マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
エリー・アメリング(ソプラノ)
アーフェ・ヘイニス(アルト)
オランダ放送合唱団
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
ベルナルド・ハイティンク(指揮)
1968年5月
アムステルダム,コンセルトヘボウ
【お薦め】
映像作品まで含めると何種類あるのかわからないハイティンクの「復活」の最初期の録音です。ハイティンクは、1961年から1988年までの長きに渡り首席指揮者を務めたコンセルトヘボウ管(この当時はアムステルダム・コンセルトヘボウ管、今はロイヤル・コンセルトヘボウ管)とマーラー交響曲全集を完成させており、その中の1曲です。なお、マーラー交響曲全集は1962年から1971年までかかって完成されました。
第1楽章はこのコンビにしては意外なくらい荒々しいです。コントラバスの両巻が好ましく、これは期待できそうです。きびきびとしたテンポで、さくさくと進み、巨匠風ではない、若いハイティンクの情熱を感じます。この指揮者には穏健なイメージがあるのですが、積極的な音楽づくりですね。攻めの姿勢が感じられます。金管の咆哮、炸裂する打楽器、美しい弦と木管、私が一番好きなオーケストラはコンセルトヘボウ管なのですが、この頃の音色もなかなか良いです。
第2楽章は優雅でに彫琢された美しい演奏です。やはりコンセルトヘボウ管の弦が輝かしく美しいです。
第3楽章はこんなに深い音でティンパニが強打されたことは無かったのではないかと思いますが、続く艶っぽい木管も素晴らしく、心地良いテンポで進みます。幸福感に溢れた演奏。
オランダの名歌手アーフェ・ヘイニスの美声による第4楽章も秀逸です。
第5楽章も第1楽章とほぼ同様の感想となります。ずばり、良い演奏です。管弦楽曲を聴く楽しさを満喫できます。合唱も優秀ですが、遠くに聴こえ、量的に物足りないのが残念です。実際はこんなものなのでしょうけれど。独唱はヘイニスに加え、名歌手のアメリングという贅沢さです。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
シルヴィア・マクネアー(ソプラノ)
ヤルト・ヴァン・ネス(アルト)
エルンスト・ゼンフ合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルナルド・ハイティンク(指揮)
1993年1月
ベルリン,フィルハーモニー
【お薦め】
コンセルトヘボウ管とマーラー交響曲全集を完成させたハイティンクですが、今度はベルリン・フィルとの全集に着手し、1987年から1993年までに第1番「巨人」、第2番「復活」、第3番、第10番~アダージョ、第4番、第5番、第6番「悲劇的」、第7番「夜の歌」と「さすらう若人の歌」が録音されたのですが、ついに第8番「千人の交響曲」と第9番は録音されなかったのでした。完結していれば、ベルリン・フィルによるマーラー交響曲全集という貴重な録音になったでしょうに。この演奏はとても素晴らしいので、非常に残念です。
これを聴いて思うのはベルリン・フィルは本当にすごい楽団ということで、非日常的なレパートリーであったのでしょうか、嬉々としてマーラーを演奏しているように聴こえます。正規のレコーディングは、他にラトル指揮の2010年ライヴぐらいしか思い出せませんが、ベルリン・フィルは「復活」の初演を行った団体でもあるのですよね。ハイティンクも水を得た魚のようです。生き生きと指揮をしているのが目に浮かぶようです。一番凄いのは第5楽章で、ベルリン・フィルはエンジン全開です。ネスの独唱はちょっと大仰な感じ、マクネアーは可憐で良いく、エルンスト・ゼンフ合唱団は立派です。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
シャルロッテ・マルギオーノ(ソプラノ)
ヤルド・ファン・ネス(アルト)
ザクセン州立ドレスデン歌劇場合唱団
ドレスデン交響合唱団
シュターツカペレ・ドレスデン
ベルナルド・ハイティンク(指揮)
1995年2月13日
ドレスデン,ゼンパーオーパー
ハイティンクは、2002年にドレスデン国立管弦楽団の首席指揮者(オケからの要請は音楽監督だった)に就任しましたが、2004年に辞任してしまいます。理由は、楽団とザクセン州がファビオ・ルイージを音楽監督に指名したからで、ハイティンクの反対を押し切った形になりました。
それはともかく、第1楽章冒頭からこのオーケストラなではのくすんだ、いぶし銀の響きがします。ただ、なんというか、こなれていないというか、ぎこちないというか、マーラーを演奏し慣れていない感じがします。初めて演奏したような、とでも言えばよいのでしょうか、きちんと楷書体で書いたようなの演奏ですね。その不器用さが新鮮でもあるのですが、やや流動感に欠けているようにも思えます。音楽が流れず、ぎくしゃくしていて、もしかしたらリハーサル不足なのかもしれません。とはいえ、美しい瞬間も多々あり、なかなか捨てがたい味わいをもった演奏でしょう。ハイティンクの指揮はベルリン・フィルの時とさほど変わっておらず、ネスの独唱もほぼ同じ、マルギオーノはオペラティックというか、アルトが2人で歌っているみたい。2つの団体はいかにもプロの合唱団といった感じです。あまり褒めなかったですけれど、ラストは圧倒的で他と比べても遜色ない演奏でしたよ。あと、打楽器陣が終始すごかったです。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ミア・パーション(ソプラノ)
クリスティアーネ・ストーティン(メゾ・ソプラノ)
シカゴ交響合唱団
デュアイン・ウルフ(合唱指揮)
シカゴ交響楽団
ベルナルド・ハイティンク(指揮)
2008年11月20-22・25日(ライヴ)
シカゴ,シンフォニーセンター,オーケストラ・ホール
HMVさんによると、ハイティンクの「復活」は次の7種「も」あるそうです。
1968年 アムステルダム・コンセルトヘボウ管(セッション録音)※全集シリーズ
1984年 アムステルダム・コンセルトヘボウ管(ライヴ録音)※映像作品
1990年 ロッテルダム・フィル(ライヴ録音)
1993年 ベルリン・フィル(ライヴ録音)※映像作品
1993年 ベルリン・フィル(セッション録音)
1995年 ロイヤル・コンセルトヘボウ管(ライヴ録音)
2008年 シカゴ響(ライヴ録音)
(コンセルトヘボウ管が「ロイヤル」の称号を下賜されたのは1988年なので、それ以前はアムステルダム・コンセルトヘボウ管です。)
2006年からシカゴ交響楽団の首席指揮者に就任したハイティンクですが、この演奏は無我の境地に達したとでも言えばよいのでしょうか、若い頃のあの情熱的な演奏はどこへ行ってしまったのかというほど冷静な演奏になっています。シカゴ響ほどのスーパー・オーケストラからその潜在能力を全て引き出してやろうなどという意図は全くうかがえず、ひたすらマイペースです。
やはり第5楽章が最も感銘が深く、疲れを知らないパワフルかつ美しい、完璧な金管群は感動的ですらあります。やっぱりシカゴ響は巧い! そしてシカゴの合唱団も上手い!(きちんとドイツ語を発音しているし、シカゴ響と互角に渡り合っています!) でも、昏く燃える情念のようなものをこの曲に求める人は他を当たったほうがよいかも。ラストは神々しいほどのハイティンクの指揮なのですが、第1楽章~第3楽章に戸惑うほどの物足りなさを感じてしまったのです。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
オリガ・グラチェリ(ソプラノ)
ウタ・プリエフ(アルト)
リュブリャーナ放送合唱団
スロヴェニア・フィルハーモニー管弦楽団
ミラン・ホルヴァート(指揮)
1989年(ライヴ)
ホルヴァート(1919年ー2014年)は、知る人ぞ知る、クロアチアの指揮者です。
第1楽章は力と勢いを感じる第1楽章で、スロベニア・フィルは技術的にはそれほど高くない(らIイヴゆえの瑕疵があるのは仕方が無い)のでしょうけれど、指揮者ともども表現意欲は伝わってきます。そのような演奏はこちらもきちんと聴かねばと思わざるを得ません。快速テンポが心地よく、炸裂する打楽器、咆哮する金管と泣き叫ぶ木管ですが、言い換えれば粗っぽいということです。
第2楽章はしっかりした足取り(テンポ)で、歌に溢れており、悪くありません。
第3楽章もこの曲のシニカルな曲想をよく表現していると思いますが、オーケストラにはもう少し洗練された響きを求めたくなります。曲が長く感じられます。
第4楽章、間奏の金管が不安定で頼りないですが、プリエフはよく歌っていて、これはなかなか感動的な楽章となりました。
第5楽章は、いつものことながら冒頭にはびっくりします。しかし、この演奏のすごいところは展開部に入ってからで、打楽器による圧倒的な大音量後に、勇壮なマーチが繰り広げられるわけですが、その直線的な迫力が聴き物です。不安の動機が耳に残ります。ストレッタも壮絶です。
再現部に入って、合唱が登場すると安心します。オケが不安定であるため、やっと解放されたように思うからで、声楽陣は独唱も含めて水準以上と言えます。ラストも圧倒的です。
なお、ホルヴァートには同じオケを指揮(独唱や合唱団が異なる)した録音もあるようです。そちらはもっとすごいらしいです。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ヘレン・ドナート(ソプラノ)
ドリス・ゾッフェル(アルト)
ハンブルク北ドイツ放送合唱団
フランクフルト放送交響楽団
エリアフ・インバル(指揮)
1985年3月28-29日
フランクフルト,アルテオーパー
【お薦め】
世代によってマーラー指揮者と言われて思い浮かぶ人は違うと思うのですが、それはワルターであったり、クレンペラー、バーンスタイン、クーベリック、テンシュテット等々。私の場合はインバルで、フランクフルト放送交響楽団のCDが高くて買えず、レンタル店で借りてカセットテープにせっせとコピーして聴いていました。インバルはこのマーラー全集で日本のクラシック音楽愛好家に知られるようになったのではなかったでしたっけ。1974年から1990年まで音楽監督をつとめたフランクフルト放送交響楽団、この楽団は良いオーケストラですね。
今回実に久しぶりに聴いてみたのですが「B&Kマイクロフォンを使用したナチュラルな優秀録音」とのことで、ワンポイント・ステレオ録音(原則として2本のマクロフォンを一箇所に設置してステレオで録音したもの。あくまで「原則」)ということで録音も話題になりました。
全体を通じて言えることは、この演奏のデュナーミク、アゴーギク、アーティキュレーション等の全てが私の基準になってしまっていたのだな、ということ。そのような意味ではこれは私の理想の演奏であるはずなのだけれど、やっぱり今聴いても良い演奏でした。
第5楽章はインバルの鼻歌入りです。9分5秒くらいから盛大に打ち鳴らされる打楽器など、定位の良い録音のせいもあり、すごい迫力です。そう、展開部はこのテンポです。遅すぎず速すぎずでこのこれぐらいがちょうどよろしい。合唱も美しいし、インバル、歌手が歌っているときに一緒に唸っちゃダメだろう。この盤は歌手が良いのに台無し。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ノエミ・ナーデルマン(ソプラノ)
イリス・フェルミリオン(メゾ・ソプラノ)
二期会合唱団
東京都交響楽団
エリアフ・インバル(指揮)
2010年6月19日
東京,サントリーホール
【お薦め】
あえて書くほどのことでもないのですが、東京には「公益財団法人 東京交響楽団」と「公益財団法人東京都交響楽団」があって、前者は1946年、前者は後者は1965年に設立されています。略称は前者が「東響」、後者は「都響」です。どっちがどっちということもないのですが、フランクフルト放送響を指揮して、マーラー交響曲全集、ブルックナー交響曲全集を完成させたインバルが都響を指揮してマーラーを再録音しだしたのには、当時驚いたのものです。都響、そんなにすごいオーケストラだったのかって(失礼)。
残響が多いサントリーホールということもあり、オケの音が艶やかです。昔は「長い曲を演奏させると集中力が最後までもたない」と評論家に言われていた日本のオケですが、マーラーのスペシャリストであるインバルの指揮もあり、これは立派な演奏です。
インバルの指揮は基本的には旧盤と変わっていませんので、これ以上は書きませんが、一度、インバル&都響のマーラーの演奏会に行きたいと思いつつ、その願いは果たせていません。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
澤畑恵美(ソプラノ)
竹本節子(メゾ・ソプラノ)
二期会合唱団
長田雅人(合唱指揮)
東京都交響楽団
エリアフ・インバル(指揮)
2012年9月29,30日
東京芸術劇場,横浜みなとみらいホール
前録音から2年度の再録音です。これは全部は聴いていないのですが、なぜ再び録音することになったのでしょうね。なにか旧盤に不満なことがあったのか、もっと素晴らしい演奏ができたから発売することにしたのか、謎です。録音はこちらのほうが各楽器がよく聴きと取れるもので、個人的にはこちらの方が好みです。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
フェリシティ・ロット(ソプラノ)
ユリア・ハマリ(アルト)
ラトヴィア国立アカデミー合唱団
オスロ・フィルハーモニー合唱団
オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
マリス・ヤンソンス(指揮)
1989年
【お薦め】
1979年から2000年まで首席指揮者であったオスロ・フィルとの「復活」です。気鋭の指揮者と上り調子にあるオーケストラによるフレッシュな快演。
第1楽章など快速テンポで歯切れが良く、ぐいぐい突き進む印象ですが、勢いだけでなく随所で聴かせる小技も冴えており、聴いていて実に心地良いです。個人的に第1楽章を長く感じさせる演奏は受けつけないのですが、とても楽しく聴けました。
第2楽章も全く同様で、この楽章も長く感じることが少なくないのですが、ヤンソンスの軽妙な指揮には飽きることがなく、オスロ・フィルも美しいアンサンブルでそれに応えています。旋律とバックのバランスが良いのですね。これも聴いていて実に気持ちがよいです。
第3楽章は冒頭のティンパニの音が軽くて拍子抜けしますが、演奏自体が軽妙酒脱なものです。すいすい流れる演奏で、マーラーのイメージとちょっと違う気もしないでもないですが、これも実に楽しい演奏です。こんなに可愛らしい第3楽章は初めて聴きました。
第4楽章は打って変わっての叙情的な表現に心打たれます。ハマリの独唱もぴたりと嵌っています。
そして第5楽章、これもこれまでの楽章にない激しい表情を聴かせ、押し出しの強い音楽となります。打楽器の強打もさることながら、その後のハープが終始実に効果的。とにかくカッコイイ演奏なのです。自分が指揮できるのならこのような演奏でありたいと思うくらいに。録音バランスは、弦が大きめに収録されていて、金管陣が叫んでいる箇所でもきちんと聴こえるのがありがたいです。前4楽章からこの迫力は想像できませんでした。そして美しい。ロットも可憐だし、2つの合唱団も必要にして十分な声を響かせています。。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
リカルダ・メルベート(ソプラノ)
ベルナルダ・フィンク(メゾ・ソプラノ)
オランダ放送合唱団
セルソ・アントゥネス(合唱指揮)
ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
マリス・ヤンソンス(指揮)
2009年12月3・4日,6日
アムステルダム,コンセルトへボウ
マリス・ヤンソンスが2004年から2015年に首席指揮者であった、名門ロイヤル・コンセルトヘボウ管との「復活」、20年ぶりの再録音です。オスロ・フィルとのフレッシュな級録音はフレッシュな名演でしたが、さてこれはどうでしょう。
第1楽書冒頭は意志の強さを感じさせ、早くも名演の予感がしてまいります。コンセルトヘボウ管はマーラー縁のオーケストラですから、マーラー伝統と格式があるのでしょう、自由に弾かせても名演が生まれそうです。第1楽章もヤンソンスの個性より、どこもかしこも分厚い充実した響きで、オーケストラの巧さのほうに耳が行きがちです。ヤンソンスはオケの自発性を生かし、それを邪魔しないよう振る舞っているとしか想えません。非常にオーソドックスです。オスロ・フィルを指揮していたヤンソンスは円熟期(66歳)を迎え、無難な演奏をするようになってしまったのでしょうか、かつての冒険を聴くことができません。演奏自体は大変立派でどこに出しても恥ずかしくないものですが、ヤンソンスとコンセルトヘボウ管がマーラーを演奏したらきっとこうなるという予想どおりで、意外性が皆無なのが残念でした。なおオランダ放送合唱団は優秀です。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ナタリー・デセイ(ソプラノ)
アリス・クート(メゾ・ソプラノ)
オルフェオン・ドノスティアラ
hr交響楽団
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
2009年5月6-8日
フランクフルト,アルテ・オパー
【お薦め】
このオーケストラは、2005年にhr交響楽団という名前に改称したのですが、結局2015年にフランクフルト放送交響楽団に戻ったとのこと。指揮は2006年から2013年まで首席指揮者の任にあって、現在は名誉指揮者であるパーヴォ・ヤルヴィです。
演奏は、ヤンソンス指揮オスロ・フィルについて書いたことがそのまま当て嵌まります。間違えて、またヤンソンスの録音をプレイしてしまったと思って確かめたぐらいです。
その演奏を一言で表現するならば、「素晴らしい演奏」「見事な演奏」です。Wikipediaではパーヴォの指揮を「丁寧な音楽作りと柔和な表情、ニュアンスに富んだデリケートな表現、自然な息づかいと切々と訴えかけるような歌」と書いていますが、全くそのとおりなので、そのまま引用させていただきます。さらに付け加えすとすれば、「緩急自在」で「メリハリ」があり、「室内楽的な緻密さと豪快なパワー」を併せ持った指揮です。
とにかくどこもかしこも新鮮です。このような演奏が次々と登場するのであれば、昔の演奏をありがたがる必要もないかな、とさえ思うほどです。
ヤンソンス指揮オスロ・フィルを確実に上回っているのは第3楽章です。まずティンパニの音が最初から最後まで良いです。張りのある堅い音。続くグランカッサのずっしりとした量感。皮肉っぽく、金管より雄弁な木管とすいすいと流れる弦。お祭り騒ぎのような部分は早く、その後ですぐゆったりとしたテンポに切り替えてたっぷり歌うなど、表情の付け方が巧すぎます。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
シルク・カイザー(ソプラノ)
コルネリア・カリッシュ(メゾ・ソプラノ)
ジュネーヴ・モテット合唱団
ジュネーヴ大劇場合唱団
ギヨーム・トゥルニエール(合唱指揮)
スイス・ロマンド管弦楽団
アルミン・ジョルダン(指揮)
1996年(ライヴ)
ジュネーヴ,ヴィクトリア・ホール
フィリップ・ジョルダンのお父さんによる「復活」、オーケストラはアルミン・ジョルダンが1985年から1997年まで首席指揮者をつとめたスイス・ロマンド響です。
第1楽章はベートーヴェンみたいな演奏、第2楽章は叙情的でよく歌う美しい演奏、第3楽章からマーラーらしくなってきて、第4楽章はコルネリア・カリッシュが曲想にマッチした声でよいですね。第5楽想はこのオーケストラから想像できない壮絶な音響で始まります。展開部は良いテンポで、ティンパニも決まっています。ただ、どうしても響きが薄手で物足りなさを覚えてしまうのですが、それでも最後はなかなか感動的な盛り上がりを聴かせました。。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
アドリアーナ・クチェロヴァー(ソプラノ)
クリスティアーネ・ストーティン(メゾ・ソプラノ)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団&合唱団
ウラディーミル・ユロフスキー(指揮)
2009年9月25,26日(ライヴ)
ロンドン,ロイヤル・フェスティヴァル・ホール
【お薦め】
ロイヤル・フィルとの録音を次々と世に送り出し、名前を見かけることが多くなったユロフスキーの「復活」です。以前ユロフスキー指揮ロイヤル・フィルのCDを1枚買ったことがあるのですが、あまりの物足りなさにすぐ売却してしまいました。この「復活」はどうでしょう。
なんだか元気の良い第1楽章冒頭で、弦の数を増やしているのかな。低音木管の音もよく聴こえるのが珍しいです。低弦は右だけれどヴァイオリンは左右両翼という私の好みの配置です。きびきびとした進行で、快速テンポと歯切れの良さが現代的です。でもこれぐらいやってくれないと、わざわざ聴こうという気にはなれません(生意気)。歌わせるべき箇所はぐっとテンポを落とす振幅の大きい演奏で、このような演奏だともたれずに聴くことができます。第1楽章、長いですからね。この演奏で21分16秒です。独奏楽器をピックアップして聴き易くしているのも良いです。展開部で大見得を切るようなところなど、なかなかカッコイイですし、とにかく音楽が若々しい。録音数が多いのもそういうセンスが評価されているのでしょうね。
第2楽章は弦楽合奏がブラームスを連想させる、ドイツ風の演奏です。この曲のポルタメントは古くさくを思えることもありますが、この演奏では逆に効果的でさえあります。
第3楽章冒頭のティンパニの強打は強烈でこんなのは聴いたことがありません。悪夢のように不気味で、しかし優雅でもあるワルツ。こういう表情の付け方がユロフスキーは上手です。
第4楽章も大河が流れるような雄大さと、後半の次々と変化する曲想への細やかな対応など、なかなかのものです。ストーティンもユロフスキーの意図に沿った素晴らしい歌唱と言えましょう。間髪入れずに始まる第5楽章の嵐のような冒頭にしてやられたという感じがしますが、そういうところも若さゆえ、というやつですね。この楽章も両翼配置がびしっと決まっています。それなりの音量で弾かれて(録音されて)いるので効果的なのです。展開部の怒濤の進行も、緩急差が見事。この曲で初めてブルックナー(の第5番)を連想してしまいました。こんなことは初めてです。フルートとピッコロの夜鶯の後に初めて登場する合唱は訓練が行き届いています。独唱と共に登場するフルートをこんなに目立たせているのも初めて。ストーティンは良いけれど、クチェロヴァーの泣きが入っているソロはどうだろう。でも二重唱は良い出来です。ラストも感動的に幕を閉じます。こんなに良い演奏とは思ってもみませんでした。ユロフスキー、なかなかやるな!という感じです。