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Channel: 私が好きな曲(クラシック音楽のたのしみ)
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マーラー 交響曲第2番「復活」の名盤 (Fi)Ka ~ Li

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【前回の追加分】
リサ・ミルン(ソプラノ)
ビルギット・レンメルト(メゾ・ソプラノ)
ハンガリー放送合唱団
ブダペスト祝祭管弦楽団
イヴァン・フィッシャー(指揮)
2005年9月
ブダペスト,パレス・オヴ・アーツ

第1楽章冒頭の低弦主題の歌わせ方が特長的です。このコンビがどんな個性的な表現を聴かせてくれるのか、早くも期待が高まります、と思ったら割オーソドックスな解釈でした。奇をてらったところがありません。しかし、オーケストラが巧く、鮮やかな響きの美しさに魅了されます。第2主題の繊細な美しさも特筆ものでしょう。小結尾の打楽器の強打も凄まじく、マーラーのオーケストレーションを堪能させてくれる演奏です。録音の優秀さのせいもあり、とても洗練された、機能美に満ちたマーラーに聴こえます。
第2楽章主部はテヌートとアクセント、スタッカート等の付け方が興味深く、両翼配置の弦楽合奏が美しいです。このオーケストラのブラームスやチャイコフスキーは素晴らしいでしょうね(既に録音がありました!)。
第3楽章は冒頭のティンパニの強打に加えて、大太鼓の地鳴りのような重量感(随一ではないか?)がすごいです。木管楽器も達者です。ただ、前述のとおり基本的にはオーソドックスな解釈なので、あまり書くことがありません。
第4楽章のレンメルトはドイツ生まれの歌手らしく、ディクションがきれいです。伴奏のオケも美しく、特にオーボエが上手いと思いました。
第5楽章の嵐のような冒頭はやはり打楽器が凄まじく、大音響マニアを満足させることでしょう。コントラファゴットのような低音楽器がよく聴き取れるのも新鮮です。展開部は熱く燃えるのではなく、どこか冷静で、アンサンブルを重視しているようで物足りなさを感じます。
合唱は美しく、よく訓練されているのがわかる声です。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ベニータ・ヴァレンテ(ソプラノ)
モーリン・フォレスター(アルト)
The Ardwyn Singers
Cardiff Polyphonic Choi
Dyfed Choir
London Symphony Chorus(amateur)Choir
BBC Welsh Chorus
ロンドン交響楽団
ギルバート・キャプラン(指揮)
1987年
St. David's Hall, Cardiff, Wales

【お薦め】
ギルバート・キャプラン(1941年-2016年)という人はWikipediaによると「大好きなマーラーの交響曲第2番『復活』を指揮することを夢見て、30代を過ぎてからゲオルク・ショルティに師事して指揮法を学ぶ。40代なかばで、自費によるコンサートをエイヴリー・フィッシャー・ホールで行い、指揮者としてデビューする。最初で最後のはずが絶賛を浴び、あちこちのオーケストラから客演の依頼がくることとなり、「復活」のみを専門に振る指揮者として知られるようになった」そうです。「好きこそ物の上手なれ」というやつでしょうか。オケは名門ロンドン響です。
聴いてみて、なるほどと思います。自分で指揮できるとしたら、このようにありたいという理想を実現した演奏であることがよくわかります。マーラー「復活」のあらゆる録音を聴き、スコアを読み込み、自分が思う最良の形で表現したのでしょう。演奏に説得力があります。ここをこうしたら演奏効果効果が出るということを熟知していて、細部にまで神経が行き届き、それがちっとも厭味にならない形で音にされていて、素人の域を遙かに超えています。聴いていて実に気持ちが良かったです。独唱は良いけれど、合唱は時に粗っぽいですが、致命的と言うほどではありません。大人数の合唱は効果的です。妥協を許さない指揮に【お薦め】を捧げます。
録音も優秀です。42トラックに分けてあるので、スコアの勉強をしたい人にも打って付けです。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
(ギルバート・キャプラン校訂版/世界初録音)
ラトーニア・ムーア(ソプラノ)
ナージャ・ミヒャエル(メゾ・ソプラノ)
ウィーン楽友協会合唱団
ヨハネス・プリンツ(合唱指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ギルバート・キャプラン(指揮)
2002年12月
ウィーン,ムジークフェラインザール

【お薦め】
「復活」専門の指揮者、ギルバート・キャプランは、様々なオーケストラ(さすがにベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管とアメリカのビッグ5は指揮できなかったみたい)との共演を重ねていきますが、今回はなんとウィーン・フィルを指揮しての録音で、しかも、自身で校訂した版を用いての演奏です。
第1楽想は力強い弦で始まります。第1主題提示においても細部まで(本当に細かいところまで)キャプランのこだわりが感じられます。ウィーン・フィルの全面的な協力があったのでしょう。録音の優秀さもあり、圧倒的です。第2主題は打って変わってウィーン・フィルらしい優美な弦です。展開部は爽やかな(しかし熱気をはらんだ)夏の朝のように始まり、緩急の差、強弱の対比が鮮やかです。つまり理想的ということです。以下、第1楽章結尾まで何も言うことはありません(聴きながらDEEZERの設定をやっていたのでよく聴いていなかった、というようなことではありません)。
第2楽章の主部もウィーン・フィルの優美な弦が耳を惹きます。中間部の木管も美しいです。
第3楽章も打楽器のバランスが適切で、マーラーの「静かに流れるような動きで」の指示を徹底しているように思われます。どこまでもなめらかな管弦は耳にご馳走です。中間部の輝かしさも全く不足していません。
第4楽章はドイツのナージャ・ミヒャエルという人が丁寧に歌っています。伴奏のオーボエが美しい……。
第5楽章冒頭の強烈な響きも申し分ありません。その後は各動機を演奏する金管楽器の柔らかい古雅な響きも見逃せません。例のトロンボーンによる「復活」の動機も美しいアンサンブルを聴かせます。第5楽章の聴き所のひとつは展開部なのですが、ここは現代オーケストラの機能美を聴きたいところで、もちろんこの演奏は素晴らしいのですが、個人的にはもう少し速いテンポで熱い演奏を聴きたいところです。ウィーン・フィルという大人のオーケストラにキャプランは遠慮したのでしょうか、どこか涼しげです。
合唱は(カラヤンとの録音ではあまり評判がよろしくない)楽友協会合唱団ですが、不足のない演奏です。ラストまで崇高な雰囲気の漂う演奏でしたが、私にはこのテンポは遅すぎで、曲の長さを感じさせてしまうものでした。
今回も42トラックです。ちょっと分け過ぎですが、便利ではあります。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
(キャプラン&マティス編曲/小編成版/世界初録音)
マーリス・ペーターゼン(ソプラノ)
ヤニナ・ベヒレ(メゾ・ソプラノ)
ウィーン・ジングアカデミー
ハインツ・フェルレシュ(合唱指揮)
ウィーン室内管弦楽団
ギルバート・キャプラン(指揮)
2013年2月17日(ライヴ)
ウィーン・コンツェルトハウス

どの程度小編成なのかわからないけれど、弦に比べて管楽器が大きめに聴こえます。あまり小編成という感じがしないですね。人数が少ない分、細部まで見通しがよい演奏ができるし、表情をたっぷりつけられるということでしょうか。しかし、響きの薄さ(空虚さ)と、各奏者の技量が気になってしまいます。下手とは言いませんが、例えば木管楽器の音色に魅力があるとかそういうことはなく、要するにあまりうまくない感じです。両翼配置にであったなら、もっと楽しめたでしょうね。とはいえ、金管楽器に隠れがちな弦楽器がこのように演奏していたのか、と発見したり、興味深い瞬間もありました。
ちょっと飛ばして第2楽章を聴きます。今回はトラックが5つなので頭出しが楽です。この楽章は結構イケると思ったのですが、やっぱり響きが薄いのが気になります。
第3楽章は面白いです。弦のピッツィカート音型とかよく聴こえて楽しいです。
小編成が効果を発揮するのは声楽が入る曲では? 第4楽章を聴きます。思ったとおりで、管弦楽がメゾ・ソプラノの邪魔をしません。それにしても上手くない金管のアンサンブルです。
第5楽章冒頭はたいしたことが無いだろうと高をくくっていたら、そこそこ迫力はありました。先を急ぎます。夜鶯の後、合唱が登場する場面です。合唱の編成はそれほど大きくないように聴こえ、ときに荒さも目立ってしまいますが。やはり管弦楽とのバランスが良いです。独唱も声を張り上げないで済むので歌いやすいでしょう。
うん、これは「復活」マニア向けのCDですね。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ヴァルダ・バグノール(ソプラノ)
フローレンス・テイラー(アルト)
ハールストーン合唱協会
シドニー交響楽団
オットー・クレンペラー(指揮)
1950年9月(ライヴ)

再生音をマイクでもう一度録音したような不思議な録音で、ノイズの入り方からしてエアチェック音源でしょうか。録音状態はけしてよくありませんが、演奏の雰囲気は伝わります。
第1楽章は後年のクレンペラーとは似ても似つかない快速テンポで今回聴いた中では最も速いです。第2主題はゆったりとしたテンポで、緩急の差を大きく取っています。この頃のクレンペラーは颯爽としていますね。シドニー交響楽団も次のコンセルトヘボウ管より巧いです。
とはいうものの、この録音状態で、この長い曲を最後まで聴くのはしんどいです。第1楽章だけの感想でごめんなさい。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ジョー・ヴィンセント(ソプラノ)
キャスリーン・フェリアー(アルト)
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団&合唱団
オットー・クレンペラー(指揮)
1951年7月12日(ライヴ)
アムステルダム,コンセルトヘボウ(オランダ音楽祭)

クレンペラー66歳の「復活」、オーケストラはマーラー縁の名門コンセルトヘボウ管、録音は当然モノラルですが、割と聴き易いものです(たまにノイズが入ったり、強音時に音が割れる等はあります)。
第1楽章はさくさく進行します。箇所によっては、後年の演奏には聴くことができない、畳み掛けるような速めのテンポも見受けられます。展開部の小結尾などすごい迫力で、その後もかなり情熱的な演奏が繰り広げられます。
第2楽章はうきうきとした表現ですが、中間部はテンポが速くなりドラマティックな色合いが濃くなります。なんだかベートーヴェンの音楽を聴いているみたいな気分です。
第3楽章はこの録音にして意外なほどのティンパニの強打に驚きます。マーラーの指定どおり「静かに流れるような動きで」さっぱりと進みますが、中間部やラストは爆発的に盛り上がります。
第4楽章はキャスリーン・フェリアーの歌唱に尽きるでしょう。彼女は2年後に41歳の生涯を終えるのですが、豊かな声と深い洞察力の持ち主でした。
第5楽章ものすごい迫力で始まります。その後、トランペットとホルンが立て続けにこけたり、フルートが間違えたりと、さしものコンセルトヘボウ管でも、この頃はそういうことがあり得るのだなと思いました。展開部も力強く、ずいぶん速く、10年後の録音とはえらい違いです。10年の歳月は人を変える。そしてフェリアーは、やはり素晴らしかったです。音楽が新しい展開を迎えるとき、クレンペラーの「んあ"ッ!」といううなり声のようなものが聴こえましたが、聴き間違いでしょうか。壮大なラストで終わります。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
ヒルデ・レッセル=マイダン(アルト)
フィルハーモニア管弦楽団&合唱団
オットー・クレンペラー(指揮)
1961年11月、1962年3月
ロンドン.キングズウェイ・ホール

【お薦め】
(テープの経年劣化はあるものの)これは優秀録音ですね。こんなに鮮明で生々しい録音という記憶はありませんでした。こういう録音でこそヴァイオリン対向配置が生きるというものです。
第1楽章は意外に速めのテンポで進行します。第2主題になってもテンポは落ちません。その表情はぶっきらぼうで男らしいです。展開部に入って少し落ち着きますが、それでもザッハリヒな音楽づくりは変わりません。時に荒れ狂い、思い出したように優しい表情を見せる、その演奏にぐいぐい惹き込まれるものを感じます。クレンペラーの棒のマジックでしょう。コーダは巨人の足取りのようです。
さすがに第2楽章はたっぷりしたテンポで晩年のクレンペラーに近くなります。実は「復活」の第2楽章は他の4楽章に比べ、やや劣るように感じていたのですが、クレンペラーの演奏は求心力が高いのか、最後まで一生懸命聴いてしまいました。
第3楽章はこの曲の皮相な性格がよく出ています。木管楽器を重く用いるクレンペラーの指揮と録音にマッチした曲です。中間部の爆発的な主題も立体的で迫力があります。コーダも最高です。
第4楽章はレッセル=マイダンのアルトは発音と音程がよろしくないですが、オーケストラは素晴らしいです。
第5楽章は冒頭の雷が落ちたようなオケの迫力が立派です。トロンボーンが演奏する第2主題が重厚。行進曲調の展開部はやや遅めのテンポで、その立派さ、輝かしさは比類がないものの、部分的にさらに遅くしたりするのは緊張感を削ぐのでいただけないかも。
その後は感動的な音楽となっています、が、幾分曲の長さを感じてしまったかも。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
マリア・シュターダー(ソプラノ)
ナン・メリマン(メゾ・ソプラノ)
アムステルダム・トーンクンスト合唱団
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
ラファエル・クーベリック(指揮)
録音時期:1960年7月14日(ライヴ)
アムステルダムコンセルトヘボウ,音楽堂

マーラーの生誕100年の記念年に行われたオランダ音楽祭ライヴだそうです。
モノラル録音ですが、ハイ上がりの生々しい音質で、鑑賞にはそれほど差し支えないでしょう、と思ったら、最強音時に激しく音割れがしますし、終始変なノイズも入ります。これが聴き苦しい……。
演奏は指揮者の感性をストレートに表現したものでしょうか。ライヴにこそ強みを発揮するというクーベリックの長所がよく出ています。これがちゃんとしたステレオ録音だったら名盤足り得ていたでしょう。ぐいぐい惹き込まれるものを感じます。
第2楽章は、きわめてくつろいで、急がずに、の指示どおりの演奏です。旋律をよく歌う弦楽合奏が好ましいです。
第3楽想は、この曲の皮肉っぽさがよく出ており、中間部も突然輝かしく演奏されるなど、マーラーの音楽を熟知したクーベリックならではの表現です。
メリマンはアメリカメゾ・ソプラノ。コンセルトヘボウ管とは「さすらう若人の歌」(米ぬ無指揮)での共演がありますが、マーラーはレパートリーなのでしょう。堂々としたものです。
第5楽章は展開部以降が良いです。若々しい指揮が清々しく、コンセルトヘボウ管もベストの演奏をしようという意気込みが感じられます。
合唱が入ると、録音の悪さが露見します。人の声が変な調子に変えられるのは、私にとって耐えがたいものがあります。なので、試聴は途中で終わりです。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
エディト・マティス(ソプラノ)
ノーマ・プロクター(アルト)
バイエルン放送合唱団
ヴォルフガング・シューベルト(合唱指揮)
バイエルン放送交響楽団
ラファエル・クーベリック(指揮)
1969年3月
ミュンヘン,ヘルクレスザール

【お薦め】
第1楽章、低弦の第1主題がちょっと変わっていて、どこか長閑さを感じさせます。もうちょっと緊迫感があったほうが好みです。クーベリックだからボヘミア風というわけではないのですが、田舎くさい感じがするのです。いつの間にか都会風の洗練された響きのマーラーに惹かれるようになっていたようです。展開部はスケール感がやや不足しているものの、心地良いテンポで歯切れがよく、両翼配置なので時折聴かれる第1・第2ヴァイオリンの掛け合いが面白いです。ただ、指揮者とオーケストラがなぜか不器用な感じがするのですよね。歌わせ方・歌い方がセンプレ・マルカート気味だからでしょうか。
第2楽章は、田舎の婚礼の行列みたいです。この演奏を貶しているわけではなく、素直にそのような言葉が口をついて出ました。クーベリックのマーラーが良いという人は、その素朴さ・純朴さに惹かれるのかもしれません。
第3楽章は、元からあのような曲だからクーベリックに曲想が合っていると言えます。これは違和感なく聴くことができ、バイエルン放送響の優れたアンサンブルのせいもあり、心から優れた演奏と思いました。
第4楽章は(当たり前ですが)それまでとは打って変わり、たっぷりとしたテンポによるレガートな演奏となります。このテンポで演奏するのは歌手も木管も大変なのでは。中間はやや速めで変化をつけています。
第5楽章になると前半3つの楽章に感じていた違和感が全く無くなるのが不思議。クーベリックはもったいぶらないですね。冗長に感じられる部分はすっきり流し、聴き所を上手に繋げていきます。このような演奏であったら飽きないでしょう。そのような演奏ですから展開部からが最も聴き応えがあります。バイエルン放送響のシンフォニックな響きも素晴らしく、聴き終えるのが惜しいと思ったくらい。合唱も立派です。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
エディト・マティス(ソプラノ)
ブリギッテ・ファスベンダー(メゾ・ソプラノ)
バイエルン放送交響楽団&同合唱団
ラファエル・クーベリック(指揮)
1982年10月8日(ライヴ)
ミュンヘン,ヘルクレスザール

【お薦め】
1969年のセッションと同じ会場ですあG、ヘルクレスザールの美しいホール・トーンを多めに取り入れた録音であり、気持ちの良い響きがします。演奏も前回から13年度なので、こなれてきた感じがします。前回の田舎くささから都会的な演奏に様変わりしています。クーベリックの良さが失われたわけではないのですが、前回を懐かしく思う人もいるでしょう。私はこちらのほうが好きですけれどね。
第2楽章もベートーヴェンでもブラームスでもブルックナーでもない、マーラーを感じさせる演奏で、さすがクーベリックといったところです。
第3楽章も良いテンポで、「静かに流れるような動き」をもって、この曲の諧謔性を上手に表出しています。優美過ぎるかもしれませんが。
この録音のすごいところは、ファスベンダーとマティスという2人の名歌手を揃えていることです。まずファスベンダーから聴きます。第4楽章です。第一声から素晴らしいです。この録音の価値が数段跳ね上がったように思えます。少年が歌っているようで、この声が良く、またドイツ語のディクションの確かさ、表現の深さなど言うことなしです。
第5楽章はテンションが高いです。特に展開部がよく、さすがドイツを代表するオーケストラ(のひとつ)であるだけのことはありますが、もう少しキレがあったほうがよかったかな。
重厚な合唱が立派。ファスベンダーとマティスのすごい重唱の後、感度のラストが待っています。


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
キャスリーン・バトル(ソプラノ)
クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ジェイムズ・レヴァイン(指揮)
1989年8月19日(ライヴ)
ザルツブルク,祝祭大劇場

録音があまりよくないように思えるのです。聴いている間にオーケストラ名が気になり、ブックレットを見て、ウィーン・フィルだと改めて知って少し驚きました。これがウィーン・フィルの音色かと。全然ウィーン・フィルの美感が生かされていないように思います。よく聴けばそんなに悪い演奏ではないのですが、その良さが伝わりにくく、第1楽章から第3楽章までは、とても長く感じました。録音目的のライヴではありませんから、録音状態は、まぁこんなものなのかも。
第4楽章は名歌手ルートヴィヒが登場しますが、この楽章も今ひとつぱっとしません。これはご紹介するまでもないCDとは思ったのですが、ところがところが、第5楽章が素晴らしいのです。正確に書くと、合唱が入るところ(21分39秒あたり)から、雰囲気が変わります。ウィーン国立歌劇場合唱団が素晴らしいのです。祈りに満ちた音楽。キャスリーン・バトルも美しいです。ルートヴィヒとの二重唱も良いです。
しかし、本当に感動的なのは、二重唱が終わってからの合唱とオーケストラで、それまで我慢して聴いた甲斐があったというものです。

Mit Flügeln, die ich mir errungen,
werde ich entschweben!
Sterben werd' ich, um zu leben!
Aufersteh'n, ja aufersteh'n wirst du,
Mein Herz, in einem Nu!
Was du geschlagen,
zu Gott wird es dich tragen!


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マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ヘイディ・グラント・マーフィー(ソプラノ)
ペトラ・ラング(メゾ・ソプラノ)
ダラス交響楽団
アンドルー・リットン(指揮)
1998年9月(ライヴ)
ダラス,モートン・マイヤーソン・シンフォニー・センター
マクダーモット・ホール l

【お薦め】
リットンが1992年から2006年まで音楽監督をつとめたダラス交響楽団との「復活」です。リットンは今ひとつ名前が知られていない指揮者(拙ブログでは「ウォルトン:ベルシャザールの饗宴で紹介。再読したらあまり褒めていなかった)なので、この辺りで一発、大きな花を咲かせてほしいものです。それでは聴いてみます。
聴き終わりました。意外にと言ったら失礼ですが、良かったのです。リットンは何か特別なことをやっているわけではなく、あえて挙げるとすれば、旋律を非常に豊かに歌わせるのですね。
第1楽章第2主題など思い入れたっぷりです。何気に緩急の差が大きく、メリハリがあるのも良いです。展開部の第2主題がなんと美しく奏されること。速い部分の疾走感。第1主題によって平安が打ち破られるときの壮絶さ、等々、オーソドックスな解釈ではあるのですが、期待に応えてくれる演奏という点でなかなか貴重なのではないかと思います。再現部もよいテンポです。
第2楽章は、主部の舞曲風の主題をテンポやリズムを意図的に変化させ、単調に陥らないよう工夫しているのが特長で好ましいと感じます。
第3楽章は、まさに「静かに流れるような動きで」で、異国情緒が漂うような演奏です。録音が優秀なので各パートに旋律が渡されていく様子が手に取るようにわかります。中間部の輝かしい主題も抑制が効いており、全体のバランスから考えて妥当と考えますが、結尾は十分に爆発的に盛り上げ、その後の終楽章の予告も巧みに演奏されます。
第4楽章の独唱、ペトラ・ラングで、これはシャイー盤、チョン・ミョンフン盤以来の登場ですが、申し分のない歌唱を聴かせてくれます。
第5楽章冒頭の強烈な響きも十分で、各同期が適切なテンポとバランスで提示されていき。なかなか壮大な眺めです。展開部もけして急がず、遅からずの絶妙なテンポですが、ここはもう少し吹っ切れた演奏のほうが興奮させてもらえたかも。どこか冷静で抑制が効きすぎているのです。立派な演奏には違いないのですが。
クロプシュトックの「復活」賛歌の合唱も良い出来です。独唱はやっぱりランクの声が立派です。マーフィーも良いのだけれど、ちょっと神経質な感じがします。ラストはなかなか感動的です。
まとめとして、全体の解釈はオーソドックスであるものの、細部までよく検討され、リットンの意図を十二分に反映させた名演と言えるでしょう。全体を25のトラックに分割しているのも便利です。


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