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ワーグナー「パルジファル」の名盤(?)

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ワーグナー最後のオペラ「パルジファル」です。
「パルジファル」は、1882年1月13日に総譜が完成し、1882年7月26日にバイロイト祝祭劇場で初演されました。「歌劇」でも「楽劇」でもなく、「舞台神聖祝典劇」なのだそうです。オペラであることには変わりませんけれど。

ワーグナーの作品の中でどれが一番好きかと問われたら、「パルジファル」と答えるかもしれません。それぐらい好きだから、記事を書けると思ったのですが、2週間聴き続けて、途中からよくわからなくなってしまいました。

今さらですが、再生装置によっても全く印象が異なるので、困っていいます。


リヒャルト・ワーグナー 舞台神聖祝典劇「パルジファル」



イメージ 1

ハンス・クナッパーツブッシュ
管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団
バイロイト祝祭合唱団
(合唱指揮:ヴィルヘルム・ピッツ)

パルジファル:ヴォルフガング・ヴィントガッセン
グルネマンツ:ルートヴィヒ・ヴェーバー
クンドリー:マルタ・メードル
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:アールノルド・ヴァン・ミル
クリングゾール:ヘルマン・ウーデ

第1の聖杯騎士:ヴァルター・フリッツ
第2の聖杯騎士:ヴェルナー・ファウルハーバー
第1の小姓:ハンナ・ルートヴィヒ
第2の小姓:エルフリーデ・ヴィルト
第3の小姓:グンター・バルダウフ
第4の小姓:ゲルハルト・シュトルツェ
花の乙女:ローレ・ヴィスマン
花の乙女:エリカ・ツィマーマン
花の乙女:ハンナ・ルートヴィヒ
花の乙女:パウラ・ブリーヴカルネ
花の乙女:マリア・ラコーン
アルト独唱:マリア・ラコーン

1951年7&8月(ライヴ)
バイロイト祝祭劇場

以前にもどこかで書きましたが、戦後のバイロイト音楽祭は、1951年に再開され、ベートーヴェンの「第九」、ワーグナーの「パルジファル」「ニーベルングの指環」「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が演奏されました。
指揮は、「第九」はフルトヴェングラー、「パルジファル」はクナッパーツブッシュ、「指環」と「マイスタージンガー」は、第1チクルスがクナッパーツブッシュ、下稽古と第2チクルスがカラヤンでした。
クナッパーツブッシュは、バイロイト音楽祭で「パルジファル」を、この年1951年、1952年、(1953年はクレメンス・クラウスが指揮)、1954年、1955年、1956年、1957年、1958年、1959年、1960年、1961年、1962年、1963年、1964年に指揮していて、1951年の上演はDECCA(このCDです)、1962年はPHILIPSが録音しています。他の年もいろいろなレーベルが販売しているようです。
この1951年盤では、当時無名に近かったヴィントガッセンが大抜擢されてパルジファルを歌っています。そんなにすごい歌唱とは思えないのですが、生のヴィントガッセンはきっと素晴らしかったのでしょう。
あと、マルタ・メードルのクンドリーも聴きものでしょう。メードルは偉大なワーグナー・ソプラノでしたが、アストリッド・ヴァルナイ同様、録音にはめぐまれなかったような気がします。
最後に録音状態ですが、DECCAといっても、優秀録音ではないです。当然モノラル録音で、ヘッドフォンで最後まで聴くのはちょっとつらいものがありました。
とりとめもなく書いてしまいましたが、戦後バイロイト再開の年の「パルジファル」が聴けるという、録音のありがたみを感じました。



イメージ 2

ハンス・クナッパーツブッシュ
バイロイト祝祭劇場管弦楽団・合唱団
(合唱指揮:ヴィルヘルム・ピッツ)

パルジファル:ジェス・トーマス
グルネマンツ:ハンス・ホッター
クンドリー:アイリーン・ダリス
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:マルッティ・タルヴェラ
クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー

第1の聖杯騎士:ニールス・メラー
第2の聖杯騎士:ゲルト・ニーンシュテット
第1の小姓:ソナ・ツェルヴェナ
第2の小姓:ウルズラ・ベーゼ
第3の小姓:ゲルハルト・シュトルツェ
第4の小姓:ゲオルク・パスクダ
花の乙女:グンドゥラ・ヤノヴィッツ
花の乙女:アニヤ・シリヤ
花の乙女:エルセ=マルグレーテ・ガルデッリ
花の乙女:ドロテア・ジーベルト
花の乙女:リタ・バルトス
花の乙女:ソナ・ツェルヴェナ
アルト独唱:ウルズラ・ベーゼ

1962年8月(ライヴ)
バイロイト祝祭劇場

ショルティ/ウィーン・フィルの「ニーベルングの指環」に登場する2人のヴォータン(ホッターとロンドン)やナイトリンガーの名前を見ただけで、感動してしまいます。すごい顔ぶれです。
ただ、クンドリーという重要な役を歌っているアイリーン・ダリスという人は、他では名前を見かけません。この年はアストリッド・ヴァルナイがクンドリーを歌った日もあるそうで、そちらを残していただいたほうがよかったかな(?)
この1962年盤は、クナッパーツブッシュの代表的な録音として、また「パルジファル」というオペラの代表的な名盤として、多くの評論家やオペラ・ファンから支持されています。語り尽くされていますので、とても自分の言葉では表現できません。
ただ、全く個人的な意見ですが、「パルジファル」を聴いてみたいと思った人は、最初からクナッパーツブッシュ指揮の演奏を選ばないほうがよいと思うのです。そんな気がします。
ところで、「レコード芸術」2017年8月号の217・218頁で、この録音をSACD化したものについて記事が載っています。興味のある方は読まれてはいかがでしょうか。



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ヘルベルト・フォン・カラヤン
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
(合唱指揮:リヒャルト・ロスマイヤー)

パルジファル;フリッツ・ウール
グルネマンツ;ハンス・ホッター
クンドリー;エリーザべト・ヘンゲン(第1幕、第2幕第1場、第3幕)
クンドリー;クリスタ・ルートヴィヒ(第2幕第2場)
アンフォルタス:エーべルハルト・ヴェヒター
ティトゥレルトゥゴミル・フランク
クリングゾール;ワルター・ベリー

第1の聖杯騎士;エルマノ・ロレンツィ
第2の聖杯騎士;コスタス・パスカリ
第1の小姓;リズロッテ・マイクル
第2の小姓;マルガレータ・ショステッド
第3の小姓;エリッヒ・マイクート
第4の小姓;クルト・エクヴィルツ
花の乙女;グンドゥラ・ヤノヴィッツ
花の乙女;ヒルデ・ギューデン
花の乙女;アンネリーゼ・ローテンベルガー
花の乙女;ゲルダ・シャイラー
花の乙女;マルガレータ・ショーステッド
アルト独唱;ヒルデ・レッセル=マイダン

1961年4月1日(ライヴ)
ウィーン国立歌劇場

カラヤンは、自身が理想とするワーグナー上演に情熱をもっていた人でしたが、これは1956年から1964年まで総監督の地位にあった、ウィーン国立歌劇場での録音です。
この演奏も歌手が素晴らしく、特に、クンドリーを歌うクリスタ・ルートヴィヒは、他の追随を許さない名唱と思います。ルートヴィヒが歌うのは、第2幕の後半だけなのですが、全部ルートヴィヒでも良かったんじゃないでしょうか。知らないで聴いたら効果的であったのかもしれません。
カラヤンの活き活きとした指揮やオーケストラの響きも素晴らしいと書きたいところですが、残念ながら録音はあまりよくないですね。歌手の声はよく入っていますが、オーケストラの音が歪むのが気になります。ですから、これは「パルジファル」が好きな人か、カラヤン・ファンへのお薦めでしょう。



イメージ 4

ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
ワルター・ハーゲン・グロル(合唱指揮)

パルジファル:ペーター・ホフマン
グルネマンツ:クルト・モル
クンドリー:ドゥニヤ・ヴェイソヴィチ
アンフォルタス:ジョゼ・ヴァン・ダム
ティトゥレル:ヴィクター・フォン・ハーレム
クリングゾール:ジークムント・ニムスゲルン

第1の聖杯騎士:クラエス・アーカン・アーンシェ
第2の聖杯騎士:クルト・リドル
第1の小姓:マリヨン・ランブリクス
第2の小姓:アンネ・イェヴァング
第3の小姓:ハンナ・ホプフナー
第4の小姓:ジョージ・ディッキー
花の乙女:バーバラ・ヘンドリックス
花の乙女:ジャネット・ペリー
花の乙女:ドリス・ゾッフェル
花の乙女:インガ・ニールセン
花の乙女:オードリー・ミッチェル
花の乙女:ロハンギス・ヤシュメ
アルト独唱:ハンナ・シュヴァルツ

1979,80年
ベルリン、フィルハーモニー

バイロイト祝祭管弦楽団に長く在籍していた眞峯紀一郎さんは、カラヤンについて「オペラの指揮は、ただ楽譜を見て棒を振るだけでなく、もっと大きな観点から作品を俯瞰する必要があります。カラヤンはそれを見事にこなせる人でした。私は個人的に、カラヤンは“オペラ指揮者”だったと考えています。カラヤンは音楽から演出に至る全てを自分でコントロールする人で(そんなところが原因となって、バイロイトではヴィーラントと仲違いしたのですが……)、スコアもテキストも完璧に暗譜して、歌手の所作などにも全部指示を出していました。」と語っています。なぜ、この文章を引用したかというと、ビルギット・ニルソンが上演中、カラヤンに指示を出してもらおうと救いを求めたとき、カラヤンは目をつぶって指揮していたので気がついてもらえなかったと怒っていたのを思い出したからです。
この録音は、ワーグナーにこだわり続けたカラヤンが残した録音の中でも、最高の出来ではないでしょうか。カラヤンは、「パルジファル」の録音は70歳になってからと語っていたそうですが、この録音はカラヤンのワーグナー演奏の集大成のように思えます。カラヤン初のデジタル・セッションということもあり、今が時と思って「パルジファル」を選んだのでしょうか。
歌手選びでは、こだわりが裏目に出ることもあるカラヤンですが、この録音は文句のつけようがないです。この演奏であれば、ペーター・ホフマンよりルネ・コロのほうがふさわしかったと思いますが、カラヤンは「ローエングリン」で懲りたのかもしれませんね。。
興味深いのは、クンドリーにドゥニヤ・ヴェイソヴィチという歌手をあてていること。カラヤン指揮の「さまよえるオランダ人」で、ゼンタを歌っていた人です。ヤノヴィッツの声質で、低いほうの声域を伸ばしたような人。カラヤン好みの声の歌手なのですが、他では名前を見たことがない人なんです。



イメージ 5

ピエール・ブーレーズ 指揮
バイロイト祝祭管弦楽団
バイロイト祝祭合唱団
(合唱指揮:ヴィルヘルム・ピッツ)

パルジファル:ジェームズ・キング
グルネマンツ:フランツ・クラウス
クンドリー:ギネス・ジョーンズ
アンフォルタス:トマス・スチュアート
ティトゥレル:カール・リッダーブッシュ
クリングゾール:ドナルド・マッキンタイヤ

第1の聖杯騎士:ヘルミン・エッサー
第2の聖杯騎士:ジークリンデ・ワーグナー
第1の小姓:エリザベート・シュヴァルツェンブルク
第2の小姓:ギセラ・リッツ
第3の小姓:ディーター・スレンベルク
第4の小姓:ハインツ・ツェドニック
花の乙女:ハンネローレ・ボーデ
花の乙女:マルガリータ・キリアーキ
花の乙女:インゲ・ポースティアン 
花の乙女:ドロテア・ジーベルト
花の乙女:ウェンディ・ファイン
花の乙女:ジークリンデ・ワーグナー
アルト独唱:マルガ・ヘフゲン

1970年7,8月
バイロイト祝祭劇場

バイロイト音楽祭の「パルジファル」は、クナッパーツブッシュ後、1965年はアンドレ・クリュイタンス、そして、1966年から1968年、1970年、2004年、2005年はピエール・ブーレーズが指揮しています。
この録音は1970年の上演の合間を縫って録音されたとのことで、ライヴではないようです。舞台を歩き回る音が聴こえるから、同時に映像収録もされたのかな。
演奏時間が3時間38分で、ケーゲル盤に同じく最も短い部類だと思いますが、その割には速さを感じさせないです。クナッパーツブッシュの指揮に慣れていたバイロイトの聴衆に、ブーレーズの演奏はどのように響いたのでしょうか。
この演奏は、数年前に聴いたときには清冽な印象を受けました。ブーレーズというと、精密機械のような演奏を連想しがちですが、覇気のある指揮で十分ドラマティックです。今回聴いてもその魅力は色褪せておらず、思わず耳を傾けてしまいました。
歌手では素晴らしい声のフランス・クラウスのグルネマンツ。この演奏を聴いている限りでは傑出したグルネマンツと思いました。リッダーブッシュのティトゥレルも存在感を見せつけ、スチュアートの情熱的なアンフォルタスですし、マッキンタイヤも演技派のクリングゾールです。
花の乙女たちは、ケーゲル盤に軍配が上がります。あれは最高ですから。
ギネス・ジョーンズは力強いけれど、強弱の差、高低の音量の差が大きくて、好みが分かれるかもしれません。ジェームズ・キングも力強い歌唱で、ジョーンズとはつり合いが取れています。
時間が経つのを忘れて聴いてしまう演奏です。これも「パルジファル」を初めて買おうとする人にお薦めできます。
ただ、ブーレーズもケーゲルも、第2幕冒頭のテンポは速すぎると思うのですが。



イメージ 6

ゲオルグ・ショルティ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン少年合唱団
(合唱指揮:ノルベルト・ヴァラチュ)

パルジファル:ルネ・コロ
グルネマンツ:ゴットロープ・フリック
クンドリー:クリスタ・ルートヴィヒ
アンフォルタス:ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ
ティトゥレル:ハンス・ホッター
クリングゾール:ゾルターン・ケレメン

第1の聖杯騎士:ロバート・ティアー
第2の聖杯騎士:ヘルベルト・ラクナー
第1の小姓:ロートラウト・ハンスマン
第2の小姓:マルガ・シムル
第3の小姓:ハインツ・ツェドニック
第4の小姓:エーヴァルト・アイヒベルガー
花の乙女:ルチア・ポップ
花の乙女:リソン・ハーゲン
花の乙女:アン・ハウエルズ
花の乙女:キリ・テ・カナワ
花の乙女:ジリアン・ナイト
花の乙女:マルガリータ・リローヴァ
アルト独唱:ビルギット・フィニラ

1971年12月,1972年3月
ウィーン,ゾフィエンザール
録音 DECCA)

聴き始めてすぐ懐かしい気分になりました。DECCAの録音によるショルティ&ウィーン・フィルのワーグナーの響きです。DECCAのオペラ録音の伝統でしょうか、歌手が歌いながら移動したり、クリングゾールの城が崩れ落ちる場面では派手な効果音が入ります。サービス精神旺盛ですね。たまに暗騒音のようなものが聴こえますが、地下鉄かな?
「パルジファル」は、どの録音も歌手が豪華なのですが、この演奏もそうです。花の乙女にルチア・ポップ(クーベリック盤でも歌っています)やキリ・テ・カナワを起用していますが、花の乙女に名歌手を用いるのが豪華歌手陣の証であるみたい。でも花の乙女たちは、ソリスティックな人達じゃないほうがよいと思うのですが。
グルネマンツで名唱を聴かせていたハンス・ホッターがティトゥレルで、時代の移り変わりを感じます。フィッシャー=ディースカウはアンフォルタス役で、他の盤と比べて異質ですが、ものすごく巧いです。思わず聴き入ってしまうくらいに。ワーグナーのオペラにおける名バス歌手のフリックのグルネマンツも老騎士にふさわしいと思います。
クリスタ・ルートヴィヒのクンドリーも、カラヤンのライヴ録音より表現がこなれており、声の魅力はそのままで、よりドラマティックになっています。ルートヴィヒのの至芸が良い録音で残されていて心から良かったと思います。これに比べると、ルネ・コロは美声に頼っている(高貴な人だからこれでよいのかな?)ように思えますが、それでも最高のパルジファルでしょう。
ウィーン国立歌劇場の合唱は優秀ですし、ウィーン少年合唱団も思わず息をのむ美しさでした。なんだかんだいって、ウィーン・フィルの音色には抗しがたい魅力がありました。
この演奏も初めて「パルジファル」を聴こうという方にお薦めします。



イメージ 7

ヘルベルト・ケーゲル
ライプツィヒ放送交響楽団
ライプツィヒ放送合唱団
ベルリン放送合唱団
ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団

パルジファル:ルネ・コロ
グルネマンツ:ウルリッヒ・コルト
クンドリー:ギゼラ・シュレーター
アンフォルタス:テオ・アダム
ティトゥレル:フレート・テシュラー
クリングゾール:ライト・ブンガー

第1の聖杯騎士:ホルスト・ゲプハルト
第2の聖杯騎士:ヘルマン・クリスティアン・ポルスター
第1の小姓:エリザベート・ブリュエル
第2の小姓:ギゼラ・ポール
第3の小姓:ホルスト・ゲプハルト
第4の小姓:ハンス=ユルゲン・ヴァッハスムート
花の乙女:エリーザベト・ブロイル
花の乙女:レギーナ・ヴェルナー
花の乙女:ギゼラ・ポール
花の乙女:ヘルミ・アンブロース
花の乙女:ヘルガ・テルマー
花の乙女:イルゼ・ルートヴィヒ=ヤーンス
アルト独唱:インゲボルク・シュプリンガー

1975年1月11日(ライヴ)
ライプツィヒ、コングレスハレ

ブーレーズ盤と並んで快速テンポ(3時間41分)の「パルジファル」。場面によっては、もう少し速度を落としてゆっくり聴かせてくれたらと思う箇所もありますが、分離の良い各楽器がメロディを浮彫にするのが心地よいです。ケーゲルは1962年から1977年まで、ライプツィヒ放送交響楽団の音楽総監督であった人ですから、オーケストラとの息もぴったりです。
歌手はいずれも水準以上ですが、やはりパルジファルのルネ・コロ、アンフォルタスのテオ・アダムでしょうか。立派な声です。
それに、この盤は、合唱が美しいです。花の乙女たちのソロと合唱のアンサンブルの美しさは随一と思います。合唱指揮者でもあったケーゲルの面目躍如というところでしょう。ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団の参加もこの演奏に神々しさを与えているようです。
このCDの難点は、高域が強調された(いわゆるハイ上がり)音で、時に金管の高音が耳につらく響くことです。もうちょっと自然な感じがよかったな。



イメージ 8

ラファエル・クーベリック
バイエルン放送交響楽団
バイエルン放送合唱団
合唱指揮:ハインツ・メンデ
少年合唱:テルツ少年合唱団
合唱指揮:ゲアハルト・シュミット=ガーデン

パルジファル:ジェームズ・キング
グルネマンツ:クルト・モル
クンドリー:イヴォンヌ・ミントン
アンフォルタス:ベルント・ヴァイクル
クリングゾール:フランツ・マツーラ
ティトゥレル:マッティ・サルミネン

第1の聖杯騎士:ノルベルト・オルト
第2の聖杯騎士:ローラント・ブラハト
第1の小姓:レギーナ・マルハイネケ
第2の小姓:クラウディア・ヘルマン
第3の小姓:ヘルムート・ホルツアプフェル
第4の小姓:カール・ハインツ・アイヒラー
花の乙女:ルチア・ポップ
花の乙女:カルメン・レッペル
花の乙女:スザンネ・ゾンネンシャイン
花の乙女:マリアンネ・ザイベル
花の乙女:ドリス・ゾッフェル
アルト独唱:ユリア・ファルク

1980年5月(放送用録音)
ミュンヘン、ヘルクレスザール

クーベリック指揮のワーグナーの素晴らしさは、「ローエングリン」「ニュルンベルクのマイスタージンガー」で書いたとおりですが、この「パルジファル」も良いです。
この顔ぶれで「パルジファル」の放送用録音を制作してしまうなんて、バイエルン放送はなんてリッチな放送局なのでしょう。ルチア・ポップが花の乙女の1人だなんて、もったいない。ただ、花の乙女たちは声の饗宴という感じで良いのですが、ヴィブラートを抑えればもっと美しかったでしょう。
低声陣は、クルト・モルのグルネマンツ、ヴァイクルのアンフォルタス、サルミネンのティトゥレル、マツーラのクリングゾールなど、いずれも声の威力を駆使して美しく情感豊かに歌い上げています。素晴らしい。
キングも、節回しに癖がありますが、声に張りがある力強いパルジファルです。ミントンのクンドリーは、カルメンみたいですが、これも声の威力がすごいです。
クーベリックは、旋律をよく歌わせる指揮で、なんだか懐かしい気持ちになりますし、必要な場面では十分神々しいです。また、単調な重厚長大路線ではなく、場面ごとにふさわしいテンポ設定で、良い意味で安心して聴いていられます。合唱も優れています。
録音は、量感と厚みの上に明晰さと透明感があって「パルジファル」にふさわしいと思いましたが、劇場というよりスタジオっぽい雰囲気なのが、好みが分かれるところかもしれません。
このCDはお薦めです。初めて「パルジファル」を買おうという人にも自信をもって推薦します。



イメージ 9

サー・レジナルド・グッドオール
ウェールズ・ナショナル・オペラ管弦楽団
ウェールズ・ナショナル・オペラ合唱団

パルジファル:ウォーレン・エルスワース
グルネマンツ:ドナルド・マッキンタイア
クンドリー:ヴァルトラウト・マイアー
アンフォルタス:lフィリップ・ジョール
ティトゥレル:ディヴィッド・グイン
クリングゾール:ニコラス・フォルウェル

第1の聖杯騎士:Timothy German
第2の聖杯騎士:William Mackie
第1の小姓:Mary Davis
第2の小姓:Margaret Morgan
第3の小姓:John Harris
第4の小姓:Neville Ackerman
花の乙女:Elizabeth Ritchiea
花の乙女:Christine Teare
花の乙女:Kathryn Harries
花の乙女:Rita Cullis
花の乙女:Erizabeth Collier
花の乙女:Cationa bell
アルト独唱:Kathryn Harries

1984年6月
スウォンジー、ブラングウィン・ホール

このグッドオール盤は、演奏時間が4時間46分です。ブーレーズ盤やケーゲル盤が3時間40分前後なので、1時間以上も差があることになります。尋常じゃありません。
指揮者として不遇な状態が長かったグッドオールですが、演奏時間も長いです。
なかなか先に進まないのですが、こんなに遅くしなくてもと思います。このテンポであることの必然性が感じられません。次のレヴァイン盤も遅いのですが、あちらは納得がいきます。
歌手ではまずマッキンタイアのグルネマンツがよい声です。第一線を退いた聖杯騎士なのですが、ちょっと曲者っぽいところがなんともいえません。マイアーのクンドリーは次のレヴァイン盤より声が若々しくて力強く、艶と伸びがあって、これはこちらを採りたいです。



イメージ 10

ジェームズ・レヴァイン
バイロイト祝祭管弦楽団
バイロイト祝祭合唱団
合唱指揮:ノルベルト・バラチュ

パルジファル:ペーター・ホフマン
グルネマンツ:ハンス・ゾーティン
クンドリー:ヴァルトラウト・マイアー
アンフォルタス:サイモン・エステス
ティトゥレル:マッティ・サルミネン
クリングゾール:フランツ・マツーラ

第1の聖杯騎士:ミヒャエル・バプスト
第2の聖杯騎士:マティアス・ヘレ
第1の小姓:ルートヒルト・エンゲルト・エリー
第2の小姓:ザビーネ・フエス
第3の小姓:ヘルムート・ハンプフ
第4の小姓:ペーター・マウス
花の乙女:デボラ・サスーン
花の乙女:スーザン・ロバーツ
花の乙女:モニカ・シュミット
花の乙女:アリソン・ブラウナー
花の乙女:ヒルデ・ライトラント
花の乙女:マルギッテ・ノイバウアー
アルト独唱:ルートヒルト・エンゲルト・エリー

1985年7月、8月(ライヴ)
バイロイト祝祭歌劇場

レヴァインは、バイロイト音楽祭で1982~1985年.1988~1993年に「パルジファル」を指揮し、メトロポリタン歌劇場で1991、92年にDeutsche Grammophonに録音を行い、上演を映像収録しています。「パルジファル」を得意としていたのでしょう。
この録音はレヴァイン3回目のバイロイトですが、ゆったりとした足取りで、なぜか大河ドラマを連想してしまいます。
カラヤン盤と共通のホフマンのパルジファルは、第二幕のパルジファルの変化のあたりからそれまで抑えてきたものが噴出したようで、ヘルデンテノールの本領を発揮します。神々しくさえあります。
マイアーのクンドリーは声に威力があり、ドラマティックな場面で圧倒的です。
この録音は、ヴィントガッセン(1914年~1974年)を継ぐヘルデン・テノールとして、ルネ・コロ(1937年~)、イェルザレム(1940年~)と並び称されつつも、病気で早い引退を余儀なくされたペーター・ホフマン(1944年~2010年)の記録として、聴き続けていきたいです。




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