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伊福部昭「SF交響ファンタジー第1番」の名盤?

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一度は記事にしてみたかった曲。連日猛暑が続いていますので,夏らしい曲ということで取り上げてみました。この曲のどこが夏らしいのか。暑苦しいところ。

いや,純粋に伊福部昭の音楽を取り上げたかったのです。

SF交響ファンタジー」は、伊福部昭(1914年‐2006年)が作曲した東宝特撮映画のための音楽を1983年に演奏会用管弦楽曲として編曲した作品です。第1番から第3番,交響ファンタジー「ゴジラvsキングギドラ」の4曲があります。今回は最も有名でよく演奏され,聴かれているであろう第1番

伊福部昭:SF交響ファンタジー第1番
SYMPHONIC FANTASIA No.1

編成(3管編成):
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン2、バストロンボーン、チューバ、ティンパニ、大太鼓、スネアドラム2、吊りシンバル、トムトム2、タムタム、コンガ、ハープ、ピアノ、弦五部。

楽曲(片山杜秀氏による3種類の解説より抜粋。):

01 ゴジラの動機
Adagio grottesco。ゴジラの動機が鳴り響く。1オクターヴを構成する12の音程が全部使われた半音階的旋律によるグロテスクな音楽である。この動機は,無論,様々に装いを凝らしつつ,ゴジラ・シリーズ全体に多用されているが,ここでは,『三大怪獣,地球最大の決戦』(1964年,本田猪四郎監督)で,夜の太平洋上にゴジラが出現する場面のためのアレンジ(M9)が用いられている。

(↑次の02 間奏部も含んでいます。)

02 間奏部
8小節の接続部。2/4と7/4が交替する,特徴的なリズム・パターンが4度,クレッシェンドかつアッチェレランドしながら反復される。(くりかえされるラシドという音型は次の『ゴジラ』のテーマ,ドシラの逆行だ。)

03 「ゴジラ」タイトル・テーマ
Allegro。かの有名な『ゴジラ』(1954年)のタイトル・テーマ(M1,M16)。
ドシラ・ドシラ・ドシラソラシドシラが2×4+1のいびつな九拍子を形成する,寸詰まりでいらついた行進曲は,劇中ではゴジラにかなわないので焦る自衛隊(略)のための音楽だったのだが,いつの間にか,それが世間からゴジラじたいの動機と認識されるようになった。奇数拍子の焦燥感が自衛隊以上にゴジラの無軌道さと交感してしまったのだろうし,ドシラとゴジラが期せずして語呂合わせになったことも関係しているのだろう。

Gojira 1954 Main Theme (ゴジラのテーマ)

04 「キングコング 対 ゴジラ」タイトル・テーマ
『キング・コング 対 ゴジラ』(1962年,本田猪四郎監督)のタイトル・テーマ(M1)。原曲には,南方語による混声合唱が付されている。


05 「宇宙大戦争」夜曲
Lento cantabile。イオニア音階による愛の主題。『宇宙大戦争』(1959年,本田猪四郎監督)に於ける,池辺良と安西郷子のカップルのための愛のテーマが,濃厚に奏でられる。但し,この編作の直接の下敷きになったのは,ほぼ同じ楽案による,別の映画のためのスコアらしい(原曲未詳)。

06 「フランケンシュタイン 対 地底怪獣」バラゴンのテーマ
Adagio Grottesco。『フランケンシュタイン 対 地底怪獣』(1965年,本田猪四郎監督)の,白根山中にバラゴンが出現し,ひと暴れする場面の音楽(M22B,M23)。金管が凶暴に半音階的に叫ぶバラゴンの動機。


07 「三大怪獣 地球最大の決戦」
『三大怪獣 地球最大の決戦』から,ゴジラとラドンの戦い,及び,それを尻目に夏木洋介と伊藤久哉が若林映子争奪戦を繰り広げるシーンの音楽(M14,M16,M17)。01のゴジラの動機に,トランペットに担われるラドンの半音階的な動機が重なり,両者の闘争を表現する。


08 「宇宙大戦争」タイトル・テーマ
リディア音階的かつ軍楽隊的な『宇宙大戦争』のタイトル・テーマ(M2)。4小節のファンファーレをリピートした後,Tempo di Marciaになる。


09 「怪獣総進撃」マーチ
ヴァイオリン,ヴィオラ,オーボエ,コール・アングレにって提示される5音階風でやや田園的に軽やかな『怪獣総進撃』(1968年,本田猪四郎監督)のマーチが加わる。これは,主旋律のみのスケッチに基づき,新しくオーケストレーションし直されたもの。この後,『宇宙大戦争』のタイトル・テーマが復帰し,再び『怪獣総進撃』マーチへ。


10 「宇宙大戦争」戦争シーン
『宇宙大戦争』のナタール人の月面基地を,千田是也率いる地球軍が攻撃するシーンの音楽(M26,M32,M34)によって,激越なフィナーレが形勢され,コーダに至る。


以上が切れ目なく演奏されます(演奏時間:約15分)。広上淳一/日本フィル盤はトラック分けされているので便利♪

ここまでいろいろ書きましたが,忘れてください。知らなくてもよいことです♪

私は上記の解説に出てくる映画はほとんど観たことがありませんが,音楽を聴いているうちに観た気になってしまうから不思議です。

YouTube

小松一彦/東京交響楽団

石井眞木/札幌交響楽団

原田幸一郎/新交響楽団

石丸寛/新星日本交響楽団

ゴジラ - 続・三丁目の夕日


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石井眞木(指揮)
新交響楽団
fontec 1984年11月23日
東京文化会館

13分28秒。伊福部昭に作曲を学んだ石井眞木の指揮による演奏です。東京文化会館という残響が少ない
会場での録音のせいか,ただでさえシンプルな響きがより一層際立ってモノクロの映画のオリジナルBGMに近い雰囲気がありますね。早めのテンポでぐいぐい進んでいくので,直線的な迫力がありますが,力押し一辺倒というわけでもなく「宇宙大戦争」夜曲のような曲ではぐっとテンポを落として豊かに歌っています。熱演であり小気味良い演奏ではあるのですが,潤いのない録音による乾いた響きのため,繰り返し聴くと飽きてしまうかもしれません。シンバルやタムタムがもうちょっと音量豊かだったら聴き応えがあると思います。他に,交響頌偈「釈迦」を収録。


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小松一彦(指揮)
東京交響楽団
EMI CLASSICS 1989年4月8日
ゆうぼうと(簡易保険ホール)

15分03秒。今年の3月30日に亡くなった小松一彦の指揮による演奏です。シンバルやタムタム,スネアその他の打楽器はこれぐらいの音量で派手に鳴らして欲しいものです(鳴らし過ぎかな?)。弦楽器もしっとりとして,かつ量感もあり,好ましいですね。録音会場の「ゆうぼうと」は音響の良いホールだったという記憶がありますが,今回の4枚の中では最も優秀な録音だと思います。演奏はテンポの緩急差が大きい大変ドラマティックかつロマンティックな大熱演で,そのねっとりとした歌はカロリー満点であり,これを聴いた後に聴くCDは不利です。大満足の1枚。現在はTOWER RECORD限定販売(最新リマスタリング)で,他に交響頌偈「釈迦」を収録。
小松一彦は生前「日本は初心者と専門家に分かれていて,真ん中の八割を占めるはずの聴衆がいない」と残念がっていたそうですが,真ん中の八割になりたいものです。


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広上淳一(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
キングレコード 1995年8&9月
セシオン杉並ホール

14分53秒。この曲でお薦めを尋ねられたらこのCDが一番最初に思い浮かぶかもしれません。ひとつめは最も入手しやすそうだからという理由,ふたつめは最も標準的な演奏だからという理由からです。解説が片山杜秀さんだし,細かくトラック分けされていてどこがどの部分なのかも分かり易いので至れり尽くせりの決定盤でしょう。標準的な演奏と書いてしまいましたが,理想的な演奏と書き換えたほうがよいでしょう。ただ,この演奏も石井眞木指揮のCDと同様,デッドな録音ですので,オーケストラの響きも乾いた感じが強いです。それでも,演奏・録音共にこの曲の最上の記録を残そうという気概が感じられますので,このCDを第一に選ぶべきなのでしょうね。他の人もそう言ってますし。
このCDでは他に「SF交響ファンタジー第2番」「同第3番」「倭太鼓とオーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク」を収録しています。


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ドミトリ・ヤブロンスキー(指揮)
ロシア・フィルハーモニー管弦楽団
Naxos 2004年5月3-12日
ロシア国営TV&ラジオ・カンパニー,
第5スタジオ

13分06秒。ロシアの指揮者とオーケストラによる演奏だという先入観をもたないで聴こう。私はあまり違和感を感じないで聴けました。とはいえ,日本人指揮者とオーケストラによる演奏のおどろおどろしい雰囲気とはちょっと違うし,メロディの節回しも演歌調でなくてスマート。オーケストラの響きのせいもあって,あまり泥臭くなく明るめで色彩感が増したよう。外国人が喋る日本語に似た演奏です。どちらかといえばマーチのほうがスムーズな演奏になっていますね。こういうのも面白いなぁと思います。他に「シンフォニア・タプカーラ」「ピアノとオーケストラのためのリトミカ・オスティナータ」を収録。このCDは,文字ぎっしりの片山杜秀氏の解説だけでも購入する価値があると思いますよ。


夜に浮き出るその黒いかたちに,「先生の音楽には和声が本質的に欠如している」と弟子の黛敏郎に言わしめた,伊福部昭の厚く暗く重いモノクロームな音楽がかぶるとき,御霊としてのゴジラはいよいよ完全なる姿を現し,不滅の負の破壊的生命を得るのである。
片山杜秀「音盤博物誌」(ARTES)の「ドシラとゴジラ」より



ヴォーン・ウィリアムズ「トマス・タリスの主題による幻想曲」のCD

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今回は,ヴォーン・ウィリアムズ(1872年10月12日-1958年8月26日)の管弦楽曲を取り上げようと思います。本当は別の曲を用意していたのですが,気が変わりました。

ヴォーン・ウィリアムズの管弦楽曲でCDに収録されていることが多いのは,グリーンスリーヴスによる幻想曲(1908年),揚げひばり(1914-20年),トマス・タリスの主題による幻想曲(1910年)でしょう。

それらに次いで多いのは,ノーフォーク・ラプソディ(1906-07年),「富める人とラザロ」の五つの異版(1939年),交響的印象「沼沢地方にて」(1904年)でしょうか。

そんなわけで,ヴォーン・ウィリアムズの最も有名な曲でCDの聴き比べもしやすい(書きやすい)「グリーンスリーヴスによる幻想曲」にしようと思ったのですが,当たり前過ぎるような気がしてきたのです。

ファンが多そうな「揚げひばり(舞い上がるひばり)」は,ヴァイオリン協奏曲に分類されていますので,管弦楽曲特集中の今回はパス。

結果として「トマス・タリスの主題による幻想曲」に決定です。管弦楽に固執しているのに管楽器が使われていない曲になってしまいましたが。

トマス・タリス(1505年頃-1585年11月23日)は、16世紀イングランド王国の作曲家でありオルガン奏者だそうです。英国教会音楽の父とよばれている人で,私の大好きなタリス・スコラーズの名称もこの作曲家に由来しています。

そのトマス・タリスが1567年に作曲した「大主教パーカーのための詩篇曲」の第3曲の旋律が「トマス・タリスの主題」というわけです。

初めて聴いた人は,どの部分がタリスの主題かわからないと思います。
そんな貴方様にこれをご紹介しておきます。
これは面白い。よくぞ作ってくれました!という感じ♪

All Miku【初音ミク】RVW Fantasia on a Theme of Thomas Tallis(冒頭部分)に・・・


レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ
トマス・タリスの主題による幻想曲
Fantasia on a Theme of Thomas Tallis

ウィキペディアによるとこの曲の楽器編成は,①弦楽オーケストラから成る第1アンサンブルと、②2人ずつの小編成による第2アンサンブルと,③弦楽四重奏という3群に分けられた弦楽合奏から成り立っているそうです。これにより教会内部の音響効果とかオルガンの響きを模しているのだとか。

BBC National Orchestra of Wales
Tadaaki Otaka conductor
Royal Albert Hall, 31 July 2012

尾高忠明さん,指揮姿が美しいです!

それで,各CDを聴いた感想なのですが,この曲は少々書きづらいです。毎日聴き続けたのですが,掴みどころがないのです。終わりそうで終わらなくて取り止めがない感じ。草原を渡る気まぐれな風,寄せては返す波,のような音楽です。波って大きな波が来たり小さな波が来たりして,展開が予測できないでしょう。ちょっと落ち着かない心地がするのですが,それが自然のような気もするし,そんな感じの音楽。「幻想曲」だから?

ここのところ,仕事が忙しかったせいもあり,電車の中ではぼーっとしている(寝ているともいう)ことが多かったので,「トマス・タリスの主題による幻想曲」をとても心地よく聴くことができたのですが,それぞれの演奏の特徴を書こうとすると手が止まります。

でも書こう。次の曲に進むために。次があれば。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団
EMI CLASSICS 1953年11月11日録音
カラヤン(14分54秒)唯一のヴォーン・ウィリアムズの録音です。カラヤンのレコーディング・レパートリーの中には演奏会で取り上げていない曲もありますが,「トマス・タリスの主題による幻想曲」はコンサートで演奏しています。まだ若い(といっても45歳の)カラヤンの演奏はドラマティックで,この頃からカラヤンはカラヤンであったのだなぁと感慨深いものがあります。この曲はやっぱりステレオ録音で聴きたいので,モノラル録音の当CDはお勧めでないのですが,切り捨てるには惜しいです。むしろこれは名演なのではないかと思った次第で,濃厚な表現は1970年代のカラヤンに通じるものがあり,曲のイメージと若干ずれてしまったかもしれないけれど,圧倒されるものがありました。

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ディミトリ・ミトロプーロス(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
SONY CLASSICAL 1958年3月3日録音
ミトロプーロス(12分44秒)は,もっといろいろ聴いてみたいのですが,あまりCDを持っていません。現在発売されているCDでは多い順にヴェルディ,マーラー,プッチーニ,モーツァルト,チャイコフスキー,R・シュトラウス,ベートーヴェンといったレパートリーです。マーラーはバーンスタインに手ほどきをしたぐらいですから当然ですが,ヴェルディが一番多いというのは意外でした。短めの録音時間からも分かるとおり,すっきりすいすい進んでいきますが,しかしあっさりしておらず,情感豊かで熱い演奏です。カラヤンと似ているかな……。

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サー・ジョン・バルビローリ(指揮)
シンフォニア・オブ・ロンドン
EMI CLASSICS 1962年5月17日録音
バルビローリ(16分20秒)は,粘り気のあるロマンティックな演奏。後半の3枚はグリーグを思わせるところがありますが,この演奏にはチャイコフスキーを感じます。今さらですが,バルビローリって音楽が熱いというか,イギリス人指揮者という感じがあまりしない人ですよね。念のために調べてみると「イタリア人の父とフランス人の母の間にロンドンで生まれる(ウィキペディア)」とあります。彼の指揮による「グリーンスリーヴスによる幻想曲」を聴くとよくわかるのですが,いろいろなことをやっていますので聴き慣れた曲でも新鮮味を感じます。この曲でも無意識のうちに曲をよく聴こうというしている自分に気がつきます。そういう演奏です。

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サー・ネヴィル・マリナー(指揮)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
DECCA 1972年録音
マリナー(15分13秒)は,聴かせ上手で求心力のある演奏ですね。オルガン的な音響が素晴らしいと思いますし,強弱の幅も大きく,録音が派手めなこともあってわかりやすいです。曲によっては高弦がきつく感じられるときもありますが,弦の美しい響きが楽しめます。ヴォーン・ウィリアムズの管弦楽曲集をとりあえず1枚という方には,このCDがよいかも。

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バリー・ワーズワース(指揮)
ニュー・クィーンズ・ホール管弦楽団
DECCA 1992年10月12-14日録音
ワーズワース(15分41秒)は,U野K芳さんが推薦していたので思わず買ってしまいました。私が初めて買ったヴォーン・ウィリアムズのCDだったと思います。次のトムソン盤に共通するものがありますが,こちらのほうが録音がキリっとしているせいもあって,より私の好みに近いかも。ただ,トムソン盤のほうが弦の量感が豊かで聴き映えがしますので,一般にはあちらをお勧めしたいと思います。ワーズワース盤のほうが地味に感じられるのですが,清楚で細やかな神経が行き届いていると思います。

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ブライデン・トムソン(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
CHANDOS 1986年6月25-26日録音
トムソン(16分13秒)は,今回一番のお勧めです。今回の聴き比べではこの演奏が基準となりました。過不足がなく調和がとれているところが好ましいです。それがこの曲には大事ではないかと思います。ロンドン・フィルの演奏も美しく,ややソフトだけれども厚みのある録音は耳に心地よくて,このような演奏であれば何度も繰り返し聴きたいと思えます。



新 長岡鉄男の外盤A級セレクション(共同通信社)

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オーディオ評論家の長岡鉄男さん(以下敬称略)が亡くなったのは2000年(平成12年)5月29日のことで,あれは私にとって大変ショックな出来事でした。

長岡鉄男が書いた文章を読むのが好きだったのです。オーディオに関してではなく,録音に関してでもなく,エッセイ。「長岡鉄男のレコード漫談(計3巻)」「長岡鉄男のディスク漫談(計2巻)」(以上,音楽之友社)等からいろいろな影響を受けました。長岡鉄男の物の見方,考え方が好きだったのですね。



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長岡鉄男のレコード漫談
玉石混交のレコード紹介240
音楽之友社
昭和59年10月20日第一刷発行


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長岡鉄男のディスク漫談
玉石混交のディスク紹介201
音楽之友社
1989年10月15日第一刷発行


この記事のタイトルである「長岡鉄男の外盤A級セレクション」は,共同通信社から1984年7月16日に発売されました。「FM選書33 長岡鉄男の外盤A級セレクション 1」というタイトルでしたが,第1巻ということは,第2巻以降があるのでしょうか?

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長岡鉄男の外盤A級セレクション
共同通信社
1984年7月16日第1刷発行


この本,「レコード漫談」や「ディスク漫談」と異なり,エッセイの部分がなく,録音のよいレコードをひたすら紹介するだけの実用本位な本なので,私はあまり読んでいなかったのですが,この本が先月復刊されました。


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長岡鉄男の外盤A級セレクション
共同通信社
2013年8月17日第1刷発行


某インターネットショップで予約したのですが,一緒に注文した本の発売日が8月末であったため,届いたのは昨日でした。手にした第一印象は,ひと回り大きくなってずいぶん立派な本になったなということ。

この本で紹介されている100枚のレコードのジャケット写真が冒頭にカラーで掲載されています。レコードごとの目次が付いたのも便利です。どの頁にどのレコードが掲載されているのかすぐに調べることができるようになりました。以前は付箋紙が必要な本だったのです。

しかし,この本の最大の特徴は,100枚のLP音源の中から13トラックを収録したSACDハイブリッドディスク(サウンドサンプラー)が付属していることです。

紹介されている100枚のLPはクラシック音楽中心(99枚目はピンク・フロイド!)なのですが,結構マイナーというか,普通の人は買わないレコードが多いです。この中で私が持っているのは10枚ぐらいしかないかな。入手し難いったらありゃしない音源ばかり(かなりのLPがCD化されていないか,廃盤?)。

そういうわけで,付録のSACDハイブリッドディスクに興味を持ち購入しました。本自体は使いやすくなったものの,内容は全く変わっていませんからね。(「新」じゃないじゃん!)

このSACDの収録曲は以下のとおりです。

『ラ・スパーニャ』より
フランチェスコ・カノーヴァ・ダ・ミラノ:スパーニャ・コントラプント
トッレ:ダンサ・アルタ「ラ・スパーニャ」
ヴェラルディ:イストリア・ベティカ
 グレゴリオ・パニアグワ指揮、アトリウム・ムジケー古楽合奏団(BISSA1963)

アラブ・アンダルシアの音楽~ムッサダル
 グレゴリオ・パニアグワ指揮、アトリウム・ムジケー古楽合奏団(HMA195389)

サント=コロンブ:コンセール第44番「悲しみの墓」
 ジョルディ・サヴァール&ヴィーラント・クイケン(ヴィオール)(AVSA9885)

タランチュール=タランテラ~アンティドトゥム・タラントゥレー(毒蜘蛛の解毒)
 グレゴリオ・パニアグワ指揮、アトリウム・ムジケー古楽合奏団(JMXR24202)

J.S.バッハ:リュート組曲第4番変ロ長調 BWV.1010~プレリュード
 ホプキンソン・スミス(リュート)(E8938)

ペルゴレージ:スターバト・マーテル~ドロローサ
 ルネ・ヤーコプス指揮、コンチェルト・ヴォカーレ(HMA1951119)

C.P.E.バッハ: ファンタジア I
 インガー・グルディン・ブラント(クラヴィコード)(BIS142)

モーツァルト:幻想曲ニ短調 K.397
 ヨス・ヴァン・インマゼール(フォルテピアノ)(ACC10018)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番ハ短調 op.111~第1楽章
 パウル・バドゥラ=スコダ(フォルテピアノ)(XRCG30001)

超絶技巧トランペット~アレクシス:ソナチナ
 エドワード・タール(トランペット)(BIS152)

ジョン・ケージ:4人の奏者のための第2コンストラクション
 クロウマタ・パーカッション・アンサンブル(BIS232)


これが結構面白くてあっという間に聴き終えてしまいました。なるほど,優秀録音というのはこういうものかと再認識することができました。いやぁ,スゴイ! こんなに生々しく鮮烈な音がうちのステレオから出るなんてビックリです。LPで聴くのとでは若干異なる音質なのでしょうけれど,しっかり堪能できました。このSACDは私のオーディオチェック用ディスクとして活躍することでしょう。

この中で,録音演奏共に最も素晴らしいと私が思うものを1曲あげるなら,パウル・バドゥラ=スコダハンマーフリューゲルによるベートーヴェンのソナタ第32番でしょうか。



ところで,どうして長岡鉄男なのかというと,次の記事で書こうと思っている曲の録音状態が気になって長岡鉄男の「レコード漫談」で調べたところ,「(略)コレクションの中に本物は五枚しかなかった。もともとあまり好きな曲ではない。コケおどしのダサイ曲だ。すぐ飽きてしまう。せっせと集めるほどのものではない」と書かれていたのに笑ってしまったからです。

次回は(私はそう思っていないけれど)「コケおどしのダサイ曲」です♪
(の予定でしたが,後送りにします。次回は「コケおどしのダサイ曲ではありませんよ。9月5日)



ジョルディ・サヴァール 無伴奏の夕べ

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ジョルディ・サヴァール 無伴奏の夕べ

2013年9月13日(金)19:00開演
銀座 王子ホール
ジョルディ・サヴァール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

●祈り
 K.F.アーベル:前奏曲
 J.S.バッハ:アルマンド(無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調BWV1011より)
 J.シェンク:アリア・ブルレスカ

●哀惜
 サント=コロンブ2世:ロンドー形式によるファンテジー
 サント=コロンブ:涙
 作者不詳(フランスのブルターニュ地方):哀歌「ああ、思い出して」に基づく変奏と即興
 J.S.バッハ:ブーレ(無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調 BWV1010より)

●人間の声
 ドゥマシ:前奏曲 ニ長調 
 M.マレ:人間の声、ミュゼットI-II、跳躍

********** 休憩 **********

●「音楽の諧謔」
 トバイアス・ヒューム:戦士の行進 / ヒューム大佐のパヴァーヌ&ガリアルド
 聞け、聞け / 戦士の決意

●「リラ・ヴァイオルのためのレッスン集」
 A.フェラボスコ:コラント
 T.フォード:ここでいいじゃないか
 J.プレイフォード:鐘、サラバンド へ長調

●作者不詳(1580年頃):バグパイプ・チューニング
 ポイントあるいは前奏曲 / ランカシャー・パイプス / ラムゼイの豚
 一杯のお茶 / バーディーのケイト / おもちゃ

******** アンコール ********

 作者不詳:アバーゲルディ城セット(モイラ卿セット)より
 作者不詳(フランスのブルターニュ地方):哀歌「ああ、思い出して」に基づく変奏と即興
 マラン・マレ:ミュゼット ト長調



ジョルディ・サヴァール(Jordi Savall, 1941年8月1日 - )で検索するといっぱい出てくるCD(SACDのほうが多い)の数々。(前回の記事でも,ジョルディ・サヴァール&ヴィーラント・クイケンのCDが登場しています。)


いつかサヴァールの生演奏を聴いてみたいと思っていたのですが,ついにその日が訪れました。

本当は,サヴァール指揮のエスペリオンXXI か,コンセール・デ・ナシオンを聴いてみたかったのですが,今回はサヴァールによるヴィオラ・ダ・ガンバの独奏です。

一週間の仕事で疲れている金曜日の夜なので,途中で寝てしまうのではないかと心配でしたが,最後まで夢中になって聴いてしまいました。

演奏が終わってから聴衆にお辞儀するサヴァールの神々しいことといったら!

しばらくの間,弦楽器のソロ・コンサートでこんなに感動することはありえないと思ったくらい。

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ジョルディ・サヴァールはバルセロナ県の都市イグアラダに生まれた。6歳で地元の少年合唱団に参加して音楽を始め、バルセロナ音楽院でチェロを学ぶ。1964年に同音楽院を卒業すると翌年独学でヴィオラ・ダ・ガンバおよび古楽を学んだ。1968年よりバーゼル・スコラ・カントルムで研鑽を積み、73年に師であるアウグスト・ヴェンツィンガーを継いで後進の指導に当たった。
今日の音楽界における傑出した人物として知られ、奏者およびディレクターとして過去30年以上に渡り調査、研究、そして解釈に力を注いでいる。忘れ去られていた音楽の宝物を再発見することに献身し重要なレパートリーを復元、ヴィオラ・ダ・ガンバ音楽のファン層を広げている。また、古楽声楽家モントセラト・フィゲラスと共に3つのアンサンブル―エスペリオンXX、ラ・カペラ・レイアル・デ・カタルーニャ、そしてル・コンセール・デ・ナシオンを立ち上げ、美と感情の世界を探求、創造し、世界中の何百万人という音楽ファンに感動を与えた。
サヴァールが音楽を担当したアラン・コルノー監督の映画「めぐり逢う朝」(1991年)のサウンドトラックはセザール賞を受賞、また、その活発な演奏活動および録音企画は、古楽がエリート趣味あるいは少数にのみ支持される音楽では無いことを証明しており、ファン層を広げ、若い聴衆の心をつかんでいる。
これまでに、仏ル・モンド・ドゥ・ラ・ミュジク誌の“ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー”、仏ヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュジクの“ソリスト・オブ・ザ・イヤー”、スペイン“芸術金賞”、ウィーン・コンツェルトハウスの名誉会員を含む数々の名誉ある賞を受賞。またフランス文化省より芸術文化勲章オフィシエを授与されている。



サヴァールのサインが欲しくて買ってしまったCDです。3,000円の国内盤を買いましたが,ネットで1,290円の輸入盤を購入できる皆さんは幸せです。(キングさん,ごめんなさい。国内盤は日本語解説が付いているのでお薦めですよ!)

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サヴァール/《人間の声》~無伴奏ガンバ作品集
1998年デジタル録音。カタロニア出身の名ガンバ奏者ジョルディ・サヴァールによる無伴奏作品を集めたアルバム。
アーベル、J.S.バッハ、マレ、サント=コロンブをはじめとする 作曲家のガンバ(チェロ)作品などから曲を選び、サヴァール自身が5つの組曲に再構成、それそれが様々な作曲家による3~5曲からなる組曲としているのが特徴です。
表題のマレ作曲《人間の声》に代表されるように、極めて人声に近いガンバの特徴を活かした演奏です。6弦の1550年ザネッティ製の楽器を3種類の調弦、7弦の1697年ノーマン製と、2つの楽器を使い分けています。

私はCDにサインをもらいません。日付を覚えておきたいので,コンサートのパンフレットにサインしてもらうことが多いです。

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サインが終わった後,すっと手を差し伸べてぎゅっと握手してくれました。ううっ。

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写真撮影は「可」だったんですよ。


追記:この日はNHKさんが映像収録をしていました。11月に放送されるそうです。



ビゼー「アルルの女」の名盤

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ビゼー作曲の「アルルの女」は大好きな曲で,管弦楽曲の中からどれか1曲をあげろと言われたら,有力な候補となります。とにかくメロディが好き。そして魅力的な管弦楽法。

第1組曲「メヌエット」中間部のアルト・サクソフォーンとクラリネット,(同)「カリヨン」中間部のフルート,第2組曲「パストラール」の太鼓のリズムに乗って奏されるフルートとクラリネット(+ピッコロとオーボエ),(同)「間奏曲」のサクソフォン,(同)「メヌエット」のフルートによる旋律がどうしようもなく好きなのです。

ジョルジュ・ビゼー「アルルの女(L'Arlesienne)」

第1組曲(ジョルジュ・ビゼー編)
 第1曲「前奏曲」
 第2曲「メヌエット」
 第3曲「アダージェット」
 第4曲「カリヨン」

第2組曲(エルネスト・ギロー編)
 第1曲「パストラル」
 第2曲「間奏曲」
 第3曲「メヌエット」
 第4曲「ファランドール」

CDの聴き比べは以下に絞りました。Yahoo!ブログは最大5,000文字までなので!


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サー・トーマス・ビーチャム指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1956年4月21日

ビーチャムはロイヤル・フィルとの「ペール・ギュント」(1956・57年)がとても素晴らしかったので,すごく期待して購入したCDでした。買った当時は期待はずれで,その後長く聴いていなかったのですが,これはなかなか良い演奏です。全体にごつごつしていて肌触りが悪いのですが,その田舎っぽさが懐かしい感じがして心地良いです。他の盤は洗練されていて音楽の流れがスムーズなのですがこの演奏はところどころに引っかかるところがあります。しかし,各曲中間部の素朴な味わいにはぞくっとくるものがあり,当盤の唯一無二の魅力となっているのです。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
フィルハーモニア管弦楽団
EMI CLASSICS 1958年1月

カラヤンがベルリン・フィルの芸術監督&常任指揮者に任命されたのは1955年4月5日ですが,その後も1960年頃までフィルハーモニア管との録音は続けられました。「アルルの女」はベルリン・フィルとの録音が複数あるので,これは参考までに聴いてみたのですが,とても良かったのでご紹介しておきます。カラヤンの解釈に大きな変化はありませんが,音楽の流れが自然で力強く,颯爽として活力があり,表情づけが多彩で憎らしいくらい上手。オーケストラの総合的な魅力はベルリン・フィルに及ぶべくもありませんが,ビゼーの音楽に素直に浸れるという点で捨て難い魅力があります。

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イーゴリ・マルケヴィッチ指揮
パリ・ラムルー管弦楽団
PHILIPS 1959年12月

「カルメン」と「アルルの女」のそれぞれ第1組曲・第2組曲に小組曲「子供の遊び」(これのみオケはソヴィエト国立管弦楽団)を収録したビゼーづくしの1枚。いかにもマルケヴィッチらしいメリハリの利いた音楽で,以前褒めちぎった記憶がありますが,意外に古い時代の録音だったのですね。素晴らしい音でしたのでまったく気がつきませんでした。「アルルの女」の悲劇性なんて知ったこっちゃないというような割り切り方,潔さがかっこよく,シンフォニックかつスタイリッシュで現代的・機能的な名演。そこから浮かび上がるビゼーの音楽の美しさはたとえようもなく素晴らしいと思います。

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アンドレ・クリュイタンス指揮
パリ音楽院管弦楽団
EMI CLASSICS 1964年1月13-15日

名盤としての評価がダントツで録音評がすこぶる悪いCD。個人的には当初あまり魅力を感じずお蔵入りしていましたが,SACD化されたのを契機に聴き直して不明を恥じたという演奏です。情感の折込み方が独特で湿度が高いように感じられます。洗練と素朴の間の絶妙なポジションにある演奏であり,それゆえ多くの人の共感を得ることができるのでしょう。パリ音楽院管の蠱惑的な音色のおかげもあって,欠点と感じるようなことも「味わい」に置き換えてしまう絶対的な魅力があります。しかし,意外に素っ気ない部分もあったりしてクリュイタンスだったらもっとできるんじゃないでしょうか。ESOTERICのSACDで聴きましたがこれなら録音は悪くないと思いました。EMIのSACDとどっちが音質が良いのか気になるところです。

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イーゴリ・マルケヴィッチ指揮
モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
DENON 1969年

7月に発売されたタワーレコードの「コンサートホール原盤」復刻シリーズの1枚。マルケヴィッチが10年後に再録音していたなんで知らなかったので思わず買ってしまいました。フランスの地理に疎い私ですが,モンテカルロはアルルに近いのでしょうか,オーケストラの音色が曲に合っている気がします。前録音はどこか肩肘張ったようなところがあって,力づくで音楽をねじ伏せているようなところもあったのですが,この演奏はもっと柔軟で伸びやかな印象を受けます。完璧さでは旧録音,自然な感興は当録音ということで,これもご紹介しておきたいと思いました。音質は復刻に用いたテープの状態がよくないのか,この年代としては古めかしさを感じますが,鑑賞するのには全く差し支えないです。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ダニエル・デファイエ(sax)
Deutsche Grammophon 1971年12月28・29日

私が初めて買った「アルルの女」です。当時は「カルメン」組曲が好きで「アルルの女」にはそれほど魅力を感じていなかったのですが,第1組曲のメヌエットとカリヨン,第2組曲のメヌエットを飽きずに繰り返し聴いていました。「刷り込み」となってしまっている演奏なので客観的な感想を書くのが難しいのですが,オーケストラを徹底的に磨き上げた,洗練の極みとも言うべき演奏ですが,あまりに完璧過ぎて壁を感じます。もう少し素朴さがあったら言うことなしの超名演になったでしょう。しかし,カリヨン中間部の極上の木管アンサンブルなど他では聴くことができず,ついつい手を伸ばしてしますCDとなっています。第2組曲のメヌエットは当盤が最高でしょう。鳥肌モノですよ。

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ミシェル・プラッソン指揮
トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
アンチョン・アイェスタラン合唱指揮
オルフェオン・ドノスティアーラ合唱団
EMI CLASSICS 1985年

この盤以前に全曲版の録音が存在していたのか知りませんが,(オリジナル編成ではないけれど)劇音楽「アルルの女」作品23バージョンです。手軽に全曲が聴けるなんて本当に良い時代になったと思いますが,このCDを中古ショップでよく見かけるのは,期待ハズレに思う人が多いからでしょうか。組曲版は名曲揃いなので,他にも良い曲があるに違いないと思って聴くと,あれっ?ということになります。同じ27曲でもグリーグの「ペール・ギュント」とは違うのです。「アルルの女」全曲版はオーケストラの編成も特殊ですし,フラグメント集みたいに聴こえますので。だから,ビゼーが第1組曲を編曲した後,残された曲で第2組曲を構成しなければならなかったギローは素材不足に陥って歌劇「美しきパースの娘」から1曲(メヌエット)転用しなければならなかったのでしょう。さて,このCDの演奏について触れると,各曲に対するプラッソンの解釈は理想的と思いますし,優秀なオーケストラと合唱,エコーの多い録音によって聴き栄えのする演奏に仕上がっています。全曲版もなかなか捨てたもんじゃないと思うのですが,後に登場するリッツィ盤に比べると少々華美にも感じられますね。あと,国内盤では全5幕と表示されているのが不思議で,リッツィ盤は全3幕です。プラッソン盤は全27曲を11トラックにまとめているのも不便です。

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クリスファー・ホグウッド指揮
セント・ポール室内管弦楽団
DECCA 1989年11月

オリジナル・スコアから6曲(前奏曲,メヌエット,導入曲,メロドラム,パストラル,カリヨン)を抜粋して編まれたホグウッド版のオリジナル組曲です。「アルルの女」に対する私の関心がこちらのスタイルに向いてしまっているので,このような演奏は大歓迎です。前奏曲は小編成のほうが聴きやすいと思うのです。ハープではなくピアノなのが新鮮ですし,メヌエットも弦が少ないので物足りなさを覚えますが,全てがよく聴こえるので楽しいです。導入曲は間奏曲のことで明るさが際立ちます。メロドラムはカリヨン中間部に挟まれてアダージェットが弦楽四重奏で演奏されますが,このほうが曲にふわしいと感じます。パストラルも組曲版では威圧的に始まりますがこの演奏は小気味よいですね。なお,パストラルの中間部はありません。次のカリヨンも同様で実に爽やかです。これも中間部がないのであっという間に終わります。ホグウッドには,バーゼル室内管弦楽団との再録音(Arte Nova)がありまして,そちらを取り上げたかったのですが,今回は間に合いませんでした。

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カルロ・リッツィ指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
テリー・エドワース合唱指揮
ロイヤル・コヴェント・ガーデン歌劇場合唱団
TELDEC 1994年11月

前奏曲,第1幕(第2~6曲),第2幕(第7~17曲),第3幕(第18~第27曲)の全曲盤です。同じ全曲でもプラッソン指揮と比べるとこちらのほうが素朴で劇付随音楽らしい趣があります。全体に小気味よく威圧感のない演奏なので安心してビゼーの音楽に浸れますし,27トラックに分割されていますので,資料的な価値もありますね。ただ,組曲版のアレンジを用いていている曲もあり,折衷的です。組曲版となるべく違和感がないよう聴いてもらおうという配慮なのでしょうけれど,そろそろオリジナル編成による全曲盤を聴いてみたいところです(存在するのかな?)。ただ,このリッツィ盤の演奏はなかなか良くて私のお気に入りなのです。あれこれ策を弄せず正攻法で演奏しているのが良く,地味で物足りないと感じる人もいるかもしれませんが,「アルルの女」の音楽の素晴らしさを素直にありのままに表現している演奏と思います。あまり売れなかったCDでしょうし,再発売の見込みもないと思いますが,中古ショップで見かけたら入手することをお勧めします。

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マルク・ミンコフスキ指揮
レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル
リヨン歌劇場合唱団
Naive 2007年

第1組曲と第2組曲の間に劇付随音楽から選んだ7曲を演奏するという不思議な構成は中途半端かも? 演奏は素晴らしいです。緩急自在で切れが良く伸びやかで繊細な歌を聴かせてくれる前奏曲,快速テンポでやはり小気味よいメヌエット,一転して荘重(サウンドは軽やか)なアダージェット,リズムの刻みがユニークなカリヨンは中間部がとても美しい,といった具合にとても洗練されています。挟まれたミンコフスキ編の7曲はパストラルから始まるので,第2組曲だと思って聴いていた人は途中で驚くでしょうね。この7曲(合唱入り)が最大の聴きものかもしれません。全曲盤だったらよかったのにと思いました。第2組曲から聴き慣れたギロー編でオリジナル楽曲との比較という形になりますが,同じ曲が形を変えて繰り返されていることに不思議な気持ちになります。オリジナルを聴いてしまった後なので,第1組曲のときのような新鮮さをあまり感じません。アルバムの構成としてはよろしくないような気がするのですが,ミンコフスキという人はチャレンジ精神旺盛な人なので,あれこれやってみたいのでしょうね。ファランドールは期待どおりの盛り上がりですが,それにしてもルーヴル宮音楽隊って,よいオーケストラですね。


「アレやコレが入ってないじゃん!」と思うかもしれません。私もアレやコレは入れなきゃいけないと思ったのですが,それらは次回(未定)のお楽しみということで,今回はご容赦いただきたいと思います。


最後に,以前の記事で「(私はそう思っていないけれど)コケおどしのダサイ曲」と書いたのはこの曲ではありません。念のため!




ホルスト「惑星」の名盤

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この曲は,2009年の1月24日(土)にアップしていました。

当時のコメント欄に「夏になったら挑戦してみます」と書いてありましたので,改めて記事にしてみたいと思います。

グスターヴ・ホルスト
大管弦楽のための組曲「惑星」(The Planets)作品32

火星,戦いをもたらす者(Mars, the Bringer of War)
金星,平和をもたらす者(Venus, the Bringer of Peace)
水星,翼のある使者(Mercury, the Winged Messenger)
木星,快楽をもたらす者(Jupiter, the Bringer of Jollity)
土星,老いをもたらす者(Saturn, the Bringer of Old Age)
天王星,魔術師(Uranus, the Magician)
海王星,神秘主義者(Neptune, the Mystic)


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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
DECCA 1961年9月
ウィーン,ゾフィエンザール

この曲をローカル名曲からインターナショナル名曲に押し上げた録音と言われています。いまだにこの演奏が最高という人もいるでしょうけれど,名盤がいっぱい現われてしまった今日,改めて聴くと少々複雑な思いがします。指揮者もオーケストラも頑張っているけれど,少々ぎこちなさを感じます。それが初々しくてよいのかもしれません。「木星」以降の演奏が好きですが,この演奏の売りは何と言ってもウィーン・フィルの独特な音色でしょう。なお,この録音に関しては斜めのジャケットのOIBP盤のリマスタリングはよくないと思います。

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ズビン・メータ指揮
ロサンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団
ロジェ・ワーグナー合唱指揮
ロサンジェルス・マスター・コラール女声合唱
DECCA 1971年4月
ロサンジェルス,ロイスホール

DECCAのスペクタル名曲路線を担当していた頃のメータ/ロス・フィルのコンビによる演奏。楽譜に書かれている音符は全部聴かせてやんよという録音とダイナミックな演奏による効果満点な1枚。意外に「金星」や「水星」も良いです。このタイプの名演奏・名録音が多くなってしまった今となっては分が悪いのですが,忘れられない一枚です。

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レナード・バーンスタイン指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
アブラハム・カプラン合唱指揮
カメラータ・シンガーズ
SONY CLASSICAL 1971年11月・12月
ニューヨーク,エイヴリー・フィッシャー・ホール

中学生の頃,友人宅で聴かせてもらった演奏で,「惑星」全曲を聴いたのはこのときが初めてだったと思います。「火星」や「水星」はこんなにテンポが速かったかなぁ。瑞々しい感性と覇気がみなぎるバーンスタインによる若々しい熱演といったところでしょうか。ややオフマイク気味の録音ですが,悪くはありません。「水星」なんてとても良いと思います。

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ユージン・オーマンディ指揮
フィラデルフィア管弦楽団
ロバート・ペイジ&マリア・ザッツマン合唱指揮
フィラデルフィア・メンデルスゾーン・クラブ
RCA 1975年12月18日
フィラデルフィア,スコティッシュ・ライト・カテドラル

オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団が残した多くの録音の中でも最高傑作のひとつではないでしょうか。輝かしいサウンドはやや高域を持ち上げた録音のせいもあり大変豪華な印象を与えます。少々やかましいですけれどね。指揮も,オーマンディってこんなに濃い味つけをする人だったっけ?と思わせるような高カロリーのものです。効果満点という言葉はこちらに使うべきでした。そういう演奏であり録音です。「土星」ラスト近くのオルガンの重低音がすごい……。

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エイドリアン・ボールト指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ジェフリー・ミッチェル合唱団
EMI CLASSICS 1978年6月・7月
ロンドン,アビー・ロード第1スタジオ

「惑星」のスペシャリストであるボールトの5回目にして最後の録音(ですよね?)。「惑星」はボールト指揮の演奏が一番というコメントをよく見かけます。そんなに決めつけなくてもいいじゃんって思うんですけれど,こうして聴き比べてみると,やはりこれは名演であったのだなと感心します。どの曲もこう演奏されなければいけないというような信念が感じられ,まさにその通りだと思わされます。演奏効果が節度を保ちつつきちんと表現されているのが素晴らしく,感動的でもあります。聴き比べの最後にもう一度聴き直してみたいと思わせる名盤。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
RIAS室内合唱団
Deutsche Grammophon 1981年1月
ベルリン,フィルハーモニーザール

カラヤンの20年ぶりの再録音。晩年になってなぜこの曲?という思いもありましたが,録音してくれて感謝したい演奏です。前録音はオーケストラの音色が面白かったものの未熟な印象がありました。しかしこのベルリン・フィルとの再録音は,音楽づくりの完成度が高く,「惑星」のお手本といっていいくらいの名演だと思います。。
なお,OIBP(KARAJAN GOLD)盤のほうがゴージャス感がありますが,初期デジタル録音の情報量の少なさをエコーでごまかしているような気もします。私は初期盤のほうが好きで,オーケストラの音が自然で楽器の分離がよいですし,例えば「天王星」フル・オルガンの上行グリッサンドも初期盤のほうがきちんと聴こえていました。(でも,初めて買う人はOIBP盤のほうが聴き映えがしてよいかも。)

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ロリン・マゼール指揮
フランス国立管弦楽団
フランス国立放送合唱団
SONY CLASSICAL 1981年
パリ,フランス国立放送104スタジオ

マゼールはなにかやってくれるのではないかと期待させる指揮者ですが,この演奏も裏切りません。それがあちこちにそれがあるわけではなく,どこかはネタバレになるので書きませんが,興味がある人は聴いてみてください。いや,興味がなくてもこの「惑星」は秀演と思いますので是非。楽器のバランスがとてもよく,聴いていて非常に気持ちがよいです。録音も優秀です。全体的に美しく丁寧に仕上げた演奏で,フランスのオーケストラらしい色彩感も魅力的です。

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シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団
イワン・エドワース合唱指揮
モントリオール合唱団
DECCA 1986年6月
モントリオール,聖ユスターシュ教会

頭に楽譜が浮かんでくるようなDECCAらしい精密な描写の録音。オルガンの音が最もよく聴こえます。私は一時期このCDが一番好きだったのですが,やっぱりいいですね。初めて聴いたときは,モントリオール交響楽団がここまで壮麗な音が出せるオーケストラと思わなかったので驚きました。聴かせ上手なデュトワの指揮にも全く不満はなく,演奏・録音共に総合点の高いCDでしょう。無難な演奏ともいえますが,この洗練度,完成度の高さは一頭地を抜いていると思います。

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コリン・デイヴィス指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ディートリヒ・クノーテ合唱指揮
ベルリン放送女声合唱団
PHILIPS 1988年11月
ベルリン,フィルハーモニー

指揮者の誠実な人柄を想像させる演奏です。したがって「金星」「水星」「土星」「海王星」は美しい演奏で申し分のない丁寧な仕上りです。「火星」「木星」「天王星」も各曲がもつ演奏効果をストレートに生かした力強いもので大変聴き応えがあります。そしてベルリン・フィルのアンサンブルはカラヤン盤より一層緻密ですので,こちらを好む人も多いでしょう。録音が優秀なのも嬉しいですね。飽きの来ない名演だと思います。〔以上,書き直しました〕

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ジェイムズ・レヴァイン指揮
シカゴ交響楽団
マーガレット・ヒリス合唱指揮
シカゴ交響女声合唱団
Deutsche Grammophon 1989年6月
シカゴ,オーケストラ・ホール

このCDを購入したとき,これで「惑星」のCDはもう買う必要がないと思った演奏であり録音でした。シカゴ交響楽団によるこの曲のスペクタキュラー路線での決定的演奏に,お腹がいっぱいになってしまったのです。オーケストラが優秀で,録音もよく,レヴァインも演出巧者で,言うことなしです。ひとつの方向の頂点。でも,聴いているうちに疲れてきちゃう?

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ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
アーヒム・ホールプ副指揮
フィルハーモニア管弦楽団
モンテヴェルディ合唱団(女声)
Deutsche Grammophon 1994年
ロンドン,オールハローズ・ゴスペル・オーク 

ガーディナーの「惑星」ってなんか違和感がありますが,ガーディナーはホルストに縁があるのだそうです。このCDは購入したときから好きで,個人的にはレヴァイン/シカゴ響の定評ある演奏よりしっくりくるのは,イギリスの指揮者とオーケストラによる演奏だからでしょうか。各曲の性格分けが的確で,オーケストラも巧く,録音も大変優秀ですから最初の1枚としてもお薦めです。世間の評価があまり高くないみたいで残念。良い演奏だと思うんだけどな。併録のグレインジャーの「戦士たち(管弦楽と3台のピアノのための想像上のバレエの音楽)」が面白い曲で,なかなかポイントが高いCDです。

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サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
グリットン・ロビン,サイモン・ハルジー合唱指揮
ベルリン放送合唱団
EMI CLASSICS 2006年3月16~18日
ベルリン,フィルハーモニー

再生装置を選ぶCDで,スピーカーによって驚くほど印象が異なります。雰囲気で聴かせるタイプのスピーカーでは欲求不満が溜まりますが,分解能・解像度が高いスピーカーで聴くと優秀録音だと思えます。けして悪い録音ではないです。「火星」はいかにも優秀な指揮者とオーケストラによる充実したサウンドでラストはなかなか壮絶。じっくり遅い「金星」はベルリン・フィルの名技のせいもあって天国的な美しさがありますし,いつもながら小気味良く駆け抜ける「水星」も意味ありげに演奏されます。「木星」の緩急変化にラトルのセンスの良さを感じますし,「土星」も深みと重みのある演奏です。最も凝った管弦楽法を聴かせる「天王星」もベルリン・フィルならではの色彩感豊かな演奏で,「海王星」もメルヘンティックかつ神秘性豊か。このまま終わってくれればよかったのですが,最後にコリン・マシューズ作曲の「冥王星、再生する者」(Pluto, the renewer)が演奏されちゃいます。「冥王星」だと思われなければ,面白い曲です。重低音がすごい!

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【参考盤】
ジェイムズ・ワトスン指揮
ブラック・ダイク・ミルズ・バンド
キース・オーレル合唱指揮
ハレ合唱団
DOYEN 1996年

ホルストは「惑星」の編成を変えたり抜粋で演奏することを厳禁したそうです。私が初めて聴いた「惑星」(の「木星」)は吹奏楽版だったのですが,割りとイケますね。このCDはスティーブン・ロバーツの編のブラスバンド版で,弦どころか木管楽器もなしのブラスバンドによる演奏です。この曲で弦と木管ナシ(オルガンと一部の打楽器もナシ。しかし,琴みたいなハープがでかい音で響くし,海王星には女声合唱が付く)というは聴く方にとってもかなりきついものが予想されますが,実際「火星」「木星」「天王星」のような色彩的な曲は違和感があります。しかし,「金星」は大人のムードが漂うし,「水星」は別の曲みたいだし,途中まではよかった「土星」,ハープ協奏曲みたいな「海王星」と楽しめました。提供してくれた人に感謝。


意外にCDをもっていましたが,とても全部について書けないし,文字数制限もあるから,何枚かは割愛しました。なんだかんだ言って,私,「惑星」好きなんだなと思いました。

ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」の名盤

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2週間ぶりでしょうか。先週も記事を書くには書いたのですが,気に入らなくてボツにしました。ブログをやる気が失せてきた今日この頃。自分のホームページをつくるのが面倒だったのでブログを始めたのですが,最近は発信の手段っていろいろあるじゃないですか。TwitterとかFacebookとか。ブログにするほどのこともない落書きみたいな文章はTwitterで十分と考えました。でもね,なんかイマイチなんですよ。Twitterは情報を得るためのツールと割り切ったほうがいいみたい。FacebookTwitterのデカイやつという感じかな。Facebookは凝った記事を書くのには向いていないので,やっぱりブログしかない? ちなみに私が記事をひとつ書くのにどれだけ時間がかかっていると思います? ざっと十数時間です。コメントの返事を書く時間も入れると大変な時間です。何が言いたいか,わかる人はわかりますよね? そういえば先日,知人が熱心に勧めるのでスマートフォンにLINEをインストールしました。これはハマりました。普通のメールでもいいんですけれど,LINEのトーク(テキストチャット機能)のほうが話が弾みます。なぜだろう? そんなわけで,今後私への連絡はLINEでお願いします!

さて「ラプソディ・イン・ブルー」ですが,作曲者の名前で躓きました。「ガーシュイン」と「ガーシュウィン」,どちらが一般的でしたっけ? 「ガーシュイン」じゃなかった?

どちらで検索しても約774,000件ヒットしますが,7月に記事を書いたL氏も含め,世の中「ガーシュウィン」のほうが多いみたいです。長い物には巻かれたい私ですので,以下「ガーシュウィン」にします。

ラプソディ・イン・ブルー」は,書くのが難しいです。なお,演奏時間を記していますが,これはあくまでご参考。演奏時間が短い=テンポが速い,じゃないです。念のために書いておきます。

ジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin)作曲
ファーディ・グローフェ(Ferde Grofe)編曲
ラプソディ・イン・ブルー(Rhapsody in Blue)

Gershwin: Rhapsody in Blue
hr-Sinfonieorchester
Fazil Say, Klavier
Carlos Miguel Prieto, Dirigent
(参考演奏としてご紹介するには個性的過ぎましたね。)


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アール・ワイルド(ピアノ)
パスクワーレ・カルディルロ(cl)
アーサー・フィードラー(指揮)
ボストン・ポップス
RCA 1959年5月

16分21秒。アール・ワイルドというピアニスト,よく知らないのですが,ウィキペディアによると「1942年にトスカニーニに招かれ、ガーシュウィンの《ラプソディー・イン・ブルー》によってオーケストラと初共演を行い、大々的な成功を収め、名声を確かなものにした」のだそうですね。彼にとって因縁のある曲ですが,なるほどと思わせる見事なピアノです。名人って感じの素敵な味わいのあるピアノ。オーケストラもポップスという名称だけあってノリがよいです。腰軽ではなく充実したサウンドを聴かせてくれるのがありがたいですね。録り方が古い(音質はよい)せいで,演奏も若干古臭さを感じさせないでもないですが,それがよいのです。古き良き時代,懐かしさを覚えます。こういう演奏が好きです。


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レナード・バーンスタイン(ピアノ)
レナード・バーンスタイン(指揮)
コロンビア交響楽団
SONY CLASSICAL 1959年6月

16分31秒。名盤の誉れ高い1枚。実は苦手な演奏でした。重たい演奏に感じられたのです。ピアノもオーケストラも立派過ぎるように感じ。リズム感覚の良さを称える評論家が多いけれど,そうなの?って思っていました。今回改めて聴いてみてのですが,やっぱり立派な演奏でした。この曲はクラシック音楽であるということを実感します。繰り返して聴いているうちに,バーンスタインのピアノの抒情的な,詩的な美しさに打たれました。大変ドラマティックでもあります。他と比べると異色ですが,古さを超えて語りかけてくるものがある説得力がありました。なお,ロサンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団との1982年3月(Deutsche Grammophon)録音は未聴です。


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アンドレ・プレヴィン(ピアノ)
ジェルヴァーズ・ド・ペイエ(cl)
アンドレ・プレヴィン(指揮)
ロンドン交響楽団
EMI CLASSICS 1971年6月

14分42秒。プレヴィンのCDはあまり持っていないです。この曲はプレヴィンじゃなきゃって思うものが少ないんです。メンデルゾーンの「真夏の夜の夢」(ロンドン響とのほう)は良かったですが……。しかし,この「ラプソディ・イン・ブルー」は素晴らしいです。このCDが一番好きかも? ここまでの3枚でこの曲の聴き比べは終わりにしてもよいです。若い頃に天才ジャズ・ピアニストと呼ばれただけあって,プレヴィンのピアノが最も「らしく」聴こえます。そしてとても美しい。とても生き生きとして,こんなにピアノが魅力的な演奏は他にないと思います。オーケストラ共々,ちょっとどっしりし過ぎているかもしれませんが,ピアノ協奏曲的な演奏ではこれが一番と思います。本当に素晴らしい!


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アンドレ・プレヴィン(ピアノ)
アンドレ・プレヴィン(指揮)
ピッツバーグ交響楽団
PHILIPS(今はDECCA)1984年

14分01秒。一般にはロンドン響との旧録音よりこっちのほうが評価が高いのです。それはわかるような気もするのですが,うーん,私は旧録音のほうが好きだな。こちらのほうが美しいんですよ。よくこなれているというか,洗練されているというか,録音も優秀な感じがしますし。コンサートホールの良い席で聴いているような録音で,残響も豊か。でも,それが物足りない。ベールを被せているような録音なんです。旧録音のほうがピアノが生々しくて直接的に伝わるものがあります。この演奏だけ聴けばこれはこれでよいですけれど,ロンドン響のほうが私の好みです。好きなんだからしかたがない。


マイケル・ティルソン・トーマスは,縁が深いガーシュウインを大事にしている指揮者です。3種類の録音がありますので,それらを聴いてみます。

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ジョージ・ガーシュウィン
(1925年製ピアノ・ロール)
チャールス・ルッソ(cl)
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
コロンビア・ジャズ・バンド
SONY CLASSICAL 1976年6月

13分46秒。「ラプソディ・イン・ブルー」が初演されたのは1924年ですが,その翌年に作曲者が残したピアノ・ロールに合わせ,オリジナル・ジャズ・バンド・スコアを捜し出して用いたという超こだわりの1枚。ガーシュウィンのピアノ・ロールはソロだけでなくオーケストラ部分も演奏してしまっているので,オーケストラ部分の穴をすべて埋め,ソロだけを演奏するように苦労して加工したのだそうです。向こうからはけして合わせてくれないピアノ・ロールと演奏するのはすごく大変だったのではないでしょうか。ガーシュウインのピアノを想像させてくれる貴重な演奏です。素晴らしいピアノだったのでしょう。脳内補完して聴けば,この曲の最高のピアノです。奥歯に物が挟まったような書き方をしていますが,ピアノとオーケストラ(バンド)に温度差を感じるのです。バンドの演奏はとても素晴らしいのですが,ピアノが同じ空気を吸っていないので違和感を覚えるのでしょう。録音は大変優秀です。併録の「パリのアメリカ人」がまた素晴らしい。


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マイケル・ティルソン・トーマス(ピアノ)
ロリン・リーヴィー(cl)
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
ロスアンジェルス・フィルハーモニック
SONY CLASSICAL 1982年2・10月

15分50秒。「今回の録音は,1924年の初演当時のオリジナル・スコアを細部に至るまで忠実に復元したもの」だそうで,「ガーシュウイン自身の演奏を手本にしたもの」であり,「初演に立ち会った人たちの助言や意見を参考にしている」のだそうです。今回もこだわっていますね。前回はピアノに違和感を覚えましたが,今回はMTT自らのピアノですからその点は大丈夫。理想とする「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏するにあたり,他のピアニストの起用なんて考えられないのでしょうね。実際,今回聴いた中では最も巧いピアノだと思います。ガーシュウィンの完璧な再現を目指したピアノ。ただ,不思議なことにこの演奏,聴いているうちについつい他のことを考えてしまうのです。完璧過ぎて親近感が湧かないのか,ちょっと求心力が少なめ。録音は今回も優秀です。


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マイケル・ティルソン・トーマス(ピアノ)
ジェローム・シマス(cl)
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
ニュー・ワールド交響楽団
RCA 1997年1月

17分26秒。三たび「オリジナル・ジャズバンド版」で「初演時にホワイトマン楽団が演奏した版」だそうです。確かに前2枚はいずれも優秀録音でしたが,今回はさらに「ラプソディ・イン・ブルー」のすべてを聴かせちゃいますとでもいうような録音。普段は聴こえにくい楽器もこのCDではバッチリ聴こえます。こういうのを聴いていると,「ラプソディ・イン・ブルー」はジャズ・バンド版に限ると言いたくなります。元々不思議な構成の曲なのですが,ジャズ・バンド版のほうがすんなり聴けてしまうのです。前回は少しよそ行きの顔を見せていたピアノですが,今回は本来のMTTを取り戻したみたい。マイケル・ティルソン・トーマスによる「ラプソディ・イン・ブルー」を聴くならこのCDが一番完成度が高と思います。もう一回聴き直したら感想が変わるかもしれませんが,たぶんこれでOKです。


ところで,今年9月6日(金)のサイトウ・キネン・フェスティバル松本Gig(キッセイ文化ホール)で「ラプソディ・イン・ブルー」が演奏されましたよね。テレビでご覧になった方も多いと思います。

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大西順子(ピアノ)
小澤征爾(指 揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ
2013年9月6日
キッセイ文化ホール
(長野県松本文化会館)

演奏についてどうのこうの書いてもしょうがない,とにかくハラハラドキドキの大変楽しい演奏でした。大西順子がこう弾きたい,小澤征爾がそれじゃ合わせられないとか言い合ってるシーンから始まり,オーケストラとのリハーサルもなんかギクシャクしていて不安になります。本番直前,めちゃくちゃ緊張している大西順子が可愛らしい。終演後,あそこさえ弾けていたら80点だったのに!と残念がる彼女を見て,音楽をするのっていいなぁとつくづく思いました。

なぜSKOと大西順子が"ラプソディー・イン・ブルー"をやるのか
小澤征爾×村上春樹×大西順子

プロコフィエフ「キージェ中尉」の名盤(というには少ない)

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ハンガリーの作曲家を続けるつもりだったのですが,さすがにちょっと飽きてきたので予定を変更してプロコフィエフ(1891-1953)の「キージェ中尉」にしたいと思います。交響組曲ですよ。

映画音楽として作曲したものを基に組曲化したものです。いろいろなところに書かれているあらすじを集約すると,概ねこのような物語のようです。

・皇帝が昼寝をしている。
・宮廷内から女官の悲鳴が聞こえてくる。
・眠りを妨げられて激怒した皇帝が,侍従に今日の責任者は誰かと問う。
・しかし,当直名簿には「中尉」としか記されていない。
・侍従が「ポルーチキ……ジェ(中尉……です)」と答えたのを,
 皇帝は「ポルーチク・キージェ(キージェ中尉)」と聞き違え、
 存在しないはずのキージェ中尉をシベリア送りにしてしまう。
・その後,皇帝は思い直す。
・暗殺者から皇帝を守るために
 キージェ中尉はわざと女官に悲鳴を上げさせたのかもしれない,と。
・皇帝はシベリアからキージェ中尉を呼び戻すよう命令し,
 宮廷一の美女を花嫁にしようということになる。
・花婿(キージェ中尉)不在のまま盛大な結婚式が行われる。
・しかし,そもそも実在しない人物なので,困ったことがいろいろ起こる。
・万策尽きた侍従は,キージェ中尉の死亡を公表する。
・キージェ中尉の葬儀が国葬で行われる。
・皇帝は,忠義を尽くしてくれたキージェ中尉の不運に涙を流す。

1934年公開の「キージェ中尉」
(すごい! YouTubeってなんでもあるんですね!)

一般に知られているあらすじとだいぶ違いますね。叫び声を上げたのは女官じゃないし。

正しいあらすじを作成したいところですが,それはこのブログの趣旨ではないので断念します。いや,ただ単に面倒くさいだけなんですけれども。

セルゲイ・プロコフィエフ
交響組曲「キージェ中尉」作品60
1.キージェの誕生
2.ロマンス
3.キージェの結婚
4.トロイカ
5.キージェの葬送

Sergey Prokofiev - Lieutenant Kij? / Поручник Киже
(Cleveland Orchestra,George Szell)

ピッコロ,2フルート,2オーボエ,2クラリネット,2ファゴット,テナー・サクソフォン。
4ホルン,コルネット,2トランペット,3トロンボーン,チューバ。
バス・ドラム,ミリタリー・ドラム,トライアングル,シンバル,タンブリン,スレイ・ベル。
ハープ,チェレスタ,ピアノ。
弦楽5部(ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバス)。

ティンパニが無いんです。その代わり,第1曲ではバス・ドラムがfffで鳴り響きます。

第2曲と第4曲はバリトン独唱が入るのが正しいのですが,今回取り上げたCDでは小澤盤以外は管弦楽のみで演奏しています。通常はそうみたい。

バレエ音楽「ロメオとジュリエット」に似ているなぁと思うんですが,「ロメオとジュリエット」が完成したのは1935年なので,「キージェ中尉」のほうが先に作曲されたのですね。



結論から申し上げると,今回ご紹介する4枚はどれも良い演奏で,いずれを購入しても大丈夫です。どれか1枚と言われると,どうしても録音の良いもの,オーケストラが巧いものを選びたくなります。

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ジョージ・セル(指揮)
クリーヴランド管弦楽団
SONY CLASSICAL 1969年
クリーヴランド,セヴェランス・ホール

先頃,ジョージ・セル・エディションという49枚組BOXが発売されました。SONY CLASSICALから発売されていたセルのCDを集めたものですが,1970年頃が一番最後なのですね。この「キージェ中尉」1969年録音ですから,SONY CLASSICALにおける最後期。録音年にこだわったのは,先日セルのCDは録音がよくないものが多いなんて書いてしまったのですが,録音年が新しいだけあって,これは良いと思います。ちょっと効果を狙った録音ですが,生々しく鮮明な音です。やや硬調で平べったい感じがするし,第1曲のfffのバス・ドラムをはじめとして強音時の打楽器が少し歪むのが惜しいですけれど。

セル指揮のクリーヴランド管弦楽団ですから究極鉄壁のアンサンブルで非の打ち所のない安定した演奏です。それが非常に気持ちよく,安心して聴いていられます。安定とか安心とか書くと,穏当な演奏のように思われますが,プロコフィエフのオーケストレーションの妙を,リアルに捉えた録音のおかげで十分味わうことができますし,全体に情感たっぷりで,美しいメロディをたっぷりと歌わせていて,何度聴いても飽きないよさがあります。録音のせいでややドライな印象があり損をしているかもしれませんが,素晴らしい演奏ですよ。


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クラウディオ・アバド(指揮)
シカゴ交響楽団
Deutsche Grammophon 1977年2月
シカゴ,オーケストラ・ホール

故長岡鉄男さんが「アレクサンドル・ネフスキー」の録音をすごく褒めていたので,買ったCDです。よく見ると「アレクサンドル・ネフスキー」はロンドン響,「スキタイ」と「キージェ」はシカゴ響で録音会場等も異なるのですが,後者も優秀録音ではないでしょうか。ジャケット画像(これはLP)のとおり,まだ若いアバドが残した傑作だと思います。

オーケストラがシカゴ交響楽団ですからね。第1曲は推して図るべしってなもんです。オケがバリバリ鳴りまくっていて爽快です。バス・ドラムの連打も歪みがなく量感も十分で,アナログ後期の優秀録音を満喫できます。バス・ドラムの迫力は今回聴いた中で随一かも。いや,そこが好きなもので。第2曲も叙情的で良い演奏ですが,アバドの常として踏み込みが浅いというか,少々あっさりしているのが物足りないのですが,贅沢な望みかもしれません。第3曲も同様で品が良い演奏という気がします。第4曲はきっちりまとめられていて小気味良さはあるものの,ワクワク感にいささか乏しいような。終曲は良いですね。各楽器が切々と歌うメロディには心がこもっていて,そしてとても美しくて,皇帝でなくても涙してしまうことでしょう。


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クラウス・テンシュテット(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1983年9月
ロンドン,アビー・ロード第1スタジオ

テンシュテットはマーラー指揮者というイメージが強いのですが,いわゆる大曲だけでなく,こうした名曲も上手いですよね。グレートEMIレコーディングスという14枚組はテンシュテットの才能を満喫することができるBOXだと思います。お買得価格ですし。

そのBOXにも収められている「キージェ中尉」は素晴らしいと思います。名コンビとなるロンドン・フィルの音楽監督に就任した年の録音ですが,オーケストラが指揮者に心酔し奉仕しているように聴こえます。各旋律の歌わせ方,テンポの設定,楽器のバランスなど,各場面にふわさしい出来だと思いますし,プロコフィエフの音楽のほの暗さ,皮肉っぽさなどもよく出ていると思います。

ロンドン・フィルは,さすがに他の3つのオーケストラに比べると分が悪いというか,独奏の巧さで聴かせるとかそういうことが少なく,全体に洗練の度合いが低いのですが,ワクワク感・ドキドキ感はこちらのほうがずっと上ですね。なんだかすごく魅かれるんです。ドラマティックで白熱した演奏というと言い過ぎかもしれませんが,熱っぽさがあり,ホント,気持ちのよい演奏を聴かせていただきました。この演奏が一番好きかも。


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小澤征爾(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アンドレアス・シュミット(バリトン)
Deutsche Grammophon 1990年11月
ベルリン,フィルハーモニーザール

小澤征爾は1989~1992年にプロコフィエフ交響曲全集を相性の良いベルリン・フィルとデジタル録音していまして,小澤征爾ならではの仕事だと思うのですが,この全集には交響曲以外に「キージェ中尉」が収録されていますので,それを聴いてみます。なお,第2曲と第4曲はバリトン独唱入りで,珍しいけれどこれが正解なのだそうです。

ベルリン・フィルによる「キージェ中尉」,なんとも贅沢なサウンドです。このオーケストラならではのしっとり感と木目の細かさは耳にご馳走ですね。また,重厚なアンサンブルはプロコフィエフにふさわしく,かつメルヘンっぽくもあっていいですね。シュミットのバリトンは美声による誠実な歌唱です。「灰色の小鳩が悲しんでいる」と歌っているのでしたっけ。ディースカウのお弟子さんだけあって,歌い方が師匠に似ていますね。バリトン独唱が入ったほうがロシアっぽくて私は好きです。第3曲は個人的にはやや魅力に欠ける曲なのですが,それでもベルリン・フィルだと聴けてしまいます。素晴らしいオーケストラ。第4曲で再びバリトン登場。真面目(紳士的)過ぎるのでもう少しくだけた感じがあると面白いと思うのですが,このように歌が入ったほうが曲にふさあわしく音楽が生き返ったような感じがします。第5曲も音楽よりベルリン・フィルを聴いてしまいます。今さらですが,素晴らしいオーケストラです。



あと,この曲こそ,ライナー/シカゴ交響楽団の演奏で聴いてみたいところです。

ロシアの演奏家による録音をあまり見かけないのですが,私の探し方が悪いのかな。


ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲の名盤(前口上)

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ウィキペディアのコピペですが,この曲の編成は以下のとおりです。

木管楽器
フルート2、ピッコロ、アルトフルート、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、小クラリネット、バスクラリネット、ファゴット3、コントラファゴット

金管楽器
ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、チューバ

打楽器
ティンパニ、バスドラム、スネアドラム、タンブリン、タムタム、ウィンドマシーン、チェレスタ、グロッケンシュピール、シロフォン、トライアングル、カスタネット、クロタル、シンバル

弦楽器
ハープ2、弦楽5部

バンダ
ピッコロと小クラリネット(舞台上)、ホルンとトランペット(舞台裏)

合唱
混声4部(舞台裏)

新交響楽団さんの解説がとってもわかりやすかったので(勝手に)引用させていただきました。ごめんなさい。

モーリス・ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲

【第1部】パンの神とニンフの祭壇の前
 序奏
  聖なる森のはずれにある野原。
  春の午後、若者たちはニンフの祭壇へ祈りを捧げる。
 宗教的な踊り
  ♪ヴァイオリンによる優美な旋律
  ダフニスとクロエがそれぞれ登場。
  ダフニスを囲んで踊る娘たちにクロエが嫉妬。
  ♪軽快な7拍子
  ドルコンがクロエに接近。ダフニスは割り込む。
 全員の踊り
  ダフニスとドルコンは踊りで勝負をすることに。
 ドルコンのグロテスクな踊り
  ♪ティンパニによる2拍子のリズム、ファゴット
  ドルコンは皆に嘲笑される。
 ダフニスの軽やかで優雅な踊り
  ♪フルート群の旋律、ホルン
  ドルコンに勝ち一同の前でクロエを抱擁する。
  ダフニスはその余韻に恍惚となる。
  リュセイオンの登場。
  ♪クラリネットによる印象的なフレーズ
  リュセイオンの踊り。ダフニスを誘惑する。
  ♪ハープの伴奏にフルートの旋律
  海賊が襲来。クロエが囚われてしまうる。
  残された靴を見つけ、ダフニスは絶望して気を失う。
  ♪クレッシェンドを経てffへ到達
 夜想曲
(第1組曲はじまり)
  ♪PPの弦楽器
  3人のニンフ登場。神秘的な踊り。
  ♪フルート、ホルン、クラリネットのソロ、ウィンドマシン
  ニンフによって蘇生したダフニスは,
  パンの神にクロエの無事を懇願する。
 間奏曲
  ♪合唱、舞台裏のホルン、トランペット

【第2部】海賊ブリュアクシスの陣営
 戦いの踊り
  ♪低音群の力強い刻みに始まり、荒々しく盛り上がる。
(第1組曲おわり)
  ブリュアクシスはクロエに一曲踊るよう命ず。
 クロエの哀願の踊り
  ♪コールアングレのソロ
  クロエは逃走を試みるが失敗。
  大地が裂けてパンの神が現われ,海賊たちは退散する。
  ♪ウィンドマシン

【第3部】パンの神とニンフの祭壇の前
(第2組曲はじまり)
 夜明け
  ダフニスが祭壇の前で眠っている。鳥のさえずり。
  夜が白みはじめやがて日が昇る。
  ♪フルートの細かいアルペジオ、
   低弦から静かに始まる旋律が徐々に弦全体へ
  二人の再会。
 無言劇
  二人はラモンからパンに助けられたことを知り、
  パンとシランクスに扮してパントマイムを踊る。
  ♪オーボエ
  ダフニスは葦で作った笛を吹き、愛を告白する。
  節に合わせて踊るクロエ。
  ♪フルートの長いソロ
  クロエはダフニスの腕の中に倒れ込む。
  ♪フルート群の掛け合い、アルト・フルート
  祭壇の前で愛を誓い合うダフニスとクロエ。
 全員の踊り
  バッカスの巫女の衣装を着た娘たちが登場。
  ♪5拍子、小太鼓、Esクラリネット
  若者たち登場。
  全員で恋人達を祝福し、踊りは最高潮へ達する。
(第2組曲おわり)


YouTube(最初に広告が入るかも。)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 1 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 2 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 3 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 4 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 5 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 6 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 7 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 8 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 9 of 9)


Ravel: Daphnis et Chloe / Nezet-Seguin · Berliner Philharmoniker


Ravel: Daphnis et Chloe, Suite No.2
Boston Symphony Orchestra
Charles Munch, conductor
A WBGH Live Telecast from Sanders Theatre Harvard University
April 17, 1962
Ravel: Daphnis et Chloe, Suite No.2 (Boston SO, Munch) 1/2

Ravel: Daphnis et Chloe, Suite No.2 (Boston SO, Munch) 2/2


James Galway playing Daphnis et Chloe
Maurice Ravel - Daphnis et Chloe, Suite Nr.2, Pantomime
Live Recording 1974 - Berliner Philarmoniker - S. Ozawa, Conductor


以前から取り上げてみたかった曲です。手持ちのCDもそこそこありますので,そろそろかなと思ったのですが,聴き比べを始めてみるとこれが大変。なにが大変かというと,曲が長い! 全曲で55分ぐらい。

一回聴いたぐらいでは演奏の良し悪しを判断できないので繰り返し聴いてから記事を書いているのですが,これでは数週間かかってしまいます。

したがって,いつものことではあるのですけれど,CDの聴き比べは少し手抜き気味で書いています。それは違うんじゃないか?と思う人もいらっしゃるかもしれません。

何が言いたいかというと,いや,ちょっと言い訳しておこうと思っただけです。


文字数制限があるので,次の記事に続きます。


(次の記事)


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ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲の名盤(本編)

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前の記事の続きです。

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ピエール・モントゥー(指揮)
ロンドン交響楽団
ダグラス・ロビンソン(合唱指揮)
コヴェント・ガーデン王立歌劇場合唱団
DECCA 1959年4月27-28日

「ダフニスとクロエ」の全曲初演は,1912年6月8日で,指揮はピエール・モントゥーです。このCDは初演指揮者による演奏を優秀なステレオ録音で聴くことができます。
そこで,せっかくの機会ですので,国内廉価CD(DECCA BEST PLUS 50 \1,000)と,Pragaがアナログ・テープからDSDリマスタリングを行ったSACDの音質を比較してみたいと思います。
うーん,違いがよくわかりません。強いていえば,CDはメリハリがあるものの強音時に平べったい音質ですが,SACDは全体に大人しめであるものの,喧しさがなくて長時間疲れない音であるという当たり前の感想になってしまいました。思ったほどの違いはなかったです。
肝心の演奏は,噛んで含めるような演奏と申しますか,ここはこうあらねばならないという指揮者の名講義を拝聴しているような感じがします。そうはいっても全体に押しつけがましさのない自然な演奏であります。


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シャルル・ミュンシュ(指揮)
ボストン交響楽団
ローナ・クック・デ・ヴァロン(合唱指揮)
ニュー・イングランド音楽院合唱団
RCA 1961年2月26,27日
ボストン,シンフォニー・ホール

ミュンシュには同じボストン響を振った1955年の2トラック録音(RCA)があり,それはSACD化されているのですが,こちらは再録音で,帯に「世界初CD化」とあります。これだけの名演が2002年1月までCD化されなかったわけで,ミュンシュは海外で評価が低いというのは本当かも。
ボストン響の重厚なアンサンブルに軽妙な味わいを求めたいと思うこともありますが,この力感は捨て難くもあり,やはりボストン響は優秀です。演奏も録音もミュンシュの意図を完全に理解して120%表現していると思います。
圧巻は第三部の「全員の踊り」で,これを聴いてしまったら他は聴けないというくらい,エネルギッシュな演奏で,これは圧巻! バス・ドラムはこれぐらいでないと。ラヴェルのオーケストレーションを知り尽くしている指揮者とエンジニアリングによる傑作だと思います。これはお薦め!


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アンドレ・クリュイタンス(指揮)
パリ音楽院管弦楽団
ルネ・デュクロ合唱団
EMI CLASSICS 1962年
パリ,サル・ワグラム

クリュイタンスのラヴェルは,LPで全て揃えてCDで買い直し,さらにSACDにも手を出しています。つまり大好きな演奏なのです。
この「ダフニスとクロエ」全曲盤は,名曲名盤本の類では不動の1位です。だからいまさら私が下手くそな文章で書く必要もないのですが,改めて(24bitリマスタリングCDを)聴き直してみると,この指揮者とオーケストラにしか表現できない独特の雰囲気がありますね。漂ってくる薫りが違うという感じで,一番安心して聴ける演奏かもしれません。安全運転という意味ではなく,肌触りの良さ,馴染みやすさという点においてです。
この録音以降,演奏と録音技術はますます進化し,より精緻な演奏が優秀録音で楽しめるようになったのですが,この高雅で優美な雰囲気は唯一無二です。全体に腰高なサウンドでもう少し重低音が欲しいような気もしますが,これがフランスの伝統なのかもしれませんね。


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ジャン・マルティノン(指揮)
パリ管弦楽団
ジャン・ラフォルジュ(合唱指揮)
パリ・オペラ座合唱団
EMI CLASSICS 1974年
パリ,サル・ワグラム

フランス人によるフランスのオーケストラによるフランス人のための演奏。そんなわけで,マルティノンによるフランス国立放送管弦楽団を指揮したドビュッシーとパリ管弦楽団を指揮したラヴェルは貴重です。
ただ,個人的にはマルティノン指揮のドビュッシーはよく聴きましたけれど,ラヴェルはあまり聴いていないんです。クリュイタンス(フランス系ベルギー人)のほうが味が濃いめで,マルティノンは淡白に感じてしまうのです。だからちょっと苦手でした。
今回,10年ぶりぐらいに聴いてみたのですが,テンポの遅い部分は良いとしても,リズムが特徴的な部分などテンポがちょっと速くなると,揃わないのか揃えようとしないのか,アンサンブルが合っていないのが気になります。そういうところを除けば,名手揃いのパリ管弦楽団は管楽器はどれも巧いですし,本場物という先入観のせいかもしれませんが,雰囲気は豊かです。


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ピエール・ブーレーズ(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
エイブラハム・カプラン(合唱指揮)
カメラータ・シンガーズ
SONY CLASSICAL 1975年3月
ニューヨーク,マンハッタン・センター

SONY CLASSICALレーベルから発売されているドビュッシーもそうなのですが,ブーレーズのラヴェル旧録音群は良い仕事,画期的な演奏だったと思います。当時これを聴いた人達はどう感じたのでしょうか。
スコアに書かれている音符が目に浮かんでくる精密機械のような演奏。いくら「ダフニスとクロエ」がラヴェルの大傑作とはいえ,全曲通して聴くのは私にとってなかなかしんどいものがあるのですが,この演奏は思わず聴き入ってしまう演奏であり録音です。改めてラヴェルってすごいと思いましたし,ブーレーズも素晴らしいと思います。
筋肉質の引き締まった演奏ですが,もう少し贅肉が付いていたほうが安らぎを覚えるかなとも思う今日この頃なので個人的には再録音のほうが好きなのですが。


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シャルル・デュトワ(指揮)
モントリオール交響楽団&合唱団
ティモシー・ハッチンス(fl)
DECCA 1980年8月
モントリオール,聖ユスターシュ教会

モントリオール交響楽団がシャルル・デュトワと決別したのは2002年でしたっけ。10年以上も前のことだなんて信じられませんが,大変素晴らしいコンビでした。そのコンビの代表的な録音が,仏ディスク大賞,モントルー国際レコード賞,レコード・アカデミー賞受賞の当ディスクで,私が初めて買った「ダフニスとクロエ」全曲盤のCDでもあります。
これさえあればクリュイタンスやマルティノン等のおフランス系CDは不要と思ったものでした。なんたって「フランスのオーケストラよりフランス的なオーケストラ」でしたから(過去形)。あれらをもっと洗練させて美しく仕上げ,優秀な録音で残した傑作なのですが,私がこれを飽くことなく繰り返し聴いたかというと答えはノーです。このあたりが難しいところで,あまりにも嵌りすぎた演奏はかえって抵抗感を覚えるのでしょうか。
録音は,1階センターの後ろの席で聴いているな感じ。独奏楽器をリアルに捉えるよりは全体の雰囲気重視みたい。もう少し克明な録音であってもよいかなとも思います。


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ピエール・ブーレーズ(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルリン放送合唱団
Deutsche Grammophon 1994年5月
ベルリン,イエス・キリスト教会

おそらく私の好みは,ブーレーズの演奏なのだと思います。そして,ブーレーズの2種の全曲盤では,ベルリン・フィルとの再録音をより好みます。ニューヨーク・フィルとの画期的な旧盤は録音のせいもあってオケのギスギスした音色に抵抗を感じていたのですが,ベルリン・フィルのしっとりした音色のおかげで弱点が克服され,天下の名盤となりました。
ブーレーズの意図が徹底しているのは旧盤のほうで,いささかも価値は減じていないと思うのですが,「ダフニスとクロエ」を聴きたいと思うときに,一番手を伸ばしたくなるのは当盤です。聴き始めたら最後まで通して聴きたくなる演奏です。
イエス・キリスト教会での録音も理想的で,合唱とオーケストラのバランスも最上ですし,最後の「全員の踊り」のような曲でも聴きたい楽器がきちんと聴き取れるのはとてもありがたいです。「ダフニスとクロエ」を知り尽くした指揮者による極めつけの名盤と評したいと思います。


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チョン・ミュンフン(指揮)
フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団&合唱団
Deutsche Grammophon 2004年11月
フランス放送,オリヴィエ・メシアン・ホール

ちょっと気になったのでHMV ONLINEの指揮者検索でチョン・ミュンフンの現行盤を調べたところ86枚でした。思ったより少ないですね。指揮した作曲家で最も多いのがメシアンで12枚。次いでブラームス,ドヴォルザーク,ビゼー,ニールセン,マーラー……。思いつく名盤は,メシアン:トゥランガリーラ交響曲(パリ・バスティーユ管),ベルリオーズ:幻想交響曲(同),リムスキーショスタコーヴィチ:交響曲第4番(フィラデルフィア管),そして当盤でしょうか。
この「ダフニスとクロエ」(廃盤!)は,私が持っている中で最もテンポの緩急差が大きい演奏だと思うのですが,とにかくスマートですいすい・ぐいぐい進んでいきます。変化に富んでいるので面白く聴き易いのですが,ちょっと力押し気味でもあります。もう少し繊細さを求めたいところです。
気になるのは録音で賛否があるようですが,こういう録音はフランスの伝統なのでしょうか。よく言えば幻想的で雰囲気重視の音づくりです。録音ですごく損をしているような,結構びみょうな演奏。


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ジェイムズ・レヴァイン(指揮)
ボストン交響楽団
ジョン・オリヴァー(合唱指揮)
タングルウッド祝祭合唱団
Bso Classics 2007年10月ライヴ

Deutsche Grammophonへの1984年録音は現在(常に)廃盤中で,タワーレコードでのみ入手可能です。そちらはウィーン・フィルと国立歌劇場合唱団によるものですが,どちらか1枚というとになれば,私はこのボストン響との演奏を選びます。
レヴァインとボストン響という,ありそうでなかなかないコンビによる演奏ですが,当盤はボストン響の自主レーベルによるもので,ありがたいことにSACD。
現代オーケストラの機能美を押し出した,明るくメリハリのある演奏というべきでしょうか。レヴァインの語り口の巧みさに陶然とさせられ,音楽に惹き込まれるものがあります。
あまりの屈託の無さにこれでいいのかと思わないでもありませんが,これだけ満足させてもらえれば十分でしょう。最後の全力を注ぎ込んだ和音は,これを生で聴いたら思わずブラヴォーって叫んじゃいますよね。現代的な名演奏。


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ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
ロンドン交響楽団&合唱団
LSO 2009年9月20,24日ライヴ
ロンドン,バービカン・ホール

これはロンドン響の自主レーベルによるSACDです。特価1,290円のお買得盤で,これも名演だと思います。非常によく歌う演奏で,短いフレーズも長いフレーズもたっぷり豊かな歌を聴かせてくれます。リズムの処理もばっちりで,難しそうな箇所でも揺るぎないものを感じますね。オーケストラは名門ロンドン響ですから,ソロからトゥッティまで文句なしの出来栄えです。合唱も優秀でオーケストラとの一体感が見事です。録音も優秀。
心から良い演奏だと思うのですが,ミュンシュ/ボストン響やブーレーズの2種の録音を聴いた後だと欲が出てきて,もっとこのコンビなら出来るはずではないか,なんて思ってしまうのです。それは,デュトワ,チョン・ミュンフン,レヴァインにも言えることで,なんて言ったらいいんだろう,もうあとひとつ,何かないかなって感じてしまいます。
チョン・ミュンフンだと録音で損をしているから仕方が無いという諦めもつくのですが,この盤は録音も優れているので厳しくなってしまうのでしょう。


ラヴェルの「ダフニスとクロエ」は,第2組曲だけの録音もありまして,この後にそれの聴き比べを続けるつもりだったのですが,40度近い猛暑のせいもあり,集中力が途切れてしまったので,この辺で終わりにしようと思います。


カレーライス食べたい……。





伊福部昭「SF交響ファンタジー第1番」の名盤?

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一度は記事にしてみたかった曲。連日猛暑が続いていますので,夏らしい曲ということで取り上げてみました。この曲のどこが夏らしいのか。暑苦しいところ。

いや,純粋に伊福部昭の音楽を取り上げたかったのです。

SF交響ファンタジー」は、伊福部昭(1914年‐2006年)が作曲した東宝特撮映画のための音楽を1983年に演奏会用管弦楽曲として編曲した作品です。第1番から第3番,交響ファンタジー「ゴジラvsキングギドラ」の4曲があります。今回は最も有名でよく演奏され,聴かれているであろう第1番

伊福部昭:SF交響ファンタジー第1番
SYMPHONIC FANTASIA No.1

編成(3管編成):
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン2、バストロンボーン、チューバ、ティンパニ、大太鼓、スネアドラム2、吊りシンバル、トムトム2、タムタム、コンガ、ハープ、ピアノ、弦五部。

楽曲(片山杜秀氏による3種類の解説より抜粋。):

01 ゴジラの動機
Adagio grottesco。ゴジラの動機が鳴り響く。1オクターヴを構成する12の音程が全部使われた半音階的旋律によるグロテスクな音楽である。この動機は,無論,様々に装いを凝らしつつ,ゴジラ・シリーズ全体に多用されているが,ここでは,『三大怪獣,地球最大の決戦』(1964年,本田猪四郎監督)で,夜の太平洋上にゴジラが出現する場面のためのアレンジ(M9)が用いられている。

(↑次の02 間奏部も含んでいます。)

02 間奏部
8小節の接続部。2/4と7/4が交替する,特徴的なリズム・パターンが4度,クレッシェンドかつアッチェレランドしながら反復される。(くりかえされるラシドという音型は次の『ゴジラ』のテーマ,ドシラの逆行だ。)

03 「ゴジラ」タイトル・テーマ
Allegro。かの有名な『ゴジラ』(1954年)のタイトル・テーマ(M1,M16)。
ドシラ・ドシラ・ドシラソラシドシラが2×4+1のいびつな九拍子を形成する,寸詰まりでいらついた行進曲は,劇中ではゴジラにかなわないので焦る自衛隊(略)のための音楽だったのだが,いつの間にか,それが世間からゴジラじたいの動機と認識されるようになった。奇数拍子の焦燥感が自衛隊以上にゴジラの無軌道さと交感してしまったのだろうし,ドシラとゴジラが期せずして語呂合わせになったことも関係しているのだろう。

Gojira 1954 Main Theme (ゴジラのテーマ)

04 「キングコング 対 ゴジラ」タイトル・テーマ
『キング・コング 対 ゴジラ』(1962年,本田猪四郎監督)のタイトル・テーマ(M1)。原曲には,南方語による混声合唱が付されている。


05 「宇宙大戦争」夜曲
Lento cantabile。イオニア音階による愛の主題。『宇宙大戦争』(1959年,本田猪四郎監督)に於ける,池辺良と安西郷子のカップルのための愛のテーマが,濃厚に奏でられる。但し,この編作の直接の下敷きになったのは,ほぼ同じ楽案による,別の映画のためのスコアらしい(原曲未詳)。

06 「フランケンシュタイン 対 地底怪獣」バラゴンのテーマ
Adagio Grottesco。『フランケンシュタイン 対 地底怪獣』(1965年,本田猪四郎監督)の,白根山中にバラゴンが出現し,ひと暴れする場面の音楽(M22B,M23)。金管が凶暴に半音階的に叫ぶバラゴンの動機。


07 「三大怪獣 地球最大の決戦」
『三大怪獣 地球最大の決戦』から,ゴジラとラドンの戦い,及び,それを尻目に夏木洋介と伊藤久哉が若林映子争奪戦を繰り広げるシーンの音楽(M14,M16,M17)。01のゴジラの動機に,トランペットに担われるラドンの半音階的な動機が重なり,両者の闘争を表現する。


08 「宇宙大戦争」タイトル・テーマ
リディア音階的かつ軍楽隊的な『宇宙大戦争』のタイトル・テーマ(M2)。4小節のファンファーレをリピートした後,Tempo di Marciaになる。


09 「怪獣総進撃」マーチ
ヴァイオリン,ヴィオラ,オーボエ,コール・アングレにって提示される5音階風でやや田園的に軽やかな『怪獣総進撃』(1968年,本田猪四郎監督)のマーチが加わる。これは,主旋律のみのスケッチに基づき,新しくオーケストレーションし直されたもの。この後,『宇宙大戦争』のタイトル・テーマが復帰し,再び『怪獣総進撃』マーチへ。


10 「宇宙大戦争」戦争シーン
『宇宙大戦争』のナタール人の月面基地を,千田是也率いる地球軍が攻撃するシーンの音楽(M26,M32,M34)によって,激越なフィナーレが形勢され,コーダに至る。


以上が切れ目なく演奏されます(演奏時間:約15分)。広上淳一/日本フィル盤はトラック分けされているので便利♪

ここまでいろいろ書きましたが,忘れてください。知らなくてもよいです。

私は上記の解説に出てくる映画はほとんど観たことがありませんが,音楽を聴いているうちに観た気になってしまうから不思議です。

YouTube

小松一彦/東京交響楽団

石井眞木/札幌交響楽団

原田幸一郎/新交響楽団

石丸寛/新星日本交響楽団

ゴジラ - 続・三丁目の夕日


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石井眞木(指揮)
新交響楽団
fontec 1984年11月23日
東京文化会館

13分28秒。伊福部昭に作曲を学んだ石井眞木の指揮による演奏です。東京文化会館という残響が少ない
会場での録音のせいか,ただでさえシンプルな響きがより一層際立ってモノクロの映画のオリジナルBGMに近い雰囲気がありますね。早めのテンポでぐいぐい進んでいくので,直線的な迫力がありますが,力押し一辺倒というわけでもなく「宇宙大戦争」夜曲のような曲ではぐっとテンポを落として豊かに歌っています。熱演であり小気味良い演奏ではあるのですが,潤いのない録音による乾いた響きのため,繰り返し聴くと飽きてしまうかもしれません。シンバルやタムタムがもうちょっと音量豊かだったら聴き応えがあると思います。他に,交響頌偈「釈迦」を収録。


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小松一彦(指揮)
東京交響楽団
EMI CLASSICS 1989年4月8日
ゆうぼうと(簡易保険ホール)

15分03秒。今年の3月30日に亡くなった小松一彦の指揮による演奏です。シンバルやタムタム,スネアその他の打楽器はこれぐらいの音量で派手に鳴らして欲しいものです(鳴らし過ぎかな?)。弦楽器もしっとりとして,かつ量感もあり,好ましいですね。録音会場の「ゆうぼうと」は音響の良いホールだったという記憶がありますが,今回の4枚の中では最も優秀な録音だと思います。演奏はテンポの緩急差が大きい大変ドラマティックかつロマンティックな大熱演で,そのねっとりとした歌はカロリー満点であり,これを聴いた後に聴くCDは不利です。大満足の1枚。現在はTOWER RECORD限定販売(最新リマスタリング)で,他に交響頌偈「釈迦」を収録。
小松一彦は生前「日本は初心者と専門家に分かれていて,真ん中の八割を占めるはずの聴衆がいない」と残念がっていたそうですが,真ん中の八割になりたいものです。


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広上淳一(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
キングレコード 1995年8&9月
セシオン杉並ホール

14分53秒。この曲でお薦めを尋ねられたらこのCDが一番最初に思い浮かぶかもしれません。ひとつめは最も入手しやすそうだからという理由,ふたつめは最も標準的な演奏だからという理由からです。解説が片山杜秀さんだし,細かくトラック分けされていてどこがどの部分なのかも分かり易いので至れり尽くせりの決定盤でしょう。標準的な演奏と書いてしまいましたが,理想的な演奏と書き換えたほうがよいでしょう。ただ,この演奏も石井眞木指揮のCDと同様,デッドな録音ですので,オーケストラの響きも乾いた感じが強いです。それでも,演奏・録音共にこの曲の最上の記録を残そうという気概が感じられますので,このCDを第一に選ぶべきなのでしょうね。他の人もそう言ってますし。
このCDでは他に「SF交響ファンタジー第2番」「同第3番」「倭太鼓とオーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク」を収録しています。


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ドミトリ・ヤブロンスキー(指揮)
ロシア・フィルハーモニー管弦楽団
Naxos 2004年5月3-12日
ロシア国営TV&ラジオ・カンパニー,
第5スタジオ

13分06秒。ロシアの指揮者とオーケストラによる演奏だという先入観をもたないで聴こう。私はあまり違和感を感じないで聴けました。とはいえ,日本人指揮者とオーケストラによる演奏のおどろおどろしい雰囲気とはちょっと違うし,メロディの節回しも演歌調でなくてスマート。オーケストラの響きのせいもあって,あまり泥臭くなく明るめで色彩感が増したよう。外国人が喋る日本語に似た演奏です。どちらかといえばマーチのほうがスムーズな演奏になっていますね。こういうのも面白いなぁと思います。他に「シンフォニア・タプカーラ」「ピアノとオーケストラのためのリトミカ・オスティナータ」を収録。このCDは,文字ぎっしりの片山杜秀氏の解説だけでも購入する価値があると思いますよ。


夜に浮き出るその黒いかたちに,「先生の音楽には和声が本質的に欠如している」と弟子の黛敏郎に言わしめた,伊福部昭の厚く暗く重いモノクロームな音楽がかぶるとき,御霊としてのゴジラはいよいよ完全なる姿を現し,不滅の負の破壊的生命を得るのである。
片山杜秀「音盤博物誌」(ARTES)の「ドシラとゴジラ」より

ヴォーン・ウィリアムズ「トマス・タリスの主題による幻想曲」のCD

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今回は,ヴォーン・ウィリアムズ(1872年10月12日-1958年8月26日)の管弦楽曲を取り上げようと思います。本当は別の曲を用意していたのですが,気が変わりました。

ヴォーン・ウィリアムズの管弦楽曲でCDに収録されていることが多いのは,グリーンスリーヴスによる幻想曲(1908年),揚げひばり(1914-20年),トマス・タリスの主題による幻想曲(1910年)でしょう。

それらに次いで多いのは,ノーフォーク・ラプソディ(1906-07年),「富める人とラザロ」の五つの異版(1939年),交響的印象「沼沢地方にて」(1904年)でしょうか。

そんなわけで,ヴォーン・ウィリアムズの最も有名な曲でCDの聴き比べもしやすい(書きやすい)「グリーンスリーヴスによる幻想曲」にしようと思ったのですが,当たり前過ぎるような気がしてきたのです。

ファンが多そうな「揚げひばり(舞い上がるひばり)」は,ヴァイオリン協奏曲に分類されていますので,管弦楽曲特集中の今回はパス。

結果として「トマス・タリスの主題による幻想曲」に決定です。管弦楽に固執しているのに管楽器が使われていない曲になってしまいましたが。

トマス・タリス(1505年頃-1585年11月23日)は、16世紀イングランド王国の作曲家でありオルガン奏者だそうです。英国教会音楽の父とよばれている人で,私の大好きなタリス・スコラーズの名称もこの作曲家に由来しています。

そのトマス・タリスが1567年に作曲した「大主教パーカーのための詩篇曲」の第3曲の旋律が「トマス・タリスの主題」というわけです。

初めて聴いた人は,どの部分がタリスの主題かわからないと思います。
そんな貴方様にこれをご紹介しておきます。
これは面白い。よくぞ作ってくれました!という感じ♪

All Miku【初音ミク】RVW Fantasia on a Theme of Thomas Tallis(冒頭部分)に・・・


レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ
トマス・タリスの主題による幻想曲
Fantasia on a Theme of Thomas Tallis

ウィキペディアによるとこの曲の楽器編成は,①弦楽オーケストラから成る第1アンサンブルと、②2人ずつの小編成による第2アンサンブルと,③弦楽四重奏という3群に分けられた弦楽合奏から成り立っているそうです。これにより教会内部の音響効果とかオルガンの響きを模しているのだとか。

BBC National Orchestra of Wales
Tadaaki Otaka conductor
Royal Albert Hall, 31 July 2012

尾高忠明さん,指揮姿が美しいです!

それで,各CDを聴いた感想なのですが,この曲は少々書きづらいです。毎日聴き続けたのですが,掴みどころがないのです。終わりそうで終わらなくて取り止めがない感じ。草原を渡る気まぐれな風,寄せては返す波,のような音楽です。波って大きな波が来たり小さな波が来たりして,展開が予測できないでしょう。ちょっと落ち着かない心地がするのですが,それが自然のような気もするし,そんな感じの音楽。「幻想曲」だから?

ここのところ,仕事が忙しかったせいもあり,電車の中ではぼーっとしている(寝ているともいう)ことが多かったので,「トマス・タリスの主題による幻想曲」をとても心地よく聴くことができたのですが,それぞれの演奏の特徴を書こうとすると手が止まります。

でも書こう。次の曲に進むために。次があれば。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団
EMI CLASSICS 1953年11月11日録音
カラヤン(14分54秒)唯一のヴォーン・ウィリアムズの録音です。カラヤンのレコーディング・レパートリーの中には演奏会で取り上げていない曲もありますが,「トマス・タリスの主題による幻想曲」はコンサートで演奏しています。まだ若い(といっても45歳の)カラヤンの演奏はドラマティックで,この頃からカラヤンはカラヤンであったのだなぁと感慨深いものがあります。この曲はやっぱりステレオ録音で聴きたいので,モノラル録音の当CDはお勧めでないのですが,切り捨てるには惜しいです。むしろこれは名演なのではないかと思った次第で,濃厚な表現は1970年代のカラヤンに通じるものがあり,曲のイメージと若干ずれてしまったかもしれないけれど,圧倒されるものがありました。

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ディミトリ・ミトロプーロス(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
SONY CLASSICAL 1958年3月3日録音
ミトロプーロス(12分44秒)は,もっといろいろ聴いてみたいのですが,あまりCDを持っていません。現在発売されているCDでは多い順にヴェルディ,マーラー,プッチーニ,モーツァルト,チャイコフスキー,R・シュトラウス,ベートーヴェンといったレパートリーです。マーラーはバーンスタインに手ほどきをしたぐらいですから当然ですが,ヴェルディが一番多いというのは意外でした。短めの録音時間からも分かるとおり,すっきりすいすい進んでいきますが,しかしあっさりしておらず,情感豊かで熱い演奏です。カラヤンと似ているかな……。

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サー・ジョン・バルビローリ(指揮)
シンフォニア・オブ・ロンドン
EMI CLASSICS 1962年5月17日録音
バルビローリ(16分20秒)は,粘り気のあるロマンティックな演奏。後半の3枚はグリーグを思わせるところがありますが,この演奏にはチャイコフスキーを感じます。今さらですが,バルビローリって音楽が熱いというか,イギリス人指揮者という感じがあまりしない人ですよね。念のために調べてみると「イタリア人の父とフランス人の母の間にロンドンで生まれる(ウィキペディア)」とあります。彼の指揮による「グリーンスリーヴスによる幻想曲」を聴くとよくわかるのですが,いろいろなことをやっていますので聴き慣れた曲でも新鮮味を感じます。この曲でも無意識のうちに曲をよく聴こうというしている自分に気がつきます。そういう演奏です。

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サー・ネヴィル・マリナー(指揮)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
DECCA 1972年録音
マリナー(15分13秒)は,聴かせ上手で求心力のある演奏ですね。オルガン的な音響が素晴らしいと思いますし,強弱の幅も大きく,録音が派手めなこともあってわかりやすいです。曲によっては高弦がきつく感じられるときもありますが,弦の美しい響きが楽しめます。ヴォーン・ウィリアムズの管弦楽曲集をとりあえず1枚という方には,このCDがよいかも。

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バリー・ワーズワース(指揮)
ニュー・クィーンズ・ホール管弦楽団
DECCA 1992年10月12-14日録音
ワーズワース(15分41秒)は,U野K芳さんが推薦していたので思わず買ってしまいました。私が初めて買ったヴォーン・ウィリアムズのCDだったと思います。次のトムソン盤に共通するものがありますが,こちらのほうが録音がキリっとしているせいもあって,より私の好みに近いかも。ただ,トムソン盤のほうが弦の量感が豊かで聴き映えがしますので,一般にはあちらをお勧めしたいと思います。ワーズワース盤のほうが地味に感じられるのですが,清楚で細やかな神経が行き届いていると思います。

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ブライデン・トムソン(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
CHANDOS 1986年6月25-26日録音
トムソン(16分13秒)は,今回一番のお勧めです。今回の聴き比べではこの演奏が基準となりました。過不足がなく調和がとれているところが好ましいです。それがこの曲には大事ではないかと思います。ロンドン・フィルの演奏も美しく,ややソフトだけれども厚みのある録音は耳に心地よくて,このような演奏であれば何度も繰り返し聴きたいと思えます。


新 長岡鉄男の外盤A級セレクション(共同通信社)

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オーディオ評論家の長岡鉄男さん(以下敬称略)が亡くなったのは2000年(平成12年)5月29日のことで,あれは私にとって大変ショックな出来事でした。

長岡鉄男が書いた文章を読むのが好きだったのです。オーディオに関してではなく,録音に関してでもなく,エッセイ。「長岡鉄男のレコード漫談(計3巻)」「長岡鉄男のディスク漫談(計2巻)」(以上,音楽之友社)等からいろいろな影響を受けました。長岡鉄男の物の見方,考え方が好きだったのですね。



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長岡鉄男のレコード漫談
玉石混交のレコード紹介240
音楽之友社
昭和59年10月20日第一刷発行


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長岡鉄男のディスク漫談
玉石混交のディスク紹介201
音楽之友社
1989年10月15日第一刷発行


この記事のタイトルである「長岡鉄男の外盤A級セレクション」は,共同通信社から1984年7月16日に発売されました。「FM選書33 長岡鉄男の外盤A級セレクション 1」というタイトルでしたが,第1巻ということは,第2巻以降があるのでしょうか?

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長岡鉄男の外盤A級セレクション
共同通信社
1984年7月16日第1刷発行


この本,「レコード漫談」や「ディスク漫談」と異なり,エッセイの部分がなく,録音のよいレコードをひたすら紹介するだけの実用本位な本なので,私はあまり読んでいなかったのですが,この本が先月復刊されました。


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長岡鉄男の外盤A級セレクション
共同通信社
2013年8月17日第1刷発行


某インターネットショップで予約したのですが,一緒に注文した本の発売日が8月末であったため,届いたのは昨日でした。手にした第一印象は,ひと回り大きくなってずいぶん立派な本になったなということ。

この本で紹介されている100枚のレコードのジャケット写真が冒頭にカラーで掲載されています。レコードごとの目次が付いたのも便利です。どの頁にどのレコードが掲載されているのかすぐに調べることができるようになりました。以前は付箋紙が必要な本だったのです。

しかし,この本の最大の特徴は,100枚のLP音源の中から13トラックを収録したSACDハイブリッドディスク(サウンドサンプラー)が付属していることです。

紹介されている100枚のLPはクラシック音楽中心(99枚目はピンク・フロイド!)なのですが,結構マイナーというか,普通の人は買わないレコードが多いです。この中で私が持っているのは10枚ぐらいしかないかな。入手し難いったらありゃしない音源ばかり(かなりのLPがCD化されていないか,廃盤?)。

そういうわけで,付録のSACDハイブリッドディスクに興味を持ち購入しました。本自体は使いやすくなったものの,内容は全く変わっていませんからね。(「新」じゃないじゃん!)

このSACDの収録曲は以下のとおりです。

『ラ・スパーニャ』より
フランチェスコ・カノーヴァ・ダ・ミラノ:スパーニャ・コントラプント
トッレ:ダンサ・アルタ「ラ・スパーニャ」
ヴェラルディ:イストリア・ベティカ
 グレゴリオ・パニアグワ指揮、アトリウム・ムジケー古楽合奏団(BISSA1963)

アラブ・アンダルシアの音楽~ムッサダル
 グレゴリオ・パニアグワ指揮、アトリウム・ムジケー古楽合奏団(HMA195389)

サント=コロンブ:コンセール第44番「悲しみの墓」
 ジョルディ・サヴァール&ヴィーラント・クイケン(ヴィオール)(AVSA9885)

タランチュール=タランテラ~アンティドトゥム・タラントゥレー(毒蜘蛛の解毒)
 グレゴリオ・パニアグワ指揮、アトリウム・ムジケー古楽合奏団(JMXR24202)

J.S.バッハ:リュート組曲第4番変ロ長調 BWV.1010~プレリュード
 ホプキンソン・スミス(リュート)(E8938)

ペルゴレージ:スターバト・マーテル~ドロローサ
 ルネ・ヤーコプス指揮、コンチェルト・ヴォカーレ(HMA1951119)

C.P.E.バッハ: ファンタジア I
 インガー・グルディン・ブラント(クラヴィコード)(BIS142)

モーツァルト:幻想曲ニ短調 K.397
 ヨス・ヴァン・インマゼール(フォルテピアノ)(ACC10018)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番ハ短調 op.111~第1楽章
 パウル・バドゥラ=スコダ(フォルテピアノ)(XRCG30001)

超絶技巧トランペット~アレクシス:ソナチナ
 エドワード・タール(トランペット)(BIS152)

ジョン・ケージ:4人の奏者のための第2コンストラクション
 クロウマタ・パーカッション・アンサンブル(BIS232)


これが結構面白くてあっという間に聴き終えてしまいました。なるほど,優秀録音というのはこういうものかと再認識することができました。いやぁ,スゴイ! こんなに生々しく鮮烈な音がうちのステレオから出るなんてビックリです。LPで聴くのとでは若干異なる音質なのでしょうけれど,しっかり堪能できました。このSACDは私のオーディオチェック用ディスクとして活躍することでしょう。

この中で,録音演奏共に最も素晴らしいと私が思うものを1曲あげるなら,パウル・バドゥラ=スコダハンマーフリューゲルによるベートーヴェンのソナタ第32番でしょうか。



ところで,どうして長岡鉄男なのかというと,次の記事で書こうと思っている曲の録音状態が気になって長岡鉄男の「レコード漫談」で調べたところ,「(略)コレクションの中に本物は五枚しかなかった。もともとあまり好きな曲ではない。コケおどしのダサイ曲だ。すぐ飽きてしまう。せっせと集めるほどのものではない」と書かれていたのに笑ってしまったからです。

次回は(私はそう思っていないけれど)「コケおどしのダサイ曲」です♪
(の予定でしたが,後送りにします。次回は「コケおどしのダサイ曲ではありませんよ。9月5日)

ジョルディ・サヴァール 無伴奏の夕べ

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ジョルディ・サヴァール 無伴奏の夕べ

2013年9月13日(金)19:00開演
銀座 王子ホール
ジョルディ・サヴァール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

●祈り
 K.F.アーベル:前奏曲
 J.S.バッハ:アルマンド(無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調BWV1011より)
 J.シェンク:アリア・ブルレスカ

●哀惜
 サント=コロンブ2世:ロンドー形式によるファンテジー
 サント=コロンブ:涙
 作者不詳(フランスのブルターニュ地方):哀歌「ああ、思い出して」に基づく変奏と即興
 J.S.バッハ:ブーレ(無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調 BWV1010より)

●人間の声
 ドゥマシ:前奏曲 ニ長調 
 M.マレ:人間の声、ミュゼットI-II、跳躍

********** 休憩 **********

●「音楽の諧謔」
 トバイアス・ヒューム:戦士の行進 / ヒューム大佐のパヴァーヌ&ガリアルド
 聞け、聞け / 戦士の決意

●「リラ・ヴァイオルのためのレッスン集」
 A.フェラボスコ:コラント
 T.フォード:ここでいいじゃないか
 J.プレイフォード:鐘、サラバンド へ長調

●作者不詳(1580年頃):バグパイプ・チューニング
 ポイントあるいは前奏曲 / ランカシャー・パイプス / ラムゼイの豚
 一杯のお茶 / バーディーのケイト / おもちゃ

******** アンコール ********

 作者不詳:アバーゲルディ城セット(モイラ卿セット)より
 作者不詳(フランスのブルターニュ地方):哀歌「ああ、思い出して」に基づく変奏と即興
 マラン・マレ:ミュゼット ト長調



ジョルディ・サヴァール(Jordi Savall, 1941年8月1日 - )で検索するといっぱい出てくるCD(SACDのほうが多い)の数々。(前回の記事でも,ジョルディ・サヴァール&ヴィーラント・クイケンのCDが登場しています。)


いつかサヴァールの生演奏を聴いてみたいと思っていたのですが,ついにその日が訪れました。

本当は,サヴァール指揮のエスペリオンXXI か,コンセール・デ・ナシオンを聴いてみたかったのですが,今回はサヴァールによるヴィオラ・ダ・ガンバの独奏です。

一週間の仕事で疲れている金曜日の夜なので,途中で寝てしまうのではないかと心配でしたが,最後まで夢中になって聴いてしまいました。

演奏が終わってから聴衆にお辞儀するサヴァールの神々しいことといったら!

しばらくの間,弦楽器のソロ・コンサートでこんなに感動することはありえないと思ったくらい。

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ジョルディ・サヴァールはバルセロナ県の都市イグアラダに生まれた。6歳で地元の少年合唱団に参加して音楽を始め、バルセロナ音楽院でチェロを学ぶ。1964年に同音楽院を卒業すると翌年独学でヴィオラ・ダ・ガンバおよび古楽を学んだ。1968年よりバーゼル・スコラ・カントルムで研鑽を積み、73年に師であるアウグスト・ヴェンツィンガーを継いで後進の指導に当たった。
今日の音楽界における傑出した人物として知られ、奏者およびディレクターとして過去30年以上に渡り調査、研究、そして解釈に力を注いでいる。忘れ去られていた音楽の宝物を再発見することに献身し重要なレパートリーを復元、ヴィオラ・ダ・ガンバ音楽のファン層を広げている。また、古楽声楽家モントセラト・フィゲラスと共に3つのアンサンブル―エスペリオンXX、ラ・カペラ・レイアル・デ・カタルーニャ、そしてル・コンセール・デ・ナシオンを立ち上げ、美と感情の世界を探求、創造し、世界中の何百万人という音楽ファンに感動を与えた。
サヴァールが音楽を担当したアラン・コルノー監督の映画「めぐり逢う朝」(1991年)のサウンドトラックはセザール賞を受賞、また、その活発な演奏活動および録音企画は、古楽がエリート趣味あるいは少数にのみ支持される音楽では無いことを証明しており、ファン層を広げ、若い聴衆の心をつかんでいる。
これまでに、仏ル・モンド・ドゥ・ラ・ミュジク誌の“ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー”、仏ヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュジクの“ソリスト・オブ・ザ・イヤー”、スペイン“芸術金賞”、ウィーン・コンツェルトハウスの名誉会員を含む数々の名誉ある賞を受賞。またフランス文化省より芸術文化勲章オフィシエを授与されている。



サヴァールのサインが欲しくて買ってしまったCDです。3,000円の国内盤を買いましたが,ネットで1,290円の輸入盤を購入できる皆さんは幸せです。(キングさん,ごめんなさい。国内盤は日本語解説が付いているのでお薦めですよ!)

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サヴァール/《人間の声》~無伴奏ガンバ作品集
1998年デジタル録音。カタロニア出身の名ガンバ奏者ジョルディ・サヴァールによる無伴奏作品を集めたアルバム。
アーベル、J.S.バッハ、マレ、サント=コロンブをはじめとする 作曲家のガンバ(チェロ)作品などから曲を選び、サヴァール自身が5つの組曲に再構成、それそれが様々な作曲家による3~5曲からなる組曲としているのが特徴です。
表題のマレ作曲《人間の声》に代表されるように、極めて人声に近いガンバの特徴を活かした演奏です。6弦の1550年ザネッティ製の楽器を3種類の調弦、7弦の1697年ノーマン製と、2つの楽器を使い分けています。

私はCDにサインをもらいません。日付を覚えておきたいので,コンサートのパンフレットにサインしてもらうことが多いです。

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サインが終わった後,すっと手を差し伸べてぎゅっと握手してくれました。ううっ。

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写真撮影は「可」だったんですよ。


追記:この日はNHKさんが映像収録をしていました。11月に放送されるそうです。

ビゼー「アルルの女」の名盤

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ビゼー作曲の「アルルの女」は大好きな曲で,管弦楽曲の中からどれか1曲をあげろと言われたら,有力な候補となります。とにかくメロディが好き。そして魅力的な管弦楽法。

第1組曲「メヌエット」中間部のアルト・サクソフォーンとクラリネット,(同)「カリヨン」中間部のフルート,第2組曲「パストラール」の太鼓のリズムに乗って奏されるフルートとクラリネット(+ピッコロとオーボエ),(同)「間奏曲」のサクソフォン,(同)「メヌエット」のフルートによる旋律がどうしようもなく好きなのです。

ジョルジュ・ビゼー「アルルの女(L'Arlesienne)」

第1組曲(ジョルジュ・ビゼー編)
 第1曲「前奏曲」
 第2曲「メヌエット」
 第3曲「アダージェット」
 第4曲「カリヨン」

第2組曲(エルネスト・ギロー編)
 第1曲「パストラル」
 第2曲「間奏曲」
 第3曲「メヌエット」
 第4曲「ファランドール」

CDの聴き比べは以下に絞りました。Yahoo!ブログは最大5,000文字までなので!


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サー・トーマス・ビーチャム指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1956年4月21日

ビーチャムはロイヤル・フィルとの「ペール・ギュント」(1956・57年)がとても素晴らしかったので,すごく期待して購入したCDでした。買った当時は期待はずれで,その後長く聴いていなかったのですが,これはなかなか良い演奏です。全体にごつごつしていて肌触りが悪いのですが,その田舎っぽさが懐かしい感じがして心地良いです。他の盤は洗練されていて音楽の流れがスムーズなのですがこの演奏はところどころに引っかかるところがあります。しかし,各曲中間部の素朴な味わいにはぞくっとくるものがあり,当盤の唯一無二の魅力となっているのです。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
フィルハーモニア管弦楽団
EMI CLASSICS 1958年1月

カラヤンがベルリン・フィルの芸術監督&常任指揮者に任命されたのは1955年4月5日ですが,その後も1960年頃までフィルハーモニア管との録音は続けられました。「アルルの女」はベルリン・フィルとの録音が複数あるので,これは参考までに聴いてみたのですが,とても良かったのでご紹介しておきます。カラヤンの解釈に大きな変化はありませんが,音楽の流れが自然で力強く,颯爽として活力があり,表情づけが多彩で憎らしいくらい上手。オーケストラの総合的な魅力はベルリン・フィルに及ぶべくもありませんが,ビゼーの音楽に素直に浸れるという点で捨て難い魅力があります。

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イーゴリ・マルケヴィッチ指揮
パリ・ラムルー管弦楽団
PHILIPS 1959年12月

「カルメン」と「アルルの女」のそれぞれ第1組曲・第2組曲に小組曲「子供の遊び」(これのみオケはソヴィエト国立管弦楽団)を収録したビゼーづくしの1枚。いかにもマルケヴィッチらしいメリハリの利いた音楽で,以前褒めちぎった記憶がありますが,意外に古い時代の録音だったのですね。素晴らしい音でしたのでまったく気がつきませんでした。「アルルの女」の悲劇性なんて知ったこっちゃないというような割り切り方,潔さがかっこよく,シンフォニックかつスタイリッシュで現代的・機能的な名演。そこから浮かび上がるビゼーの音楽の美しさはたとえようもなく素晴らしいと思います。

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アンドレ・クリュイタンス指揮
パリ音楽院管弦楽団
EMI CLASSICS 1964年1月13-15日

名盤としての評価がダントツで録音評がすこぶる悪いCD。個人的には当初あまり魅力を感じずお蔵入りしていましたが,SACD化されたのを契機に聴き直して不明を恥じたという演奏です。情感の折込み方が独特で湿度が高いように感じられます。洗練と素朴の間の絶妙なポジションにある演奏であり,それゆえ多くの人の共感を得ることができるのでしょう。パリ音楽院管の蠱惑的な音色のおかげもあって,欠点と感じるようなことも「味わい」に置き換えてしまう絶対的な魅力があります。しかし,意外に素っ気ない部分もあったりしてクリュイタンスだったらもっとできるんじゃないでしょうか。ESOTERICのSACDで聴きましたがこれなら録音は悪くないと思いました。EMIのSACDとどっちが音質が良いのか気になるところです。

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イーゴリ・マルケヴィッチ指揮
モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
DENON 1969年

7月に発売されたタワーレコードの「コンサートホール原盤」復刻シリーズの1枚。マルケヴィッチが10年後に再録音していたなんで知らなかったので思わず買ってしまいました。フランスの地理に疎い私ですが,モンテカルロはアルルに近いのでしょうか,オーケストラの音色が曲に合っている気がします。前録音はどこか肩肘張ったようなところがあって,力づくで音楽をねじ伏せているようなところもあったのですが,この演奏はもっと柔軟で伸びやかな印象を受けます。完璧さでは旧録音,自然な感興は当録音ということで,これもご紹介しておきたいと思いました。音質は復刻に用いたテープの状態がよくないのか,この年代としては古めかしさを感じますが,鑑賞するのには全く差し支えないです。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ダニエル・デファイエ(sax)
Deutsche Grammophon 1971年12月28・29日

私が初めて買った「アルルの女」です。当時は「カルメン」組曲が好きで「アルルの女」にはそれほど魅力を感じていなかったのですが,第1組曲のメヌエットとカリヨン,第2組曲のメヌエットを飽きずに繰り返し聴いていました。「刷り込み」となってしまっている演奏なので客観的な感想を書くのが難しいのですが,オーケストラを徹底的に磨き上げた,洗練の極みとも言うべき演奏ですが,あまりに完璧過ぎて壁を感じます。もう少し素朴さがあったら言うことなしの超名演になったでしょう。しかし,カリヨン中間部の極上の木管アンサンブルなど他では聴くことができず,ついつい手を伸ばしてしますCDとなっています。第2組曲のメヌエットは当盤が最高でしょう。鳥肌モノですよ。

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ミシェル・プラッソン指揮
トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
アンチョン・アイェスタラン合唱指揮
オルフェオン・ドノスティアーラ合唱団
EMI CLASSICS 1985年

この盤以前に全曲版の録音が存在していたのか知りませんが,(オリジナル編成ではないけれど)劇音楽「アルルの女」作品23バージョンです。手軽に全曲が聴けるなんて本当に良い時代になったと思いますが,このCDを中古ショップでよく見かけるのは,期待ハズレに思う人が多いからでしょうか。組曲版は名曲揃いなので,他にも良い曲があるに違いないと思って聴くと,あれっ?ということになります。同じ27曲でもグリーグの「ペール・ギュント」とは違うのです。「アルルの女」全曲版はオーケストラの編成も特殊ですし,フラグメント集みたいに聴こえますので。だから,ビゼーが第1組曲を編曲した後,残された曲で第2組曲を構成しなければならなかったギローは素材不足に陥って歌劇「美しきパースの娘」から1曲(メヌエット)転用しなければならなかったのでしょう。さて,このCDの演奏について触れると,各曲に対するプラッソンの解釈は理想的と思いますし,優秀なオーケストラと合唱,エコーの多い録音によって聴き栄えのする演奏に仕上がっています。全曲版もなかなか捨てたもんじゃないと思うのですが,後に登場するリッツィ盤に比べると少々華美にも感じられますね。あと,国内盤では全5幕と表示されているのが不思議で,リッツィ盤は全3幕です。プラッソン盤は全27曲を11トラックにまとめているのも不便です。

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クリスファー・ホグウッド指揮
セント・ポール室内管弦楽団
DECCA 1989年11月

オリジナル・スコアから6曲(前奏曲,メヌエット,導入曲,メロドラム,パストラル,カリヨン)を抜粋して編まれたホグウッド版のオリジナル組曲です。「アルルの女」に対する私の関心がこちらのスタイルに向いてしまっているので,このような演奏は大歓迎です。前奏曲は小編成のほうが聴きやすいと思うのです。ハープではなくピアノなのが新鮮ですし,メヌエットも弦が少ないので物足りなさを覚えますが,全てがよく聴こえるので楽しいです。導入曲は間奏曲のことで明るさが際立ちます。メロドラムはカリヨン中間部に挟まれてアダージェットが弦楽四重奏で演奏されますが,このほうが曲にふわしいと感じます。パストラルも組曲版では威圧的に始まりますがこの演奏は小気味よいですね。なお,パストラルの中間部はありません。次のカリヨンも同様で実に爽やかです。これも中間部がないのであっという間に終わります。ホグウッドには,バーゼル室内管弦楽団との再録音(Arte Nova)がありまして,そちらを取り上げたかったのですが,今回は間に合いませんでした。

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カルロ・リッツィ指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
テリー・エドワース合唱指揮
ロイヤル・コヴェント・ガーデン歌劇場合唱団
TELDEC 1994年11月

前奏曲,第1幕(第2~6曲),第2幕(第7~17曲),第3幕(第18~第27曲)の全曲盤です。同じ全曲でもプラッソン指揮と比べるとこちらのほうが素朴で劇付随音楽らしい趣があります。全体に小気味よく威圧感のない演奏なので安心してビゼーの音楽に浸れますし,27トラックに分割されていますので,資料的な価値もありますね。ただ,組曲版のアレンジを用いていている曲もあり,折衷的です。組曲版となるべく違和感がないよう聴いてもらおうという配慮なのでしょうけれど,そろそろオリジナル編成による全曲盤を聴いてみたいところです(存在するのかな?)。ただ,このリッツィ盤の演奏はなかなか良くて私のお気に入りなのです。あれこれ策を弄せず正攻法で演奏しているのが良く,地味で物足りないと感じる人もいるかもしれませんが,「アルルの女」の音楽の素晴らしさを素直にありのままに表現している演奏と思います。あまり売れなかったCDでしょうし,再発売の見込みもないと思いますが,中古ショップで見かけたら入手することをお勧めします。

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マルク・ミンコフスキ指揮
レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル
リヨン歌劇場合唱団
Naive 2007年

第1組曲と第2組曲の間に劇付随音楽から選んだ7曲を演奏するという不思議な構成は中途半端かも? 演奏は素晴らしいです。緩急自在で切れが良く伸びやかで繊細な歌を聴かせてくれる前奏曲,快速テンポでやはり小気味よいメヌエット,一転して荘重(サウンドは軽やか)なアダージェット,リズムの刻みがユニークなカリヨンは中間部がとても美しい,といった具合にとても洗練されています。挟まれたミンコフスキ編の7曲はパストラルから始まるので,第2組曲だと思って聴いていた人は途中で驚くでしょうね。この7曲(合唱入り)が最大の聴きものかもしれません。全曲盤だったらよかったのにと思いました。第2組曲から聴き慣れたギロー編でオリジナル楽曲との比較という形になりますが,同じ曲が形を変えて繰り返されていることに不思議な気持ちになります。オリジナルを聴いてしまった後なので,第1組曲のときのような新鮮さをあまり感じません。アルバムの構成としてはよろしくないような気がするのですが,ミンコフスキという人はチャレンジ精神旺盛な人なので,あれこれやってみたいのでしょうね。ファランドールは期待どおりの盛り上がりですが,それにしてもルーヴル宮音楽隊って,よいオーケストラですね。


「アレやコレが入ってないじゃん!」と思うかもしれません。私もアレやコレは入れなきゃいけないと思ったのですが,それらは次回(未定)のお楽しみということで,今回はご容赦いただきたいと思います。


最後に,以前の記事で「(私はそう思っていないけれど)コケおどしのダサイ曲」と書いたのはこの曲ではありません。念のため!


ホルスト「惑星」の名盤

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この曲は,2009年の1月24日(土)にアップしていました。

当時のコメント欄に「夏になったら挑戦してみます」と書いてありましたので,改めて記事にしてみたいと思います。

グスターヴ・ホルスト
大管弦楽のための組曲「惑星」(The Planets)作品32

火星,戦いをもたらす者(Mars, the Bringer of War)
金星,平和をもたらす者(Venus, the Bringer of Peace)
水星,翼のある使者(Mercury, the Winged Messenger)
木星,快楽をもたらす者(Jupiter, the Bringer of Jollity)
土星,老いをもたらす者(Saturn, the Bringer of Old Age)
天王星,魔術師(Uranus, the Magician)
海王星,神秘主義者(Neptune, the Mystic)


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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
DECCA 1961年9月
ウィーン,ゾフィエンザール

この曲をローカル名曲からインターナショナル名曲に押し上げた録音と言われています。いまだにこの演奏が最高という人もいるでしょうけれど,名盤がいっぱい現われてしまった今日,改めて聴くと少々複雑な思いがします。指揮者もオーケストラも頑張っているけれど,少々ぎこちなさを感じます。それが初々しくてよいのかもしれません。「木星」以降の演奏が好きですが,この演奏の売りは何と言ってもウィーン・フィルの独特な音色でしょう。なお,この録音に関しては斜めのジャケットのOIBP盤のリマスタリングはよくないと思います。

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ズビン・メータ指揮
ロサンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団
ロジェ・ワーグナー合唱指揮
ロサンジェルス・マスター・コラール女声合唱
DECCA 1971年4月
ロサンジェルス,ロイスホール

DECCAのスペクタル名曲路線を担当していた頃のメータ/ロス・フィルのコンビによる演奏。楽譜に書かれている音符は全部聴かせてやんよという録音とダイナミックな演奏による効果満点な1枚。意外に「金星」や「水星」も良いです。このタイプの名演奏・名録音が多くなってしまった今となっては分が悪いのですが,忘れられない一枚です。

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レナード・バーンスタイン指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
アブラハム・カプラン合唱指揮
カメラータ・シンガーズ
SONY CLASSICAL 1971年11月・12月
ニューヨーク,エイヴリー・フィッシャー・ホール

中学生の頃,友人宅で聴かせてもらった演奏で,「惑星」全曲を聴いたのはこのときが初めてだったと思います。「火星」や「水星」はこんなにテンポが速かったかなぁ。瑞々しい感性と覇気がみなぎるバーンスタインによる若々しい熱演といったところでしょうか。ややオフマイク気味の録音ですが,悪くはありません。「水星」なんてとても良いと思います。

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ユージン・オーマンディ指揮
フィラデルフィア管弦楽団
ロバート・ペイジ&マリア・ザッツマン合唱指揮
フィラデルフィア・メンデルスゾーン・クラブ
RCA 1975年12月18日
フィラデルフィア,スコティッシュ・ライト・カテドラル

オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団が残した多くの録音の中でも最高傑作のひとつではないでしょうか。輝かしいサウンドはやや高域を持ち上げた録音のせいもあり大変豪華な印象を与えます。少々やかましいですけれどね。指揮も,オーマンディってこんなに濃い味つけをする人だったっけ?と思わせるような高カロリーのものです。効果満点という言葉はこちらに使うべきでした。そういう演奏であり録音です。「土星」ラスト近くのオルガンの重低音がすごい……。

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エイドリアン・ボールト指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ジェフリー・ミッチェル合唱団
EMI CLASSICS 1978年6月・7月
ロンドン,アビー・ロード第1スタジオ

「惑星」のスペシャリストであるボールトの5回目にして最後の録音(ですよね?)。「惑星」はボールト指揮の演奏が一番というコメントをよく見かけます。そんなに決めつけなくてもいいじゃんって思うんですけれど,こうして聴き比べてみると,やはりこれは名演であったのだなと感心します。どの曲もこう演奏されなければいけないというような信念が感じられ,まさにその通りだと思わされます。演奏効果が節度を保ちつつきちんと表現されているのが素晴らしく,感動的でもあります。聴き比べの最後にもう一度聴き直してみたいと思わせる名盤。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
RIAS室内合唱団
Deutsche Grammophon 1981年1月
ベルリン,フィルハーモニーザール

カラヤンの20年ぶりの再録音。晩年になってなぜこの曲?という思いもありましたが,録音してくれて感謝したい演奏です。前録音はオーケストラの音色が面白かったものの未熟な印象がありました。しかしこのベルリン・フィルとの再録音は,音楽づくりの完成度が高く,「惑星」のお手本といっていいくらいの名演だと思います。。
なお,OIBP(KARAJAN GOLD)盤のほうがゴージャス感がありますが,初期デジタル録音の情報量の少なさをエコーでごまかしているような気もします。私は初期盤のほうが好きで,オーケストラの音が自然で楽器の分離がよいですし,例えば「天王星」フル・オルガンの上行グリッサンドも初期盤のほうがきちんと聴こえていました。(でも,初めて買う人はOIBP盤のほうが聴き映えがしてよいかも。)

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ロリン・マゼール指揮
フランス国立管弦楽団
フランス国立放送合唱団
SONY CLASSICAL 1981年
パリ,フランス国立放送104スタジオ

マゼールはなにかやってくれるのではないかと期待させる指揮者ですが,この演奏も裏切りません。それがあちこちにそれがあるわけではなく,どこかはネタバレになるので書きませんが,興味がある人は聴いてみてください。いや,興味がなくてもこの「惑星」は秀演と思いますので是非。楽器のバランスがとてもよく,聴いていて非常に気持ちがよいです。録音も優秀です。全体的に美しく丁寧に仕上げた演奏で,フランスのオーケストラらしい色彩感も魅力的です。

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シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団
イワン・エドワース合唱指揮
モントリオール合唱団
DECCA 1986年6月
モントリオール,聖ユスターシュ教会

頭に楽譜が浮かんでくるようなDECCAらしい精密な描写の録音。オルガンの音が最もよく聴こえます。私は一時期このCDが一番好きだったのですが,やっぱりいいですね。初めて聴いたときは,モントリオール交響楽団がここまで壮麗な音が出せるオーケストラと思わなかったので驚きました。聴かせ上手なデュトワの指揮にも全く不満はなく,演奏・録音共に総合点の高いCDでしょう。無難な演奏ともいえますが,この洗練度,完成度の高さは一頭地を抜いていると思います。

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コリン・デイヴィス指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ディートリヒ・クノーテ合唱指揮
ベルリン放送女声合唱団
PHILIPS 1988年11月
ベルリン,フィルハーモニー

指揮者の誠実な人柄を想像させる演奏です。したがって「金星」「水星」「土星」「海王星」は美しい演奏で申し分のない丁寧な仕上りです。「火星」「木星」「天王星」も各曲がもつ演奏効果をストレートに生かした力強いもので大変聴き応えがあります。そしてベルリン・フィルのアンサンブルはカラヤン盤より一層緻密ですので,こちらを好む人も多いでしょう。録音が優秀なのも嬉しいですね。飽きの来ない名演だと思います。〔以上,書き直しました〕

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ジェイムズ・レヴァイン指揮
シカゴ交響楽団
マーガレット・ヒリス合唱指揮
シカゴ交響女声合唱団
Deutsche Grammophon 1989年6月
シカゴ,オーケストラ・ホール

このCDを購入したとき,これで「惑星」のCDはもう買う必要がないと思った演奏であり録音でした。シカゴ交響楽団によるこの曲のスペクタキュラー路線での決定的演奏に,お腹がいっぱいになってしまったのです。オーケストラが優秀で,録音もよく,レヴァインも演出巧者で,言うことなしです。ひとつの方向の頂点。でも,聴いているうちに疲れてきちゃう?

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ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
アーヒム・ホールプ副指揮
フィルハーモニア管弦楽団
モンテヴェルディ合唱団(女声)
Deutsche Grammophon 1994年
ロンドン,オールハローズ・ゴスペル・オーク 

ガーディナーの「惑星」ってなんか違和感がありますが,ガーディナーはホルストに縁があるのだそうです。このCDは購入したときから好きで,個人的にはレヴァイン/シカゴ響の定評ある演奏よりしっくりくるのは,イギリスの指揮者とオーケストラによる演奏だからでしょうか。各曲の性格分けが的確で,オーケストラも巧く,録音も大変優秀ですから最初の1枚としてもお薦めです。世間の評価があまり高くないみたいで残念。良い演奏だと思うんだけどな。併録のグレインジャーの「戦士たち(管弦楽と3台のピアノのための想像上のバレエの音楽)」が面白い曲で,なかなかポイントが高いCDです。

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サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
グリットン・ロビン,サイモン・ハルジー合唱指揮
ベルリン放送合唱団
EMI CLASSICS 2006年3月16~18日
ベルリン,フィルハーモニー

再生装置を選ぶCDで,スピーカーによって驚くほど印象が異なります。雰囲気で聴かせるタイプのスピーカーでは欲求不満が溜まりますが,分解能・解像度が高いスピーカーで聴くと優秀録音だと思えます。けして悪い録音ではないです。「火星」はいかにも優秀な指揮者とオーケストラによる充実したサウンドでラストはなかなか壮絶。じっくり遅い「金星」はベルリン・フィルの名技のせいもあって天国的な美しさがありますし,いつもながら小気味良く駆け抜ける「水星」も意味ありげに演奏されます。「木星」の緩急変化にラトルのセンスの良さを感じますし,「土星」も深みと重みのある演奏です。最も凝った管弦楽法を聴かせる「天王星」もベルリン・フィルならではの色彩感豊かな演奏で,「海王星」もメルヘンティックかつ神秘性豊か。このまま終わってくれればよかったのですが,最後にコリン・マシューズ作曲の「冥王星、再生する者」(Pluto, the renewer)が演奏されちゃいます。「冥王星」だと思われなければ,面白い曲です。重低音がすごい!

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【参考盤】
ジェイムズ・ワトスン指揮
ブラック・ダイク・ミルズ・バンド
キース・オーレル合唱指揮
ハレ合唱団
DOYEN 1996年

ホルストは「惑星」の編成を変えたり抜粋で演奏することを厳禁したそうです。私が初めて聴いた「惑星」(の「木星」)は吹奏楽版だったのですが,割りとイケますね。このCDはスティーブン・ロバーツの編のブラスバンド版で,弦どころか木管楽器もなしのブラスバンドによる演奏です。この曲で弦と木管ナシ(オルガンと一部の打楽器もナシ。しかし,琴みたいなハープがでかい音で響くし,海王星には女声合唱が付く)というは聴く方にとってもかなりきついものが予想されますが,実際「火星」「木星」「天王星」のような色彩的な曲は違和感があります。しかし,「金星」は大人のムードが漂うし,「水星」は別の曲みたいだし,途中まではよかった「土星」,ハープ協奏曲みたいな「海王星」と楽しめました。提供してくれた人に感謝。


意外にCDをもっていましたが,とても全部について書けないし,文字数制限もあるから,何枚かは割愛しました。なんだかんだ言って,私,「惑星」好きなんだなと思いました。

ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」の名盤

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2週間ぶりでしょうか。先週も記事を書くには書いたのですが,気に入らなくてボツにしました。ブログをやる気が失せてきた今日この頃。自分のホームページをつくるのが面倒だったのでブログを始めたのですが,最近は発信の手段っていろいろあるじゃないですか。TwitterとかFacebookとか。ブログにするほどのこともない落書きみたいな文章はTwitterで十分と考えました。でもね,なんかイマイチなんですよ。Twitterは情報を得るためのツールと割り切ったほうがいいみたい。FacebookTwitterのデカイやつという感じかな。Facebookは凝った記事を書くのには向いていないので,やっぱりブログしかない? ちなみに私が記事をひとつ書くのにどれだけ時間がかかっていると思います? ざっと十数時間です。コメントの返事を書く時間も入れると大変な時間です。何が言いたいか,わかる人はわかりますよね? そういえば先日,知人が熱心に勧めるのでスマートフォンにLINEをインストールしました。これはハマりました。普通のメールでもいいんですけれど,LINEのトーク(テキストチャット機能)のほうが話が弾みます。なぜだろう? そんなわけで,今後私への連絡はLINEでお願いします!

さて「ラプソディ・イン・ブルー」ですが,作曲者の名前で躓きました。「ガーシュイン」と「ガーシュウィン」,どちらが一般的でしたっけ? 「ガーシュイン」じゃなかった?

どちらで検索しても約774,000件ヒットしますが,7月に記事を書いたL氏も含め,世の中「ガーシュウィン」のほうが多いみたいです。長い物には巻かれたい私ですので,以下「ガーシュウィン」にします。

ラプソディ・イン・ブルー」は,書くのが難しいです。なお,演奏時間を記していますが,これはあくまでご参考。演奏時間が短い=テンポが速い,じゃないです。念のために書いておきます。

ジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin)作曲
ファーディ・グローフェ(Ferde Grofe)編曲
ラプソディ・イン・ブルー(Rhapsody in Blue)

Gershwin: Rhapsody in Blue
hr-Sinfonieorchester
Fazil Say, Klavier
Carlos Miguel Prieto, Dirigent
(参考演奏としてご紹介するには個性的過ぎましたね。)


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アール・ワイルド(ピアノ)
パスクワーレ・カルディルロ(cl)
アーサー・フィードラー(指揮)
ボストン・ポップス
RCA 1959年5月

16分21秒。アール・ワイルドというピアニスト,よく知らないのですが,ウィキペディアによると「1942年にトスカニーニに招かれ、ガーシュウィンの《ラプソディー・イン・ブルー》によってオーケストラと初共演を行い、大々的な成功を収め、名声を確かなものにした」のだそうですね。彼にとって因縁のある曲ですが,なるほどと思わせる見事なピアノです。名人って感じの素敵な味わいのあるピアノ。オーケストラもポップスという名称だけあってノリがよいです。腰軽ではなく充実したサウンドを聴かせてくれるのがありがたいですね。録り方が古い(音質はよい)せいで,演奏も若干古臭さを感じさせないでもないですが,それがよいのです。古き良き時代,懐かしさを覚えます。こういう演奏が好きです。


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レナード・バーンスタイン(ピアノ)
レナード・バーンスタイン(指揮)
コロンビア交響楽団
SONY CLASSICAL 1959年6月

16分31秒。名盤の誉れ高い1枚。実は苦手な演奏でした。重たい演奏に感じられたのです。ピアノもオーケストラも立派過ぎるように感じ。リズム感覚の良さを称える評論家が多いけれど,そうなの?って思っていました。今回改めて聴いてみてのですが,やっぱり立派な演奏でした。この曲はクラシック音楽であるということを実感します。繰り返して聴いているうちに,バーンスタインのピアノの抒情的な,詩的な美しさに打たれました。大変ドラマティックでもあります。他と比べると異色ですが,古さを超えて語りかけてくるものがある説得力がありました。なお,ロサンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団との1982年3月(Deutsche Grammophon)録音は未聴です。


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アンドレ・プレヴィン(ピアノ)
ジェルヴァーズ・ド・ペイエ(cl)
アンドレ・プレヴィン(指揮)
ロンドン交響楽団
EMI CLASSICS 1971年6月

14分42秒。プレヴィンのCDはあまり持っていないです。この曲はプレヴィンじゃなきゃって思うものが少ないんです。メンデルゾーンの「真夏の夜の夢」(ロンドン響とのほう)は良かったですが……。しかし,この「ラプソディ・イン・ブルー」は素晴らしいです。このCDが一番好きかも? ここまでの3枚でこの曲の聴き比べは終わりにしてもよいです。若い頃に天才ジャズ・ピアニストと呼ばれただけあって,プレヴィンのピアノが最も「らしく」聴こえます。そしてとても美しい。とても生き生きとして,こんなにピアノが魅力的な演奏は他にないと思います。オーケストラ共々,ちょっとどっしりし過ぎているかもしれませんが,ピアノ協奏曲的な演奏ではこれが一番と思います。本当に素晴らしい!


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アンドレ・プレヴィン(ピアノ)
アンドレ・プレヴィン(指揮)
ピッツバーグ交響楽団
PHILIPS(今はDECCA)1984年

14分01秒。一般にはロンドン響との旧録音よりこっちのほうが評価が高いのです。それはわかるような気もするのですが,うーん,私は旧録音のほうが好きだな。こちらのほうが美しいんですよ。よくこなれているというか,洗練されているというか,録音も優秀な感じがしますし。コンサートホールの良い席で聴いているような録音で,残響も豊か。でも,それが物足りない。ベールを被せているような録音なんです。旧録音のほうがピアノが生々しくて直接的に伝わるものがあります。この演奏だけ聴けばこれはこれでよいですけれど,ロンドン響のほうが私の好みです。好きなんだからしかたがない。


マイケル・ティルソン・トーマスは,縁が深いガーシュウインを大事にしている指揮者です。3種類の録音がありますので,それらを聴いてみます。

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ジョージ・ガーシュウィン
(1925年製ピアノ・ロール)
チャールス・ルッソ(cl)
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
コロンビア・ジャズ・バンド
SONY CLASSICAL 1976年6月

13分46秒。「ラプソディ・イン・ブルー」が初演されたのは1924年ですが,その翌年に作曲者が残したピアノ・ロールに合わせ,オリジナル・ジャズ・バンド・スコアを捜し出して用いたという超こだわりの1枚。ガーシュウィンのピアノ・ロールはソロだけでなくオーケストラ部分も演奏してしまっているので,オーケストラ部分の穴をすべて埋め,ソロだけを演奏するように苦労して加工したのだそうです。向こうからはけして合わせてくれないピアノ・ロールと演奏するのはすごく大変だったのではないでしょうか。ガーシュウインのピアノを想像させてくれる貴重な演奏です。素晴らしいピアノだったのでしょう。脳内補完して聴けば,この曲の最高のピアノです。奥歯に物が挟まったような書き方をしていますが,ピアノとオーケストラ(バンド)に温度差を感じるのです。バンドの演奏はとても素晴らしいのですが,ピアノが同じ空気を吸っていないので違和感を覚えるのでしょう。録音は大変優秀です。併録の「パリのアメリカ人」がまた素晴らしい。


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マイケル・ティルソン・トーマス(ピアノ)
ロリン・リーヴィー(cl)
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
ロスアンジェルス・フィルハーモニック
SONY CLASSICAL 1982年2・10月

15分50秒。「今回の録音は,1924年の初演当時のオリジナル・スコアを細部に至るまで忠実に復元したもの」だそうで,「ガーシュウイン自身の演奏を手本にしたもの」であり,「初演に立ち会った人たちの助言や意見を参考にしている」のだそうです。今回もこだわっていますね。前回はピアノに違和感を覚えましたが,今回はMTT自らのピアノですからその点は大丈夫。理想とする「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏するにあたり,他のピアニストの起用なんて考えられないのでしょうね。実際,今回聴いた中では最も巧いピアノだと思います。ガーシュウィンの完璧な再現を目指したピアノ。ただ,不思議なことにこの演奏,聴いているうちについつい他のことを考えてしまうのです。完璧過ぎて親近感が湧かないのか,ちょっと求心力が少なめ。録音は今回も優秀です。


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マイケル・ティルソン・トーマス(ピアノ)
ジェローム・シマス(cl)
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
ニュー・ワールド交響楽団
RCA 1997年1月

17分26秒。三たび「オリジナル・ジャズバンド版」で「初演時にホワイトマン楽団が演奏した版」だそうです。確かに前2枚はいずれも優秀録音でしたが,今回はさらに「ラプソディ・イン・ブルー」のすべてを聴かせちゃいますとでもいうような録音。普段は聴こえにくい楽器もこのCDではバッチリ聴こえます。こういうのを聴いていると,「ラプソディ・イン・ブルー」はジャズ・バンド版に限ると言いたくなります。元々不思議な構成の曲なのですが,ジャズ・バンド版のほうがすんなり聴けてしまうのです。前回は少しよそ行きの顔を見せていたピアノですが,今回は本来のMTTを取り戻したみたい。マイケル・ティルソン・トーマスによる「ラプソディ・イン・ブルー」を聴くならこのCDが一番完成度が高と思います。もう一回聴き直したら感想が変わるかもしれませんが,たぶんこれでOKです。


ところで,今年9月6日(金)のサイトウ・キネン・フェスティバル松本Gig(キッセイ文化ホール)で「ラプソディ・イン・ブルー」が演奏されましたよね。テレビでご覧になった方も多いと思います。

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大西順子(ピアノ)
小澤征爾(指 揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ
2013年9月6日
キッセイ文化ホール
(長野県松本文化会館)

演奏についてどうのこうの書いてもしょうがない,とにかくハラハラドキドキの大変楽しい演奏でした。大西順子がこう弾きたい,小澤征爾がそれじゃ合わせられないとか言い合ってるシーンから始まり,オーケストラとのリハーサルもなんかギクシャクしていて不安になります。本番直前,めちゃくちゃ緊張している大西順子が可愛らしい。終演後,あそこさえ弾けていたら80点だったのに!と残念がる彼女を見て,音楽をするのっていいなぁとつくづく思いました。

なぜSKOと大西順子が"ラプソディー・イン・ブルー"をやるのか
小澤征爾×村上春樹×大西順子

プロコフィエフ「キージェ中尉」の名盤(というには少ない)

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ハンガリーの作曲家を続けるつもりだったのですが,さすがにちょっと飽きてきたので予定を変更してプロコフィエフ(1891-1953)の「キージェ中尉」にしたいと思います。交響組曲ですよ。

映画音楽として作曲したものを基に組曲化したものです。いろいろなところに書かれているあらすじを集約すると,概ねこのような物語のようです。

・皇帝が昼寝をしている。
・宮廷内から女官の悲鳴が聞こえてくる。
・眠りを妨げられて激怒した皇帝が,侍従に今日の責任者は誰かと問う。
・しかし,当直名簿には「中尉」としか記されていない。
・侍従が「ポルーチキ……ジェ(中尉……です)」と答えたのを,
 皇帝は「ポルーチク・キージェ(キージェ中尉)」と聞き違え、
 存在しないはずのキージェ中尉をシベリア送りにしてしまう。
・その後,皇帝は思い直す。
・暗殺者から皇帝を守るために
 キージェ中尉はわざと女官に悲鳴を上げさせたのかもしれない,と。
・皇帝はシベリアからキージェ中尉を呼び戻すよう命令し,
 宮廷一の美女を花嫁にしようということになる。
・花婿(キージェ中尉)不在のまま盛大な結婚式が行われる。
・しかし,そもそも実在しない人物なので,困ったことがいろいろ起こる。
・万策尽きた侍従は,キージェ中尉の死亡を公表する。
・キージェ中尉の葬儀が国葬で行われる。
・皇帝は,忠義を尽くしてくれたキージェ中尉の不運に涙を流す。

1934年公開の「キージェ中尉」
(すごい! YouTubeってなんでもあるんですね!)

一般に知られているあらすじとだいぶ違いますね。叫び声を上げたのは女官じゃないし。

正しいあらすじを作成したいところですが,それはこのブログの趣旨ではないので断念します。いや,ただ単に面倒くさいだけなんですけれども。

セルゲイ・プロコフィエフ
交響組曲「キージェ中尉」作品60
1.キージェの誕生
2.ロマンス
3.キージェの結婚
4.トロイカ
5.キージェの葬送

Sergey Prokofiev - Lieutenant Kij? / Поручник Киже
(Cleveland Orchestra,George Szell)

ピッコロ,2フルート,2オーボエ,2クラリネット,2ファゴット,テナー・サクソフォン。
4ホルン,コルネット,2トランペット,3トロンボーン,チューバ。
バス・ドラム,ミリタリー・ドラム,トライアングル,シンバル,タンブリン,スレイ・ベル。
ハープ,チェレスタ,ピアノ。
弦楽5部(ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバス)。

ティンパニが無いんです。その代わり,第1曲ではバス・ドラムがfffで鳴り響きます。

第2曲と第4曲はバリトン独唱が入るのが正しいのですが,今回取り上げたCDでは小澤盤以外は管弦楽のみで演奏しています。通常はそうみたい。

バレエ音楽「ロメオとジュリエット」に似ているなぁと思うんですが,「ロメオとジュリエット」が完成したのは1935年なので,「キージェ中尉」のほうが先に作曲されたのですね。



結論から申し上げると,今回ご紹介する4枚はどれも良い演奏で,いずれを購入しても大丈夫です。どれか1枚と言われると,どうしても録音の良いもの,オーケストラが巧いものを選びたくなります。

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ジョージ・セル(指揮)
クリーヴランド管弦楽団
SONY CLASSICAL 1969年
クリーヴランド,セヴェランス・ホール

先頃,ジョージ・セル・エディションという49枚組BOXが発売されました。SONY CLASSICALから発売されていたセルのCDを集めたものですが,1970年頃が一番最後なのですね。この「キージェ中尉」1969年録音ですから,SONY CLASSICALにおける最後期。録音年にこだわったのは,先日セルのCDは録音がよくないものが多いなんて書いてしまったのですが,録音年が新しいだけあって,これは良いと思います。ちょっと効果を狙った録音ですが,生々しく鮮明な音です。やや硬調で平べったい感じがするし,第1曲のfffのバス・ドラムをはじめとして強音時の打楽器が少し歪むのが惜しいですけれど。

セル指揮のクリーヴランド管弦楽団ですから究極鉄壁のアンサンブルで非の打ち所のない安定した演奏です。それが非常に気持ちよく,安心して聴いていられます。安定とか安心とか書くと,穏当な演奏のように思われますが,プロコフィエフのオーケストレーションの妙を,リアルに捉えた録音のおかげで十分味わうことができますし,全体に情感たっぷりで,美しいメロディをたっぷりと歌わせていて,何度聴いても飽きないよさがあります。録音のせいでややドライな印象があり損をしているかもしれませんが,素晴らしい演奏ですよ。


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クラウディオ・アバド(指揮)
シカゴ交響楽団
Deutsche Grammophon 1977年2月
シカゴ,オーケストラ・ホール

故長岡鉄男さんが「アレクサンドル・ネフスキー」の録音をすごく褒めていたので,買ったCDです。よく見ると「アレクサンドル・ネフスキー」はロンドン響,「スキタイ」と「キージェ」はシカゴ響で録音会場等も異なるのですが,後者も優秀録音ではないでしょうか。ジャケット画像(これはLP)のとおり,まだ若いアバドが残した傑作だと思います。

オーケストラがシカゴ交響楽団ですからね。第1曲は推して図るべしってなもんです。オケがバリバリ鳴りまくっていて爽快です。バス・ドラムの連打も歪みがなく量感も十分で,アナログ後期の優秀録音を満喫できます。バス・ドラムの迫力は今回聴いた中で随一かも。いや,そこが好きなもので。第2曲も叙情的で良い演奏ですが,アバドの常として踏み込みが浅いというか,少々あっさりしているのが物足りないのですが,贅沢な望みかもしれません。第3曲も同様で品が良い演奏という気がします。第4曲はきっちりまとめられていて小気味良さはあるものの,ワクワク感にいささか乏しいような。終曲は良いですね。各楽器が切々と歌うメロディには心がこもっていて,そしてとても美しくて,皇帝でなくても涙してしまうことでしょう。


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クラウス・テンシュテット(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
EMI CLASSICS 1983年9月
ロンドン,アビー・ロード第1スタジオ

テンシュテットはマーラー指揮者というイメージが強いのですが,いわゆる大曲だけでなく,こうした名曲も上手いですよね。グレートEMIレコーディングスという14枚組はテンシュテットの才能を満喫することができるBOXだと思います。お買得価格ですし。

そのBOXにも収められている「キージェ中尉」は素晴らしいと思います。名コンビとなるロンドン・フィルの音楽監督に就任した年の録音ですが,オーケストラが指揮者に心酔し奉仕しているように聴こえます。各旋律の歌わせ方,テンポの設定,楽器のバランスなど,各場面にふわさしい出来だと思いますし,プロコフィエフの音楽のほの暗さ,皮肉っぽさなどもよく出ていると思います。

ロンドン・フィルは,さすがに他の3つのオーケストラに比べると分が悪いというか,独奏の巧さで聴かせるとかそういうことが少なく,全体に洗練の度合いが低いのですが,ワクワク感・ドキドキ感はこちらのほうがずっと上ですね。なんだかすごく魅かれるんです。ドラマティックで白熱した演奏というと言い過ぎかもしれませんが,熱っぽさがあり,ホント,気持ちのよい演奏を聴かせていただきました。この演奏が一番好きかも。


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小澤征爾(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アンドレアス・シュミット(バリトン)
Deutsche Grammophon 1990年11月
ベルリン,フィルハーモニーザール

小澤征爾は1989~1992年にプロコフィエフ交響曲全集を相性の良いベルリン・フィルとデジタル録音していまして,小澤征爾ならではの仕事だと思うのですが,この全集には交響曲以外に「キージェ中尉」が収録されていますので,それを聴いてみます。なお,第2曲と第4曲はバリトン独唱入りで,珍しいけれどこれが正解なのだそうです。

ベルリン・フィルによる「キージェ中尉」,なんとも贅沢なサウンドです。このオーケストラならではのしっとり感と木目の細かさは耳にご馳走ですね。また,重厚なアンサンブルはプロコフィエフにふさわしく,かつメルヘンっぽくもあっていいですね。シュミットのバリトンは美声による誠実な歌唱です。「灰色の小鳩が悲しんでいる」と歌っているのでしたっけ。ディースカウのお弟子さんだけあって,歌い方が師匠に似ていますね。バリトン独唱が入ったほうがロシアっぽくて私は好きです。第3曲は個人的にはやや魅力に欠ける曲なのですが,それでもベルリン・フィルだと聴けてしまいます。素晴らしいオーケストラ。第4曲で再びバリトン登場。真面目(紳士的)過ぎるのでもう少しくだけた感じがあると面白いと思うのですが,このように歌が入ったほうが曲にふさあわしく音楽が生き返ったような感じがします。第5曲も音楽よりベルリン・フィルを聴いてしまいます。今さらですが,素晴らしいオーケストラです。



あと,この曲こそ,ライナー/シカゴ交響楽団の演奏で聴いてみたいところです。

ロシアの演奏家による録音をあまり見かけないのですが,私の探し方が悪いのかな。

ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲の名盤(前口上)

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ウィキペディアのコピペですが,この曲の編成は以下のとおりです。

木管楽器
フルート2、ピッコロ、アルトフルート、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、小クラリネット、バスクラリネット、ファゴット3、コントラファゴット

金管楽器
ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、チューバ

打楽器
ティンパニ、バスドラム、スネアドラム、タンブリン、タムタム、ウィンドマシーン、チェレスタ、グロッケンシュピール、シロフォン、トライアングル、カスタネット、クロタル、シンバル

弦楽器
ハープ2、弦楽5部

バンダ
ピッコロと小クラリネット(舞台上)、ホルンとトランペット(舞台裏)

合唱
混声4部(舞台裏)

新交響楽団さんの解説がとってもわかりやすかったので(勝手に)引用させていただきました。ごめんなさい。

モーリス・ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲

【第1部】パンの神とニンフの祭壇の前
 序奏
  聖なる森のはずれにある野原。
  春の午後、若者たちはニンフの祭壇へ祈りを捧げる。
 宗教的な踊り
  ♪ヴァイオリンによる優美な旋律
  ダフニスとクロエがそれぞれ登場。
  ダフニスを囲んで踊る娘たちにクロエが嫉妬。
  ♪軽快な7拍子
  ドルコンがクロエに接近。ダフニスは割り込む。
 全員の踊り
  ダフニスとドルコンは踊りで勝負をすることに。
 ドルコンのグロテスクな踊り
  ♪ティンパニによる2拍子のリズム、ファゴット
  ドルコンは皆に嘲笑される。
 ダフニスの軽やかで優雅な踊り
  ♪フルート群の旋律、ホルン
  ドルコンに勝ち一同の前でクロエを抱擁する。
  ダフニスはその余韻に恍惚となる。
  リュセイオンの登場。
  ♪クラリネットによる印象的なフレーズ
  リュセイオンの踊り。ダフニスを誘惑する。
  ♪ハープの伴奏にフルートの旋律
  海賊が襲来。クロエが囚われてしまうる。
  残された靴を見つけ、ダフニスは絶望して気を失う。
  ♪クレッシェンドを経てffへ到達
 夜想曲
(第1組曲はじまり)
  ♪PPの弦楽器
  3人のニンフ登場。神秘的な踊り。
  ♪フルート、ホルン、クラリネットのソロ、ウィンドマシン
  ニンフによって蘇生したダフニスは,
  パンの神にクロエの無事を懇願する。
 間奏曲
  ♪合唱、舞台裏のホルン、トランペット

【第2部】海賊ブリュアクシスの陣営
 戦いの踊り
  ♪低音群の力強い刻みに始まり、荒々しく盛り上がる。
(第1組曲おわり)
  ブリュアクシスはクロエに一曲踊るよう命ず。
 クロエの哀願の踊り
  ♪コールアングレのソロ
  クロエは逃走を試みるが失敗。
  大地が裂けてパンの神が現われ,海賊たちは退散する。
  ♪ウィンドマシン

【第3部】パンの神とニンフの祭壇の前
(第2組曲はじまり)
 夜明け
  ダフニスが祭壇の前で眠っている。鳥のさえずり。
  夜が白みはじめやがて日が昇る。
  ♪フルートの細かいアルペジオ、
   低弦から静かに始まる旋律が徐々に弦全体へ
  二人の再会。
 無言劇
  二人はラモンからパンに助けられたことを知り、
  パンとシランクスに扮してパントマイムを踊る。
  ♪オーボエ
  ダフニスは葦で作った笛を吹き、愛を告白する。
  節に合わせて踊るクロエ。
  ♪フルートの長いソロ
  クロエはダフニスの腕の中に倒れ込む。
  ♪フルート群の掛け合い、アルト・フルート
  祭壇の前で愛を誓い合うダフニスとクロエ。
 全員の踊り
  バッカスの巫女の衣装を着た娘たちが登場。
  ♪5拍子、小太鼓、Esクラリネット
  若者たち登場。
  全員で恋人達を祝福し、踊りは最高潮へ達する。
(第2組曲おわり)


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Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 1 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 2 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 3 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 4 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 5 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 6 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 7 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 8 of 9)

Daphnis and Chloe - Royal Ballet (part 9 of 9)


Ravel: Daphnis et Chloe / Nezet-Seguin · Berliner Philharmoniker


Ravel: Daphnis et Chloe, Suite No.2
Boston Symphony Orchestra
Charles Munch, conductor
A WBGH Live Telecast from Sanders Theatre Harvard University
April 17, 1962
Ravel: Daphnis et Chloe, Suite No.2 (Boston SO, Munch) 1/2

Ravel: Daphnis et Chloe, Suite No.2 (Boston SO, Munch) 2/2


James Galway playing Daphnis et Chloe
Maurice Ravel - Daphnis et Chloe, Suite Nr.2, Pantomime
Live Recording 1974 - Berliner Philarmoniker - S. Ozawa, Conductor


以前から取り上げてみたかった曲です。手持ちのCDもそこそこありますので,そろそろかなと思ったのですが,聴き比べを始めてみるとこれが大変。なにが大変かというと,曲が長い! 全曲で55分ぐらい。

一回聴いたぐらいでは演奏の良し悪しを判断できないので繰り返し聴いてから記事を書いているのですが,これでは数週間かかってしまいます。

したがって,いつものことではあるのですけれど,CDの聴き比べは少し手抜き気味で書いています。それは違うんじゃないか?と思う人もいらっしゃるかもしれません。

何が言いたいかというと,いや,ちょっと言い訳しておこうと思っただけです。


文字数制限があるので,次の記事に続きます。


(次の記事)


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ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲の名盤(本編)

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前の記事の続きです。

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ピエール・モントゥー(指揮)
ロンドン交響楽団
ダグラス・ロビンソン(合唱指揮)
コヴェント・ガーデン王立歌劇場合唱団
DECCA 1959年4月27-28日

「ダフニスとクロエ」の全曲初演は,1912年6月8日で,指揮はピエール・モントゥーです。このCDは初演指揮者による演奏を優秀なステレオ録音で聴くことができます。
そこで,せっかくの機会ですので,国内廉価CD(DECCA BEST PLUS 50 \1,000)と,Pragaがアナログ・テープからDSDリマスタリングを行ったSACDの音質を比較してみたいと思います。
うーん,違いがよくわかりません。強いていえば,CDはメリハリがあるものの強音時に平べったい音質ですが,SACDは全体に大人しめであるものの,喧しさがなくて長時間疲れない音であるという当たり前の感想になってしまいました。思ったほどの違いはなかったです。
肝心の演奏は,噛んで含めるような演奏と申しますか,ここはこうあらねばならないという指揮者の名講義を拝聴しているような感じがします。そうはいっても全体に押しつけがましさのない自然な演奏であります。


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シャルル・ミュンシュ(指揮)
ボストン交響楽団
ローナ・クック・デ・ヴァロン(合唱指揮)
ニュー・イングランド音楽院合唱団
RCA 1961年2月26,27日
ボストン,シンフォニー・ホール

ミュンシュには同じボストン響を振った1955年の2トラック録音(RCA)があり,それはSACD化されているのですが,こちらは再録音で,帯に「世界初CD化」とあります。これだけの名演が2002年1月までCD化されなかったわけで,ミュンシュは海外で評価が低いというのは本当かも。
ボストン響の重厚なアンサンブルに軽妙な味わいを求めたいと思うこともありますが,この力感は捨て難くもあり,やはりボストン響は優秀です。演奏も録音もミュンシュの意図を完全に理解して120%表現していると思います。
圧巻は第三部の「全員の踊り」で,これを聴いてしまったら他は聴けないというくらい,エネルギッシュな演奏で,これは圧巻! バス・ドラムはこれぐらいでないと。ラヴェルのオーケストレーションを知り尽くしている指揮者とエンジニアリングによる傑作だと思います。これはお薦め!


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アンドレ・クリュイタンス(指揮)
パリ音楽院管弦楽団
ルネ・デュクロ合唱団
EMI CLASSICS 1962年
パリ,サル・ワグラム

クリュイタンスのラヴェルは,LPで全て揃えてCDで買い直し,さらにSACDにも手を出しています。つまり大好きな演奏なのです。
この「ダフニスとクロエ」全曲盤は,名曲名盤本の類では不動の1位です。だからいまさら私が下手くそな文章で書く必要もないのですが,改めて(24bitリマスタリングCDを)聴き直してみると,この指揮者とオーケストラにしか表現できない独特の雰囲気がありますね。漂ってくる薫りが違うという感じで,一番安心して聴ける演奏かもしれません。安全運転という意味ではなく,肌触りの良さ,馴染みやすさという点においてです。
この録音以降,演奏と録音技術はますます進化し,より精緻な演奏が優秀録音で楽しめるようになったのですが,この高雅で優美な雰囲気は唯一無二です。全体に腰高なサウンドでもう少し重低音が欲しいような気もしますが,これがフランスの伝統なのかもしれませんね。


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ジャン・マルティノン(指揮)
パリ管弦楽団
ジャン・ラフォルジュ(合唱指揮)
パリ・オペラ座合唱団
EMI CLASSICS 1974年
パリ,サル・ワグラム

フランス人によるフランスのオーケストラによるフランス人のための演奏。そんなわけで,マルティノンによるフランス国立放送管弦楽団を指揮したドビュッシーとパリ管弦楽団を指揮したラヴェルは貴重です。
ただ,個人的にはマルティノン指揮のドビュッシーはよく聴きましたけれど,ラヴェルはあまり聴いていないんです。クリュイタンス(フランス系ベルギー人)のほうが味が濃いめで,マルティノンは淡白に感じてしまうのです。だからちょっと苦手でした。
今回,10年ぶりぐらいに聴いてみたのですが,テンポの遅い部分は良いとしても,リズムが特徴的な部分などテンポがちょっと速くなると,揃わないのか揃えようとしないのか,アンサンブルが合っていないのが気になります。そういうところを除けば,名手揃いのパリ管弦楽団は管楽器はどれも巧いですし,本場物という先入観のせいかもしれませんが,雰囲気は豊かです。


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ピエール・ブーレーズ(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
エイブラハム・カプラン(合唱指揮)
カメラータ・シンガーズ
SONY CLASSICAL 1975年3月
ニューヨーク,マンハッタン・センター

SONY CLASSICALレーベルから発売されているドビュッシーもそうなのですが,ブーレーズのラヴェル旧録音群は良い仕事,画期的な演奏だったと思います。当時これを聴いた人達はどう感じたのでしょうか。
スコアに書かれている音符が目に浮かんでくる精密機械のような演奏。いくら「ダフニスとクロエ」がラヴェルの大傑作とはいえ,全曲通して聴くのは私にとってなかなかしんどいものがあるのですが,この演奏は思わず聴き入ってしまう演奏であり録音です。改めてラヴェルってすごいと思いましたし,ブーレーズも素晴らしいと思います。
筋肉質の引き締まった演奏ですが,もう少し贅肉が付いていたほうが安らぎを覚えるかなとも思う今日この頃なので個人的には再録音のほうが好きなのですが。


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シャルル・デュトワ(指揮)
モントリオール交響楽団&合唱団
ティモシー・ハッチンス(fl)
DECCA 1980年8月
モントリオール,聖ユスターシュ教会

モントリオール交響楽団がシャルル・デュトワと決別したのは2002年でしたっけ。10年以上も前のことだなんて信じられませんが,大変素晴らしいコンビでした。そのコンビの代表的な録音が,仏ディスク大賞,モントルー国際レコード賞,レコード・アカデミー賞受賞の当ディスクで,私が初めて買った「ダフニスとクロエ」全曲盤のCDでもあります。
これさえあればクリュイタンスやマルティノン等のおフランス系CDは不要と思ったものでした。なんたって「フランスのオーケストラよりフランス的なオーケストラ」でしたから(過去形)。あれらをもっと洗練させて美しく仕上げ,優秀な録音で残した傑作なのですが,私がこれを飽くことなく繰り返し聴いたかというと答えはノーです。このあたりが難しいところで,あまりにも嵌りすぎた演奏はかえって抵抗感を覚えるのでしょうか。
録音は,1階センターの後ろの席で聴いているな感じ。独奏楽器をリアルに捉えるよりは全体の雰囲気重視みたい。もう少し克明な録音であってもよいかなとも思います。


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ピエール・ブーレーズ(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルリン放送合唱団
Deutsche Grammophon 1994年5月
ベルリン,イエス・キリスト教会

おそらく私の好みは,ブーレーズの演奏なのだと思います。そして,ブーレーズの2種の全曲盤では,ベルリン・フィルとの再録音をより好みます。ニューヨーク・フィルとの画期的な旧盤は録音のせいもあってオケのギスギスした音色に抵抗を感じていたのですが,ベルリン・フィルのしっとりした音色のおかげで弱点が克服され,天下の名盤となりました。
ブーレーズの意図が徹底しているのは旧盤のほうで,いささかも価値は減じていないと思うのですが,「ダフニスとクロエ」を聴きたいと思うときに,一番手を伸ばしたくなるのは当盤です。聴き始めたら最後まで通して聴きたくなる演奏です。
イエス・キリスト教会での録音も理想的で,合唱とオーケストラのバランスも最上ですし,最後の「全員の踊り」のような曲でも聴きたい楽器がきちんと聴き取れるのはとてもありがたいです。「ダフニスとクロエ」を知り尽くした指揮者による極めつけの名盤と評したいと思います。


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チョン・ミュンフン(指揮)
フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団&合唱団
Deutsche Grammophon 2004年11月
フランス放送,オリヴィエ・メシアン・ホール

ちょっと気になったのでHMV ONLINEの指揮者検索でチョン・ミュンフンの現行盤を調べたところ86枚でした。思ったより少ないですね。指揮した作曲家で最も多いのがメシアンで12枚。次いでブラームス,ドヴォルザーク,ビゼー,ニールセン,マーラー……。思いつく名盤は,メシアン:トゥランガリーラ交響曲(パリ・バスティーユ管),ベルリオーズ:幻想交響曲(同),リムスキーショスタコーヴィチ:交響曲第4番(フィラデルフィア管),そして当盤でしょうか。
この「ダフニスとクロエ」(廃盤!)は,私が持っている中で最もテンポの緩急差が大きい演奏だと思うのですが,とにかくスマートですいすい・ぐいぐい進んでいきます。変化に富んでいるので面白く聴き易いのですが,ちょっと力押し気味でもあります。もう少し繊細さを求めたいところです。
気になるのは録音で賛否があるようですが,こういう録音はフランスの伝統なのでしょうか。よく言えば幻想的で雰囲気重視の音づくりです。録音ですごく損をしているような,結構びみょうな演奏。


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ジェイムズ・レヴァイン(指揮)
ボストン交響楽団
ジョン・オリヴァー(合唱指揮)
タングルウッド祝祭合唱団
Bso Classics 2007年10月ライヴ

Deutsche Grammophonへの1984年録音は現在(常に)廃盤中で,タワーレコードでのみ入手可能です。そちらはウィーン・フィルと国立歌劇場合唱団によるものですが,どちらか1枚というとになれば,私はこのボストン響との演奏を選びます。
レヴァインとボストン響という,ありそうでなかなかないコンビによる演奏ですが,当盤はボストン響の自主レーベルによるもので,ありがたいことにSACD。
現代オーケストラの機能美を押し出した,明るくメリハリのある演奏というべきでしょうか。レヴァインの語り口の巧みさに陶然とさせられ,音楽に惹き込まれるものがあります。
あまりの屈託の無さにこれでいいのかと思わないでもありませんが,これだけ満足させてもらえれば十分でしょう。最後の全力を注ぎ込んだ和音は,これを生で聴いたら思わずブラヴォーって叫んじゃいますよね。現代的な名演奏。


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ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
ロンドン交響楽団&合唱団
LSO 2009年9月20,24日ライヴ
ロンドン,バービカン・ホール

これはロンドン響の自主レーベルによるSACDです。特価1,290円のお買得盤で,これも名演だと思います。非常によく歌う演奏で,短いフレーズも長いフレーズもたっぷり豊かな歌を聴かせてくれます。リズムの処理もばっちりで,難しそうな箇所でも揺るぎないものを感じますね。オーケストラは名門ロンドン響ですから,ソロからトゥッティまで文句なしの出来栄えです。合唱も優秀でオーケストラとの一体感が見事です。録音も優秀。
心から良い演奏だと思うのですが,ミュンシュ/ボストン響やブーレーズの2種の録音を聴いた後だと欲が出てきて,もっとこのコンビなら出来るはずではないか,なんて思ってしまうのです。それは,デュトワ,チョン・ミュンフン,レヴァインにも言えることで,なんて言ったらいいんだろう,もうあとひとつ,何かないかなって感じてしまいます。
チョン・ミュンフンだと録音で損をしているから仕方が無いという諦めもつくのですが,この盤は録音も優れているので厳しくなってしまうのでしょう。


ラヴェルの「ダフニスとクロエ」は,第2組曲だけの録音もありまして,この後にそれの聴き比べを続けるつもりだったのですが,40度近い猛暑のせいもあり,集中力が途切れてしまったので,この辺で終わりにしようと思います。


カレーライス食べたい……。





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