Quantcast
Channel: 私が好きな曲(クラシック音楽のたのしみ)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 183

ヴォーン・ウィリアムズ「トマス・タリスの主題による幻想曲」のCD

$
0
0
今回は,ヴォーン・ウィリアムズ(1872年10月12日-1958年8月26日)の管弦楽曲を取り上げようと思います。本当は別の曲を用意していたのですが,気が変わりました。

ヴォーン・ウィリアムズの管弦楽曲でCDに収録されていることが多いのは,グリーンスリーヴスによる幻想曲(1908年),揚げひばり(1914-20年),トマス・タリスの主題による幻想曲(1910年)でしょう。

それらに次いで多いのは,ノーフォーク・ラプソディ(1906-07年),「富める人とラザロ」の五つの異版(1939年),交響的印象「沼沢地方にて」(1904年)でしょうか。

そんなわけで,ヴォーン・ウィリアムズの最も有名な曲でCDの聴き比べもしやすい(書きやすい)「グリーンスリーヴスによる幻想曲」にしようと思ったのですが,当たり前過ぎるような気がしてきたのです。

ファンが多そうな「揚げひばり(舞い上がるひばり)」は,ヴァイオリン協奏曲に分類されていますので,管弦楽曲特集中の今回はパス。

結果として「トマス・タリスの主題による幻想曲」に決定です。管弦楽に固執しているのに管楽器が使われていない曲になってしまいましたが。

トマス・タリス(1505年頃-1585年11月23日)は、16世紀イングランド王国の作曲家でありオルガン奏者だそうです。英国教会音楽の父とよばれている人で,私の大好きなタリス・スコラーズの名称もこの作曲家に由来しています。

そのトマス・タリスが1567年に作曲した「大主教パーカーのための詩篇曲」の第3曲の旋律が「トマス・タリスの主題」というわけです。

初めて聴いた人は,どの部分がタリスの主題かわからないと思います。
そんな貴方様にこれをご紹介しておきます。
これは面白い。よくぞ作ってくれました!という感じ♪

All Miku【初音ミク】RVW Fantasia on a Theme of Thomas Tallis(冒頭部分)に・・・


レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ
トマス・タリスの主題による幻想曲
Fantasia on a Theme of Thomas Tallis

ウィキペディアによるとこの曲の楽器編成は,①弦楽オーケストラから成る第1アンサンブルと、②2人ずつの小編成による第2アンサンブルと,③弦楽四重奏という3群に分けられた弦楽合奏から成り立っているそうです。これにより教会内部の音響効果とかオルガンの響きを模しているのだとか。

BBC National Orchestra of Wales
Tadaaki Otaka conductor
Royal Albert Hall, 31 July 2012

尾高忠明さん,指揮姿が美しいです!

それで,各CDを聴いた感想なのですが,この曲は少々書きづらいです。毎日聴き続けたのですが,掴みどころがないのです。終わりそうで終わらなくて取り止めがない感じ。草原を渡る気まぐれな風,寄せては返す波,のような音楽です。波って大きな波が来たり小さな波が来たりして,展開が予測できないでしょう。ちょっと落ち着かない心地がするのですが,それが自然のような気もするし,そんな感じの音楽。「幻想曲」だから?

ここのところ,仕事が忙しかったせいもあり,電車の中ではぼーっとしている(寝ているともいう)ことが多かったので,「トマス・タリスの主題による幻想曲」をとても心地よく聴くことができたのですが,それぞれの演奏の特徴を書こうとすると手が止まります。

でも書こう。次の曲に進むために。次があれば。

イメージ 1
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団
EMI CLASSICS 1953年11月11日録音
カラヤン(14分54秒)唯一のヴォーン・ウィリアムズの録音です。カラヤンのレコーディング・レパートリーの中には演奏会で取り上げていない曲もありますが,「トマス・タリスの主題による幻想曲」はコンサートで演奏しています。まだ若い(といっても45歳の)カラヤンの演奏はドラマティックで,この頃からカラヤンはカラヤンであったのだなぁと感慨深いものがあります。この曲はやっぱりステレオ録音で聴きたいので,モノラル録音の当CDはお勧めでないのですが,切り捨てるには惜しいです。むしろこれは名演なのではないかと思った次第で,濃厚な表現は1970年代のカラヤンに通じるものがあり,曲のイメージと若干ずれてしまったかもしれないけれど,圧倒されるものがありました。

イメージ 2
ディミトリ・ミトロプーロス(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
SONY CLASSICAL 1958年3月3日録音
ミトロプーロス(12分44秒)は,もっといろいろ聴いてみたいのですが,あまりCDを持っていません。現在発売されているCDでは多い順にヴェルディ,マーラー,プッチーニ,モーツァルト,チャイコフスキー,R・シュトラウス,ベートーヴェンといったレパートリーです。マーラーはバーンスタインに手ほどきをしたぐらいですから当然ですが,ヴェルディが一番多いというのは意外でした。短めの録音時間からも分かるとおり,すっきりすいすい進んでいきますが,しかしあっさりしておらず,情感豊かで熱い演奏です。カラヤンと似ているかな……。

イメージ 3
サー・ジョン・バルビローリ(指揮)
シンフォニア・オブ・ロンドン
EMI CLASSICS 1962年5月17日録音
バルビローリ(16分20秒)は,粘り気のあるロマンティックな演奏。後半の3枚はグリーグを思わせるところがありますが,この演奏にはチャイコフスキーを感じます。今さらですが,バルビローリって音楽が熱いというか,イギリス人指揮者という感じがあまりしない人ですよね。念のために調べてみると「イタリア人の父とフランス人の母の間にロンドンで生まれる(ウィキペディア)」とあります。彼の指揮による「グリーンスリーヴスによる幻想曲」を聴くとよくわかるのですが,いろいろなことをやっていますので聴き慣れた曲でも新鮮味を感じます。この曲でも無意識のうちに曲をよく聴こうというしている自分に気がつきます。そういう演奏です。

イメージ 4
サー・ネヴィル・マリナー(指揮)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
DECCA 1972年録音
マリナー(15分13秒)は,聴かせ上手で求心力のある演奏ですね。オルガン的な音響が素晴らしいと思いますし,強弱の幅も大きく,録音が派手めなこともあってわかりやすいです。曲によっては高弦がきつく感じられるときもありますが,弦の美しい響きが楽しめます。ヴォーン・ウィリアムズの管弦楽曲集をとりあえず1枚という方には,このCDがよいかも。

イメージ 5
バリー・ワーズワース(指揮)
ニュー・クィーンズ・ホール管弦楽団
DECCA 1992年10月12-14日録音
ワーズワース(15分41秒)は,U野K芳さんが推薦していたので思わず買ってしまいました。私が初めて買ったヴォーン・ウィリアムズのCDだったと思います。次のトムソン盤に共通するものがありますが,こちらのほうが録音がキリっとしているせいもあって,より私の好みに近いかも。ただ,トムソン盤のほうが弦の量感が豊かで聴き映えがしますので,一般にはあちらをお勧めしたいと思います。ワーズワース盤のほうが地味に感じられるのですが,清楚で細やかな神経が行き届いていると思います。

イメージ 6
ブライデン・トムソン(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
CHANDOS 1986年6月25-26日録音
トムソン(16分13秒)は,今回一番のお勧めです。今回の聴き比べではこの演奏が基準となりました。過不足がなく調和がとれているところが好ましいです。それがこの曲には大事ではないかと思います。ロンドン・フィルの演奏も美しく,ややソフトだけれども厚みのある録音は耳に心地よくて,このような演奏であれば何度も繰り返し聴きたいと思えます。



Viewing all articles
Browse latest Browse all 183

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>