年 池田菊衛
ヴィオラ
 1969年-2013年 磯村和英
チェロ
 1969年-2000年 原田禎夫
 2000年-2013年 クライヴ・グリーンスミス

ピーター・ウンジャンの左腕の故障が悔やまれます。カルテットを維持していくのって,本当に大変なことなのですね。



さて,コンサートの予習用として聴いた東京クヮルテットのCDです。

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ベルク:弦楽四重奏曲 Op.3
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調 Op.74「ハープ」
バルトーク:弦楽四重奏曲第1番 Op.7

東京クヮルテット
原田幸一郎(第1vn)
名倉淑子(第2vn)
磯村和英(va)
原田禎夫(vc)
Hanssler 1971年5月11日ライヴ(シュヴェツィンゲン城)

先に書きましたように,東京クヮルテットは,1970年のミュンヘン国際コンクールで優勝し,ニューヨークでデビューしています。このCDはその翌年のライヴですが,デビューリサイタルと同じプログラムなのが嬉しい貴重な録音です。今回聴いた中では最も感銘を受けました。若いって素晴らしい!

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バルトーク:弦楽四重奏曲全曲
東京クヮルテット
原田幸一郎(第1vn)
池田菊衛(第2vn)
磯村和英(va)
原田禎夫(vc)
Deutsche Grammophon 1975~1980年録音

バルトーク生誕100年記念に、ドイツ・グラモフォンが制作した全集です。ワシントンのコーラン美術館貸与のアマティを使用して演奏しているそうです。なお,第1ヴァイオリンがピーター・ウンジャンの1993~1995年の録音もあります。
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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全曲,他
東京クヮルテット
ピーター・ウンジャン(第1vn)
池田菊衛(第2vn)
磯村和英(va)
原田禎夫(vc)
ピンカス・ズッカーマン(va:Op.29)
RCA 1989~1992年の録音

結成20周年を記念して世界各地でおこなわれたベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会と並行して行われたセッション・レコーディング。ピアノ・ソナタ第9番から編曲された弦楽四重奏曲ヘ長調 Hess.34と、ズッカーマンと共演した弦楽五重奏曲の2曲が収録されています。格安BOXなので是非!

オンライン・ショップによっては,東京クヮルテットと東京クァルテットのどちらかにしか出て来ないCDがありますので要注意です。

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武満徹:ア・ウェイ・アローン(1981)
バーバー:弦楽四重奏曲作品11(1936)
ブリテン:弦楽四重奏曲第2番ハ長調作品36(1945)
バーバー:歌曲「ドーヴァーの渚」作品3
東京クヮルテット
ピーター・ウンジャン(第1vn)
池田菊衛(第2vn)
磯村和英(va)
原田禎夫(vc)
マリリン・ホーン(Ms)
RCA 1992年,1994年の録音

武満徹の「ア・ウェイ・ア・ローン」は、東京クヮルテット創立10周年記念委嘱作品です。バーバーの弦楽四重奏曲は、第2楽章が「弦楽のためのアダージョ」の原曲。なお,新しく出たCDには,ボーナス・トラックとしてバーバーの歌曲「ドーヴァーの渚」が収録されています。

第1ヴァイオリンがマーティン・ビーヴァーのCDは持ってません(汗)
いや,そのうち買います。すみません。



冒頭に書きましたとおり,コンサートにも行ってまいりました。

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2013年05月16日(木) 19時開演
東京オペラシティ コンサートホール

東京クヮルテット Tokyo String Quartet
マーティン・ビーヴァー Martin Beaver(第1vn)
池田菊衛 Kikuei Ikeda(第2vn)
磯村和英 Kazuhide Isomura(va)
クライヴ・グリーンスミス Clive Greensmith(vc)
曲目:
ハイドン:弦楽四重奏曲第81番ト長調「ロブコヴィッツ」作品77-1
コダーイ:弦楽四重奏曲第2番 作品10
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調 作品131
(アンコール)
モーツァルト:弦楽四重奏曲第20番「ホフマイスター」より第2楽章
ハイドン:弦楽四重奏曲第74番「騎士」より第4楽章

後で気がついたのですが,東京クヮルテットの日本のホームは「王子ホール」だそうで,そちらを聴きに行けばよかったのですが,ベートーヴェンを聴きたかったので「東京オペラシティ」を選んでしまいました。でも,王子ホールではバルトークの6番が聴けたんですよね。両方行けばよかったな。

なお,東京クヮルテットは,日本ではラスト・コンサートですが,その後も海外で演奏旅行が続きます。オファーが多いので,いつが最後の日になるのか,わからないみたい。

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サインを頂きました♪


YAMAHA NS-2000

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オーディオで最も難しいのはスピーカー選びだと思っています。お金はソフトの購入に使ったほうが充実した人生を過ごせると信じているのですが,それでもスピーカーは良いものがほしいです。でも,いまだに理想のスピーカーに出会えません。それで,いつ頃からスピーカーを探しているのかというと,話はずっと以前の時代に遡ります。

私が最初に興味を持ったのは,YAMAHAのスピーカーでした。楽器を製造している会社がつくったスピーカーだから,きっと良い音がするだろうと考えたのです。FM雑誌でミュージシャンのリスニングルームを紹介している頁があり,その人が使っていたスピーカーがこれ(↓)。気品があるデザインに心惹かれました。

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YAMAHA NS-690(1973年?)
3ウェイ・3スピーカー・密閉方式
ブックシェルフ型
低域:30cmコーン型
中域:7.5cmドーム型
高域:3.0cmドーム型
再生周波数帯域:35Hz~20kHz
インピーダンス:8Ω
出力音圧レベル:90dB/W/m
外形寸法:幅350×高さ630×奥行312mm
重量:22kg/本

こんなに古いスピーカーだったかな。私が興味を持ったのは,1978年のNS-690IIか,1980年のNS-690IIIかも。

私が両親にねだったのは,このような高価なスピーカーではなく,もっと小さな2ウェイのスピーカーでした。型番は忘れましたが,白いウーファーだったのを覚えています。

レコードを製作している会社のスピーカーも良い音がするのではないかと思っていました。ビクターの製品です。ちなみにDENONは全く候補に上がりませんでした。デザインが地味だったからでしょう。

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VICTOR SX-7(1973年発売)
3ウェイ・3スピーカー・密閉方式
ブックシェルフ型
低域:30cmコーン型
中域:7.5cmドーム型
高域:3cmドーム型
インピーダンス:4Ω
出力音圧レベル:88dB/W/m
周波数特性:25Hz~20KHz
外形寸法:幅355×高さ635×奥行322mm
重量:25kg/本

これも,私がほしかったのは,1980年頃のSX-7IIだったかもしれません。ウーファーがデコボコなのが,良くも悪くも相当印象的で,ちゃんと音が出るのか心配でした。

また,YAMAHAです。雑誌等でよく見かけたスピーカー。

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YAMAHA NS-1000M(1974年)
3ウェイ・3スピーカー・密閉方式
ブックシェルフ型
低域:30cmコーン型
中域:8.8cmドーム型
高域:3.0cmドーム型
再生周波数帯域:40Hz~20kHz
インピーダンス:8Ω
出力音圧レベル:90dB/W/m
外形寸法:幅375×高さ675×奥行326mm
重量:31kg/本

これは国産で最も有名なスピーカーではなかったでしょうか。お使いになったことがある人も多いと思います。スコーカーとツィーターの振動板にベリリウム(原子番号4の元素。元素記号はBe。極めて毒性の高い物質。えっ?)という金属を用いているのが最大の特徴です。

追記:これも,こんなに古いスピーカーだったかな?と首を傾げましたが,NS-1000Mは23年もの間(!)販売され続け,20万本以上売れたのだそうです。さすが,国産で初めて海外の放送局で使われたスピーカーだけのことはありますね。

さて,この記事で,かつて私が音を聴いたことがあるスピーカーはひとつしかありません。それは,この(↓)スピーカーです。

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SONY SS-G7(1976年)
3ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式
フロア型
低域:38cmコーン型
中域:10cmバランスドライブ型
高域:3.5cmバランスドライブ型
再生周波数帯域:30Hz~20kHz
出力音圧レベル:94dB/W/m
インピーダンス:8Ω
外形寸法:幅510×高さ940×奥行445mm
重量:約48kg/本

なぜ聴いたことがあるかというと,学校の音楽室にあったからです。音楽の先生が校長先生にお願いして買ってもらった自慢のスピーカーでした。でも,生徒が悪戯してスコーカーのセンターキャップをへこませてしまい,先生もへこんでしまいました。それ以来,このスピーカーは使わないときは鍵付きの箱に収められるようになりました。スピーカーの設置環境としてはよろしくなかったですね。

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Technics SB-7000(Technics7)(1977年)
3ウェイ・3スピーカー・リニアフェイズバスレフ方式
フロア型
低域:35cmコーン型
中域:12cmコーン型
高域:3.2cmドーム型
再生周波数帯域:40Hz~20kHz
インピーダンス:6Ω
出力音圧レベル:93dB/W/m
外形寸法:幅480×高さ845×奥行410mm
重量:36kg/本

このスピーカーは,デザインがすごく印象的でした。男の子が喜びそうなデザインでしょう。スピーカーって,楽器や家具のイメージがありますが,これは実用本位というか,業務用みたいな雰囲気に心がくすぐられたました。巨大なスピーカーに見えますが,SONYSS-G7のほうが大きくて重たかったんですね。

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YAMAHA NS-2000(1982年?)
3ウェイ・3スピーカー・密閉方式
ブックシェルフ型
低域:30cmコーン型
中域:8.8cmドーム型
高域:3.0cmドーム型
再生周波数帯域:28Hz~20kHz
インピーダンス:6Ω
出力音圧レベル:90dB/W/m
外形寸法:幅440×高さ752×奥行404mm
重量:47kg/本

名機NS-1000Mを超えることを目標に作られたスピーカーです。開発に8年もかかったとか? NS-1000Mはベリリウムの振動板が有名ですが,NS-2000はそれに加えて,ピュアカーボンファイバーを長い繊維のまま放射状の一方向配列コーンに仕上げるという世界初の奇跡的技術によりつくられたウーファーがセールスポイントでした。

もっとも,NS-1000Mでさえ手が届かない私がNS-2000なんてとんでもない話で,検討対象外でしたが……。NS-1000Mの中古はよく見かけますが,NS-2000はあまり見たことがないです。

社会人になった私が2番目に入手したのはダイヤトーンのブックシェルフ型でした。低音から高音までバランスの良い自然な音で,数年間ではありましたけれど,某英国製スピーカーがやって来るまで愛用していました。

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DIATONE DS-3000(1984年)
4ウェイ・4スピーカー
アコースティック・エアーサスペンション方式
ブックシェルフ型
低域:32cmコーン型
中低域:16cmコーン型
中高域:5.0cmドーム型
高域:2.3cmドーム型
公称インピーダンス:6Ω
再生周波数帯域:25Hz~40kHz
出力音圧レベル:90dB/W/m
外形寸法:幅450×高さ750×奥行420mm
重量:52kg/本 ←重い!

私が使用していたのは,もちろん,この(↑)スピーカーではありません。オーディオ・ファンのリスニング・ルームを訪ねる記事があって,ダイヤトーン・マニアがコレクションしていたスピーカーの中に4ウェイの機種があり,スピーカーが4つあるなんてすごいなぁと感心したのでした。

海外のスピーカーを紹介していませんが,興味がなかったわけではないのです。今回は,文字数の都合で割愛しただけ。



さて,本題です。この中の,あるスピーカーをお譲りいただけることになりました。それが決まったのは去年の話だったのですが,いろいろ理由があって引取りを先延ばしにしていました。ブックシェルフ型とはいえ,大きなスピーカーですので設置場所をつくらなければなりませんが,それに時間がかかったのです。

また,せっかく名機をいただくのであれば,新品に近い状態で受取りたいと考え,レストア(老朽化などの理由により,劣化もしくは故障した製品を修復し、復活させること)に出すことにしました。

自分のスピーカーであれば,高いお金をかけてレストアしようという気にはなかなかならない(それだけのお金があったら新しいスピーカーを買いたい)ものですが,今回は初期投資ゼロなので,少しぐらいお金がかかってもよいという気になりました。

決心して引き取るのですから,少しでも長く使いたいと思いますし,気に入らない音だったらショックじゃないですか。でも,せっかくレストアして自分の好みじゃない音だったら,もっとイヤかも。

ウーファーのエッジは、前所有者(仮称P)さんがヤマハさんで交換していて問題が無いようなので原状のままとし,ツィーター&スコーカーの分解整備,各ユニットフレーム塗装,アッテネーター整備,フィルムコンデンサーに全交換,ユニット取り付けビス交換,接続端子交換等をお願いしました。これだけお金をかけるなら,もう少し予算を追加して新しいスピーカーを……,いや,そういうことは考えちゃいけない。

オーディオ全盛期のスピーカーは、物量を投入して作り込まれていますから,きちんとレストアしてあげれば,現代のスピーカーに優るとも劣らない素晴らしい音を奏でてくれるはずです。たぶん。おそらく。



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土曜日の朝,大きな荷物が届きました。

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早速,開梱します。

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サランネットを外すと,このような姿が。

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ベリリウムのスコーカーとツィーターです。
レストアしてもらったので新品同様!

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もう1台も姿を現しました。周囲は既にゴミの山。

さて,問題は,重量47kg・本のYAMAHA NS-2000
どうやってスピーカースタンドに載せるか?です。
抱きついてくれたら持ち上げられないこともないのですが。

数ヵ月前から考えていた方法はこれ(↓)です。
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雑誌をスピーカーの左右に交互に挟み込んでいきます。

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少しずつ高くなっていきます。結構疲れる作業です。

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今,地震が来たら,すごく困ることになりそうです。

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スタンドと同じ高さになったので,後方へずらします。

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移動完了! ||| \( ̄▽ ̄;)/ |||

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一本目をセットし終った段階で,疲労困憊です。

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2本目も同じことをくり返します。やれやれ。

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終了! \(^▽^\)(/^▽^)/

アンプとプレーヤーの電源を入れ,しばらく経ってから試聴を開始。

今までに数え切れないくらい聴いた音源でテストをしてみました。

第一印象は……。

追記:忘れないように,ここにURLを貼り付けておこう




モーツァルト「フルート協奏曲第1番」の名盤

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「フルート協奏曲」というと,ヴィヴァルディの曲(「海の嵐」とか「ごしきひわ」),モーツァルトの2曲,後は思いつきで,ニールセン,イベール,ハチャトゥリアン,ジョリヴェ,小高尚忠でしょうか。いわゆる大作曲家によるものが少ないですね。それは他の管楽器にもいえることですけれど。

その中でも最もよく聴かれているのは,断トツでモーツァルト,次いでヴィヴァルディのような気がしますが,今回はモーツァルトのCDを聴き比べてみます。第1番と第2番のセットでもよかったのですが,モーツァルトの管楽器のための協奏曲を集めたアルバムだと,第2番ではなくオーボエ協奏曲(K.314 (285d) )が収録されている場合が多いので,この記事では第1番だけを取り上げることにしました。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
フルート協奏曲第1番 ト長調 K.313(285c) (1778)
第1楽章 アレグロ・マエストーソ ト長調 4分の4拍子 協奏風ソナタ形式
第2楽章 アダージョ・ノン・トロッポ ニ長調 4分の4拍子 ソナタ形式
第3楽章 ロンド テンポ・ディ・メヌエット ト長調 4分の3拍子 ロンド形式

【楽曲解説】



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ジャン=ピエール・ランパル(fl)
ウィリー・シュタイナー指揮
読売日本交響楽団
DENON 1964年4月19,20日
東京,杉並公会堂

モーツァルトのフルート協奏曲は,クラシック音楽を聴き始めた頃から愛聴している曲で,ニコレ/ジンマン,ゴールウェイ/バウムガルトナー,グラーフが指揮者を兼ねたもの,そしてランパル/グシュルバウアーの4種の演奏が鉄板でした。ところがいくら探してもランパル/グシュルバウアー盤(ERATO '66年録音。現在廃盤)が見つからないので,その数年前にランパルが日本で録音したこのCDを聴きました。ランパルのフルートは王者の貫禄があります。太くて明るい音色が素晴らしく,マイクが近いのか,録音もフルートを大きく捉えたもので,ランパルの至芸を存分に楽しむことができます。


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アンドレアス・ブラウ(fl)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1971年8月
スイス,サンモリッツ・フランス教会

ベルリン・フィルの首席というと,1950年代のニコレ,'60年代のツェラー,'70年代前半のゴールウェイ,'70年代後半にツェラーが戻って来て,そして'93年からのパユに至るという流れの中で,'70年からの首席であるブラウはちょっぴり影が薄くなりがち。でも,カラヤンの「モーツァルト:管楽器のための協奏曲集3枚組」では,フルート協奏曲第1番の独奏をつとめています。ベルリン・フィルの分厚く押しの強いサウンドに,一本のフルートは気の毒な感じがしないでもないですが,名手ブラウのフルートは見事な安定感を示します。この演奏の白眉は第2楽章かも。ブラウは絶好調で低音から高音までムラのない美しい音色で歌い上げています。


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ヴェルナー・トリップ(fl)
カール・ベーム指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
Deutsche Grammophon 1973,74年
ウィーン,ムジークフェラインザール

ウィーン・フィルの首席奏者であったトリップの気品のある音色にまず心奪われます。女性的と形容してもいいような,実にたおやかな演奏ですね。伴奏オケはウィーン・フィルですから,独奏とオケが違和感なく調和していてとても気持ちよく聴くことができます。これ以上,何を書いたらよいのかわかりません。もしかしたら,あまりにも予定調和的な演奏であるがゆえにインパクトが少なくて,この録音はあまり話題に上らないのかも。良い演奏なんですけれど。


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ヨハネス・ワルター(fl)
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
シュターツカペレ・ドレスデン
Deutsche Schallplatten 1973年12月5~7日
ドレスデン,ルカ教会

まずオーケストラの美しい響きに心奪われます。今回聴いた中では最もオーケストラが良いと思った演奏で,ホルンとか実に巧いですけれど,ペーター・ダムなのでしょうか。このオケの首席奏者だけあって,ワルターのフルートはシュターツカペレ・ドレスデンにぴったりの音色ですね。よく黄金のフルートという形容が使われますが(私も使ってます),ワルターのフルートはくすんでいて,いぶし銀の音色。演奏スタイルも質実剛健というか,全然華麗じゃないのですが,そういうモーツァルトのほうがしっくり来るように感じます。佳演。


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ジェームズ・ゴールウェイ(fl)
ルドルフ・バウムガルトナー指揮
ルツェルン弦楽合奏団
DENON 1974年
ルツェルン近郊,セオン

モーツァルトのフルート協奏曲を初めて買う人にどれか1枚をお薦めするとなると,はやりこれでしょうか。ルドルフ・バウムガルトナー指揮のルツェルン弦楽合奏団が爽やかで美しいし,ゴールウェイのフルートがそれに輪をかけて魅惑的な音色なのです。この曲は,モーツァルトが現代のフルートを知っていたかのように,フルートの音域の特長を活かして書かれているのですが,ゴールウェイの手にかかると一層その思いが強くなります。ADFディスク大賞,ウィーンの笛時計賞受賞。


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オーレル・ニコレ(fl)
デイヴィッド・ジンマン指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
PHILIPS 1978年6月
アムステルダム,コンセルトヘボウ

以前にもどこかに書いたと思いますが,私の先輩が「バッハとモーツァルトのフルート曲はニコレよね♪」と言ったので,それは私にとって絶対なのです。そういうわけで,この聴き比べの一番最後にこのCDを聴いたのですが,もしかしてそれほどでもない演奏だったらどうしようという思いがありました。しかし,それは杞憂に終わり,独奏もオーケストラも実に素晴らしい演奏であります。この演奏を何度も繰り返し聴き続けてきたので,私の基準になってしまっているのかもしれません。贔屓目もあるのですが,ニコレのフルートって,他のフルーティストに感じる欠点がないのです。私にとっての理想の,最も厭味のないフルート。音楽に対する真摯な姿勢にこちらも姿勢を正して聴かなくてはという気持ちになります。ところで,ニコレには,カール・リヒター指揮の'60年録音もあって,そちらも聴かなければとは思っているのですが……。


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ウィリアム・ベネット(fl)
ジョージ・マルコム指揮
イギリス室内管弦楽団
DECCA 1978年
ロンドン,キングスウェイ・ホール

イギリスの名フルーティスト,ベネットによる演奏。これは珍しくうちの母親にもらったCDということもあって無視するわけにはいかないのですが,意外といっちゃなんですが,秀演だと思います。ウィキペディアを読みますと「数多くのフルーティストの養成にも貢献し、楽器の性能改善にも尽力した」とありますが,確かに良い意味で模範(理想)的な演奏だと思います。これを聴いている間は,この曲はこのCDで十分じゃないかと思うくらい。伴奏オケはちょっと重たい感じがするけれど,優秀な録音のおかげで見通しがよくて気持ちがよいです。


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ジェームズ・ゴールウェイ(fl)
ネヴィル・マリナー指揮
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
RCA 1995年9月29日~10月1日
ワトフォード,コロシアム

先述のバウムガルトナー盤とこのマリナー盤のどちらが良いかというのはなかなか難しい問題で,録音とオーケストラはバウムガルトナー盤のほうが好きかもしれません。こちらの伴奏オケは録音のせいもあってちょっと遠くてくすんだ音色がします。独奏はオケと溶け合っており,統一感がありますが,さらに音色が輝かしくてゴールウェイ節全開といった趣があり,モーツァルトを聴くというよりゴールウェイを聴くべきCDのような気がします。そのあたりが好き嫌いの分かれ目ではないでしょうか。


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エマニュエル・パユ(fl)
クラウディオ・アバド指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1996年9月22,24,28,29日
ベルリン,フィルハーモニー

現代(現在)のフルート奏者では,エマニュエル・パユが一番というのは衆目の一致するところで私達はパユを呼び捨てにできず,思わず「パユ様」と呼んでしまうのだけれど,それは冗談として,こんなフルーティストが首席に座っているのだからやはりベルリン・フィルはすごいオーケストラなのです。実に考え抜かれた,理知的なフルートという印象を受けることもありますが,伴奏オケともども巧いことは巧く,この曲の理想的な再現といって差し支えないのですが,先に上げた名盤と同列に置くことに抵抗を感じてしまうのは,演奏家に対する思い入れがまだ薄いからでしょうか。


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シャロン・ベザリー(fl)
ユハ・カンガス指揮
オストロボスニア室内管弦楽団
BIS 2005年4月11-15日
フィンランド,Kaustinen Church

だいぶ前のことになりますが,BISのカタログが付いたSACDのため安かったので買いました。当時はこんなに安くSACDが購入できてよいのだろうかと思ったものです。安価だとありがたみがなくて,ついつい疎遠になってしまっていたのですが,これ,いい演奏ですね。ベザリーはもっと線の細いフルートというイメージがあったのですが,軽やかで小気味良くて耳に心地よい音色が素敵です。伴奏オケの音がやや大きいけれど,これが自然なバランスなのでしょう。そんなわけで,SACDによる滑らかな音質も嬉しく,良い買い物をしました。今さらですが。


なお,名盤の誉れ高いペーター・ルーカス・グラーフ(fl,指揮),ローザンヌ室内管弦楽団の1969年録音はLPで所有していますが,今はレコードを聴ける状態にないので今回は省略させていただきます。


一度書いた記事が全て消えてしまったので,もう一度書きました。
すごい時間の無駄!

ボロディン「だったん人の踊り」の名盤

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今後の数回(もしかしたら10回ぐらい)は,管弦楽曲の聴き比べをやりたいと思います。理由は特にないのですが,管弦楽曲というジャンルは,今やっておかないと,この先集中して聴くことができないような気がするのです。心の余裕があるうちに聴いておこうと思いまして。

しかし,このブログでまだ取り上げていない曲で,どれから手をつけようか迷っているうちに週末を迎えてしまいました。「組曲」は演奏時間が長いので単独曲。思いつきで次の曲にします。

アレクサンドル・ボロディン
歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」
(ダッタン人の踊り,韃靼人の踊り,ポーロヴェツ人の踊り)

序奏 Andantino, 4/4
娘達の踊り Andantino, 4/4
男達の踊り Allegro vivo, 4/4
全員の踊り Allegro, 3/4
少年達の踊りと男達の踊り Presto, 6/8
娘達の踊りと少年達の踊り Moderato alla breve, 2/2
少年達の踊りと男達の踊り Presto, 6/8
全員の踊り Allegro con spirito, 4/4

皆さんよくご存知の曲だと思いますが,以上の部分が切れ目なく続きます。組曲ではありませんよ~。

序奏に続く「娘達の踊り」の旋律は特に有名ですね。クラシック音楽の名旋律では,ロシア人作曲家のメロディが私には一番しっくりきます。

Polovtsian Dances with Chorus (from 'Prince Igor')
USSR Radio Large Chor/Klavdi Ptitsa, USSR Symphony Orchestra
Conducted by Svetlanov

Polovtsian Dances - Borodin - Berlin Phil - Seiji Ozawa


「だったん人の娘たちの踊り」+「だったん人の踊り」
(小澤征爾指揮 シカゴ交響楽団)

Gergiev with the Kirov ( Mariyinksky) Opera(オペラの場面)


背ラベルに「だったん人の踊り」と書いてあるわけではないので探すのが大変でしたが,以下のCDが見つかりました。チェクナヴォリアン指揮のCDも持っていたはずなのですが,どこへいったのやら。



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ジョージ・セル指揮
クリーヴランド管弦楽団
SONY CLASSICAL 1958年2月
クリーヴランド,セヴェランス・ホール

「序奏」の木管楽器の巧さが耳を引きつけます。続く「娘達の踊り」はやや早めのテンポですが情感はたっぷり,「男達の踊り」はクリーヴランド管のアンサンブルの見事さに聴き惚れ,「全員の踊り」の響きの充実,「少年達の踊りと男達の踊り」で再びオケの技術に魅了され,「娘達の踊りと少年達の踊り」のセルの歌心に惹かれ,「少年達の踊りと男達の踊り」から「全員の踊り」では,管弦楽曲を聴く醍醐味を十分味わうことができます。見事なものです。この曲は,ちょっと泥臭いところがあって,私はこの曲のそういうところが好きなのですけれど,このように洗練されている演奏も素敵ですね。後年のベートーヴェンやブラームスよりも録音が優れているようようで,とりあえず良い音で聴けてよかったです。


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アンドレ・クリュイタンス指揮
パリ音楽院管弦楽団
EMI CLASSICS 1959年9月
パリ,サル・ワグラム

「だったん人の娘たちの踊り」と「だったん人の踊り」との組合せバージョン。ダイナミックレンジはさほどではないのですが,意外に鮮明なステレオ録音です。「全員の踊り」の打楽器群など迫力があって聴き映えがしますし,全体を通じてさすがクリュイタンスは聴かせ上手だと思いました。ところどころ縦の線が揃っていないような気もしますが,それもご愛嬌として,このCDはなかなか魅力的です。この曲に求めたい土臭さは程ほどですが,お洒落で洗練されていて,高級レストランのデザートに舌鼓を打つような趣もあります。食べたことありませんけれど。ところで,私が持っているCDに収録されているムソルグスキーやリムスキー=コルサコフはいずれもステレオ録音ですが,某オンラインショップではモノラルと表記されています。


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ジョルジュ・プレートル指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1960年頃

フランスの長老(?)指揮者,ジョルジュ・プレートルは1924年生まれですから,この録音当時はまだ36歳の若さです。この人の場合,年齢を重ねても音楽が瑞々しく,老成しない印象がありますが,この演奏もイキがよいです。音楽づくりが若々しくてピチピチしています。クリュイタンス盤も録音は良かったのですが,1年後(?)のこちらはさらに鮮明・鮮烈な音質で,全く50年以上前の録音とは思えません。マスターテープの保存状態が良かった(人気がなくて使用されなかった?)のか,劣化しているように聴こえないのです。劣化が進むと,埃っぽい音,輪郭のぼやけた音になってくるのですが,デジタル録音に近い印象がありますね。演奏以上に音質に驚いてしまいました。


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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Deutsche Grammophon 1970年12月・71年1月
ダーレム,イエス・キリスト教会

「だったん人の娘たちの踊り」と「だったん人の踊り」との組合せバージョン。カラヤンはフィルハーモニア管弦楽団(モノとステレオ)とベルリン・フィルとでこの曲を3回録音していますが,いずれも「だったん人の娘の踊り」を加えています。それで演奏なのですが,まぁ,何と申し上げたらよいのか……。聴く前からおそらくそうだろうとは思っていたのですが,「だったん人の踊り」の序奏が始まったとたんに鳥肌が立ちます。フルート巧すぎ。まさに圧倒的な演奏。何を言ってもしょうがない。
この時期のベルリン・フィルですから,最高に贅沢なサウンドなのですが,私の嗜好でいうと,特にティンパニが嬉しい音を奏でてくれます。
また,私が持っているCD(OIBPリマスター盤。画像はオリジナル盤のジャケットなので違います)は,計8つのトラックが切ってあるのでとても便利。なんて親切なCDなのでしょう。
少しでも良い音で,オリジナルのカップリングで聴きたいので,SACDを購入することにしました。このような演奏のためなら,少しぐらいお金がかかってもいいんです。


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ヴァレリー・ゲルギエフ指揮
サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団
サンクトペテルブルク・キーロフ合唱団
PHILIPS 1993年4月
オランダ,コンセルトヘボウ

聴き比べの最初にカラヤン盤を聴いてショックを受けてしまったので,次にどれを聴こうか迷いましたが,ゲルギエフを聴きました。合唱付きです。先程ご紹介したYouTubeの動画は,合唱が粗っぽいのですが,この合唱もまぁまぁというところでしょうか。ゲルギエフという指揮者,個人的には期待を裏切られることがあるのです。ゲルギエフならではのアプローチを期待したいのですTが,この「だったん人の踊り」は良いですね。オーケストラの分厚い響きがいかにもロシアっぽく,演奏も結構熱っぽいので,聴いていて血湧き肉躍るものがあります。「全員の踊り」での打楽器(ティンパニと大太鼓)を動画ほど派手に鳴らしてくれたらもっと満足できたのだけれど,旋律もよく歌わせているし,合唱付きの演奏で新しめの録音ということであれば,このCDなどよろしいのではないでしょうか。



イベール「寄港地」の名盤

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フランスの作曲家,ジャック・イベール(1890―1962)が32歳のときに書いた作品で代表作。イベールでよく聴かれているのは,他に「ディヴェルティメント」「フルート協奏曲」でしょうか。日本の皇紀2600年奉祝曲として書かれた「祝典序曲」(山田耕筰の指揮で1940年12月に東京歌舞伎座で初演)もありましたね。

寄港地」のような作品は,解説があったほうがとっつきやすいので,ウィキペディアからコピペしてみます。

ジャック・イベール
交響組曲「寄港地」(Escales, 3 Tableaux Symphoniques)
第1曲「ローマ ― パレルモ」
6/8拍子。緩やかに。ローマを出航し、地中海をシチリア北岸の港パレルモへと向かう航海の描写。弱音器をつけた弦楽合奏で開始され、フルートが海の情景を描きだす。音楽が徐々に高まるとトランペットがタランテラを導入し、南国の喧騒の情景が描かれる。南国の喧騒が静まると、冒頭の海の情景が回帰し、曲を閉じる。

第2曲「チュニス ― ネフタ」
7/4拍子(4/4拍子と3/4拍子が交代)。リズミカルな中庸の速度。ティンパニとコル・レーニョやピッツィカートを交えた弦楽の伴奏に乗せて、終始オーボエがアラビア風のエキゾチックな旋律を自由に展開しつつ奏でる。チュニジアの港町チュニスから、南の奥地の町ネフタへ向かう旅の情景。

第3曲「バレンシア」
3/8拍子。活気をもって。打楽器を交えた、色彩豊かなスペイン舞曲セギディーリャスのリズムに乗せて、多彩な主題が登場する。中間部での弛緩を経て、曲は再び活気を増し、交錯する主題のなかで激しさと興奮を加えて全曲が閉じられる。スペイン東部の港町バレンシアの情景である。


こういうのを読むと,どんな音楽だろう,聴いてみたい!という気持ちになりますよね? じゃあ,聴いてみましょう。

Escales ("Ports of Call")/Ibert/Leibowitz/Pt.1
(第1曲「ローマ ― パレルモ」)

Escales ("Ports of Call")/Ibert/Leibowitz/Pt.2
(第2曲「チュニス ― ネフタ」と第3曲「バレンシア」)

はい,いかがでしたか。解説どおりでしたでしょうか。私は初めて聴いたとき,ドビュッシーやラヴェル,ファリャが混じってる!と思いました。

それでは,CDを購入したいと思った貴方様のためにお薦めのご紹介です。



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シャルル・ミュンシュ指揮
ボストン交響楽団
RCA 1956年10月

曲想がミュンシュに合っていると思うのです。第1曲は冒頭から熱い風が吹いてくるみたい。オーケストラの響きも厚いです。もう少し繊細さが欲しいような気もしますが,悪くないですね。タランテラはミュンシュらしく豪放で爽快です。第2曲は申し分ない出来,第3曲はややリズムが重たく,小気味良さを求めたくなります。全体に古い映画音楽を聴いているみたいな雰囲気がありました。それはどの演奏にも言えることなのですけれど,この演奏は録音が古いだけに,一層その感があります。
ところで,この演奏を購入する場合,SACD化されているサン=サーンスとのカップリングより,ドビュッシーとのカップリングのCDのほうが音が良いような気がするのですけれど。いずれにせよ,少しもっさりした音ですがステレオ録音なのはありがたいですね。


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ポール・パレー指揮
デトロイト交響楽団
Mercury 1962年3月

この曲の初演は1924年1月6日,ポール・パレー指揮コンセール・ラムルー管弦楽団なのです。初演指揮者による演奏ということで有り難味がありますが,実際大変見事なものです。冒頭の数小節を聴いただけで名盤の予感がする,そんな演奏です。この曲のスペインっぽい部分,これをパレー指揮ほど「らしく」演奏した例はないと思います。どこを取ってもこれ以上の演奏はないと思わせる理想的な名演なので,これ1枚の紹介でよいのではないかと考えます。第3曲など「鮮やか」のひと言に尽きます。

録音は定評あるマーキュリーだけに,大変リアルです。やや硬質な音づくりですので,古いスピーカーで聴くと楽しめます。

ところで,マーキュリー・リヴィング・プレゼンス・コレクターズ・エディション2(55枚組)は,玉石混交のBOXですが,ポール・パレー指揮の演奏を8枚も含んでいるのは魅力的です。それだけのためにこのBOXを購入しても高くないお値段です。おまけに47枚付いてくると思えばよいのかも(?)


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ジャン・マルティノン指揮
フランス国立放送管弦楽団
EMI CLASSICS 1974年10,11月

マルティノンは,EMIに「祝典序曲」「寄港地」「架空の愛へのトロピズム」,DECCAに「ディヴェルティメント」を録音していまして,いずれもイベール好きには大切な録音でしょう。EMIの,よくいえば全体の雰囲気重視の録音のせいもあり,この曲がフランスの作曲家の手による作品であることを最も感じさせる演奏です。ゆえにこの曲のテンポが遅い部分は,ねっとりとした歌い方が魅力的なのですが,早い部分は少々歯切れが悪く,鈍重な印象があります。パレーの演奏は青空が広がっていたけれど,この演奏は太陽が低く,もやがかかっているように感じます。だからといって切り捨てるのが惜しいのは,この演奏には独特な品格のようなものがあるからでしょうか。この曲,安っぽく演奏されそうな作品なので。


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シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団
DECCA 1992年5,10月

演奏によってかなり印象が異なる曲なのですが,デュトワはとても小さな音で始めるのですね。全体にすごく上質な感じがします。どれを聴いてもデュトワとモントリオール響の演奏は非常に水準が高く,録音も優秀なので,迷ったらデュトワを買ってくださいと言いたくなってしまう……。反面,どれを聴いても同じような演奏(サウンド)であるような気がしないでもありません。そうはいうものの,新しめの録音でイベールの作品をまとめて聴きたいという人には格好のCDです。パレー盤の次にこのCDをお薦めします,でも,輸入盤は廃盤,国内盤は在庫限りのようですので,見つけたらすぐ購入してくださいね。デュトワ/モントリオール響のCDって,結構廃盤が多いのです。


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佐渡裕指揮
ラムルー管弦楽団
NAXOS 1996年4月

初演オーケストラによる演奏です(よね?)。
これは、僕が17年間、首席指揮者を務めた、ラムルー管弦楽団との最初の録音で、僕が自分で音源を家に持ち帰り、自ら編集した、特別に思い入れが強い録音です。そして、毎回こうした斬新なレパートリーで、パリの聴衆を熱狂させたことを、とても懐かしく思い出します。フランスで130年を超える歴史あるオーケストラと、京都出身のまだ若かった佐渡裕の共演をどうぞお聴き下さい!」と指揮者が書いていました。こういうのを読むと聴かなくちゃという気持ちになるでしょう?

このCDは発売直後に購入した覚えがあります。その頃から私は佐渡裕に目をつけていたわけですね(!)。でも,結構長い間,わが家ではお蔵入りしていたCDでありまして,今回久しぶりに聴いてみたのですが,感心しました。NAXOSの録音のせいもあるのでしょうが,実に気持ちのよい演奏です。細かく聴くと,この部分は表現が洗練されていないとか,いろいろないこともないのですが,セッションとはいえ,指揮者の熱意,表現意欲が伝わってくる感動的な演奏です。



ユジャ・ワン&デュトワ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(2013年6月27日)

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2013年6月27日 (木) 19:00 開演 (18:30 開場)
サントリーホール
シャルル・デュトワ(指揮)
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ユジャ・ワン(ピアノ)

メンデルスゾーン: 序曲「フィンガルの洞窟」作品26

ショパン: ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
 第1楽章 Allegro maestoso ホ短調 4/3拍子
 第2楽章 Romanze, Larghetto ホ長調 4/4拍子
 第3楽章 Rondo, Vivace ホ長調 4/2拍子
(ピアノ:ユジャ・ワン)

(20分間の休憩)

ドビュッシー:海 - 管弦楽のための3つの交響的素描
 1.海の夜明けから真昼まで
 2.波の戯れ
 3.風と海の対話

ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲
 1.夜明け
 2.無言劇
 3.全員の踊り

(アンコール)
ベルリオーズ:ハンガリー行進曲(ラコッツィ行進曲)

名曲コンサート! イギリスのオーケストラといえば,すぐ思いつくのはロンドン交響楽団,フィルハーモニア管弦楽団,ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団で,ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団はちょっとマイナーな印象がありますね。

なにかCDを持っていたかなぁとしばし考え,はっと思い出しました。初めてステレオを買ってもらったとき,おまけにもらったレコードが,ビーチャム指揮ロイヤル・フィルの「ペール・ギュント」(廉価盤)だったのを。あれは大好きな演奏でした。

デュトワは現代を代表する名指揮者の一人ですが,モントリオール交響楽団の音楽監督だった時代(1977-2002)が一番印象に残っています。現在は,ヴェルビエ祝祭管弦楽団の音楽監督とロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者・芸術監督が活動の中心なのでしょうか。そんなデュトワももう77歳になるんですね。時が経つのは早いです。



今日はユジャ・ワンとデュトワのサイン会がないのですが,CDをお買い上げの先着100名様はユジャ・ワンの直筆サイン入りカードがもらえるのです。ユジャ・ワンには4回サインをもらっていますし,彼女のCDは(DVDやBDも含め)全て持っていますので,今回はパスすることにしました。目の前でサインしてもらわなければ意味がないですもん。

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(とかなんとか言いながら。「お約束」ってやつです。)

メンデルスゾーン: 序曲「フィンガルの洞窟」作品26

ヴァイオリンの音が飛んで来ないのはLA席のせいでしょう。このブロックは演奏している姿がよく見えるので,その視覚的効果がとても魅力的なのですが,音響のバランスが悪いのです。片チャンネルの音が出ないステレオのようなもの(今回はチケット代をケチりましたから。)。そういうこともありまして,オーケストラの音が地味に聴こえます。名曲ですが,眠たくなってしまいました(隣の人は熟睡)。メンデルスゾーンの序曲って,繰り返しが多くて飽きる……。

ショパン: ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11

協奏曲を聴くときは,LA,RA,Pブロックのチケットを取ってはいけない。ピアノと自分の間にオーケストラが存在すると,ピアノの音がマスキングされて聴こえづらくなってしまうのです。耳をそばだたせて聴けば,変な反射音がない分きれいに聴こえるのでソロならよいのかも。そんなわけで,ホルンがうるさい。この曲に4本もホルンが必要なのか作曲者に抗議したくなりましたが,相変らずユジャ・ワンは巧かったです。しかし,絢爛たる技巧より節度あるルバートのほうが印象に残りました。ユジャ・ワンは意識してテンポを揺らさない演奏を心がけているのでテクニック至上の演奏家にように思われがちですが,けっこう歌心のある人なんです。本人も「音それ自体をとり出して、それが興味深いものかといえば,私にとってはそうじゃない。ピアノを歌わせようと努め,オーケストラのように響かせるようにすることが,ピアノの音を興味深いものに導くのだと思う」とKAJIMOTOさんのインタビューで語っていましたし。
第2楽章で,オーケストラの音が止んで,ピアノだけになる箇所があるでしょう。あそこはこの世のものとは思えないくらい,本当に美しかった。ユジャ・ワンで「夜想曲」を聴いてみたいものです。

ところで,開演前に一人でソロをさらっていた女性ファゴット奏者,大きな拍手をもらっていました。こういう人がいるオーケストラって,いいなって思いました。

盛大な拍手によりユジャ・ワンは何度もステージに呼び出されていましたが,アンコールはありませんでした。

20分間の休憩

ロビーで女の子達が「今日はだったね~」と盛り上がっていました。

ドビュッシー:海

ドビュッシーとかラヴェルが大好きなのですが,「海」を実演で聴くのは初めてです。それで,ドビュッシーの管弦楽法って,やっぱり面白いと思いました。ショパンの協奏曲とは比べ物にならないくらい大きな編成の曲なのですが,音の厚みや大きさより音色の組み合わせで聴かせる曲です。それを目で確認することができたのが楽しかったのです。ロイヤル・フィルが奏でる音は,なんだろう,ちょっとくすんだ(悪く言うとがさがさした)音色で,それはそれで「海」という曲には合っていたのだけれど,これがモントリオール交響楽団だったらもっと美しかっただろうなとも思ってしまいました。ヴォーン・ウィリアムズとか似合いそうな音色。でも,変な譬えですが,食べ飽きない味だったかもしれません。

Debussy [La Mer] - Mov.3 Myung-Whun Chung, Seoul Philharmonic

ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲

編成はさらに大きくなり,サントリーホールのステージが小さく見えます。打楽器だけで9人いたでしょうか。ドビュッシーに比べるとラヴェルはサービス精神があるというか,大編成ならではのサウンドを堪能させてくれます。打楽器に近い席なので,耳を覆いたくなるようなすごい音。「全員の踊り」って生で聴くと圧巻ですね。ロイヤル・フィルも「ダフニスとクロエ」に焦点を合わせていたようで,最もノリが良い開放的な演奏を披露していたのではないでしょうか。これが本領なのかもしれません。華やかさとか艶やかさ,精巧あるいは重厚なアンサンブルは譲るにしても,気持ちの良い演奏でした。最も心惹かれたのは「パントマイム」のフルート独奏(女性)で,このソロのおかげでぐっとロイヤル・フィルの株が上がったように思います。

Ravel Daphnis et Chloe - Danse generale

デュトワの指揮について全然書いてないのですが,ユジャ・ワンのピアノに耳を傾けているときに変なうなり声を上げんな!とか,そんなことはちっとも思わないのですが,音楽づくり,音のまとめ方がうまい人だと改めて思いました。聴いていて少しも違和を感じることなく音楽に没入することができます。曲の最後に振り下ろした手が大きな弧を描いて下手へ流れ,そのままコンサートマスターと握手するという芸当に大笑い。

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ヤナーチェク「シンフォニエッタ」の名盤

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ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」は,2009/6/3(水)に記事にしています。その年の5月29日に村上春樹「1Q84」が発売されたので,それに合わせて慌てて書いたのでした。「シンフォニエッタ」は,いずれ書き直したいと思っていたので今回やっちゃいますが,「1Q84」のどんな場面でこの曲が使われていたのか,今となっては全く思い出せません。

1Q84」のオープニングに,タクシーの車内でヤナーチェクの「シンフォニエッタ」を聴くという情景があるそうですが,そうでしたっけ? タクシーの運転手さんが「シンフォニエッタ」をかけたのでしょうか?

小説中に登場した音源は,セル指揮クリーヴランド管弦楽団小澤征爾指揮シカゴ交響楽団の録音だったということはどうにか記憶に残っています。

それにしても,なぜヤナーチェクの「シンフォニエッタ」なのだろう?

レオシュ・ヤナーチェク
シンフォニエッタ

1. ファンファーレ:アレグレット
2. 城(ブルノのシュピルベルク城):アンダンテ
3. 修道院(ブルノの王妃の修道院):モデラート
4. 街頭(古城に至る道):アレグレット:
5. 市役所(ブルノ市役所):アンダンテ・コン・モート

描写音楽じゃないので,各曲のタイトルに意味はないのですが,親しみをもっていただくためにあえて記してみました。


【楽器編成】
フルート4(うち1つがピッコロと持ち替え),オーボエ2(うち1つがイングリッシュホルンと持ち替え),クラリネット2,小クラリネット1,バスクラリネット1,ファゴット2,ホルン4,トランペット12(F管3,C管9),バストランペット2,トロンボーン4,テノールチューバ2,チューバ1,ティンパニ,シンバル,鐘,ハープ1,弦楽五部

Janacek : Sinfonietta (mvt. 1 et 2)
(Czech Philharmonic Orchestra, Karel Ancerl)

Janacek : Sinfonietta (mvt. 3 et 4)
(Czech Philharmonic Orchestra, Karel Ancerl)

Janacek : Sinfonietta (mvt. 5)
(Czech Philharmonic Orchestra, Karel Ancerl)

Leos Janacek Sinfonietta WDR-Sinfonieorchester (2007)
(WDR Sinfonieorchester (2007) Jukka-Pekka Saraste)


それでは聴き比べです。
第1曲と第2曲の曲間が長いとしらけます。レコード会社さんは気をつけてください。


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カレル・アンチェル(指揮)
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
SUPRAPHON 1961年5月
プラハ,ルドルフィヌム

ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」で一番好きな録音です。今回改めて聴き比べてみましたが,アンチェル/チェコ・フィル盤がダントツで好きです。
第1曲の金管は土臭い香りがします。時代を考慮すると優秀な録音で各パートのかけ合いがこれ程はっきり聴き取れる演奏も珍しく,とても楽しいです。第2曲も良いテンポで切れ味抜群。情緒も不足していないし,どこもかしこも理想的な表現でこの演奏が最高。ちっとも退屈しないし,時間が経つのが早く感じられます。こういう演奏ができるアンチェルは本当に素晴らしい指揮者だと思うし,それに応えることができるチェコ・フィルも立派です。このオーケストラのほの暗くくすんだ響きが曲にマッチしていて第3曲も素晴らしいですね。テンポの伸縮が実に自然で効果的。チェコ・フィルってこんなにコクのある響きをもったオーケストラだったっけ(失礼)とさえ思ってしまいます。第4曲・第5曲も同様。
このような薫り高い演奏を聴いてしまうと,やっぱり本場物ってあるんだなと実感します。


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ジョージ・セル(指揮)
クリーヴランド管弦楽団
SONY CLASSICAL 1965年10月
クリーヴランド,セヴェランスホール

セルはハンガリー出身(母親はスロヴァキア人)なので,普段は整然とした演奏をする人なのだけれど,チェコ,スロヴァキア,ハンガリーの作曲家に対しては強い共感をもって民族色豊かな演奏をするという記述をたまに見かけます。それを期待しすぎると裏切られることがあるセルの指揮ですが,さて,ヤナーチェクはどうでしょう。
第1曲はゴツゴツした独特な演奏で,非西欧的な感じがユニークです。第2曲はテンポや表情の変化づけが魅力的ですが,やや重厚で,小気味良さも求めたくなります。第3曲は厚みのある弦の響きに木管やハープが美しい。精緻な演奏ですが,たまにセルの唸り声も聞こえます。でも,情熱はあくまで心の裡に秘めた内面的な演奏。第4曲もアンサンブルを徹底的に磨き上げた演奏ですが,ときおり聴かせる懐かしい歌がホロリとさせます。全体に木管楽器がよく聴き取れる録音なので,それが第5曲でも効果的。クリーヴランド管弦楽団の卓越した合奏能力をしっかり堪能することができますが,でも,それだけではありません。こういう演奏について書くのは難しいのだけれど,両極端の性格を神業で融合させた稀有な例とでも表せばよいのでしょうか。
村上春樹の「1Q84」で青豆が購入したのはこのレコードだそうです(覚えていない!)。


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小澤征爾(指揮)
シカゴ交響楽団
EMI CLASSICS 1969年6,7月
シカゴ,メディナ・テンプル

小澤征爾は1935年9月生まれですから34歳のときの録音でしょうか。若いですね!
シカゴ交響楽団ですから金管がバッチリ。第1曲の安定感は比類ありません。第2曲も良いテンポです。楽譜に書かれている内容を余すところなく再現することにかけて最高の指揮者とオーケストラの組み合わせかも。第3曲も名人集団オケが難所をものともせず余裕たっぷりに演奏してくれちゃいます。録音もそこそこ良いし,文句ないです。第4曲も同様。第5曲のラストは再びシカゴ響ご自慢のブラスセクションによる壮麗なファンファーレ。
それでは当盤が「シンフォニエッタ」の決定盤かというと,うーんどうでしょう。何か欠けている気がします。ローカル色? 洗練され過ぎている? 譜読みの段階で浄化され過ぎて旨味が失せてしまったような。でも,併録のルトスワフスキ「オーケストラのための協奏曲」が素晴らしい演奏なので,これは買って損はないCDです。初めて「シンフォニエッタ」を購入されるなら,このCDは良いかも。
なお,「1Q84」で天吾がかけたレコードのはこの演奏だったそうです。そうでしたっけ?


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ラファエル・クーベリック(指揮)
バイエルン放送交響楽団
Deutsche Grammophon 1970年5月
ミュンヘン,ヘルクレスザール

今回聴き直してみて一番印象が変わった録音です。もっとスマートな演奏というイメージがあった(実はまり聴いていなかった)のですが,1曲目のぶっきらぼうで粗野,土臭さを感じる響き,2曲目はスピード感と野趣にあふれ,3曲目の懐かしい豊かな歌と溢れる思いを抑えきれない激情,4曲目は早めのテンポでこれも感興豊かな演奏。表面的な美しさより感情表現を重視していますね。5曲目は集大成的な演奏で,これもローカル色豊かで共感溢れた演奏だと思います。アンサンブル上の瑕疵には目もくれず,音楽の流れ,勢いを重んじた演奏とも言えます。クーベリックの録音はどちらかというと冷静で抑制された演奏が多いと思うのですが,このヤナーチェクは感情の赴くままに演奏していますね。クーベリックは(スメタナより)ヤナーチェクと最も相性がよいのかも。仕上げの面ではかなり荒っぽい(リハーサル不足?)ところもありますが,私には魅力的な演奏でした。


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サー・チャールズ・マッケラス(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
DECCA 1980年3月
ウィーン,ゾフィエンザール

マッケラスはヤナーチェクの権威ですし,オケは名門ウィーン・フィルですので,悪かろうはずがありません。この録音でもマッケラスはヤナーチェクの自筆スコアをあたり,かなりの箇所を原典に戻しているのだそうです。「シンフォニエッタ」を愛する人の必携盤ともいえる録音でしょう。私の蒐集歴の中でも,このCDは結構早い段階で入手しています。以来,これ1枚で満足してしまったので,その他のCDは近年購入したものばかり。改めて聴いてみて,やっぱりこの演奏はいいなと思いました。
第1曲はアンチェル盤と並んでこの演奏が一番好きです。第2曲以降はもっと鮮烈でぐいぐい切れ込んでいく印象があったのですが,こうして聴き比べてみるとローカル色に寄りかからない,割と抑制されている演奏だったのですね。それでも,ウィーン・フィルの音色には抗い難い魅力があり,第3曲(ヴィオラ・ダ・モーレを使用し,ピッコロは1オクターヴ上げている)などうっとり聴き惚れてしまいます。なお,チェコ・フィルとの再録音(ライヴ)は未聴。


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クラウディオ・アバド(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Deutsche Grammophon 1987年11月
ベルリン,イエス・キリスト教会

第1曲は,金管セクションの立派な響きに感心するものの,若干品が良過ぎるなぁと思っていたら,後半に向かって次第に盛り上げていくアバドの巧みな演出に脱帽。第2曲目以降も概ねそのような印象で,ベルリン・フィル(この頃はカラヤン時代)が非常に巧く,どこもかしこも余裕でこなしています。カラヤンがこの曲を指揮したら,おそらくこのような演奏になったでしょう。
そのようなわけで,この曲のローカル色をあまり感じさせない,とても美しく叙情的で高雅な演奏なのですが,その分ワクワク・ドキドキ・ハラハラ感は後退していて,私のような俗っぽい人間は欲求不満を感じてしまいます。ある意味,地味な演奏なのかもしれません。
なお,ロンドン交響楽団との旧録音は未聴です。


また,この曲で今一番聴いてみたいのはマイケル・ティルソン・トーマス指揮のロンドン交響楽団(SONY CLASSICAL 1992年)の録音ですが廃盤です。カップリング曲がいけなかったのでしょう。残念!

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追記:セル盤のCDジャケット画像を間違えていたので差替えました。(2013.07.04)


ロッシーニ「序曲集」の名盤

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湿度が高い毎日が続いていましたが,関東・甲信越地方は7月6日に梅雨が明けたそうで,昨日今日と猛暑が続いています。梅雨明け十日といって気候が安定し(晴天が続き),アウトドアに適した季節なのですが,あまりの暑さに家でじっとしています。

記事を書こうという気力も全く起きませんが,ちょっと頑張って書いてみます。曲はロッシーニ。イタリアは湿度が低くて夏でも(日陰は)涼しいそうですから,それが理由。

それで,ロッシーニの序曲集を片っ端から聴き始めたのですが,ロッシーニの序曲ってどれだけあるかご存知でしょうか。ネヴィル・マリナーがロッシーニ序曲全集を録音していますので収録曲をご紹介しますね。

マリナー/アカデミー室内管(1974年~1979年)
ジョアキーノ・ロッシーニ序曲全集
01.「ウィリアム・テル」序曲
02.「コリントの包囲」序曲
03.「チェネレントラ」序曲
04.「どろぼうかささぎ」序曲
05.「婚約手形」序曲
06.「絹のはしご」序曲
07.「タンクレディ」序曲
08.「ブルスキーノ氏」序曲
09.「イタリアのトルコ人」序曲
10.「幸福な錯覚」序曲
11.「マホメット2世」序曲
12.「リッチャルドとゾライデ」序曲
13.「シンフォニア・アル・コンヴェンテッロ」序曲
14.「ボローニャのシンフォニア」序曲
15.「セミラーミデ」序曲
16.「ランスへの旅」序曲
17.「セヴィリャの理髪師」序曲
18.「アルジェのイタリア女」序曲
19.「ビアンカとファリエロ」序曲
20.「オテロ」序曲
21.「デメトリオとポリビオ」序曲
22.「エドゥアルドとクリスティーナ」序曲
23.「アルミーダ」序曲
24.「コロノスのオイディプス」序曲
25.「エルミオーネ」序曲
26.「トルヴァルドとドルリスカ」序曲

ロッシーニのオペラは全部で42作あるのでしたっけ。序曲全集が26曲なのは使いまわし(例:「パルミーラのアウレリアーノ」序曲→「イングランドの女王エリザベッタ」序曲→「セヴィリャの理髪師」序曲)が多いからなのでしょうか。

最もよく知られているのはなんといっても「ウィリアム・テル」序曲(の第4部「スイス軍の行進」)でしょう。その次は「セヴィリャの理髪師」序曲かな。

あと「泥棒かささぎ」序曲は村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」にも出てきますよね。スパゲティーをゆでるにはうってつけの音楽だという記述があって,それを読んで以来,スパゲティーをゆでるたびに「泥棒かささぎ」序曲を思い出してしまうのです。(小説に登場したのはアバド指揮ロンドン交響楽団でしたか?)

それでは聴き比べです。しかし暑いですね。



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クラウディオ・アバド
ロンドン交響楽団
Deutsche Grammophon 1971年,1975年

ロッシーニを得意とする指揮者としてまずアバドの名前が思い浮かびますが,このDG盤には「セヴィリャの理髪師」,「チェネレントラ」,「どろぼうかささぎ」,「アルジェのイタリア女」,「ブルスキーノ氏」,「コリントの包囲」序曲の5曲が収録されています。録音年が2つの年にまたがっているのは,「セヴィリャの理髪師」と「チェネレントラ」序曲は全曲盤の演奏だからでしょうか。「ウィリアム・テル」序曲が入っていないのが残念ですが,名盤の誉れ高いCDです。演奏については,この演奏を褒めるとそれはそのままロッシーニの音楽に対する賛美となるというような,お手本のような名演です。新鮮で小気味良くて切れ味・小回りが利いてよく歌う演奏。ちょっと小さくまとまり過ぎているようにも思いますが,ロッシーニだからこれでよいのでしょうね。


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クラウディオ・アバド
ロンドン交響楽団
RCA 1978年

この録音では,「セミラーミデ」,「絹のはしご」,「イタリアのトルコ人」,「セヴィリャの理髪師」,「タンクレディ」,そしてなぜかDG盤に収録されなかった「ウィリアム・テル」序曲が録音されています。「セヴィリャの理髪師」序曲がDG盤と重なっていますが,LP初出時には曲名が「イングランドの女王エリザベッタ」序曲と表記され,重複していないように見せていたとか。それで「セヴィリャの理髪師」を聴き比べてみたのですが,DG盤は録音がデッドなせいか堅苦しい感じがしたのですけれど,こちらのほうが録音が私の好みで,艶やかで広がりがあり,各楽器がはっきりと聴き取れます。情報量が多いのですね。Dレンジ・Fレンジ共に広さを感じますので,演奏も劇性が増しているようで聴き応えがあります。なお,アバドにはヨーロッパ室内管弦楽団との1989年録音(DG)もあり,残念ながらそちらは持っていないのですが,このRCA盤が好きです。

イメージ 3ネヴィル・マリナー
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
アンブロジアン・シンガーズ
PHILIPS 1974年~1979年

前述のとおりCD3枚に26曲を収録。ロッシーニファンは是非入手していただきたいCDです。曲数が多いだけででなく,演奏も録音も素晴らしいからです。26曲も演奏していると1曲1曲の演奏はそれほどの演奏でもないような気がするのですが,そんなことは全然なく,本当に素晴らしいのです。イタリア人の演奏より分析的というか理が優っているように感じられますが,そこが良いのです。ここでこの楽器が来てほしいと願う場所できちんとそれが聴こえてくるのは気持ちのよいものですし,マリナーの語り口が実に巧妙でほれぼれとしてしまう出来です。アカデミー室内管弦楽って,弦も管も本当に優秀ですね。3枚組というところにちょっと抵抗があるかもしれませんが,これはロッシーニ序曲(全)集では一番にお薦めしたいCDなのです。マリナーにも再録音盤がありますが,それは未聴です。


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リッカルド・シャイー
ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
DECCA 1981年,1984年

シャイーもロッシーニを得意とする指揮者で,特にチェチーリア・バルトリを起用している全曲盤はいずれもよく聴かれていますよね。ロッシーニ序曲集は,アバドのロンドン響に対抗するわけではありませんが,DECCAから1982年と1985年に2つのアルバムが発売され,現在では2枚組で入手できると思います。この2枚に収録されているのは,「ウィリアム・テル」,「ブルスキーノ氏」,「ランスへの旅」,「絹のはしご」,「どろぼうかささぎ」,「イタリアのトルコ人」,「アルジェのイタリア女」,「セヴィリアの理髪師」,「トルヴァルドとドルリスカ」,「結婚手形」,「オテロ」,「セミラーミデ」,「コリントの包囲」,「タンクレディ」の各序曲で,珍しい曲も含まれていますね。演奏の傾向はアバドによく似ていますが,もう少しほっそり(すっきり)していて情緒的な感じ。現代的でややクールな演奏でしょうか。良い演奏なのだけれど,求心力が他盤に比べてやや劣るような気がします。もう少し熱っぽさがあればと思うのですが,これがシャイーの持ち味かも。
シャイーには,スカラ座フィルハーモニー管弦楽団を指揮した1995年盤(DECCA)もありまして,そちらのほうが評判がよいみたいですが,私は持っていません。現在廃盤中……。


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シャルル・デュトワ
モントリオール交響楽団
DECCA 1990年

「ウィリアム・テル」,「セヴィリャの理髪師」,「ブルスキーノ氏」,「アルジェのイタリア女」,「チェネレントラ」,「どろぼうかささぎ」。「絹のはしご」,「セミラーミデ」の8序曲を収録。デュトワも巧ければオーケストラも巧い,そんな第一印象。選曲もこれだけは押さえておきたいという曲が入っていますし,これはなかなか良いCDですね。アバドやシャイーに比べると湿度感が高いというか,しっとり感があってその上で劇性が構築されているような演奏。能天気なロッシニーはイヤだという人にはお薦め。アバド以上によく歌っていますし(モントリオール響の木管が美しい),洒落ていますよ。逆にちょっとじめじめしているところもあるので,もう少しカラッと晴れたロッシーニを好む人には違和感があるかもしれませんね。でも私はしっとり系が好きなので,この演奏は好きです。美しいなぁと思う。


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ヘルベルト・フォン・カラヤン
フィルハーモニア管弦楽団
EMI CLASSICS 1960年

「どろぼうかささぎ」,「セヴィリャの理髪師」,「アルジェのイタリア女」,「絹のはしご」,「ウィリアム・テル」,「セミラーミデ」の6序曲を収録(CDによって曲順が変わっています)。LPではこんなもんだったけれど,CDだと曲数不足の感は否めませんね。これは初めて入手したロッシーニですが,買ったのではなくて先生の家から(勝手に)もってきてしまったLPだったと思います。アビーロード第1スタジオとキングズウェイホールの録音が半々ずつぐらいでしょうか。「セヴィリャの理髪師」序曲は後者ですね。序曲の後にオペラが始まりそうな雰囲気があります。少し残響が多くてしっとり感がありますが新しい録音に比べるとやや分離が悪いので,よくいえば重厚,悪くいえば鈍重な印象もありますね。でも,どこか懐かしいし気分がしますし落ち着きます。


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ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Deutsche Grammophon 1971年

イエス・キリスト教会での録音。収録されているのは,「どろぼうかささぎ」,「絹のはしご」,「セミラーミデ」,「セヴィリャの理髪師」,「アルジェのイタリア女」,「ウィリアム・テル」で,フィルハーモニア管弦楽団との録音と曲順は異なりますが曲目は一緒です。大好きな「アルジェのイタリア女」序曲から聴き直してみたのですが,木管楽器のあまりの巧さに開いた口がふさがらないです。もう少しカラッと軽やかな演奏のほうがロッシーニらしいと思うのですが,まぁ,なんというか,すごいです。このアルバムで最も素晴らしいのは「ウィリアム・テル」序曲で,第1部「夜明け」冒頭のチェロを聴いただけで,これが最高の演奏だと断言できてしまいます。ベルリン・フィルのトゥッティが凄まじい第2部「嵐」,コーラングレとフルートが耳にご馳走な第3部「牧歌」,そして第4部の「スイス軍の行進」の巧さなど,開いた口がふさがらないというか。最近ではスッペの序曲集とセットで販売されることが多いアルバムですが,そちらも素晴らしい演奏(曲は飽きるかも?)ですよ。


シベリウス「フィンランディア」 カラヤン5種の聴き比べ

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好きな作曲家にジャン・シベリウス(1865年-1957年)の名をあげる人は多いと思います。私も定評あるシベリウス交響曲全集が安価で売られているのを見ると,ついつい手を伸ばしてしまいます。

しかし,クラシック音楽を聴き始めた頃は,どちらかというとシベリウスは好きな作曲家ではありませんでした。肌触りが違うというか,空気のにおいが異なるというか,違和感を感じていました。

最初から好きだったのは,「カレリア」組曲 作品11。小学生のとき,子供用に書かれた「カレワラ物語」を読んでいたので,親近感があったのでしょうね。

逆に苦手だったのは,シベリウスの最も有名な作品,交響詩「フィンランディア」作品26です。特に「闘争への呼びかけのモチーフ」っていうんですか,あのリズムが苦手でした。なんか,しつこいんだもん。

ジャン・シベリウス
交響詩「フィンランディア(Finlandia)」作品26
(1899年作曲 1900年改訂)

この曲は2つの序奏三部形式により構成されているそうです。以下,ウィキペディアの解説をところどころコピペしつつの手抜きな楽曲紹介。

序奏① (Andante sostenuto)
金管楽器による嬰ヘ短調の重苦しい序奏で幕を開ける。嬰ヘ短調だが、調性ははっきりしない。その後木管による甲高い悲痛と弦楽器・ティンパニの重苦しい響きが交錯する。

序奏② (Allegro moderato)
ハ短調の緊迫したこの部分では、ティンパニのトレモロに乗って金管楽器群がこの曲の核となるリズムを予告(譜例参照)し、緊迫感が高まる。そして、この後に入って来るクラッシュシンバルにより闘争のイメージをより一層高まらせる。
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例のリズム(ウンッパ|パパパパ|パッパッ|ウンパッ)が登場します。

主部A (Allegro)
曲調は一転して、変イ長調の快活な主部となる。
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ディヴィジされた弦が奏する例のリズムに乗って,トライアングルが登場する場面が好き。

主部B
何の説明も要らない,非常に有名な旋律(フィンランディア賛歌)が登場します。
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ミレミファ~ミレミドッレレミ~。

主部A
に戻ります。熱狂的な盛り上がり(お祭り騒ぎ)の中,フィンランディア讃歌をフォルティッシモで総奏して幕を閉じます。

それでは聴き比べです。


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ヘルベルト・フォン・カラヤン
フィルハーモニア管弦楽団
EMI CLASSICS 1952年7月29~31日
ロンドン,キングズウェイ・ホール
(モノラル録音)

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ヘルベルト・フォン・カラヤン
フィルハーモニア管弦楽団
EMI CLASSICS 1959年1月5,6日
ロンドン,キングズウェイ・ホール
(ステレオ録音)

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ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Deutsche Grammophon 1964年10月28日
ダーレム,イエス・キリスト教会
(ステレオ録音)

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ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1976年9月
ベルリン,フィルハーモニーザール
(ステレオ録音)

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ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Deutsche Grammophon 1984年2月19,24日
ベルリン,フィルハーモニーザール
(デジタル録音)


カラヤンが再録音を繰り返している曲は,まずカラヤンのどの録音が一番よいかというところから始めなければならないので面倒なのですが,カラヤン指揮の「フィンランディア」は,以前から聴き比べてみたいと思っていたので,挑戦してみたいと思います。

①(1952年録音 9分13秒)
これは録音も古いし,あまり期待しないで参考程度というつもりで聴き始めたのですが,よかったです。聴いているうちにモノラルということがあまり気にならなくなる良い録音だと思います。情報量は後の録音に比べると少ないのですが,それが幸いしてか,演奏の密度が濃い感じがするのです。大事な部分がきちんと聴こえてくる感じ。だから,演奏が伝わってくるものが多くて素直に感動できます。この熱気をはらみ,かつ清々しい演奏は,録音の古さを超えて十分魅力的です。うん,いい演奏だし,いい録音だ。
ところで今回,1950年代のカラヤン/フィルハーモニア管の録音ですが,マスターテープを所蔵するEMI製作のCDと,盤起こし(LP初期盤を用いて復刻)をしたCDを聴き比べてみたのですが,前者のほうが圧倒的に良い音質ですね。

②(1959年録音 8分59秒)
これは①と同じ交響曲第5番とのカップリングで,ステレオ録音での録り直しです。録り直しといっても全開から7年経っていますので再録音というべきでしょう。演奏から受ける印象はだいぶ異なります。①はもっと直情的だったと思うのですが,こちらはもう少し冷静で叙情的な演奏。丁寧に仕上げているという感じ。これだけ聴けばよい演奏だとも思うのですが,①を聴いた直後だと,どうしても物足りなく感じます。音に広がりのあるステレオ録音だからというわけでもないのでしょうが,なにか散漫な印象を受けるのです。

③(1964年録音 9分30秒)
オーケストラがベルリン・フィルに変わります。冒頭の荘重で分厚い金管からして名演の期待が高まります。続く木管も弦もフィルハーモニア管より一枚上手ですし,カラヤンの意図を奏者がよく反映しているように感じます。序奏は粘りますが,この重苦しい表現は曲によく合っていると思いますし,主部とのコントラストが明快でわかりやすいです。リズムの切れと鋭さは申し分ないし,旋律はカラヤン流の音価を十分に保ったレガートな表現で,より豊かな歌を聴かせてくれます。引き締まった筋肉質の演奏。

④(1976年録音 9分46秒)
レーベルが再びEMIです。オーケストラは同じでも,録音会場がイエス・キリスト教会から本拠地フィルハーモニーザールに変わりました。序奏の金管はさらに威力をアップし,録音のせいもあって③より豪華なサウンドです。金管だけでなく木管楽器もかなり明瞭に録音されていて,5種類の録音の中ではかなりグラマラスな演奏という印象があります。カラヤンの解釈は基本的に前3つの録音と変わっていないのですが,録音が進化しているせいで印象が異なるのです。私は,カラヤン/ベルリン・フィルのシベリウス「フィンランディア」を聴くのであれば,この1976年のEMI録音が最も良いのではないかと思っていたのですが,こうして聴き比べてみると若干外面的な効果が強調された録音ではあるものの,③と並んで聴いていただきたい演奏だと改めて思いました。

⑤(1984年録音 9分26秒)
実はこの録音もあまり期待していなかったのですが,よい演奏ですね。表現がより自然となって聴きやすくなりました。押しつけがましさがなく,かといって②のように物足りない演奏でもないので,一般的にはこの演奏がお薦めかもしれません。カラヤンらしさ,壮年期の覇気を重んじるのであれば③や④を選ぶべきですが,最も洗練されているのはこの⑤かもしれません。そして最も感動的なのは①,かな?

Sibelius:Finlandia Op26 Karajan

ヘルベルト・フォン・カラヤン Karajan
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
ベルリン,フィルハーモニーホール
(1976年10月16日ライヴ録音※)
※1ヵ月前のEMIと全然趣が違う興味深い録音。

さて,カラヤン以外の名盤を代表して次のCDをご紹介します。
シベリウス・ファンだったら皆さんお持ちでしょうから,改めてご紹介する必要はないような気もするのですが。

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サー・ジョン・バルビローリ
ハレ管弦楽団
EMI CLASSICS 1966年1月
ロンドン,アビーロード・スタジオ

8分32秒。序奏のエネルギー感が凄まじくて圧倒されます。ハレ管弦楽団ってあまり上手でない演奏をすることもあるのですが,この演奏は良いですね。カラヤンに比べると,序奏の後半でいきなりテンポが早くなるので驚きます。そのままなだれ込むように突入する主部Aも情熱的・熱狂的で興奮させられる演奏。私にとってバルビローリは温厚なイメージがある指揮者で,そのような意味では例の「フィンランディア賛歌」など実に暖かみのある歌を聴かせてくれるのですが,それ以外は結構積極的でした。素晴らしい演奏です。カラヤンとどちらが良いかといわれたら,その時々の気分次第ですとお答えします。
今回の試聴はSACDで行ったのですが,持っていた2枚のCDと聴き比べると,格段に音質が良くなっています。少々高くてもSACDをお薦めします(SACDの再生環境があれば,の話ですが)。バルビローリの唸り声もよく聴こえますよ。



今週のひと(り)ごと 250715

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7月12日(金)
知人が出演する演奏会に出かけました。場所は「すみだトリフォニーホール」。小ホールは初めてだったので入口を間違えて迷った(汗) 全曲打楽器の二重奏で現代音楽ばかりだから途中で寝てしまうかなと思ったけれど,しっかり全曲聴かせていただきました。やっぱり打楽器はイイですね。本能に訴えてくるものがあります。なんであんなに速く叩けるんだ?って思いました。

これ以上は理由があって詳しく書けないのですが,良い娘たちなので,演奏会があったら聴きに行ってあげてください。一応,リンクだけ貼っておきますね。



7月13日(土)
お気に入りの録音は少しでも良い音で聴きたいということで,少し前にこれを買ってみました。これは,Blu-ray Audio (24bit/96k)です。

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このディスクには、24bit/96kの高音質音声データが収録されており、ブルーレイ・プレーヤーで再生することにより、高音質な再生が可能となっております。動画などは収録されておりませんが、音声信号やトラック選択には、接続されたテレビ・モニターが必要となります。ブルーレイディスク対応機器で再生できます。
ブルーレイ・レコーダーから同軸でSACD/CDプレーヤーにデジタル出力したのですが,96kHzでなく48kHzになっちゃう。著作権保護がかかっているからかな。

だから,ブルーレイ・レコーダーからアンプにアナログ接続して聴いたほうが情報量が多いような気がします。気がすると書いたのは,それ程大きな差ではなかったから。ブラインドで試聴したら区別つかないと思う。でも,CDよりはずっと良い音質でした。楽器の細かい音がよく聴き取れますし,聴き疲れしません。SACDシングルレイヤーよりは安価なので,将来性はあると思います。

7月14日(日)
連日の猛暑&熱帯夜でお疲れ&睡眠不足の私ですが,知人に誘われて芝居を観にいきました。この知人は,常にチケットを2枚取るらしいのですが,本命の人に一緒に行ってもらえないらしく,もう1枚が不特定の人間の手に渡ることになります。そういうことって,よくありますよね。ないか。

前にも書いたかもしれませんが,私は芝居が好きなんです。クラシック音楽のコンサートより観劇のほうが好きかもしれない。いや,そんなこともないか……。

ナイロン100℃結成20周年記念企画第三弾
ナイロン100℃ 40th SESSION

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わが闇」(再演)
2013年7月14日(日)13:30開演
下北沢 本多劇場
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:
 柏木立子:犬山イヌコ
 守口艶子:峯村リエ
 柏木類子:坂井真紀
 滝本悟:岡田義徳
 大鍋あたる:大倉孝二
 皆藤竜一郎:長谷川朝晴
 三好未完:三宅弘城
 守口寅夫:みのすけ
 柏木伸彦:廣川三憲
 柏木基子・飛石花:松永玲子
 志田潤:長田奈麻
 初老の男・カメラマン:吉増裕士
 田村・編集ライター:喜安浩平
 皆藤みどり・雑誌編集者:皆戸麻衣

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自分で取ったチケットじゃないから全然期待していなかったのですが,これはよかった,面白かった! 第1部と休憩挟んで第2部の長丁場だったのですが,全然苦痛じゃなかったです。こんなことを書いたらすごく失礼だと思うんですが,ストーリー自体は大したことない。テンポがよいのですね。シリアスな場面が連続するとストレスが溜まって疲れちゃうのですが,軽いギャグがちょうどよいタイミングで入るんです。これがすごく気が利いていて心地よい。こういうのもアリなんだなって思いました。
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芝居の後の感想会は,渋谷の焼鳥屋(?)さんだったのだけれど,激しい雷雨に遭遇してお店に行けなくなりました。この季節は傘を持ち歩こう。

さて,芝居のチラシの中で,特に気を引いたのは,これ。

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何年かに一度上演される唐十郎(戯曲)×蜷川幸雄(演出)の「盲導犬」です。そのときどきの「旬の俳優」さんによって演じられています。

宮沢りえというと,今年の5月でしたか,三谷幸喜(作・演出)の「おのれナポレオン」で,ヒロイン役の天海祐希が急病で途中降板したため,宮沢りえが見事代役をつとめたというニュースは記憶に新しいところです。

私は残念ながらこのお芝居を観ることはできなかったのですが,たった2日間の稽古(徹夜状態?)で役を完全に自分のものにしてしまった宮沢りえは,なんてすごい女優さんなんだろうと感心しました。こういう芝居は万難を排して観に行かなきゃダメじゃん!って自分に言い聞かせました。

唐十郎の戯曲,蜷川幸雄の演出の「盲導犬」は,もうだいぶ以前に2度観たことがありますから懐かしいです。これは観たいなぁ。チケット屋さんからいっぱいメールが来るのに,こういうのに限ってお知らせがないのはどういうこと? 今からでも取れるのかな。予定枚数終了だって。前述のSさんがチケットを2枚取っているそうなのですが,1枚譲ってもらえないでしょうかね。私と観にいったほうが絶対有意義な時間が過ごせると思うんですけれど?

10月には唐十郎×蜷川幸雄で「滝の白糸」も上演されます。

こちらはまだ間に合います(受付期間前)。戯曲自体は「盲導犬」より「滝の白糸」のほうが好きですし,蜷川幸雄の演出も数段素晴らしかったという記憶があります。こちらは自分でチケットを取ろう。

眠くなってきたのでこれから昼寝をします。今日も暑い。





バルトーク「弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽」の名盤【前編】

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ハンガリー生まれの作曲家,バルトーク・ベーラ・ヴィクトル・ヤーノシュ(1881年-1945年)は,20世紀を代表する作曲家ですが,あまり聴かれていないような気もします。そこで今回はバルトークの管弦楽曲にしようと考えたのですが,彼の管弦楽曲でCDに収録されることが多い曲といえば,こんなところでしょうか。

バレエ「かかし王子」 (1914年-1916年、1931年改訂) Op.13 Sz.60
パントマイム「中国の不思議な役人」(1918年-1924年、1931年改訂) Op.19 Sz.73
舞踏組曲 (1923年) Sz.77
ハンガリーの風景 (1931年) Sz.97
弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽(1936年) Sz.106
弦楽のためのディヴェルティメント (1939年) Sz.113
管弦楽のための協奏曲 (1943年) Sz.116

おそらくこの中で最も人気がある曲は「管弦楽のための協奏曲」でしょう。でも,私の好みは「弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽」なので,今回は「弦チェレ」を取り上げたいと思います。

バルトーク・ベーラ
弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽 Sz.106
Music for Strings, Percussion and Celesta, Sz.106
 1. Andante tranquillo
 2. Allegro
 3. Adagio
 4. Allegro molto

まずこの曲名に惹かれました。なんだか楽しそうじゃないですか。楽器編成が面白いですよね。

弦楽器:
 第1グループ:第1,2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバス
 第2グループ:第1,2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバス
 それと,ハープ
打楽器:
 木琴,スネア付きドラム,スネア無しドラム,シンバル,タムタム,バスドラム,
 ティンパニ,ピアノ(←打楽器?)
チェレスタ

以上からも明らかなように,左右に2群の弦楽合奏を配し,中央にピアノ,チェレスタ,打楽器,ハープを置きます。そういう曲なので,ステレオ録音が優位であり,モノラルはちと苦しいです。

この曲は,20世紀に書かれた管弦楽曲の中でもトップ・クラスの名曲だと思うのですが,じゃあどこが素晴らしいかというと,血がざわざわ騒ぐものがあるというか,うまく書くことができないので,日本楽譜出版社さんの解説を勝手に引用しちゃいます。

ラの単音から静かにフーガが始まり、中央で数オクターブに渡るミのフラットが朗々と響き渡り最後は再びラの単音で音楽が消えていく、という鏡像構造を実現した第1楽章。短3度音程の組み合わせから動機や楽曲構造を形作っている生き生きとしたアレグロの第2楽章。バルトークのトレードマークとも言える「夜の音楽」の上でシロフォンやチェレスタ、ピアノ、ティンパニがソリスティックな役割を果たす第3楽章。3楽章までの要素をさらに生かしながら緻密に、けれどダイナミックに音楽が展開されていくアレグロ・モルトの第4楽章・・・どの楽章をとっても魅力的な音楽が詰まっています。

2群に分けられた弦楽五重奏のステレオ効果や、各楽器に動機を積み重ねていくことで生まれている思わぬ和音の秘密や、あちらこちらに隠されている黄金比の楽曲構造など、単にCDで聞いているだけではなかなか窺い知れない作曲家の秘密がたくさんある曲です。
(以下略)

たとえば,この曲の第1楽章は,音楽のまとまりごとの各小節数がフィボナッチ数列となっているのですが,だからどうした?ということになりそうなので,これ以上の楽曲解説は省略します。手抜きはいつものこと。

James Levine
Chicago Symphony Orchestra

Bela Bartok - Music for Strings, Percussion and Celesta, I

Bela Bartok - Music for Strings, Percussion and Celesta, II

Bela Bartok - Music for Strings, Percussion and Celesta, III

Bela Bartok - Music for Strings, Percussion and Celesta, IV

それで,いつもならここから名盤のご紹介をさせていただくのですが,もう日曜日の夜なので,今日はここまでにしたいと思います。無理すれば書けないこともないのだけれど,今日はもう疲れました。


つづく!


7月20日(土)

原作・脚本・監督:宮崎駿の「風立ちぬ」を観てきました。
宮崎駿監督は,企画書に,
 リアルに,
  幻想的に,
   時にマンガに,
    全体には美しい映画をつくろうと思う。
と書いていましたが,まさにそのとおりの映画でした。

まだ観ていない人が多いと思いますので,詳しくは書かないほうがよいでしょう。

私はたぶんもう一回観にいくと思います。皆さんもどうぞ。お薦め♪



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バルトーク「弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽」の名盤【後編】

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1週間遅れで「つづき」です。

名盤紹介を後編に遅らせのは,演奏の感想を書くのが難しかったからです。

なぜ難しいのか。直感的に好き嫌いを感じてしまう曲だから。これはいい演奏だなと思っても,どんなふうに良いのかということを言葉で表現しづらいのです。

入試の面接で「好きな小説はなんですか?」と質問され,「パール・バックの『大地』です」と答え,「どこが好きなんですか?」と再質問されたときに言葉に詰まり,「好きなんだから,いいじゃないですか!」と返答してしまったという笑い話を思い出します。

この「好きなんだから,いいじゃないですか」という回答,私はよく思い出すんです。理由なんて要らないし,言葉で説明する必要もない。好きなんだから,いいじゃないですか,と。

でも,それでは能がない。自分の思いをきちんと相手に伝える努力が必要なときがある。人間,ひとりでは生きていけない。

そういうこともありまして,ブログをやっているのは,自分の訓練のためでもあるのです。こんなに大勢の人に読まれるようになるとは思わなかったけれど。

文章を書くのって本当に難しい。嫌いではないのですが。

バルトーク・ベーラ
弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽 (1936年) Sz.106
Music for Strings, Percussion and Celesta, Sz.106
 1.Andante tranquillo
 2.Allegro
 3.Adagio
 4.Allegro molto

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フェレンツ・フリッチャイ
ベルリン放送交響楽団
Deutsche Grammophon 1953年6月
ベルリン,イエス・キリスト教会

バルトークのオーケストラ作品は,ハンガリー系の指揮者のもつリズム感覚が強みを発揮する曲であるように思います。ハンガリー系というと,五十音順でオーマンディ,ケルテス,コチシュ,ショルティ,セル,ドラティ,アダム・フィッシャー(兄),イヴァン・フィッシャー(弟),フリッチャイ,ライナーらの名前が浮かびます(でもセルやケルテスルの「弦チェレ」ってないですよね?)。

そんなわけで,ハンガリー出身のフリッチャイ(1914~1963)の演奏が悪かろうはずがありません。私は一時期フリッチャイが残した録音を集めていましたので,彼が指揮したバルトークもCD蒐集の初期段階で入手していました。このCDは私が初めて購入したバルトークかも。

久しぶりに聴いた第一印象は,フリッチャイらしくバランスのよい演奏で重厚でベートーヴェン的だと最初は思いました。表現が自然でリズムの取り方など違和感がありません。バルトークの音楽が見に染み付いていて,聴かせどころをきちんとわきまえているようです。そして,第4楽章あたりになるとさすがにハンガリー人の血がたぎるのか,熱っぽい演奏となっていました。

1953年の録音なのでモノラルなのが残念です。この曲の場合,ステレオ録音による効果が高いので,録り直してほしかったです。


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フリッツ・ライナー
シカゴ交響楽団
RCA 1958年12月28,29日
シカゴ,オーケストラ・ホール

XRCDやSACD化により録音の優秀さが再認識されて決定盤に返り咲いた演奏です。CD初期盤と聴き比べると音質は雲泥の差ですが,高音質化が効を奏したというより,旧盤作成に用いたマスターがよくなかったように思います。50年以上前の録音ですが,時代を考えれば優秀な録音です。弦楽器など刺々しいので,もう少しきめの細かさがあったらとも思いますが,各楽器がくっきり定位する気持ちのよい録音です。ホールの音響特性にもよるデッドなサウンドは切れ味が鋭く,バルトークの音楽にマッチしていると思います。

録音のことばかり書いていますが,演奏はどうかというと,よく言われるように,名技集団のシカゴ響を自在にドライヴした見事なもので,実に爽快な演奏です。でも,なぜだろう,私には何かが足りないようにも思えます。それがうまく書けないから苦労します。

このような曲なので,親しみやすいメロディが登場したとき,ここぞとばかりにたっぷり歌ってくれると惹かれるのですが,そのような箇所でもライナーは素っ気無く通り過ぎてしまうことがあります。もう少し隠し味というか,小技があったほうがよいと思うのですけれど,いかがでしょう。天下の大名盤にけちをつけて申し訳ありません。


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ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1960年11月9-11日
ベルリン,グリュンネヴァルト教会

カラヤンはバルトークがお気に入りだったのでしょう,オケコンと弦チェレを3回ずつ録音しています。弦チェレの第1回録音は1949年でオーケストラはフィルハーモニア管弦楽団。音楽之友社の「カラヤン全軌跡を追う」では『インドの音楽財団の希望で選曲された録音』と書かれていますが,インドのマイソール藩王音楽財団はフィルハーモニア管弦楽団のスポンサーだったそうです。この1949年録音もすごく意気込みが感じられる演奏(チェレスタの音がすごく大きいのが面白い)なのですが,私が最も魅力を感じるのは1960年の録音です。1969年再録音(Deutsche Grammophon)もあり,それはそれで見事なものですけれど,私には洗練され過ぎてしまっていて他人行儀な演奏に感じられます。

この1960年録音は,指揮者とオケのヒリヒリとした関係を聴くことができ,その緊張感が心地よいです。カラヤン風のレガートな表現(作曲家が書いた音符をすべて完全に弾き切ること、そして指示された長さの終わりまで音を弱めないこと)が聴かれますが,第3楽章の夜の音楽などとても美しいです。カラヤンは聴かせ上手ですので,とっつきにくい曲はカラヤンの指揮で聴くとわかりやすいです。好きな演奏。


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ムラヴィンスキー
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
MELODIYA 1965年2月ライヴ

学生の頃にこれを聴かされ,ショスタコーヴィチの曲と説明されたら,素直に信じてしまいそうです。今回久しぶりに聴いてみたのですが,明らかに他の演奏とは違う雰囲気があります。ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルのコンビによる演奏という先入観が多分に影響しているのでしょうが,冷徹な演奏,凍てついているというか,怖いぐらい厳しいものを感じます。

ところが聴き進めるにしたがって意外なくらい情熱的かつ白熱的な演奏であることに気がつきます。今回聴き比べた中では一番といっていいくらい表情の振幅が大きいです。青白い炎がめらめら燃えているみたい。「ほら,いい曲でしょ? 難しくなんかないですよ。えーい,これでどうだ」って言っているようです。繰り返し聴くのは疲れるけれど,集中力のすごさに圧倒され,手に汗握る演奏でした。これもステレオ録音なのがありがたいです。


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ピエール・ブーレーズ
BBC交響楽団
SONY CLASSICAL 1967年3月10日
ワシントン,タウン・ホール

最初に聴いたときからこれは素晴らしいと思いました。まるでスコアを見ているようというのは言い過ぎですが,ブーレーズらしい分析的なアプローチによる明晰な演奏は,バルトークが秘術をつくしたこの曲の極北ともいうべきものと思います(←スコアを見ながら聴いているわけではないので,偉そうなことは言えないのですが(汗))。弦の編成が小さいようでやや迫力に欠けますが,聴き取りたい楽器がきちんと聴こえ,主張すべき楽器がしっかり鳴っているのは大変気持ちがよいです。

全部がそうとは言い切れませんが,後のDeutsche Grammophonへの再録音よりもこの頃のブーレーズのほうが良かったんじゃないでしょうか。

なお,シカゴ交響楽団との録音(1994年,Deutsche Grammophon)は未聴です。中古CDショップでよくみかけるのですが,よくみかけるということは手放したがる人が多い?


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サー・ゲオルク・ショルティ
シカゴ交響楽団
DECCA 1989年
シカゴ,オーケストラ・ホール

録音のせいもあるのでしょうけれど,聴き始めてすぐ感じたことは,ゴージャスかつグラマラスでとても華やかな演奏ということです。編成が大きく低弦も量感たっぷりでピラミッド型のサウンドですね。ここぞというときのティンパニもすごい迫力で鳴り響きますが,やや力押しの感もあります。やや小回りがきかない?

と思ったのですが,第3楽章以降はDECCAの録音ということもあり,細かい音までよく聴こえるのが気持ちよいですし,さすがショルティはツボをわきまえていて,聴かせ上手だなと感心しました。第4楽章などシカゴ響の機能性をフルに(といっても木・金管楽器は一切登場しない曲ですが)生かしたダイナミックな演奏が魅力的です。この曲を初めて聴く方にはわかりやすくてよいかもしれませんし,シカゴ響による「弦チェレ」では,私はショルティ指揮による演奏が一番好きです。

なお,ショルティにはロンドン・フィルとの旧録音があり未聴なのですが,そちらのほうが「弦チェレ」によりふさわしい演奏なのかもしれません。この記事を書くにあたって入手しようとも考えましたが,1950年代前半のモノラル録音なので二の足を踏んでしまいました。


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ゾルターン・コチシュ
ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団
Hungaroton 2008年10月11-13日
ブダペスト,バルトーク・ナショナル・コンサート・ホール

コチシュというと,ピアニストのイメージが強いのですが,1952年生まれですからもう61歳なんですね。Hungarotonに新バルトーク作品全集を録音中とのことで,ピアニストとしてだけでなく指揮者としても活躍中の人です。この演奏は素晴らしいと思いました。弦の編成が小さいので最初は物足りなく思えるかもしれませんが,その分各声部をよく聴き取ることができます。優秀な録音(嬉しいことにSACD)のおかげもあり,バルトークが書いた譜面をあますところなく再現していると思います。

腕利きを揃えたようで,独奏者のバルナバーシュ・ケレメン(vn)やミクローシュ・ペレーニ(vc)らも擁した精緻な弦楽合奏が聴きものですし,全員が自国の偉大な作曲家に敬意を表しているかのような思い入れが聴き取れます。


そんなわけで「弦チェレ」終了!



プロコフィエフ「キージェ中尉」の名盤(というには少ない)

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ハンガリーの作曲家を続けるつもりだったのですが,さすがにちょっと飽きてきたので予定を変更してプロコフィエフ(1891-1953)の「キージェ中尉」にしたいと思います。交響組曲ですよ。

映画音楽として作曲したものを基に組曲化したものです。いろいろなところに書かれているあらすじを集約すると,概ねこのような物語のようです。

・皇帝が昼寝をしている。
・宮廷内から女官の悲鳴が聞こえてくる。
・眠りを妨げられて激怒した皇帝が,侍従に今日の責任者は誰かと問う。
・しかし,当直名簿には「中尉」としか記されていない。
・侍従が「ポルーチキ……ジェ(中尉……です)」と答えたのを,
 皇帝は「ポルーチク・キージェ(キージェ中尉)」と聞き違え、
 存在しないはずのキージェ中尉をシベリア送りにしてしまう。
・その後,皇帝は思い直す。
・暗殺者から皇帝を守るために
 キージェ中尉はわざと女官に悲鳴を上げさせたのかもしれない,と。
・皇帝はシベリアからキージェ中尉を呼び戻すよう命令し,
 宮廷一の美女を花嫁にしようということになる。
・花婿(キージェ中尉)不在のまま盛大な結婚式が行われる。
・しかし,そもそも実在しない人物なので,困ったことがいろいろ起こる。
・万策尽きた侍従は,キージェ中尉の死亡を公表する。
・キージェ中尉の葬儀が国葬で行われる。
・皇帝は,忠義を尽くしてくれたキージェ中尉の不運に涙を流す。

1934年公開の「キージェ中尉」
(すごい! YouTubeってなんでもあるんですね!)

一般に知られているあらすじとだいぶ違いますね。叫び声を上げたのは女官じゃないし。

正しいあらすじを作成したいところですが,それはこのブログの趣旨ではないので断念します。いや,ただ単に面倒くさいだけなんですけれども。

セルゲイ・プロコフィエフ
交響組曲「キージェ中尉」作品60
1.キージェの誕生
2.ロマンス
3.キージェの結婚
4.トロイカ
5.キージェの葬送

Sergey Prokofiev - Lieutenant Kij? / Поручник Киже
(Cleveland Orchestra,George Szell)

ピッコロ,2フルート,2オーボエ,2クラリネット,2ファゴット,テナー・サクソフォン。
4ホルン,コルネット,2トランペット,3トロンボーン,チューバ。
バス・ドラム,ミリタリー・ドラム,トライアングル,シンバル,タンブリン,スレイ・ベル。
ハープ,チェレスタ,ピアノ。
弦楽5部(ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバス)。

ティンパニが無いんです。その代わり,第1曲ではバス・ドラムがfffで鳴り響きます。

第2曲と第4曲はバリトン独唱が入るのが正しいのですが,今回取り上げたCDでは小澤盤以外は管弦楽のみで演奏しています。通常はそうみたい。

バレエ音楽「ロメオとジュリエット」に似ているなぁと思うんですが,「ロメオとジュリエット」が完成したのは1935年なので,「キージェ中尉」のほうが先に作曲されたのですね。



結論から申し上げると,今回ご紹介する4枚はどれも良い演奏で,いずれを購入しても大丈夫です。どれか1枚と言われると,どうしても録音の良いもの,オーケストラが巧いものを選びたくなります。

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ジョージ・セル(指揮)
クリーヴランド管弦楽団
SONY CLASSICAL 1969年
クリーヴランド,セヴェランス・ホール

先頃,ジョージ・セル・エディションという49枚組BOXが発売されました。SONY CLASSICALから発売されていたセルのCDを集めたものですが,1970年頃が一番最後なのですね。この「キージェ中尉」1969年録音ですから,SONY CLASSICALにおける最後期。録音年にこだわったのは,先日セルのCDは録音がよくないものが多いなんて書いてしまったのですが,録音年が新しいだけあって,これは良いと思います。ちょっと効果を狙った録音ですが,生々しく鮮明な音です。やや硬調で平べったい感じがするし,第1曲のfffのバス・ドラムをはじめとして強音時の打楽器が少し歪むのが惜しいですけれど。

セル指揮のクリーヴランド管弦楽団ですから究極鉄壁のアンサンブルで非の打ち所のない安定した演奏です。それが非常に気持ちよく,安心して聴いていられます。安定とか安心とか書くと,穏当な演奏のように思われますが,プロコフィエフのオーケストレーションの妙を,リアルに捉えた録音のおかげで十分味わうことができますし,全体に情感たっぷりで,美しいメロディをたっぷりと歌わせていて,何度聴いても飽きないよさがあります。録音のせいでややドライな印象があり損をしているかもしれませんが,素晴らしい演奏ですよ。


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クラウディオ・アバド(指揮)
シカゴ交響楽団
Deutsche Grammophon 1977年2月
シカゴ,オーケストラ・ホール

故長岡鉄男さんが「アレクサンドル・ネフスキー」の録音をすごく褒めていたので,買ったCDです。よく見ると「アレクサンドル・ネフスキー」はロンドン響,「スキタイ」と「キージェ」はシカゴ響で録音会場等も異なるのですが,後者も優秀録音ではないでしょうか。ジャケット画像(これはLP)のとおり,まだ若いアバドが残した傑作だと思います。

オーケストラがシカゴ交響楽団ですからね。第1曲は推して図るべしってなもんです。オケがバリバリ鳴りまくっていて爽快です。バス・ドラムの連打も歪みがなく量感も十分で,アナログ後期の優秀録音を満喫できます。バス・ドラムの迫力は今回聴いた中で随一かも。いや,そこが好きなもので。第2曲も叙情的で良い演奏ですが,アバドの常として踏み込みが浅いというか,少々あっさりしているのが物足りないのですが,贅沢な望みかもしれません。第3曲も同様で品が良い演奏という気がします。第4曲はきっちりまとめられていて小気味良さはあるものの,ワクワク感にいささか乏しいような。終曲は良いですね。各楽器が切々と歌うメロディには心がこもっていて,そしてとても美しくて,皇帝でなくても涙してしまうことでしょう。


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クラウス・テンシュテット(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1983年9月
ロンドン,アビー・ロード第1スタジオ

テンシュテットはマーラー指揮者というイメージが強いのですが,いわゆる大曲だけでなく,こうした名曲も上手いですよね。グレートEMIレコーディングスという14枚組はテンシュテットの才能を満喫することができるBOXだと思います。お買得価格ですし。

そのBOXにも収められている「キージェ中尉」は素晴らしいと思います。名コンビとなるロンドン・フィルの音楽監督に就任した年の録音ですが,オーケストラが指揮者に心酔し奉仕しているように聴こえます。各旋律の歌わせ方,テンポの設定,楽器のバランスなど,各場面にふわさしい出来だと思いますし,プロコフィエフの音楽のほの暗さ,皮肉っぽさなどもよく出ていると思います。

ロンドン・フィルは,さすがに他の3つのオーケストラに比べると分が悪いというか,独奏の巧さで聴かせるとかそういうことが少なく,全体に洗練の度合いが低いのですが,ワクワク感・ドキドキ感はこちらのほうがずっと上ですね。なんだかすごく魅かれるんです。ドラマティックで白熱した演奏というと言い過ぎかもしれませんが,熱っぽさがあり,ホント,気持ちのよい演奏を聴かせていただきました。この演奏が一番好きかも。


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小澤征爾(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アンドレアス・シュミット(バリトン)
Deutsche Grammophon 1990年11月
ベルリン,フィルハーモニーザール

小澤征爾は1989~1992年にプロコフィエフ交響曲全集を相性の良いベルリン・フィルとデジタル録音していまして,小澤征爾ならではの仕事だと思うのですが,この全集には交響曲以外に「キージェ中尉」が収録されていますので,それを聴いてみます。なお,第2曲と第4曲はバリトン独唱入りで,珍しいけれどこれが正解なのだそうです。

ベルリン・フィルによる「キージェ中尉」,なんとも贅沢なサウンドです。このオーケストラならではのしっとり感と木目の細かさは耳にご馳走ですね。また,重厚なアンサンブルはプロコフィエフにふさわしく,かつメルヘンっぽくもあっていいですね。シュミットのバリトンは美声による誠実な歌唱です。「灰色の小鳩が悲しんでいる」と歌っているのでしたっけ。ディースカウのお弟子さんだけあって,歌い方が師匠に似ていますね。バリトン独唱が入ったほうがロシアっぽくて私は好きです。第3曲は個人的にはやや魅力に欠ける曲なのですが,それでもベルリン・フィルだと聴けてしまいます。素晴らしいオーケストラ。第4曲で再びバリトン登場。真面目(紳士的)過ぎるのでもう少しくだけた感じがあると面白いと思うのですが,このように歌が入ったほうが曲にふさあわしく音楽が生き返ったような感じがします。第5曲も音楽よりベルリン・フィルを聴いてしまいます。今さらですが,素晴らしいオーケストラです。



あと,この曲こそ,ライナー/シカゴ交響楽団の演奏で聴いてみたいところです。

ロシアの演奏家による録音をあまり見かけないのですが,私の探し方が悪いのかな。




追記:ここ数日,ヤフーさんが毎日「Tポイント」をくださいます。拙ブログへのご褒美だとか。生活が楽になります(?)ので,皆さん,1日1回,拙ブログにお越しください(冗談です)。



ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲の名盤(前口上)

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ウィキペディアのコピペですが,この曲の編成は以下のとおりです。

木管楽器
フルート2、ピッコロ、アルトフルート、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、小クラリネット、バスクラリネット、ファゴット3、コントラファゴット

金管楽器
ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、チューバ

打楽器
ティンパニ、バスドラム、スネアドラム、タンブリン、タムタム、ウィンドマシーン、チェレスタ、グロッケンシュピール、シロフォン、トライアングル、カスタネット、クロタル、シンバル

弦楽器
ハープ2、弦楽5部

バンダ
ピッコロと小クラリネット(舞台上)、ホルンとトランペット(舞台裏)

合唱
混声4部(舞台裏)

新交響楽団さんの解説がとってもわかりやすかったので(勝手に)引用させていただきました。ごめんなさい。

モーリス・ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲

【第1部】パンの神とニンフの祭壇の前
 序奏
  聖なる森のはずれにある野原。
  春の午後、若者たちはニンフの祭壇へ祈りを捧げる。
 宗教的な踊り
  ♪ヴァイオリンによる優美な旋律
  ダフニスとクロエがそれぞれ登場。
  ダフニスを囲んで踊る娘たちにクロエが嫉妬。
  ♪軽快な7拍子
  ドルコンがクロエに接近。ダフニスは割り込む。
 全員の踊り
  ダフニスとドルコンは踊りで勝負をすることに。
 ドルコンのグロテスクな踊り
  ♪ティンパニによる2拍子のリズム、ファゴット
  ドルコンは皆に嘲笑される。
 ダフニスの軽やかで優雅な踊り
  ♪フルート群の旋律、ホルン
  ドルコンに勝ち一同の前でクロエを抱擁する。
  ダフニスはその余韻に恍惚となる。
  リュセイオンの登場。
  ♪クラリネットによる印象的なフレーズ
  リュセイオンの踊り。ダフニスを誘惑する。
  ♪ハープの伴奏にフルートの旋律
  海賊が襲来。クロエが囚われてしまうる。
  残された靴を見つけ、ダフニスは絶望して気を失う。
  ♪クレッシェンドを経てffへ到達
 夜想曲
(第1組曲はじまり)
  ♪PPの弦楽器
  3人のニンフ登場。神秘的な踊り。
  ♪フルート、ホルン、クラリネットのソロ、ウィンドマシン
  ニンフによって蘇生したダフニスは,
  パンの神にクロエの無事を懇願する。
 間奏曲
  ♪合唱、舞台裏のホルン、トランペット

【第2部】海賊ブリュアクシスの陣営
 戦いの踊り
  ♪低音群の力強い刻みに始まり、荒々しく盛り上がる。
(第1組曲おわり)
  ブリュアクシスはクロエに一曲踊るよう命ず。
 クロエの哀願の踊り
  ♪コールアングレのソロ
  クロエは逃走を試みるが失敗。
  大地が裂けてパンの神が現われ,海賊たちは退散する。
  ♪ウィンドマシン

【第3部】パンの神とニンフの祭壇の前
(第2組曲はじまり)
 夜明け
  ダフニスが祭壇の前で眠っている。鳥のさえずり。
  夜が白みはじめやがて日が昇る。
  ♪フルートの細かいアルペジオ、
   低弦から静かに始まる旋律が徐々に弦全体へ
  二人の再会。
 無言劇
  二人はラモンからパンに助けられたことを知り、
  パンとシランクスに扮してパントマイムを踊る。
  ♪オーボエ
  ダフニスは葦で作った笛を吹き、愛を告白する。
  節に合わせて踊るクロエ。
  ♪フルートの長いソロ
  クロエはダフニスの腕の中に倒れ込む。
  ♪フルート群の掛け合い、アルト・フルート
  祭壇の前で愛を誓い合うダフニスとクロエ。
 全員の踊り
  バッカスの巫女の衣装を着た娘たちが登場。
  ♪5拍子、小太鼓、Esクラリネット
  若者たち登場。
  全員で恋人達を祝福し、踊りは最高潮へ達する。
(第2組曲おわり)


YouTube(最初に広告が入るかも。)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 1 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 2 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 3 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 4 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 5 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 6 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 7 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 8 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 9 of 9)


Ravel: Daphnis et Chloe / Nezet-Seguin · Berliner Philharmoniker


Ravel: Daphnis et Chloe, Suite No.2
Boston Symphony Orchestra
Charles Munch, conductor
A WBGH Live Telecast from Sanders Theatre Harvard University
April 17, 1962
Ravel: Daphnis et Chloe, Suite No.2 (Boston SO, Munch) 1/2

Ravel: Daphnis et Chloe, Suite No.2 (Boston SO, Munch) 2/2


James Galway playing Daphnis et Chloe
Maurice Ravel - Daphnis et Chloe, Suite Nr.2, Pantomime
Live Recording 1974 - Berliner Philarmoniker - S. Ozawa, Conductor


以前から取り上げてみたかった曲です。手持ちのCDもそこそこありますので,そろそろかなと思ったのですが,聴き比べを始めてみるとこれが大変。なにが大変かというと,曲が長い! 全曲で55分ぐらい。

一回聴いたぐらいでは演奏の良し悪しを判断できないので繰り返し聴いてから記事を書いているのですが,これでは数週間かかってしまいます。

したがって,いつものことではあるのですけれど,CDの聴き比べは少し手抜き気味で書いています。それは違うんじゃないか?と思う人もいらっしゃるかもしれません。

何が言いたいかというと,いや,ちょっと言い訳しておこうと思っただけです。


文字数制限があるので,次の記事に続きます。


(次の記事)


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ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲の名盤(本編)

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前の記事の続きです。

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ピエール・モントゥー(指揮)
ロンドン交響楽団
ダグラス・ロビンソン(合唱指揮)
コヴェント・ガーデン王立歌劇場合唱団
DECCA 1959年4月27-28日

「ダフニスとクロエ」の全曲初演は,1912年6月8日で,指揮はピエール・モントゥーです。このCDは初演指揮者による演奏を優秀なステレオ録音で聴くことができます。
そこで,せっかくの機会ですので,国内廉価CD(DECCA BEST PLUS 50 \1,000)と,Pragaがアナログ・テープからDSDリマスタリングを行ったSACDの音質を比較してみたいと思います。
うーん,違いがよくわかりません。強いていえば,CDはメリハリがあるものの強音時に平べったい音質ですが,SACDは全体に大人しめであるものの,喧しさがなくて長時間疲れない音であるという当たり前の感想になってしまいました。思ったほどの違いはなかったです。
肝心の演奏は,噛んで含めるような演奏と申しますか,ここはこうあらねばならないという指揮者の名講義を拝聴しているような感じがします。そうはいっても全体に押しつけがましさのない自然な演奏であります。


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シャルル・ミュンシュ(指揮)
ボストン交響楽団
ローナ・クック・デ・ヴァロン(合唱指揮)
ニュー・イングランド音楽院合唱団
RCA 1961年2月26,27日
ボストン,シンフォニー・ホール

ミュンシュには同じボストン響を振った1955年の2トラック録音(RCA)があり,それはSACD化されているのですが,こちらは再録音で,帯に「世界初CD化」とあります。これだけの名演が2002年1月までCD化されなかったわけで,ミュンシュは海外で評価が低いというのは本当かも。
ボストン響の重厚なアンサンブルに軽妙な味わいを求めたいと思うこともありますが,この力感は捨て難くもあり,やはりボストン響は優秀です。演奏も録音もミュンシュの意図を完全に理解して120%表現していると思います。
圧巻は第三部の「全員の踊り」で,これを聴いてしまったら他は聴けないというくらい,エネルギッシュな演奏で,これは圧巻! バス・ドラムはこれぐらいでないと。ラヴェルのオーケストレーションを知り尽くしている指揮者とエンジニアリングによる傑作だと思います。これはお薦め!


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アンドレ・クリュイタンス(指揮)
パリ音楽院管弦楽団
ルネ・デュクロ合唱団
EMI CLASSICS 1962年
パリ,サル・ワグラム

クリュイタンスのラヴェルは,LPで全て揃えてCDで買い直し,さらにSACDにも手を出しています。つまり大好きな演奏なのです。
この「ダフニスとクロエ」全曲盤は,名曲名盤本の類では不動の1位です。だからいまさら私が下手くそな文章で書く必要もないのですが,改めて(24bitリマスタリングCDを)聴き直してみると,この指揮者とオーケストラにしか表現できない独特の雰囲気がありますね。漂ってくる薫りが違うという感じで,一番安心して聴ける演奏かもしれません。安全運転という意味ではなく,肌触りの良さ,馴染みやすさという点においてです。
この録音以降,演奏と録音技術はますます進化し,より精緻な演奏が優秀録音で楽しめるようになったのですが,この高雅で優美な雰囲気は唯一無二です。全体に腰高なサウンドでもう少し重低音が欲しいような気もしますが,これがフランスの伝統なのかもしれませんね。


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ジャン・マルティノン(指揮)
パリ管弦楽団
ジャン・ラフォルジュ(合唱指揮)
パリ・オペラ座合唱団
EMI CLASSICS 1974年
パリ,サル・ワグラム

フランス人によるフランスのオーケストラによるフランス人のための演奏。そんなわけで,マルティノンによるフランス国立放送管弦楽団を指揮したドビュッシーとパリ管弦楽団を指揮したラヴェルは貴重です。
ただ,個人的にはマルティノン指揮のドビュッシーはよく聴きましたけれど,ラヴェルはあまり聴いていないんです。クリュイタンス(フランス系ベルギー人)のほうが味が濃いめで,マルティノンは淡白に感じてしまうのです。だからちょっと苦手でした。
今回,10年ぶりぐらいに聴いてみたのですが,テンポの遅い部分は良いとしても,リズムが特徴的な部分などテンポがちょっと速くなると,揃わないのか揃えようとしないのか,アンサンブルが合っていないのが気になります。そういうところを除けば,名手揃いのパリ管弦楽団は管楽器はどれも巧いですし,本場物という先入観のせいかもしれませんが,雰囲気は豊かです。


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ピエール・ブーレーズ(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
エイブラハム・カプラン(合唱指揮)
カメラータ・シンガーズ
SONY CLASSICAL 1975年3月
ニューヨーク,マンハッタン・センター

SONY CLASSICALレーベルから発売されているドビュッシーもそうなのですが,ブーレーズのラヴェル旧録音群は良い仕事,画期的な演奏だったと思います。当時これを聴いた人達はどう感じたのでしょうか。
スコアに書かれている音符が目に浮かんでくる精密機械のような演奏。いくら「ダフニスとクロエ」がラヴェルの大傑作とはいえ,全曲通して聴くのは私にとってなかなかしんどいものがあるのですが,この演奏は思わず聴き入ってしまう演奏であり録音です。改めてラヴェルってすごいと思いましたし,ブーレーズも素晴らしいと思います。
筋肉質の引き締まった演奏ですが,もう少し贅肉が付いていたほうが安らぎを覚えるかなとも思う今日この頃なので個人的には再録音のほうが好きなのですが。


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シャルル・デュトワ(指揮)
モントリオール交響楽団&合唱団
ティモシー・ハッチンス(fl)
DECCA 1980年8月
モントリオール,聖ユスターシュ教会

モントリオール交響楽団がシャルル・デュトワと決別したのは2002年でしたっけ。10年以上も前のことだなんて信じられませんが,大変素晴らしいコンビでした。そのコンビの代表的な録音が,仏ディスク大賞,モントルー国際レコード賞,レコード・アカデミー賞受賞の当ディスクで,私が初めて買った「ダフニスとクロエ」全曲盤のCDでもあります。
これさえあればクリュイタンスやマルティノン等のおフランス系CDは不要と思ったものでした。なんたって「フランスのオーケストラよりフランス的なオーケストラ」でしたから(過去形)。あれらをもっと洗練させて美しく仕上げ,優秀な録音で残した傑作なのですが,私がこれを飽くことなく繰り返し聴いたかというと答えはノーです。このあたりが難しいところで,あまりにも嵌りすぎた演奏はかえって抵抗感を覚えるのでしょうか。
録音は,1階センターの後ろの席で聴いているな感じ。独奏楽器をリアルに捉えるよりは全体の雰囲気重視みたい。もう少し克明な録音であってもよいかなとも思います。


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ピエール・ブーレーズ(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルリン放送合唱団
Deutsche Grammophon 1994年5月
ベルリン,イエス・キリスト教会

おそらく私の好みは,ブーレーズの演奏なのだと思います。そして,ブーレーズの2種の全曲盤では,ベルリン・フィルとの再録音をより好みます。ニューヨーク・フィルとの画期的な旧盤は録音のせいもあってオケのギスギスした音色に抵抗を感じていたのですが,ベルリン・フィルのしっとりした音色のおかげで弱点が克服され,天下の名盤となりました。
ブーレーズの意図が徹底しているのは旧盤のほうで,いささかも価値は減じていないと思うのですが,「ダフニスとクロエ」を聴きたいと思うときに,一番手を伸ばしたくなるのは当盤です。聴き始めたら最後まで通して聴きたくなる演奏です。
イエス・キリスト教会での録音も理想的で,合唱とオーケストラのバランスも最上ですし,最後の「全員の踊り」のような曲でも聴きたい楽器がきちんと聴き取れるのはとてもありがたいです。「ダフニスとクロエ」を知り尽くした指揮者による極めつけの名盤と評したいと思います。


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チョン・ミュンフン(指揮)
フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団&合唱団
Deutsche Grammophon 2004年11月
フランス放送,オリヴィエ・メシアン・ホール

ちょっと気になったのでHMV ONLINEの指揮者検索でチョン・ミュンフンの現行盤を調べたところ86枚でした。思ったより少ないですね。指揮した作曲家で最も多いのがメシアンで12枚。次いでブラームス,ドヴォルザーク,ビゼー,ニールセン,マーラー……。思いつく名盤は,メシアン:トゥランガリーラ交響曲(パリ・バスティーユ管),ベルリオーズ:幻想交響曲(同),リムスキーショスタコーヴィチ:交響曲第4番(フィラデルフィア管),そして当盤でしょうか。
この「ダフニスとクロエ」(廃盤!)は,私が持っている中で最もテンポの緩急差が大きい演奏だと思うのですが,とにかくスマートですいすい・ぐいぐい進んでいきます。変化に富んでいるので面白く聴き易いのですが,ちょっと力押し気味でもあります。もう少し繊細さを求めたいところです。
気になるのは録音で賛否があるようですが,こういう録音はフランスの伝統なのでしょうか。よく言えば幻想的で雰囲気重視の音づくりです。録音ですごく損をしているような,結構びみょうな演奏。


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ジェイムズ・レヴァイン(指揮)
ボストン交響楽団
ジョン・オリヴァー(合唱指揮)
タングルウッド祝祭合唱団
Bso Classics 2007年10月ライヴ

Deutsche Grammophonへの1984年録音は現在(常に)廃盤中で,タワーレコードでのみ入手可能です。そちらはウィーン・フィルと国立歌劇場合唱団によるもので,もしかしたら「ダフニスとクロエ」のとびっきりの名盤だったかもしれません。
なぜそのようなことを書いたかというと,この演奏がなかなか素晴らしいからです。レヴァインとボストン響という,ありそうでなかなかないコンビによる演奏ですが,当盤はボストン響の自主レーベルによるもので,ありがたいことにSACDです。
現代オーケストラの機能美を押し出した,明るくメリハリのある演奏というべきでしょうか。レヴァインの語り口の巧みさに陶然とさせられ,音楽に惹き込まれるものがあります。
あまりの屈託の無さにこれでいいのかと思わないでもありませんが,これだけ満足させてもらえれば十分でしょう。最後の全力を注ぎ込んだ和音は,これを生で聴いたら思わずブラヴォーって叫んじゃいますよね。現代的な名演奏。


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ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
ロンドン交響楽団&合唱団
LSO 2009年9月20,24日ライヴ
ロンドン,バービカン・ホール

これはロンドン響の自主レーベルによるSACDです。特価1,290円のお買得盤で,これも名演だと思います。非常によく歌う演奏で,短いフレーズも長いフレーズもたっぷり豊かな歌を聴かせてくれます。リズムの処理もばっちりで,難しそうな箇所でも揺るぎないものを感じますね。オーケストラは名門ロンドン響ですから,ソロからトゥッティまで文句なしの出来栄えです。合唱も優秀でオーケストラとの一体感が見事です。録音も優秀。
心から良い演奏だと思うのですが,ミュンシュ/ボストン響やブーレーズの2種の録音を聴いた後だと欲が出てきて,もっとこのコンビなら出来るはずではないか,なんて思ってしまうのです。それは,デュトワ,チョン・ミュンフン,レヴァインにも言えることで,なんて言ったらいいんだろう,もうあとひとつ,何かないかなって感じてしまいます。
チョン・ミュンフンだと録音で損をしているから仕方が無いという諦めもつくのですが,この盤は録音も優れているので厳しくなってしまうのでしょう。


ラヴェルの「ダフニスとクロエ」は,第2組曲だけの録音もありまして,この後にそれの聴き比べを続けるつもりだったのですが,40度近い猛暑のせいもあり,集中力が途切れてしまったので,この辺で終わりにしようと思います。


カレーライス食べたい……。





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