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マーラー 交響曲第2番「復活」の名盤 Ma~No

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マーラーの第2番「復活」の素晴らしい曲目解説があったのでご紹介します。
こんな解説が書けたらいいのに。

ついでにYouTubeもいくつか。

001.2 - Brass excerpt from Mahler Symphony 2
New York Philharmonic
(これはなかなか感動的。オケを聴く醍醐味)

Mahler: Symphony No. 2: Mov. 4

Mahler: Symphony No. 2: Mov. 5 - Part 4 of 4

Mahler: Symphony No. 2 / Rattle · Berliner Philharmoniker

Gustav Mahler: Symphony No. 2 "Resurrection" 
(Lucerne Festival Orchestra, Claudio Abbado)


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ジェシー・ノーマン(ソプラノ)
エヴァ・マルトン(ソプラノ)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ロリン・マゼール(指揮)
1983年
ウィーン,ムジークフェラインザール

【お薦め】
マゼールは1982~89年にウィーン・フィルとマーラー交響曲全集を録音しておりまして、その中の一曲となります。

ノーマン・レブレヒト(イギリスの音楽ジャーナリスト)は「クラシックレコードの百年史(訳 猪上杉子、音楽之友社)」においてこの録音に立ち会ったとき(1983年1月)の印象を次のように書いています。

 「真冬の土曜日の夜、ウィーン楽友協会ホールの聴衆は不安で凍りついていた。贖いの芸術作品に立ちこめた腐った空気は筆舌に尽くしがたいほど破壊的なものだった。どんなにヴァイオリンが甘く歌い、木管がハミングしても、荒涼とした雰囲気は信頼を拒絶し、二人の大きな女性(ソリスト)が立ち上がって大声を張り上げたとき、オーケストラと合唱団の誰もが、生活費を稼げる会計士や配管工をやっておくべきだったと思ったろう。誰もが当事者になりたくないというレコードがあるとするならば、これがそうだ。

いや、違う、そんなことはない、それは誤った認識だ、第一「聴衆」と書いているが、この録音はセッションだ、この人(レブレヒト)は相当耄碌しているか、ねじ曲がった性根の持ち主ではないか、私には正反対に聴こえる、私にとっての理想のマーラー指揮者(のひとり)はマゼールだ、というのは言い過ぎですが、このCDの感想を書きます。

第1楽章冒頭はごつごつとした低弦、緊張感と意志の強さを感じます。第2主題はウィーン・フィルらしく艶やか弦、その後は寄せては返す波のようで、マゼールが大きくウィーン・フィルをドライヴしています。静かな場面は優しい感情が支配しており、雅やかな木管が彩りを添えます。激しい場面は強打される打楽器と咆哮する金管により怒濤の音の洪水が押し寄せます。そのように書くと、他の演奏だってそうじゃないかと言われそうですが、マゼールは自然なアゴーギクデュナーミクにより、メリハリが付いていて、かつ、音楽がよく流れます。そして、ウィーン・フィルの鮮烈な音色が素晴らしいです。
第2楽章は法例です。ソフトで厚めの弦の響きで優美で懐かしい歌を聴かせます。主部と中間部の変化が巧みで聴いていて飽きることがないです。ボヘミアの草原が目に浮かんだくらいです。
第3楽章はティンパニがいい音を出していますが、グランカッサは控えめです。曲の面白みがよく生かされており、全体にゆったりしたテンポでグロテスクであったりユーモアたっぷりであったりしますが、マゼールであればもう少しアクの強い表現を期待したいところです。
第4楽章の独唱はメゾ又はアルトですが、この録音ではなんとソプラノ・ドラマティコのジェシー・ノーマンを起用しています。ノーマンの広い声域と豊かな声量、美声が大変魅力的で、この楽章の一、二位を争う名演ではないでしょうか。楽章の終結部は第5番アダージェットを連想させる美しさです。
第5楽章はウィーン・フィルならではの鮮烈かつ激烈な響きで始まります。「荒野に呼ぶもの」のウィンナ・ホルンの響きの美しさ、第3主題の木管の典雅さ、ティンパニの強烈な打撃、トロンボーン重奏の古雅なこと、金管によるアクセント等々、提示部のいちいちを書いていたらキリがありません。
展開部(第2部)も気持ちの良いテンポで進みます。心が弾みます。このような多彩な音楽を指揮させると本当にマゼールは上手いです。圧巻の第2部前半の後、アッチェルも凄まじく、第1主題の登場で幕を閉じます。
第3部、舞台裏の金管は本当に舞台裏で吹いているのだろうか?とどの盤でも思うのですが、そんなことはどうでもいいとして、夜鶯のフルートとピッコロの中ですごく巧い人が一人いますね。「復活の主題」を歌う国立歌劇場合唱団も立派な声です。ノーマンと同じくドラマティック・ソプラノのエヴァ・マルトンの起用も正解だと思います。二人のソプラノによる二重奏は強力です。フィナーレも感動的です。

ところで、このCDには思い出があります。家の近所に中古CDショップがあり、小さなクラシック音楽コーナー(いわゆる段ボール箱)があったのですが、そこにマゼール/ウィーン・フィルのマーラー全集(旧仕様)がバラで置かれていました。購入されることはなく、蛍光灯で背焼けし続けるCD。当時の私はこれに興味を示せず、一体誰がこのCDを売ったのだろう、誰が買うのだろうと、お店を訪れるたびに思ったものです。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ジェシカ・ジョーンズ(ソプラノ)
コーネリア・カリッシュ(メゾ・ソプラノ)
ニューヨーク・コーラル・アーティスツ
ニューヨーク・フィルハーモニック
ロリン・マゼール(指揮)
2002年から2009年にかけてのライブ録音のひとつ

【お薦め】
マゼールの「復活」は素晴らしいです。それはオーケストラがウィーン・フィルからニューヨーク・フィルに変わっても同様です。最も「復活」を演奏効果抜群に演奏できる指揮者、それがマゼールです。ニューヨーク・フィルも全力でマゼールの棒に応えています。ニューヨーク・フィルは、古くはワルター、そしてバーンスタインとマーラー指揮者による「復活」の名演奏を行ってきた、伝統と格式のあるオーケストラですが、マゼールの指揮を心酔しているかのように、嬉々として演奏しているように聴こえます。ニューヨーク・フィルってこんなに良いオーケストラだったのかと感心したくらい、輝かしいです。
それぞれの楽章の印象は前述のウィーン・フィル盤と同様ですので省略しますが。私は心から全曲を飽きることなく楽しみ、「復活」という曲には余分な箇所などないのだと思うことができました。どこを取り出しても最上の表現のひとつと言えます。ウィーン・フィル盤も良かったですが、ニューヨーク・フィルのような機能性・機動性のあるオーケストラと全集録音が残されたことに感謝したいくらいです。マゼール、凄い人だったのですね。
なお、2人の独唱者のうち、メゾのカリッシュは、強烈なrの巻き舌に驚きますが、それだけドイツ語のディクションに気を使っているということなのでしょう。巻かない人よりマシで、彼女のドイツ語は美しいです。表現は少々オーバーですけれどね。合唱も立派。ラストはオルガンがたっぷり鳴らされて満足。拍手入りです。
なお、この名演はダウンロード販売のみで、CDでは売られていないようです。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
サリー・マシューズ(ソプラノ)
ミシェル・デ・ヤング(メゾ・ソプラノ)
BBC交響合唱団
フィルハーモニア管弦楽団
ロリン・マゼール(指揮)
2011年4月17日(ライヴ)
ロンドン,ロイヤル・フェスティヴァル・ホール

フィルハーモニア管弦楽団とのマーラー全集の中の一曲です。
第1楽章は堂々たる第1主題の提示から始まります。対照的に第2主題はややテンポを落として丁寧に歌い込みます。展開部ではさらに第2主題が切々と歌われます、と言った具合にオーソドックスな解釈が続くのですが、第1主題の動機が激しく入るところなど凄まじい音ですし、展開部後半もマゼールらしい聴かせ上手な表現が聴き受けられるようになります。小結尾も大見得を切るように終わります。再現部はやはり第2主題がかなり遅めでポルタメントを交えてたっぷり歌われ、そして消えていきます。コーダも比較的遅めです。
第2楽章もやや遅めのテンポを採る時がある以外は、あまり奇をてらったところはなく、音楽自体の力で勝負している感じです。
第3楽章はマゼールが振るとコミカルな面が出てきますね。
第4楽章はミシェル・デ・ヤングというアメリカ生まれのメゾが独唱です。
第5楽章は37分23秒です。平均的なタイムでしょうか。この演奏も冒頭は凄まじいですのですが、一音一音を踏みしめるように演奏しているのが特徴です。そこはかとなく漂う色彩感がマゼールらしいです。「復活」の動機の提示は緩急・強弱を巧みに織り交ぜており、そこに輝かしさが加わります。展開部の開始は凄まじいです。あぁこういう演奏が聴きたかったのだと思いました。実に良いテンポ。これ以上遅くしたら気持ち的にダメです。再現部前の迫力もすごいです。
合唱はこのオーケストラに負けじと歌い、オーケストラは合奏をかき消さんばかりの大音響を聞かせます。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
イレアナ・コトルバス(ソプラノ)
クリスタ・ルートヴィヒ(アルト)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ノルベルト・バラッチュ(合唱指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ズービン・メータ(指揮)
1975年2月
ウィーン,ゾフィエンザール

【お薦め】
「復活」の総演奏時間は平均84分(?)で、たいていの場合、CD2枚組になってしまうのですが、この演奏はCD1枚(LPでは2枚組)に収まるため、CD時代になってからしばらくは、「復活」というと、この演奏ばかり聴いていたという思い出のある演奏です。メータと言えば、1962年から1978年まで音楽監督を務めたロサンジェルス・フィルとの一連の録音が今でも人気がありますが、同時期にウィーン・フィルを指揮しての録音も、同オケとの相性の良さもあり、優れた演奏を聴かせてくれました。これはその中の一枚です。
第1楽章冒頭からもったいぶらずにストレートに情熱をぶつけてくるような演奏です。第1主題も第2主題もやや速めのテンポで、音質は明らかにハイ上がりなのですが、歯切れが良く明快で、大変元気が良い印象です。ちっとも葬送行進曲っぽくないですね。深刻ぶらない良さあって、暗いのが苦手な人には良いでしょう。
展開部はぐっとテンポを落とし、ウィーン・フィルのチャーミングな音色も相まってメルヘンチックです。ホルンやトランペットが雄叫びを上げ、ティンパニやシンバルが強打され、フルートやヴァイオリンのソロが花を添える中、再び第1主題の動機が劇的に演奏されます。とにかくテンポの伸縮が大きく、ウィーン・フィル全開という感じで、分かり易い演奏なのです。この辺りの演奏効果は抜群で、さすがメータと言いたいところです。
再現部は滑り出すように始まり、葬送行進曲は提示部と異なってテンポをぐっと落として演奏されます。
第2楽章も楽しげです。笑みが溢れているような、そんな演奏。第1トリオの「悲しげな回想」は弦が美しく、いかにもウィーン・フィルというような木管が好ましいです。主題の再現でもチェロが美しいです。第2トリオの色彩感も申し分なく、最後の主題再現もやはり楽しげで「過去の幸福な瞬間」を思い起こさせます。
第3楽章冒頭はティンパニの音が良いですね。強打しない演奏もあるのですが、なぜなのでしょう。この楽章でも終始ティンパニがものを言います。「穏やかに流れるように」というより、アクセントが効いていて快活で積極的な印象で、聴く側も楽しいです。演奏している側も楽しいのでしょう。トリオもその延長線上で、輝かしく歯切れがよいです。
第4楽章はルートヴィヒの独唱で、独語のお手本のような歌唱を聴かせてくれます。さすがです。「原光」のベストのひとつではないでしょうか。
第5楽章冒頭は録音が難しいと思いますが、なかなか上手く収めていると思います。ウィーン・フィルもこんなに凄まじい音を出せていたのですね。
第2部の冒頭の打楽器も同様で、その後の「近代オーケストラの総力をあげて描いた戦闘の描写(by金子建志)」は鮮やかの一言に尽きます。
第3部のトランペット、夜鶯のフルート、ピッコロも上々、そしてようやく合唱が始まります。歌劇場合唱団のバスは超低音を出せる人がある程度はいることに感心します。人数が揃えられていて立派な合唱です。ソプラノはコトルバスで、独唱二人が非常に優れているのも当盤の強みです。力強いクライマックス、コーダも申し分なく、初めてこの曲を聴かれる人に強引にお薦めしたいディスクです。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
キャスリーン・バトル(ソプラノ)
モーリン・フォレスター(アルト)
ニューヨーク・コーラル・アーティスツ(?)
ニューヨーク・フィルハーモニック
ズービン・メータ(指揮)
1982年3月7日(ライヴ)

ズービン・メータの2つめは、1978年から1991まで音楽監督を務めたニューヨーク・フィルとの録音です。
第1楽章は、メータの基本的な解釈は先述のウィーン・フィル盤とあまり変わっていないように思われます。ただ、録音がだいぶ異なっていて、派手めの音質のウィーン・フィル盤と比べると、こちらはだいぶ大人しく聴こえます。重心が高くて逆ピラミッド型です。ニューヨーク・フィルにも音色の魅力がありません。そうは言っても、提示部、展開部でのクライマックスは現代のオーケストラらしい機能美を聴かせます。
第2楽章になると私の耳もこの録音にだいぶ慣れてきたのですが、腰高な印象は拭えまぜん。
第3楽章は 「おだやかに流れる動きで」なのですが、テンポが速めで少しせわしない感じがします。ニューヨーク・フィルも緊張していて音楽がに堅さ(のっぺりした感じ)があるように思われます。好きな楽章ですが、あまり魅力を感じませんでした。
第4楽章の独唱は、カナダの名アルトです。キャプランの「復活」や、ワルター指揮のステレオ録音の「復活」でも歌っているマーラー歌手で、秀逸な歌唱を聴かせてくれます。
第5楽章冒頭は、録音で損をしており、強烈な響きには至っていません。以下、ずっと聴き流しているのですが、ニューヨーク・フィルの金管陣はやっぱり優秀ですね。
第2部冒頭も冴えない録音のせいで、今ひとつ響きが弱いのですが、その後の演奏自体は大したものだと思います。ここでも金管セクションがよい仕事をしています。
第3部の声楽は、ベテランのフォレスター、可憐な声で有名なバトルという布陣ですし、合唱は合唱のピントのぼけた写真のような録音なので上手下手がよくわかりませんが、OKです。

ところで、ライヴ収録であるにしても、最初から最後まで聴衆の咳がやたらと多いです。この日の聴衆は風邪をひいている人が多かったのでしょうか。ライヴで残す意味が感じられず、これはセッションできちんと録音してほしかったですよ。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ナンシー・グスタフソン(ソプラノ)
フローレンス・クイヴァー(アルト)
プラハ・フィルハーモニー合唱団
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
ズービン・メータ(指揮)
1994年1月、2月
テル・アヴィヴ,フレデリック・R・マン・オーディトリアム

メータ3度目の復活で、1968年より音楽顧問、1977年より音楽監督、1981年より終身音楽監督(2019年退任予定)を務めているイスラエル・フィルです。今度は録音が優秀で助かります。
第1楽章提示部は録音を繰り返すたびテンポが速くなっている印象がありますが、どうなのでしょう。
第1楽章提示部は、しばらく聴いているうちにオーケストラのアンサンブルの秀逸さが感じ取れるようになりました。このオーケストラは弦が美しいことで有名であり、それはさすがなのですが、その他の楽器も巧いですね。
展開部、ティンパニの「ダンダダン」の後、徐々に強烈なクライマックスが形造られますが、イスラエル・フィルがバリバリ鳴っている感じです。
再現部に至り、メータもこの録音から巨匠風の音楽をやるようになり、若い頃の才気はどこかへ行ってしまったようだという感慨にふけるようになりました。
第2楽章も立派な表現なのですが、なぜかあまり心を打ちません。美しい音だけで勝負しているような感じがします。私自身が疲れているということもあるのでしょう。
第3楽章も申し分のない演奏ではあるのでしが、これも心を打ちません。なぜでしょう。これが他の指揮者の演奏だったら絶賛したかもしれません。それほどまでにウィーン・フィル盤は強烈な印象を残したということなのでしょうか。
第4楽章のフローレンス・クイヴァーは「復活」以外を含めてあちこちの録音で名前を見かけますが、水準の出来かと思われます。ここではむしろメーター指揮イスラエル・フィルの美しい演奏に耳を傾けるべきかもしれません。後半のブラスのアンサンブルがとても美しいです。
第5楽章、メータはアンサンブルは整えるものの、テンポの伸縮やデュナーミクの微妙な変化などの指示は出しておらず、巨匠風の音楽を聴かせるようになっています。このコンビによる「復活」の演奏会は多いのでしょう。一種のルーチンワークのようになっていて、それが演奏に安定感をもたらしているのですが、白熱感・臨場感は希薄であるように感じられます。
第3部におけるホルンのやトランペットエコー、フルートとピッコロの絡みは美しいです。その後の静謐な合唱も申し分ありません。二重奏も二人の声質が似ているので良い感じです。プラハ・フィルの合唱団(人数が多いみたい)は最後まで良く通る立派な合唱でした。最後はしっかりオルガンも響き、大団円で終わります。
こんな立派な演奏を聴いて感動できないというのは、私に問題があるのでしょう。睡眠がうまく取れないので疲れているのです。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
チェチーリア・ガスディア(ソプラノ)
クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
クラクフ・ポーランド放送合唱団 
アルトゥーロ・トスカニーニ協会管弦楽団 
ギュンター・ノイホルト(指揮)
(ライヴ録音)

第1楽章冒頭の低弦の図太さにおおっと思います。これはすごい演奏が始まる前触れではないかと思いました。弦の人数が多いのでしょうか。なかなかメリハリがきいていて良い感じです。迫力はあるのです。ただ、表現が一本調子で、次第に飽きてきます。もう少しなんとかならないのかって思います。第3楽章もティンパニの強打がすごく、こういうところは押さえてあるのですが、なんだかアマチュア・オーケストラによる演奏みたいでアンサンブルも今ひとつです。音楽が単調に過ぎると思います。
唯一素晴らしいと思ったのは第4楽章で、どうしたことか名歌手ルートヴィヒが参加しています。デリカシーのない伴奏に支えられながら名唱を聴かせてくれます。もったいない……。
要するにこのオーケストラはあまり上手じゃないです。合唱も。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ガブリエラ・ベニャチャコヴァー(ソプラノ)
エヴァ・ランドヴァー(アルト)
プラハ・フィルハーモニー合唱団
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団,
ヴァーツラフ・ノイマン(指揮)
1980年

これはノイマンが1976年から1981年にかけてスプラフォンにレコーディングした交響曲全集からです。ノイマンもマーラー指揮者として有名で、スメタナやドヴォルザークだけじゃないってことです。
第1楽章冒頭の低弦は意外に軽めです。チョコチョコキョロキョロしている感じです。その後はシンバルの音も鋭く、お約束どおり盛り上がります。第2主題も速めながらよく歌っています。葬送行進曲も軽め。展開部はテンポをぐっと落として第2主題を美しく歌い上げます。優美なチェコ・フィルなので今ひとつ盛り上がりきらない嫌いがありますが、ウィーン・フィルとはまた違った鮮烈さ・素朴さもありますね。ティンパニが第1主題を強打するところは迫力があります。くすんだ響きの金管も素敵です。小細工を労せずに一心に突き進むノイマンの指揮にも好感がもてます。言い換えれば幾分素っ気ないとも言えますが。
弦の国、チェコのオーケストラによる第2楽章は、こざっぱりと速めのテンポで軽く演奏されます。こんなユニークな第2楽章は初めて聴きました。スラヴ舞曲みたい。軽いと書きましたが、チェコ・フィルの弦は明るいです。
第3楽章は楽曲がノイマン&チェコ・フィルの個性にあっているのでしょう。この曲の一面であるペーソスがうまく表現できていると思います。もう少し歌って欲しいと思う箇所もなくはないですけれど。終始木管楽器が活躍しており、管だけでなく、各声部が明瞭なので、いろいろ発見もありました。
第4楽章のランドヴァーという人についてはよくわかりませんが、かなりドイツ語の発音に気を遣っているのが聴いて取れます。子音を立てすぎかもしれませんが、これぐらい発音してもらわなければとも思います。なかなかシリアスな歌唱でした。管弦楽伴奏も良かったです。
第5楽章の31分13秒は短いほうだと思いますが、あまり分離がよくない不明瞭なステレオ録音なので冒頭など効果が今ひとつです。「荒野に呼ぶもの」のホルンが巧いです。その後も割とさくさくと進行していきます。トロンボーンによる「復活の主題」も良し。その後もきりっと引き締まっており、色彩感も出ています。
第2部(展開部)も良いですね。何よりテンポが良いです。対位法がきちんと整理されている感じで聴いていて実に気持ちが良いです。頂点の築かれ方はなかなか壮大です。
第3部「偉大なる呼び声」は舞台裏がすごく大きな音で鳴っていて、舞台裏の意味があまりないような気もします。そういう録音なのでしょう。割とすぐ無伴奏の合唱(復活の主題)が始まります。ヴォリュームも十分で立派な声が好印象。独唱も合唱と同質の声でうまく溶け込んでいます。ランドヴァーは声の威力、ベニャチャコヴァーは少し癖のある歌い方をしますが、声楽陣は声が揃っているので聴き易いです。合唱がオーケストラと同等以上なのでコーダが力強く響きます。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
シビッラ・ルーベンス(ソプラノ)
イリス・フェルミリオン(メゾ・ソプラノ)
ライプツィヒ放送合唱団
シュトゥットガルト放送交響楽団
サー・ロジャー・ノリントン(指揮)
2006年7月5-7日(ライヴ)
シュトゥットガルト,リーダーハレ,ベートーヴェンザール

速いテンポのノン・ヴィブラートによるベートーヴェン交響曲全集で賛否を巻き起こしたノリントンですから、きっとこのマーラーでもなにかやってくれるに違いないと信じていました。しかし、これは全く普通の演奏じゃなですかね。けして居丈高にならないクリアなサウンドに欲求不満を感じます。良いところがないわけじゃやないのです。第5楽章第2部(展開部)は「第1主題と第3主題の多彩な展開で、さまざまな対位法の技法が駆使されている」のですが、そういうところが実にわかりやすい。でも、これは私のイメージじゃない。彼がホルストの「惑星」を指揮したときにも同じ失望感を味わい、すぐ売却してしまったのを思い出しました。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
レグラ・ミューレマン(ソプラノ)
アンナマリア・キウーリ(メゾ・ソプラノ)
トリノ・レージョ劇場管弦楽団&合唱団
ジャナンドレア・ノセダ(指揮)
2015年10月24日(ライヴ)
トリノ,レージョ劇場

ミラノ生まれのノセダは、マリインスキー劇場をゲルギエフとともに支えており(首席客演指揮者)、2007年からはトリノのレージョ劇場の音楽監督でもあります。
マーラーは、このオーケストラにとって日常的なレパートリーではないのかもしれませんが、予想に反してずっしりした響きを聴かせてくれます。第2主題も濃厚な歌です。ただ、1973年4月に再建されたレージョ劇場は音響面での評価は良くないそうで、この録音も響かない、潤いのない音響がマイナスとなっています。そうは言うものの、この曲を取上げるからには期すものがあったのでしょう。不器用ながらもオケの頑張りが聴こえ、そういうところに人は感銘を受けたり、感動したりするものです。
第2楽章も洗練されておらず、がさがさしている感じですが、歌劇場のオケらしく、歌おうとする姿勢が感じられます。豊かな歌です。
第3楽章冒頭は精一杯のティンパニ。管楽器がオンマイクの録音なので、この楽章は面白く聴けます。この楽章はなかなか良いです。なによりテンポ感が優れています。
第4楽章のキウーリの独唱はなかなか良いと思います。独語の発音が良ければ尚良かったかも。
尻上がりに好調になる「復活」ですが、第5楽章は彼らの集大成という観があります。特にトロンボーンによる「復活の主題」以降の盛り上がり、第2部の小太鼓のロール以降は彼らの真骨頂でしょう。
第3部の合唱は歌劇場の合唱団らしい発声です。独唱二人もなかなかのものです。全管弦楽と合唱と独唱によるクライマックスはなかなか圧巻で、素直に感動しました。振り返ってみればこれはなかなか良い演奏でした。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
アンネ・シュヴァネヴィルムス(ソプラノ)
リオバ・ブラウン(アルト)
バンベルク交響楽団合唱団
ロルフ・ベック(合唱指揮)
バンベルク交響楽団
ジョナサン・ノット(指揮)
2008年3月14,15日
バンベルク,ヨゼフ・カイルベルト・ザール

【お薦め】
ジョナサン・ノットは1962年生まれのイギリスの指揮者です。2000年から2016年までバンベルク交響楽団の首席指揮者でしたが、日本では東京交響楽団の音楽監督(2014年~)としてのほうが有名でしょう。
第1楽章は冒頭の低弦の勢いとキレ、量感が素晴らしいです。やや速めの葬送行進曲ですが、表情にメリハリがあって盛り上がりにも欠けていません。第2主題は繊細な歌を聴かせます。聴き惚れているうちに提示部が終わってしまいます。
展開部第1部の第2主題は(そういうスコアになっているのですが)一層繊細です。ひとつひとうの音型が実に丁寧によく歌われていることに感心します。迫力にも凄まじいものがあり、ティンパニの強打が常に効果的です。
短い第2部はフルートやヴァイオリン・ソロが美しく、すぐに壮絶な第3部となり、ここまで来ると、これは「復活」の名盤の中でも上位に位置するものだと確信するに至ります。
再現部は管弦打のバランスが理想的で、第2主題も夢見るような美しさです。不安に満ちた葬送行進曲の後、速度を上げて第1楽章が幕を閉じます。
第2楽章はゆったりとしたテンポで始まりますが、微妙な表情の付け方など細部の彫琢に感心します。チェロによる主題再現はすごくきれい、第2トリオは情熱的、心がざわつきます。最後は優美な音楽を聴かせてくれます。
第3楽章は冒頭のティンパニの音の堅さに驚きます。流麗でありながらメロディがよく歌われ、木管楽器がすごく魅力的に聴こえます。クライマックスの音響も壮絶を極めます。
第4楽章の独唱は、ドイツ生まれのリオバ・ブラウンですが、ノット指揮の演奏があまりにも素晴らしいため、もう少し上のランクの歌手だったら、なお素晴らしかっただろうにと惜しまれます。
第5楽章は34分34秒で平均的なタイムです。第1部冒頭は予想どおりの迫力です。一区切りついた後の「荒野に呼ぶもの」の動機のホルン、木管による第3主題も、これまで同様に丁寧に演奏されますが、トランペットが不安定な箇所があるのが残念です。ぽつりぽつりと語られる第4主題ではノットのうなり声も(微かに)聴こえ、その後の聴かせどころである盛り上がりも過不足のない出来です。
第2部冒頭の小太鼓のロール他の打楽器が凄まじく、続く展開部はほど良いテンポで緩急の差も理想的です。対位法が駆使されていることからか、なんとなくブルックナーの第5番終楽章を思い出してしまいました。それくらい鮮やかな演奏ということです。
第3部「偉大なる呼び声」の部分は厳粛な感じ、無伴奏の合唱が美しく、続く管弦楽のみの場面も清々しく演奏されます。弦楽器の伴奏による合唱は柔らかく暖かみのある感じです。アルト独唱はこの楽章では良く、第4楽章録音時には疲れていたのかもしれません。ただ、今度は続くソプラノがいただけないです。オルガンも加わったクライマックスも素晴らしいです。
独唱に物足りなさがあったものの、これは21世紀の名演と言って差し支えないでしょう。


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