今回も数が多いです。22種類あるのです。
名演に出会えると、苦労が報われた気持ちになります。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
永井幸枝(p)
2000年1月
これは、コルトーの編曲によるピアノ独奏版です。フランクのヴァイオリン・ソナタは、ピアノ・パートが非常に魅力的で、ピアノだけ聴いてみたいという思いに応えてくれるものとして選んでみました。とても興味深く、特に第2楽章が面白かったです。当然のことながら、元々ピアノ・ソロとして作曲されていた部分のほうが出来が良く、ヴァイオリン部分を移したところはいま一つになっています。変わり種としてご紹介しました。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ウート・ウーギ(vn)
ブルーノ・カニーノ(p)
2000年1月 イタリア,イヴレア
【お薦め】
イタリアのウート・ウーギ(1944年-)とブルーノ・カニーノ(1935年-)による演奏です。第1楽章出だしは上々、名演の期待が高まります。美しい音による、良く歌われるメロディで、イタリアのデュオらしく、曇りのない晴れやかな演奏です。ウート・ウーギのヴァイオリンは低音から高音まで音がきれいに響いていて、気持ちがよく聴けます。第3楽章のRecitativoとFantasiaの各所の描き分けも上手で、第4楽章もただただ聴き惚れているうちに終わってしまいました。素晴らしい演奏でした。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ミッシャ・マイスキー(vc)
マルタ・アルゲリッチ(p)
2000年11月9・10日
京都コンサートホール(ライヴ)
マイスキー(1948年-)とアルゲリッチ(1941年-)、19年ぶりの再登場です。パールマンの時は、アルゲリッチの弾き崩しが気になりましたが、マイスキーとのデュオでは違和感がありません。ただし、チェロは前回のほうが美しかったすし、今回は幾分線が細くなった感じがします。しかし、第3楽章はチェロならではの味わいがありますし、アルゲリッチは全然変わっておらず、相変わらず絶好調です。
なお、マイスキーとアルゲリッチには、2011年2月9・10日のルツェルン,カルチャーコングレスセンターのライヴ映像がありますが、それは視聴していません。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ウラディーミル・スピヴァコフ(vn)
セルゲイ・ベズロドニー(p)
2001年3月19-21日
パリ,Eglise du Bon Secours
【お薦め】
ロシアの名ヴァイオリニスト、スピヴァコフ(1944年-)です。音色が低い音から高い音までバランスが良く、そして美しく、メロディはやや引き摺る傾向がありますが、ロシアの演奏家らしく濃厚な歌を聴かせ、聴き応え十分です。こんな演奏でブラームスを聴けたら、きっと素晴らしいでしょうね。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
オリヴァー・コルベントソン(vn)
エイリッヒ・アペル(p)
2002年(!?)
コルベントソン(1927年-2013年)は、アメリカ出身のヴァイオリン奏者。
これは絶対2002年の録音ではないです。Digitally Remastered と書いてあるのが怪しいし、これはモノラル録音です。リストから除外しようと思いましたが、そんなに悪い演奏でもないので、一応ご紹介しておくおとにしました。ステレオ録音でメジャーレーベルからの発売だったら、そこそこ高い評価をあげてしまったでしょう。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ヨーヨー・マ(vc)
キャサリン・ストット(p)
2003年1月、2月
【お薦め】
ヨーヨー・マ(馬友友:1955年-)は「デビュー当時のテクニックは世界最高」といわれた人ですから、このフランクも、ものすごく巧いです。ヴァイオリン曲をチェロで弾くのは難しいと思うのですが、普通のヴァイオリン奏者より巧くて美しい演奏です。巧いだけではなく、(パリ生まれだからというわけではありませんが)フランスのエスプリ的なものが漂っており、音楽が洗練されています。チェロ版では一押しで、これならチェロ・ソナタとしても立派に通用するのではと思いました。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
サラ・チャン(vn)
ラルス・フォークト(p)
2003年5月
【お薦め】
この録音時23歳のサラ・チャン(張永宙:1980年-) は韓国系アメリカ人のヴァイオリニストであり、ドロシー・ディレイ門下、パールマンや五嶋みどり、ギル・シャハム、諏訪内晶子、シュロモ・ミンツらの妹弟子なのだそうです。ピアノは指揮者としても活躍しているラルス・フォークト(1970年-)。このピアノはとってもゴージャスな響きです。
第1楽章は終始かすれ気味の音が気になりますが、これも表現のひとつなのでしょうか。それだけに強音に達したときの輝かしさが際立ちます。
第2楽章はフォークトの粒立ちのよい、ダイナミックかつ細心なピアノに惹かれますし、サラ・チャンの強くてしなやかなヴァイオリンが素晴らしいです。
第3楽章もなかなかの表現力です。前にも書きましたように、かすれた音で弾かれるのは好きではないのですが、効果的に用いていますね。
第4楽章も魅力的な音色で、高らかに歌い上げる演奏です。フォークトのピアノが煩いときもあるけれど、それにしても立派なピアノです。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ヤーノシュ・バーリント(fl)
ゾルターン・コチシュ(p)
2003年12月27-29日
Phoenix Studio
【お薦め】
ハンガリーのデュオで、バーリント(1961年-)のフルート、とコチシュ(1952年-2016年)のピアノによる演奏です。コチシュは、ラーンキ、シフとともに三羽烏と称えられた名ピアニストで、惜しくも一昨年に亡くなってしまったのですが、指揮者としても素晴らしいバルトークを残していました。
コチシュのピアノを聴きたいがために、この録音を選んだのですが、バーリントのフルートは、ヴィブラートが控えめで、あっさり吹き進めていきます。中低音では、フルートの特徴である歌口に当たる息の音があまり聴こえないのが不思議。電子楽器のようです。第2楽章はコチシュの硬質な響きのピアノが大活躍します。バーリントンは相変わらずあっさりしていますので、コチシュの強靭なピアノの方に耳が傾きがちです。とにかく凄まじいピアノです。バーリントは高音を避けないので、原曲に近いなのが好ましく、第3楽章のソロで奏でられる、いくつかの Recitativo が素晴らしいです。 Fantasia に入るとそれまでの性急な運びから一転して、情緒豊かになります。これならばフルート・ソナタとして立派に通用するでしょう。コチシュ目当ての演奏でしたが、バーリントのフルートに魅せられた1枚でした。フルート版では一押しの演奏です。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ミヒャエル・ディンネビーア(vn)
アンゲラ=シャルロット・ビーバー(p)
2004年1月25-27日
Schloßbergsaal des SWR Freiburg
ミヒャエル・ディンネビーア(1968年-)はアルゴイ地方ケンプテンの生まれです。ピアニストについてはよくわかりません。
線の細いヴァイオリンという第一印象を受けました。内省的なヴァイオリンを演出しているのかとも思いましたが、楽章を追ってもその印象は変わりません。楽章を追うごとに、なかなかドラマティックな演奏となります。しかし、いわゆる弾き崩しがないことについてはも好感が持てるのですが、音色に魅力がないのは大きなマイナスポイントです。ちょっと残念。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
Volodja Balžalorsky(vn)
Hinko Haas(p)
2004年?
Lirica bagatela(ライヴ)
Balzzalorsky(バルザロスキー?:1956年-)、Hinko Haas(ヒンコ・ハース?:1956年-)はいずれもスロベニアの演奏家です。Balžalorskyの音色には癖があります。鼻が詰まった歌手のような感じで、訛りのように聴こえます。それが美しいと思われるときもあれば、変な音色に聴こえることもあります。それさえ気にならなければ、これはなかなかの熱演で、傾聴に値しましょう。少し荒っぽいところもありますが、なかなか良い演奏ですよ。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
堀 正文(vn)
清水和音(p)
2005年2月13-14日
埼玉,秩父ミューズパーク
【お薦め】
堀 正文(1949年-)は、富山県出身のヴァイオリン奏者です。1974年にダルムシュタット国立歌劇場管弦楽団の第1コンサートマスターに就任、1979年にNHK交響楽団と共演したのを契機に、その年の9月にN響のコンサートマスターとなり、長年ソロ・コンサートマスターを務め、現在は名誉コンサートマスターだそうです。
清水和音(1960年-)の、1981年のロン=ティボー国際コンクールピアノ部門優勝後の活躍は、ご存じのとおりでしょう。
こんな大御所二人の演奏について感想を書くなんて畏れ多いことですが、歯に衣(きぬ)着せず記します。
第1楽章序奏の段階で清水の音色にノックアウトされます。第1主題を奏でるヴァイオリンも飾り気がなく誠実なもので、好感が持てます。この段階で早くも【お薦め】決定です。
第2楽章も良いテンポです。堀のヴァイオリンは高い音になっても力強さと輝きを失わず、そして清水のダイナミックで美しいピアノが大変魅力的です。
次の楽章は、清水に比べると地味な彫のヴァイオリンですが、恰幅のよさと包容力を感じさせるもので、Recitativo と Fantasia の対比も見事であり、久々に聴かせる第3楽章でした。
第4楽章はカノンの自然な美しさ、展開部の劇性ともに申し分なく、堀の伸びやかな美しさを誇るヴァイオリンと清水のバスを強調した重厚かつ繊細なピアノがとても素晴らしかったです。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ドーラ・シュヴァルツベルク(vn)
マルタ・アルゲリッチ(p)
2005年12月10-12日
Dada Studio
大家が続きます。シュヴァルツベルクについては詳細は不明ですが、室内楽の分野では、アルゲリッチ、マイスキー、ラビノヴィッチ、ベルリンスキー(ボロディン弦楽四重奏団)、トレチャコフ、バシュメット、アファナシエフ、今井信子、コッス等、著名な演奏家と共演している人で、教師としては、1988年からウィーン国立音楽演劇大学の教授として、30人以上の弟子を国際音楽コンクールに入賞させている指導者だそうです。なお、ピアノはまたしてもアルゲリッチ(1941年-)で、これで何度目の登場でしょうか。
個性的な演奏を予想していたのですが、やっぱり非常にユニークです。
第1楽章は遅いです。ピアノによる第2主題提示までがすごく遅く、その後のかけ合いも遅く、例の奏者がしているように、シュヴァルツベルクも終始かすれた音を多用し、心に傷を負ったような苦し気な雰囲気で幕を閉じます。
第2楽章は、第1主題も第2主題も苦し気で、不安が増長して、なかなか平安が訪れません。このようなヴァイオリンですから、アルゲリッチのピアノは全く違和感がなく、アルゲリッチがいつもより控えめに思えるほどで、主導権はヴァイオリンが握っているように思えます。これはすごいこと。
第3楽章もかなり自由で濃厚な表現です。第4楽章泣き明かした目で微笑んでいるような演奏です。とにかく最後まで濃厚な表現ですが、3分45秒あたりで「うぐぁッ」という唸り声のようなものが聴こえたのには驚きました。
そんな演奏ですから、フランクのヴァイオリン・ソナタを1枚買ってみようという人にはお薦めできません。5~10枚ぐらい購入した人であれば、これを聴いているみるのも良いでしょう。何度も繰り返して聴ける演奏ではありませんが。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ヨシフ・イワノフ(vn)
ダニエル・ブルーメンタール(p)
2006年1月
JAPAN ARTSさんのサイトによると、「印象的な権威と存在感を持つ演奏家」(ザ・ストラド)、「未来のトップヴァイオリニストのひとり」(ディアパソン誌)と目され、同世代の中で最もエキサイティングなヴァイオリニストのひとりという地位を短時間で確立し。16歳でモントリオール国際コンクール第1位、2年後にはエリザベート王妃国際コンクールでも第2位と観客賞を受賞して注目を集めた、逸材だそうです。
シュヴァルツベルクの演奏を聴いた直後では、一服の清涼剤のように思えます。第2楽章は開始からテンポが速く、イワノフが本領を発揮し始め、緩急の差を大きく取った若々しい表現で魅せます。第3楽章も美しい音色による心のこもった歌を聴かせ、第4楽章は文句のつけようがない名演となりました。ただ、第1楽章がいま一つに思えたため、無印とします。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
古澤 巌(vn)
高橋悠治(p)
2006年4月16・17日
軽井沢,大賀ホール
古澤巌(1959年-)と高橋悠治(1938年-)によるフランクで、個性的な演奏が期待できそうです。
第1楽章は、何と言ったらよいのか、音をひきずる演奏が多い中で、前につんのめるような演奏です。神経質でなく、弱音に固執しない図太さが気に入りました。そういう意味では第2楽章は普通かもしれません。第3楽章も意外に端正に弾いています。第4楽章ともども旋律の歌わせ方は、なかなか感傷的なのですが、さばさばしているところもあります。全体としてドライな印象を持ちましたが、さっぱりしたフランクを聴きたい人に向いている演奏でしょう。高橋悠治のピアノも意外なくらい普通ですが、他では聴けない面白い表現も聴けます。2人とも、奇をてらわず、正攻法で臨んだようです。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
セルゲイ・ハチャトリャン(vn)
ルシーネ・ハチャトリャン(p)
2007年7月
スイス,シオン Studio Tibor Varga
【お薦め】
この姉弟を以前はハチャトゥリアンと記しましたが、レコード芸術の表記に従い、ハチャトリャンとしました。作曲家のアラム・ハチャトゥリアンと同じアルメニアの出身です。Amazonのレビューでルシーネがヴァイオリニストと勘違いしている人がいますが、弟のセルゲイ(1985年-)がヴァイオリンで、姉のルシーネがピアノのデュオです。
第1楽章は品が良く静かな音楽で、大切に丁寧に演奏しています。第2楽章も声を荒げることのない抑えた表現で、幻想抒情曲といった趣です。抑えているがゆえに、より内面性が感じられ、また、不気味でもあります。しかし、コーダでは抑えた感情が爆発します。第3楽章もソフトですが、Recitativo は鋭いです。Fantasia は瞑想的です。第4楽章は平安な気分に満ち、楽曲をいたわるような演奏です。この楽章も最後に感情が噴出するようです。全体を通してなかなかユニークな表現に感じられましたので、お薦めにします。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
リンダ・ヘドルンド(vn)
オリバー・カーン(p)
2008年(リリース?)
「フィンランド音楽界を牽引するヴァイオリニストの1人」リンダ・ヘドルンドの演奏です。ピアノは伝説のGKではありません。ベートーヴェン国際優勝のピアニストです。
第1楽章はヴァイオリンの音色があまりきれいじゃないかも。あと、低い音だと音程がぶら下がり気味になるような。第2楽章も、小さい音や低い音では音色が汚いのです。強い音だとそんなことはないので、意識してやっているのでしょうか。熱演といえば熱演です。聴かせるところもあります。第3楽章も音色がきれいじゃないけれど、なかなか美しい歌を聴かせます。ところが第4楽章は歌も音もきれいで、最も成功しており、なんだか騙された気がしますね。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ダヴィッド・ルフェーヴル(vn)
アラン・ルフェーヴル(p)
2008年
ダヴィッド・ルフェーヴルについて調べようと思って検索したら、このブログがヒットしました。コメント欄にルフェーヴルの名を書いてしまったからでしょう。つまり、それぐらい無名ということなのです。CDはそこそこ出している兄弟(?)なのですが。
第1楽章最後の音が僅かに乱れるのはご愛敬、第2楽章で音をスパッと切る箇所が面白いです。第3楽章、Recitativoの2小節目でトリラーに入るとき、なんか変だったような。第4楽章も変なポルタメントがかかった……。なんだかんだ書いていますが、この演奏は普通に良い演奏だと思います。聴き終えて清々しさが残りました。お薦めにはしませんが、一聴の価値がある演奏です。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
ウリ・ピアンカ(vn)
ティモシー・ヘスター(p)
2009年2月24日
ウリ・ピアンカ(1937年-)はテルアビブ生まれで、イスラエル・フィルのコンサート・マスターでもあった人、ティモシー・ヘスターについてはよくわかりません。
ピアンカのヴァイオリンは、歌い方にちょっと癖がありますね。誕生年と録音年が正しければこの時72歳です。右手の弓捌きが衰えているのか、大事な音を外すときもあります。若かりし頃は、美音を撒き散らしながら、濃厚な歌を奏でていたのでしょう。聴きようによっては、年齢に似合わあない瑞々しい音楽を奏でるヴァイオリニストという見方もできるかもしれませんが、柔軟性に欠け、やや硬直した音楽づくりです。時おり、全盛期を想像させる立派な表現もあるのですが……。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
シルヴィア・マルコヴィッチ(vn)
ジャン=クロード・ヴァンデン・エイデン(p)
2009年3月24日(リリース?)(ライヴ)
【お薦め】
マルコヴィッチ(1952年-)はルーマニアが誇る世界的なヴァイオリニストで、容姿端麗(なのにこのジャケット?)という点でも有名だそうです。ピアニストは、何人かの日本人ピアニストに「ジャン=クロード・ヴァンデン・エイデンに師事」という略歴が見られることから、教育者として有名な人なのかもしれません。
さて、この録音、本当に2009年の録音なのでしょうか。特にピアノの音色がデジタル録音とは思えない不思議な音で鳴っています。
演奏は良いです。スタイルには若干古さを感じさせますが、第1楽章の問いかけの歌、第2楽章の迸る激情、第3楽章の昏い情熱、第4楽章の晴朗な賛歌などいずれも素晴らしいと思いますし、ヴァイオリンの音色が魅力的です。エイデンのピアノも良いです。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
トーマス・アルベルトゥス・イルンベルガー(vn)
イェルク・デムス(p)
2009年9月
ザルツブルク,Salle de musique Gneis
イルンベルガーについては調べてもわからなかったのですが、イェルク・デムス(1928年-)のピアノを聴きたかったので、この録音を選びました。デムス、この時81歳です!
フランクのソナタは、第1楽章最初のヴァイオリンが美しい音で演奏されることがあまり無いのですが、この演奏は珍しくきれいな音でした。これは名演かもしれないと思いましたが、第2楽章は美音に寄りかかり過ぎで、いささか緊張感のない演奏に聴こえますし、音程も甘いようです。デムスのピアノも細かい音がうまく弾けていません。総じてヴァイオリンとピアノがちぐはぐな印象を受けました。第3楽章、いきなりヴァイオリンの音程が低いような……。イルンベルガーは、常に低めに音を取ります。悪い演奏ではないのですが、いろいろなことが気になってしまいました。
フランク ヴァイオリン・ソナタ
千住真理子(vn)
藤井一興(p)
2009年11月
草津音楽の森国際コンサートホール
今回のラストは、千住真理子(1962年-)と藤井一興(1955年-)です。このフランクは、千住真理子の「心に残る3つのソナタ」というアルバムに、フォーレ、モーツァルト(実はあともう一人作曲家がいます)とともに収録されています。
千住真理子は「フランクのソナタは、多くのクラシックファンが熱くなる曲です。私の青春時代、博兄が絵を描きながらこの曲を大音量で家中に鳴らしていました。曲そのものも実に絵画的で、楽章ごとに物語の場面展開が感じられるのが面白いです。千住家では当時、家中でこの曲に恋をし、私がステージで弾く日を夢見て皆でフランクについて語らう日々を送りました。憧れ続けた私のバイオリン人生とともに、今も、ある曲です。」と述べています。
このアルバムに使用されている楽器は、約300年間、誰にも弾かれずに眠っていた幻の名器、1716年製のストラディヴァリウスなのでしょうか。
などと、余計なことをコピペし続けましたのは、正直なところ、この演奏についてどう書いたらよいかわからなかったからです。とにかく、独特なアーティキュレーションを身に着けている人ですよね。旋律ごとに大きく呼吸をしているような演奏です。それが聴く者の呼吸に合っているかということが、好き嫌いの分かれ道になると思います。
藤井一興のピアノが見事です。ここでは伴奏に徹し、千住真理子をよく引き立てています。