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マーラー 交響曲第2番「復活」の名盤 Oo~St

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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
スーザン・シルコット(ソプラノ)
ヴィオレッタ・ウルマーナ(アルト)
ベルギー王立歌劇場管弦楽団&合唱団
大野和士(指揮)
録音時期:2002年(ライヴ)
録音場所:ブリュッセル,パラ・デ・ボザール

大野和士は、1988年にザグレブ・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任、音楽監督も兼務して1996年まで在任。1996年-2002年にはカールスルーエ・バーデン州立歌劇場の音楽総監督、2002年- 2008年にはベルギー王立歌劇場(モネ劇場)の音楽監督。2008年からはフランス国立リヨン歌劇場において、首席指揮者として活躍している人です。国内では1992年から2001年まで東京フィルハーモニー交響楽団の常任指揮死者、現在は桂冠指揮者、2015年4月から東京都交響楽団の音楽監督です。
第1楽章冒頭は押しつけがましくなく、自然な開始ですが、金管やシンバルが加わる頃の盛り上がりは十分です。第2主題も非常に丁寧に歌われ、最後は悲劇的になります。全体によく引き締まっており、贅肉を落とした感じの演奏です。
展開部の第2主題は切々と歌われます。第1種台が勢力を増す頃のシンフォニックな表現も良いです。ティンパニが第1主題の動機を強打するところは、もう少し強く欲しいところ。迫力はあるものの、スケール感が不足していおり、こぢんまりとした印象があります。
再現部もゆったりしたテンポで丁寧に演奏されているのですが、曲の長さを感じてしまいました。
そのような演奏なので、予想どおり第2楽章が良い出来です。こういう響きでベートーヴェンの光交響曲第9番を聴いたら気持ちがよいだろうと想えるような演奏。
第3楽章は冒頭のティンパニがもう少し大きな音がほしいです。その後は気持ち速めのテンポで旋律がよく流れます。ただ、他にないもの、この指揮者とオーケストラならではの何かを求めようとすると物足りなさを感じてしまいます。
第5楽章第1部は各主題を的確に描き分け、なかなか聴かせるものがあります。
第2部は冒頭の打楽器がとりわけ凄まじく、文字通り主題が多彩に展開されていきますが、オーソドックス、悪く言えば常套的でしょうか。
第3部は独語らしく聴こえないけれど合唱は立派ですし、独唱2人も悪くありません。クライマックスとコーダもなかなかの盛り上がりを聴かせます。
総じてよく整理整頓された演奏とは思うものの、前述のようにこの演奏ならではというものが見いだせなかったので無印としました。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
キリ・テ・カナワ(ソプラノ)
マリリン・ホーン(メゾ・ソプラノ)
タングルウッド祝祭合唱団
ジョン・オリヴァー(合唱指揮)
ボストン交響楽団
小澤征爾(指揮)
1986年12月
ボストン,シンフォニー・ホール

【お薦め】
以下、HMVさんより引用しました。
小澤征爾がPHILIPSレーベルで制作したマーラー交響曲全集の最初の録音となったのは、ボストン交響楽団創立100周年を記念してつくられた第8番「千人の交響曲」でした。1980年にセッション・レコーディングされ、翌年すぐに発売されたこのLPは各国で高い評価を受けますが、当時、PHILIPSレーベルにはすでにハイティンクによるマーラー交響曲全集があったため、まだまだ市場価格が高額だったマーラーの全集制作がすぐに開始されることはありませんでした。
しかし、1986年12月に録音された小澤征爾の得意曲でもある交響曲第2番「復活」が高い評価を得ると、一気に全集制作の流れとなり、翌1987年10月に第1番「巨人」、翌月に第4番、翌1988年12月に第7番「夜の歌」を録音。その後、PHILIPSはライヴ録音での制作に方針転換し、1990年4月に第9番と第10番アダージョ、同年10月に第5番、1992年初頭に第6番、翌1993年4月に第3番を収録して全集を完成しています。(引用終わり)
そのような経緯による小澤/ボストン響のマーラー全集ですが、名盤として取上げられることが少ないです。その理由も含めて改めて聴いてみたいと思います。
第1楽章、ボストン響の重厚なアンサンブルに惹かれます。こんなに良い演奏だったっけ?というのが正直な感想で、比べればわかる(なぜ今までわからなかったのか?)小澤/ボストン響の素晴らしさです。全集録音の契機となっただけのことはあります。「復活」はかくあるべしというような、お手本のようなテンポの設定と管弦打のバランス、そしてとても優秀な録音です。
第2楽章も、ボストン響の弦はしなやかで、主題とトリオの対比が絶妙です。これ以上求めるものは何もないと言いたくなる演奏。
第3楽章も、この曲の理想的な名演です。他の楽章と共通している事項ですが、テンポが心地良く、しっくり来るのです。
第4楽章は、名歌手マリリン・ホーンを起用しており、スケールの大きな歌唱ですが、私の好みだともう少し地味でもいいかなというところです。
第5楽章も、例えば第1部の第3主題後半、トロンボーンによる「復活の主題」から第1部終わりまでの金管の素晴らしさ、第2部の積極性(テンポの速さ)、それに応えるボストン響のアンサンブルの鮮やかさと言ったら。
そして第5楽章第3部で、ようやく合唱が入りますが、タングルウッド祝祭合唱団はホールの響きもあり、豊潤な印象を与えます。それに加わるソプラノ独唱は、キリ・テ・カナワという豪華さです。二重唱はホーンに負けていません。合唱とオーケストラ、オルガンによるクライマックスも圧倒的で、これほど壮麗な演奏は数えるほどでしょう。
私は次のサイトウ・キネンO.との録音を絶賛していますが、完璧さと壮大さの点で、ボストン響との演奏が一枚も二枚も上手です。最近の指揮者による演奏に勝るとも劣らない名演でした。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
菅 英三子(ソプラノ)
ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト)
晋友会合唱団
関屋 晋(合唱指揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ
小澤征爾(指揮)
2000年1月2-5日
東京文化会館

【お薦め】
第1楽章は素晴らしい弦楽合奏で始まります。木管による主題からの盛り上がりもなかなかです。第2主題も繊細かつ優美。再び始まる第1主題は理想のテンポの葬送行進曲となります。
展開部第1・2部は各主題が細心の注意をもって演奏され、いずれも激しい第1主題によって打ち破られるのですが、最初から第1主題で始まる第3部は強烈に始まり、強力な加速によって盛り上がります。この辺りの迫力もさすが。
再現部は常に木管が悲しげで、全体に悲壮感が色濃く漂っています。
第2楽章は相変わらずの惚れ惚れとする弦楽合奏で、デュナーミクが絶妙です。とりあえず日本人らしい繊細な表現としておきましょうか。
第3楽章はティンパニの強打で目が覚めます(寝てた?)。このような曲はサイトウキネンO.が得意とするところではないでしょうか。フルートに工藤重典、オーボエに宮本文昭、クラリネットにカール・ライスター、ホルンにラデク・バボラークを要していたスーパー・オーケストラですから、このぐらいは出来て当然?
第4楽章はナタリー・シュトゥッツマンが美しい声で名唱を聴かせます。この「原光」もベストを争うものでしょう。彩りを添える木管楽器やヴァイオリン・ソロもとても美しいです。
第5楽章は録音の優秀さもあり、聴き甲斐があります。
第1部は次々に現れる独奏楽器がいずれも素晴らしく、第3主題から自然に盛り上がっていく様も自見事です。
そして凄まじいのが第2部の冒頭。小澤征爾がオケを煽っている姿が目に浮かぶような、快速テンポで進行しますが、音量は控えめで常に余力を残しており、ここぞ!というときには爆発的な威力があります。
第3部の私的な聴き所は、晋友会による合唱でしょうか。実際、他の「復活」に比べても全く遜色がありません。もちろん菅英三子とシュトゥッツマンの独唱も素晴らしいです。オルガンが加わってからのクライマックス及びコーダも感動的で、これは数ある「復活」の、そして小澤征爾の録音の中でもベストと言える名盤ではないでしょうか。今さらですが、小澤征爾はサイトウ・キネンO.を得て初めて自己の芸術を表現する術を得たと言っても過言ではないでしょう。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
アーリーン・オジェー(ソプラノ)
ジャネット・ベイカー(メゾ・ソプラノ)
バーミンガム市交響楽団合唱団
サイモン・ハルジー(合唱指揮)
バーミンガム市交響楽団
サー・サイモン・ラトル(指揮)
1986年4月27日,5月30日,6月1日
ロンドン,ワトフォード・タウン・ホール

ラトルは、バーミンガム市交響楽団と1986年から2004年まで17年もかけてマーラー交響曲全集を録音しており、高い評価を受けました。この第2番「復活」は、その最初の録音となります。
第1楽章は23分52秒(小澤盤は20分56秒)で粘ります。巨人が足を引きずるような表現です。これほどテンポが遅い「復活」は初めて聴きました。このテンポが維持されるわけではなく、第1主題提示の後半はむしろ速いくらいでしが、終りは元に戻ります。
展開部第1部も始めは遅いものの、次第に勢いを増します。つまり、終始、緩急の差が著しい演奏なのです。第3部のティンパニによる第1主題以降は遅くなり、また速くなるといった具合にクライマックスに合わせて伸縮します。これが他の指揮者だったら個性的な表現と賞賛するのでしょうが、ラトルだと行き過ぎと思うのはなぜでしょう。
第2楽章も濃厚な表現で、ホールの豊かな残響と相まってバーミンガム市響の弦が美しいです。主要主題は心持ち遅いくらいのテンポですが、トリオになると速くなる、緩急の差の設け方は第1楽章同様です。
第3楽章は良いですね。この曲のお手本たり得る名演です。テンポは適切、楽器間のバランスが最上に保たれ、非常に洗練されています。
第4楽章の独唱は今回何度目になるかわからないジャネット・ベイカーです。もはや「復活」のスペシャリストですね。
第5楽章冒頭は予想したとおりの壮絶な響きで始まります。第1楽章で印象的だった意識的な緩急差、テンポの伸縮は目立たず、管楽器が美しく、全体は自然で伸びやかな演奏です。
第3部の合唱は少し遠いですが、なかなか良く、それに被せるようにまずオジェーが歌います。独唱者二人が揃っているのがこのCDの売りのひとつでもあります。ベイカーとの重唱も素晴らしいです。バランスとしてもう少し合唱が大きいほうが好みですが、壮大なクライマックスを聴かせてくれました。
なお、ラトル盤は次のベルリン・フィル番を【お薦め】にしたいと思います。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ケイト・ロイヤル(ソプラノ)
マグダレーナ・コジェナー(アルト)
ベルリン放送合唱団
サイモン・ハルジー(合唱指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
サー・サイモン・ラトル(指揮)
2010年10月28-30日
ベルリン,フィルハーモニー

【お薦め】
第1楽章冒頭は、ベルリン・フィルの強力な低弦に始まります。ちなみにこの楽章のタイムは24分24秒で旧録音より若干遅くなっています。当盤でも全体の表現は同様で、テンポの緩急・伸縮差は大きめですが、もっと自然なものとなっており、ラトルの円熟が聴き取れます。それゆえ演奏時間が長くなっているのでしょう。バーミンガム市響の演奏も良かったのですが、第2主題提示などさすがベルリン・フィンと言える美しさですし、第3部開始時の第1主題などすごい迫力です。それにしてもバーンスタイン新盤並みの遅さでした。バーンスタインはもっと遅いのですけれどね。
第2楽章も濃厚でロマンティックな味付けで、やはり緩急の差が大きいです。ベルリン・フィルの巧さが際立っています。
第3楽章冒頭は、ティンパニの強打がもの凄いです。デュナーミクの巾が大きく取られているのも当盤の特徴なのです。バーミンガム市響との録音を「お手本」と書きましたが、さらに洗練された表現に魅了されます。木管楽器を抑え、弦とのバランスを取り、また、トリオとの対比が際立つようにしています。まさに「おだやかに流れる動きで」演奏されているのがわかります。
第4楽章の独唱は、ラトルの奥さん(2008年結婚)のコジェナーです。素晴らしい歌唱です。魅力的な声に加え、独語が完璧です。
第5楽章第1部の冒頭はベルリン・フィルならではの壮絶な音響。続く第2主題(慰めの主題)のホルンや「復活の主題」のトロンボーンの美しいこと。ティンパニは堅く力強い音で存在感をアピールしています。
第2部開始の長い打楽器の後、ベルリン・フィルが高い技術を駆使しての展開部となります。
第3部は舞台裏の金管さえ素晴らしく、夜鶯のフルートとピッコロも素晴らしいです。
ベルリン放送合唱団は人数が少ない感じですが、そのせいで声質や音程が揃っており、美しいです。途中からロンドン生まれのソプラノ:ケイト・ロイヤルが加わります。少々堅さがありますが、良く通る美しい声の持ち主です。コジェナーに似た声なので、違和感無く聴くことができます。
クライマックスは声と楽器による音の饗宴に圧倒されました。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ミミ・ケルツェ(ソプラノ)
ルクレツィア・ウェスト(メゾ・ソプラノ)
ウィーン・アカデミー合唱団
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ヘルマン・シェルヘン(指揮)
1958年6月

シェルヘン(1891年-1966年)の「復活」がWestminsterレーベルによる良質なステレオ録音で楽しめるとはありがたいです。
第1楽章提示部はしばらくは真っ当な解釈ですが、大きな抑揚と叩きつけるような感情の爆発もあります。
展開部第2主題は夢見るような美しさで、その後もまどろむように進行しますが、次第に第1主題が勢力を強めます。この辺りの語り口が上手です。第2部は快速テンポで巧いフルートのソロにより始ますが、それを打ち破るはずのティンパニが強打ではなく優しく叩かれるのは驚きです。そこからテンポを少しずつ速め、凄まじいクライマックスに導かれます。
再現部は非常にゆったりです。葬送行進曲は時には止まりそうな速度になります。この先には何が待ち受けているのだろう?と思わせます。それだけに半音階風の下降が際立ちます。
第2楽章は一見優雅ですが、巨人の足取りを思わせる表現もあれば、チャーミングでもあります。
第3楽章は12分31秒(小澤盤で10分21秒)です。冒頭は少し重いティンパニで始まり、テンポも重いのがユニークです。タムタムの音が大きかったけれど、あれはスコアにあるのかな? トリオはそれほど遅くはなくその匙加減が絶妙です。クライマックスは壮絶でした。
第4楽章も遅めで、ルクレツィア・ウェストの暗めの声質もあり、逝ける者への哀歌のような曲になっています。中間部でドタドタ聴こえるのはシェルヘンの足音でしょうか。ちょっとうるさい。
油断していたら、第5楽章第1部の冒頭でやられてしまいました。これは凄まじい! その後は普通の速度なのがかえって新鮮です。
第2部にはいってから「荒野に呼ぶもの」あたりから、いきなりテンポを速めるのも意外でした。
第3部に入ったところではパーカッションが強打されます。常にシンバルが強打されますが、これも聴き慣れない響きです。展開はむしろ速めのテンポで行われます。クライマックスは巨大ですが、もう少し音量がほしいところ。ダイナミックレンジが狭いです。
第3部の合唱はバスにすごい人がいます。もはやその一部の人しか出せない音域ですが、その人さえも出せないくらい低い音が出てくる合唱なのです。大勢いるのでしょう、たっぷりした合唱です。その後は非常にゆっくりした足取りで進み、壮大なコーダに至ります。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ハンニ・マック・コサック(ソプラノ)
ヘルタ・テッパー(アルト)
SWRヴォーカル・アンサンブル
シュトゥットガルト・バッハ合唱団
シュトゥットガルト放送交響楽団
カール・シューリヒト(指揮)
1958年4月17日(ライヴ)

シューリヒト指揮の「復活」には、エディット・ゼーリヒ(ソプラノ)、ユージニア・ザレスカ(アルト)、RTF合唱団、フランス国立放送管弦楽団による1958年2月20日(グスタフ・マーラー・フェスティヴァル)という音源もあるのですが、入手できたのは4月17日のほうです。
第1楽章は淀みなくスムーズな進行で気持ちよいです。味が薄いというわけではなく、第2主題など実に表情豊かに歌われますが、ここぞというときの迫力にも欠けていません。とはいえ、この頃ですから録音は当然モノラルです。貴重な録音とはいえ、「復活」のような規模が大きくて長い曲をモノラル録音で聴き続けるのはつらい(弦楽器のコルレーニョとかほとんど聞こえません)ものがありますが、続けます。指揮に起因するのかもしれませんが、結構荒っぽいところもある演奏で、金管楽器の縦の線が揃っていなかったりしますが、それが迫力を生み出してもいます。最後の半音階は急速で下降します。
第2楽章は弦楽器をたっぷり鳴らし、かつよく歌わせた演奏。常にチェロが大きいのは録音のせい? 第2トリオでは感情の奔流のような切迫した表現も聴かせます。
第3楽章はやや速めのテンポでよく流れる演奏です。トリオへの意向もスムーズ、ファンファーレは元気が良いです。聴いていて楽しく、シューリヒトの芸風がよく出た楽章と言えましょう。
第4楽章は往年の名歌手ヘルタ・テッパーの歌を聴くことができます。声に表現力と威力があります。
第5楽章冒頭はまさしく切れば血が出るような響きです。どの部分にも血が通っており、人間性を感じさせる音楽となっています。草書体のマーラーという感じで、音楽が向かおうとしている方向に自然と合わせているようです。
第2部の、さすがにこのテンポは少し遅いと感じますが、逆にこのテンポだから、度々落ちそうになるトランペットにはもう少し頑張っていただきたいものです。合奏の乱れもありますので、リハーサルの回数が少なかったのかな。それとも本番のテンポが異なっていた(この頃のシューリヒトは毎回同じテンポで振らなかったらしいです)とか。
第3部の無伴奏の混声四部合唱の最中で変な音(ヒューヒューという口笛のような音)が聴こえるのはなんだろう? それはさておき、大人数の合唱と大管弦楽がつくり出すクライマックスはこの演奏にあっても圧巻でした。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ロザリンド・プラウライト(ソプラノ)
ブリギッテ・ファスベンダー(メゾ・ソプラノ)
フィルハーモニア合唱団
フィルハーモニア管弦楽団
ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)
1985年9月
ロンドン,ワットフォード・タウン・ホール

第1楽章提示部は、数ある録音の中でも最速の部類ではないでしょうか、と思ったら第2主題以降は遅くなって結果的に普通のタイムでした。
展開部第1部はまず第2主題、これがとても美しく演奏されます。第1主題が支配するようになるとテンポが速まり、聴く側もワクワクさせられます。
第3部はなんと言っても第1主題。シノーポリはクライマックスの築き方が上手ですね。
再現部も第2主題になると、ぐっとテンポを落としてロマンティックに歌うところが提示部・展開部と同様で、葬送行進曲も遅めです。緩急の差が大きい第1楽章でした。
第2楽章は、主題がゆったりしたテンポで奏でられるのに対し、トリオになると急に音楽が動き出し、その描き分けが(シノーポリ盤に限ったことではないのですが)上手です。第1楽章同様、ヴァイオリン両翼配置も効果的でしたよ。
第3楽章は木管楽器への指示が興味深く、こんな響きは初めて聴きます。不思議な哀愁に満ちた楽章となりました。また、弦楽器や金管楽器も、ちょっとしたことで随分印象が異なるものだと感心しました。やり過ぎの部分もありますけれどね。
第4楽章は、名歌手ファスベンダーの登場ですが、珍しいのでは。表現がやや大仰に傾くところがあり、嘆願の歌という感じですが、独語はさすがです。弱音主体で美しい管弦楽伴奏も良いです。
第5楽章第1部は、第2主題のバックにある低弦が寄せては返す波のようです。いろいろ細かいところに気配りがあり、いちいち挙げていたらキリがないです。それにしてもフィルハーモニア管は金管の弱音がきれいですね。さすがです。
第2部はもう少しテンポが速いほうが好みですが、ひとつひとつ念を押しながら進行していくので、マーラーが技法を尽くした対位法がよく分ります。クライマックスは壮絶です。
それに比べると第3部は遅めのテンポでじっくり取り組んでいますが、シノーポリにしては、いささか普通であったかも。崇高な曲に余計なことはすまいと思ったのか。面白かったのはソプラノとメゾに声質の差があまりなかったこと。ファスベンダーはソプラノでも通用しますね。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ヘザー・ハーパー(ソプラノ)
ヘレン・ワッツ(コントラルト)
ロンドン交響楽団&合唱団
サー・ゲオルグ・ショルティ(指揮)
1966年5月
ロンドン,キングズウェイ・ホール

ロンドン交響楽団は「オーケストラ・ランキング 2017」(レコード芸術2017年3月号)で、第8位の名門オケです。歴代の首席指揮者もそうそうたる面々が名を連ねていますが、この録音が行われた当時はイシュトヴァン・ケルテスが首席指揮者(前任はモントゥーで後任はプレヴィン)でした。ショルティも大作「ニーベルングの指環」を録音し終え、心身共に充実していた頃でしょうから、この演奏も再録音のシカゴ響盤と肩を並べる名演なのではないかと期待してしまうのですが、どうでしょうか。(1度目に聴いた印象と2度目がかなり異なってしまったので戸惑っています。)
第1楽章提示部はDECCAの録音らしく、低弦のゴリゴリ感や高弦・金管のシャープさで、元気溌剌といった感じです。元気が良いだけでなく、第2主題は常にしみじみと丁寧に歌われますし、いくつかのクライマックスは常にドラマティックに、と、表現の幅も大きいです。要は、録音・演奏共に聴いていてスカッとする演奏なのですね。このような演奏は嫌いではありません。
しかし、第2楽章はどうもぎこちないというか、堅苦しい感じがし、もう少し洗練された美しさを望みたいところです。でも、悪くはありません。
第3楽章は、第2楽章より上手くいっており、ロンドン響もこちらのほうが性に合っているようです。
第4楽章は、シカゴ響との再録音よりこちらの方が好きです。それは単にアルト独唱の問題とも言えますが、ヘレン・ワッツの独唱には好感が持てます。
第5楽章は、冒頭がショルティの面目躍如です。音量控えめな部分はゆったりと丁寧ですが、盛り上がる部分、特に第2部は歯切れも良く、もう少し演奏効果優先で吹っ切れたところがあっても良い気がしますが、聴いていて気持ちが良いです。
第3部の合唱は(比較するのもおかしいですが)オケよりも優れていると思います。美しさ優先で独語の発音をおろそかにしている団体が多い中、不器用ながらも発音しようという姿勢が感じられます。
ロンドン響は現在のほうが演奏技術はずっと上(この頃はあまり巧くないみたい)だと思いますが、この頃には勢いがあったような気がします。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
イソベル・ブキャナン(ソプラノ)
ミラ・ザカイ(コントラルト)
シカゴ交響楽団&合唱団
マーガレット・ヒリス(合唱指揮)
サー・ゲオルグ・ショルティ(指揮)
1980年5月
シカゴ,メディナ・テンプル

【お薦め】
HMVさんによると、ショルティとシカゴ響によるマーラーは、1970・71年に収録された第5,6,7,8番と、1980-83年に収録された第1,2,3,4,9番というグループに分かれいて、初録音が第1グループで、再録音が第2グループなのだそうです。
恐ろしく機能的な「復活」が聴けそうですが、実際そうです。第1楽章冒頭の低弦など、この頃のDECCAの録音の特徴もあり、刺々しいくらいですが、高機能な演奏が好きなので、これはこれでよいです。竹を割ったような気性の楷書体の演奏で、音楽はすいすいと進行していきます。もちろん第2主題はぐっとテンポを落とし、人が変わったような優美な音楽を聴かせます。とにかく、シカゴ響の卓越したソロと合奏が見事ですが、やはり金管セクションの音量がものすごいですね。
第2楽章で主役は弦、そして木管に移ります。シカゴ響は弦も木管楽器もすごいのです。細心の注意委を払って演奏しているようで、たまにショルティのうなり声も聴こえてきます。
第3楽章はティンパニの音が良いです。この楽章の演奏は素晴らしく、前2楽章より優れているのではないでしょうか。繰り返しになりますが、シカゴ響の木管セクションはめちゃくちゃ巧いですね。
第4楽章は、ミラ・ザカイの音程に気になるところがあり、あまり独唱がよいとは思えないのですが、指揮とオーケストラはこの曲の静謐な感じをよく出しています。
第5楽章も、シカゴ響ならではの耳にご馳走な演奏で、壮大な音による大伽藍、大パノラマを見るようです。特に第2部がそうで、快速テンポが嬉しいです。
第3部は、名合唱指揮者のマーガレット・ヒリスによる合唱が見事です。合唱に重ねてイソベル・ブキャナンが歌い出しますが声量が豊かな人という印象を持ちました。この素晴らしい合唱とスーパー軍団オケにより、実に壮麗なクライマックスが築かれ、幕を閉じます。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ステファニア・ヴォイトヴィチ(ソプラノ)
アニー・デロリー(アルト)
ケルン放送交響楽団&合唱団
ウィリアム・スタインバーグ(指揮)
1965年9月10日
ケルン,フンクハウス・ザール1

スタインバーグは、1952年から1976年までピッツバーグ交響楽団の音楽監督であり、1969年から1972年まではボストン交響楽団音楽監督(小澤征爾の前任者)も兼任していたのですが、これはケルン放送響を指揮しての録音となります。
これが意外と言ったら失礼なのですが、良かったので取上げることにしました。何が良かったかというと、さっぱりしているところ。毎日毎日「復活」ばかり聴いていると、さすがに飽きてきますし、よほどの名演でない限り、ねっとりじっとりとやられるとうんざりします。その点、スタインバーグはテンポが遅くないし、粘らないし、淡々と進めているようで、音楽にドラマがあり、哀愁ありと、気持ちよく聴くことができました。それではなぜ【お薦め】ではないかというと、長所が短所でもあり、録音のせいでもあるのですが、軽量級で重心が高い感じがして、もう少しズシンとした重みがほしいと思うときがあるからです。
そういう意味では第2楽章が良かったです。第3楽章も軽妙で、それはそれでよいのですが、大太鼓の重みも聴きたいところです。
第4楽章のアニー・デロリーはめぼしい録音が当盤ぐらいですが、少し時代がかった感じです。また、伴奏の金管があまり上手ではありません。
第5楽章は、第2部がよいテンポです。ケルン放送合唱団もアマチュアっぽく、音程と発声が気になりました。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
クリスティアーネ・エルツェ(ソプラノ)
ミヒャエラ・シュースター(メゾ・ソプラノ)
ケルン・カルトホイザーカントライ
ケルン・バッハ=フェライン
ケルン音楽大学室内合唱団
ケルン音楽大学マドリガル合唱団
ボン・フィグラルコア
ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
マルクス・シュテンツ(指揮)
2010年10月23-27日
ケルン,フィルハーモニー

【お薦め】
先述のスタインバーグ盤同様、この録音も気持ちよく聴くことができました。しかし、同じケルンのオケでも優秀さは当盤の方が断然上です。マルクス・シュテンツは、2003年から2014年までの指揮者で、後任がフランソワ=グザヴィエ・ロトであることは別の記事に書いたとおりです。
第1楽章冒頭の低弦は、おおっ!と思わせる量感です。その後もこのオケのアンサンブルの良さ、美しさを楽しむことができます。録音も優秀ですし、これは「名演」じゃないの?と思わせる出来です。テンポの緩急が極端だと思うときもありますが、マーラーならそれもありだと思うし、そのようなところが新鮮です。
第2楽章は、やや速めのテンポによる清冽な演奏で、弦がとても美しく、この弦であればこそ両翼配置が効くというものです。
第3楽章もやや速め、すいすい流れていきますが、薄味ではありません。メリハリが効いているからです。ところによってはぐっとテンポを落としてゆったりと歌い上げています。
第4楽章のミヒャエラ・シュースターは、ウィーン国立歌劇場2016年来日公演で、フリッカを歌っていたそうですからご存じの人もいるでしょう。独語のディクションがとてもきれいな人です。
第5楽章も素晴らしいです。第1部のトロンボーンによる「復活の動機」からが聴き所です。
また長い長~い、打楽器のロールから始まる第3部はさらに傾聴に値します。このオケは第一に弦が巧いのですが、管・打もそれに劣るものではありません。そして管・弦・打のバランスが素晴らしいのです。
そして第3部。4団体の名が上がっていますが、ドイツの合唱団だけあって、小さな音のところでも、きちんと子音が発音されており、他国の合唱団とはえらい違いで、やっとまともな合唱団に巡り会えたという思いがします。独唱ではやはりシュースターが素晴らしいと思います。エルツェも悪くありません。この合唱団とオーケストラですから、クライマックスは感動的ですし、フィナーレも圧倒的でした。文句なしの【お薦め】です。
ロト指揮の「巨人」が話題となりましたが、このオケを指揮する時点で、それは約束されたものであったのかもしれませんね。


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