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Channel: 私が好きな曲(クラシック音楽のたのしみ)
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ジョスカン・デ・プレ ミサ・パンジェ・リングァ

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クラシック音楽スイッチが入ったままなので、早速次の曲の選定に取りかかりましたが、ブラームス、シューマン、メンデルスゾーン、モーツァルト、シューベルトその他を聴いて、どれもしっくりと来ず、「私が好きな曲」なのだから本当に自分が好きな曲を取り上げようと思い直しました。当たり前のことなのですが、どうも皆が好きな曲にこだわってしまっていたようです。今月末で新規投稿ができなくなるので、残された日々はこだわりの名曲について書きます。

そんなわけで、
ジョスカン・デ・プレ:ミサ「パンジェ・リングァ(舌もて語らしめよ)」
です。

Josquin des Prez (c.1450-1521)
Missa Pange Lingua
1. Kyrie
2. Gloria
3. Credo
4. Sanctus・Benedictus
5. Agnus Dei I.II & III

 ジョスカン・デ・プレは、ネーデルランド楽派の巨匠たちのなかでも、ひときわ高く聳える、大家中の大家である。彼の音楽は対位法的技法を精緻複雑に駆使しながらも、非常に強い表現性をたたえていて、一聴しただけでも、深い印象を残さずにはおかない。ということは、また、非常に個性的な音楽家であったということでもある。マルチン・ルターは「ほかの大家たちは音符に支配されているが、ジョスカン・デ・プレは音符を支配する」といったといわれる。彼は生きていた当時から、すでに、あらゆる音楽家中のプリンスとよばれた。幸い、古くから彼のミサ曲の最高傑作とされてきた《MIssa Pange Lingua》がレコードに入っているから、それをとろう。この曲ではグレゴリオ聖歌による旋律が主題的断片として分割され、四つの声部にわたって模倣作法的に処理される。吉田秀和 LP300選(新潮社)より

皆川達夫先生の解説


イメージ 1

ピーター・フィリップス
タリス・スコラーズ

この曲の模範的な名演であるタリス・スコラーズの演奏です。この録音は、HMV & BOOKS によると「1987年度のGramophone Awardの声楽部門を制覇するばかりか、Disc of The Year(年間最優秀大賞)まで受賞した名盤中の名盤」なのだそうです。このCDを今は無き六本木WAVEで見つけた時のワクワクした気分は今でも忘れられません。
他の盤同様、グレゴリオ聖歌「パンジェ・リングァ」をテノールが歌うところから始まります。この曲はキリストの聖体の祝日にうたわれるヒムヌス(讃美歌)だそうです。
Kyrieは、バスの声が硬いような気がしますが、ソプラノ、カウンターテノール、テノール、バスの各声部2名ずつ計8名のタリス・スコラーズの合唱はバランスに優れ、見通しの良いものです。完璧です。
Gloriaは、透明感のある合唱が虚空に響くようで聴き惚れてしまいますし、はっとするような美しさも随所に聴くことができます。
Credoは、長いのですが、タリス・スコラーズの演奏はちっとも飽きません。声を聴いているわけでも幸せな気持ちになれます。Et incarnatus est de spiritu sancto ex Maria virgine:の優しさ、祈りに満ちた表現が素晴らしく、歌手の一人ひとりがジョスカンの音楽に共感し切って歌っています。欲を言えば、Kyrieから気がついていたことですがタリス・スコラーズはあまり子音を立てないので、通常文とはいえ歌詞が聴き取りづらいのです。ハーモニー重視なのでしょうか。
Sanctusもソプラノの清楚で若々しい声が素敵です。pleni sunt caeli et terra gloria tua.のソプラノとカウンターテノールの二部がとても美しい。
Hosanna in excelsis.もタリス・スコラーズは精緻な合唱を聴かせてくれます。
Benedictusは、Kyrieのときには硬いと思ったバスが柔らかい声となり、テノールともに共感に満ちた歌を聴かせます。
第1Agnus Deiは、平穏な気分に支配され。第2Agnus Deiはさらに一層透明感が増した感じです。qui tollis peccata mundiがとても美しい。第3Agnus Deiは再び四部に戻り、糸を紡いでいくような合唱です。


イメージ 2

Bernard Faber-Garrus
Ensamble a Sei Voci
A Sei Voci

最初のAppel des clocesというトラックは。教会の鋭い鐘の音です。タリス・スコラーズと同じくグレゴリオ聖歌「パンジェ・リングァ」から始まり、最初は女声(やや音程が甘い?)と男声が交互に歌い、最後は混声となります。タリス・スコラーズより人数が多いです。
Kyrieは、教会の豊かな響きのせいもあり、豊かな声量を感じます。各節の歌い始めは独唱でいくつかの声部が重なる部分になると人数が増えるようですが女声のほうが人数が多いようです。
Gloriaは各パートのソロから始まり次第に声が増え、ハーモニーに厚みが増していきます。この曲はソロとゾリの使い分けが巧みです。音量が上がるところは人数が増して自然に盛り上がります。
間にPlain-chant:Nos autemが歌われます。後半の女声ソロが魅力的です。
Credoは、Et incarnatus est de spiritu sancto ex Maria virgine:の崇高な美しさが素晴らしく、人数の多さが厚みを生み出しています。この曲を初めて聴く方にはタリス・スコラーズよりも聴きやすいかもしれません。
Sanctusも女声は人数が多いけれど、男声は人数が少ないようで、Hozannaは弱声から始まり、終始声を張り上げるところがないのは好感がもてます。
Benedictusの男声二人の歌唱も優れています。再びHozanna。
第1Agnun Deiも豊かな声が悠久の時を奏でます。第2Agnun Deiはカウンターテノールとテノールの二重唱です。第3Agnun Deiはしっかりとした合唱を聴かせてくれます。

(ここまで書いて保存したらなぜか文字化けしてしまい、もう一度書き直しています。同じ文章を2度書いて疲れました。)


イメージ 3

Ludwig Böhme
Josquin des Prez Chember Choir

この演奏もまずグレゴリオ聖歌「パンジェ・リングァ」がゆったりとしたテンポで演奏されています。まず男声、次いで女声、そして混声のユニゾン。
kyrieのテンポも遅く、なかなか豊かなハーモニーです。
Gloriaも同様で、録音会場の豊かな響きのせいもあり、美しいのですが、いつまでも同じ調子なので少々飽きてきます。しかし、Qui tollis peccata mundi, suscipe deprecationem nostram.などとてもきれいです。
Credoも、この合唱団の特徴である若々しく瑞々しい声で、献身的な演奏を聴くことができます。この演奏でもEt incarnatus est de spiritu sancto以下が素晴らしい。ただ、残響の多さが気になってしまい、この合唱団くらい歌えるのであれば、残響の助けなど不要ではないかと思ってしまいます。
Sanctusも同じような調子で進むのか、少々飽きてきたなと思いきや、pleni sunt caeli et terra gloria tua.からがらっとテンポを変え、これはこれでよいと思ったのですが、Hozannaの新鮮味が失われているようにも思われました。
Benedictusは、男声による素朴な歌が印象に残ります。混声によるHozannaが繰り返されます。残響が多すぎてハーモニーがやや混濁気味です。
第1Agnun Deiは、平穏な気分に満ちた演奏。第2Agnun Deiの二部合唱も同様。第3Agnun Deiは再び四部となり、やや力強さを増し、厚みのあるユニゾンで締めくくられます。
と思いきや、再びグレゴリオ聖歌「パンジェ・リングァ」が混声ユニゾンで演奏されます。


イメージ 4

Maurice Bourbon
Ensemble Metamorphoses de Paris

この演奏はグレゴリオ聖歌「パンジェ・リングァ」から始まらず、いきなりkyrieです。しかもホルンみたいな楽器の音がします。さらにKyrie eleison.が終わった後、しばらく弦楽合奏が続き、そのあとにChriste eleison.です。合唱のあとは古楽器らしい金管の合奏があります。そしてKyrie eleison.は金管の伴奏付きです。
Gloriaも申し訳程度ですが伴奏付きで、別の曲を聴いているような気がします。新鮮といえば新鮮ですが、違和感があります。
CredoもGroia以上に目立つ金管伴奏が気になって合唱に集中できません。合唱は悪くありませんが、今までに聴いた3つの録音に比べるとテノール系があまり上手くなく、ソプラノも素人っぽいです。指揮はもう少し強弱のメリハリがあったほうがよいと思います。最後は快速テンポで駆け抜けます。
Sanctusは弦楽合奏で始まり、ひと通り演奏した後、無伴奏で合唱がSanctusを演奏しますが、途中から控え目に楽器も加わります。続いてpleni sunt caeli et terra gloria tua.を金管が一回演奏し、次にソプラノのみで演奏、Hozannaも伴奏付き。頭が混乱します。
Benedictusは男声が枯れた感じで歌っています。もちろん伴奏付きです。そのあとはまた弦の合奏が入り、これまた伴奏付きのHozanna。速めのテンポなので歌うのが大変だったかも。
第1Agnun Deiは、あまり平和的な気分ではなく、この曲にふさわしい表現とは言えません。何気なく弦の伴奏が付いています。第2Agnun Deiはまず弦のみの合奏で、もういいよという気分になります。合唱だけで勝負してほしい。合唱が始まっても管弦の伴奏付きなのが気になって仕方がありません。第3Agnun Deiは声楽のみかと思いきや、これもまた伴奏付きです。


イメージ 5

Noël Akchoté

ギターによる演奏でした(意味ある?)。2本(台)なので多重録音かな。


イメージ 6

Machaut Machine

テノール独唱によるグレゴリオ聖歌「パンジェ・リングァ」から始まります。
kyrieを聴きましたが、4人で歌っているようですが、終始音程が悪く、全然ハモっていなくて気持ち悪いです。聴く価値なしで終了。


イメージ 7

Graham Ross
Choir of Clare College, Cambridge

レーベルがハルモニア・ムンディなので期待大です。
ソプラノ独唱によるグレゴリオ聖歌「パンジェ・リングァ」かと思ったらすぐに混声ユニゾンに変わりました。ちょっとした演出です。残響過多なのが気になりますが、まずは上々の滑り出し。
kyrieは厳かに始まり、若々しくて瑞々しい声とハーモニーが魅力的。
Gloriaも爽やかなハーモニーが心地よく、この演奏に限ったことではありませんが、ソロとゾリの使い分けが効果的と思いました。ただ、ソプラノとテノールが高音になると苦しそうに歌うのが少し気になりました。
Credoもソプラノが愛らしい声で歌っています。クレア・カレッジ, ユニバーシティ・オブ・ケンブリッジということは学生合唱団? 揃っていなくて残響に救われている部分もありますが、適度に訓練された声を聴かせてくれます。指揮者のセンスも良いと思います。
Sanctusはハーモニーが美しいです。pleni sunt caeli et terra gloria tua.はデュエットですが、これも美しい。Hozannaは合唱でテンポが走っておらず、しっとりとした合唱です。
Benedictusもデュエットで、繰り返されるin nomine domini.が耳に残ります。再びHozannaで、この曲に限らずSの子音が立っているのが心地良いです。
第1Agnun Deiはソプラノの高音が詰まったような声なのが気になりますが、大きなマイナスではありません。第2Agnun Deiはデュエット。これも良い。間を置かずに合唱で第3Agnun Deiが開始、これも美しいです。
全体として現代的なセンスで心地よく聴くことができました。こんな演奏ばかりだったら良いのに。


この記事を書くまで、「パンジェ・リングァ」は「パンジェ・リングヮ」だと思っていました。「ヮ」ではなく「ァ」なのでした。それにしても大きな「ワ」ではなく小さい「ヮ」ってどういうときに使うカタカナなのでしょう。小さい「ヮ」を用いる作曲家名や曲名って無いですよね?

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