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Channel: 私が好きな曲(クラシック音楽のたのしみ)
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ラヴェル 弦楽四重奏曲 ヘ長調 の名盤

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先週はこの曲の気分でした。ショッキングなことがいろいろあったのです。この曲を一週間聴き続けましたが、いざブログに書こうとすると、どう書いたらよいのか……。「フランスを感じさせる演奏……」って、どういう演奏なのでしょう。わかるようでわからない。文章がうまく書けないもどかしさ。今回も割り切って書こうと思います!

モーリス・ラヴェル 弦楽四重奏曲 ヘ長調

第1楽章 Allegro moderato
第2楽章 Assez vif. Très rythmé
第3楽章 Très lent
第4楽章 Vif et agité

Maurice Ravel - String Quartet in F - Allegro moderato, Très doux (1/4)

Maurice Ravel - String Quartet in F - Assez vif, Très rythmé (2/4)

Maurice Ravel - String Quartet in F - Très lent (3/4)

Maurice Ravel - String Quartet in F - Vif et agité (4/4)



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
カペー弦楽四重奏団
リュシアン・カペー
モーリス・エウィット
アンリ・ブノワ
カミーユ・ドゥロベール

1928年の録音

カペー弦楽四重奏(1894-1928年)は、20世紀初頭のフランスの偉大な弦楽四重奏団でした。Wikipediaによると「1925年ごろから1930年ごろまでのおよそ5年間に(略)録音しており、」とありますが、リュシアン・カペーは1928年に亡くなっているので、残りの2年はどうやって録音したのでしょう。このラヴェルの録音はカペーの最後の年の録音ということになります。私はまだこの録音を聴いたことがないのですが、探したらYouTubeに音源がありましたので、少しだけ聴いてみました。
予想以上に良好な音質にびっくり。感想は書かないでおきますね。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
カルヴェ四重奏団
ジョゼフ・カルヴェ
ジャン・シャンペイユ
モーリス・ウッソン
マニュエル・ルカサン

1936・37年録音

カルヴェ四重奏団(1919-1946)は、200世紀前半のフランスの代表的な弦楽四重奏団です。この録音を久しぶりに聴き、第1楽章と第2楽章に、ぞくっとするものを感じました。これがフランスのクァルテットによるラヴェルかと感動した次第です。特にジョゼフ・カルヴェの流麗で美しいヴァイオリンに惹かれたのですが、第3楽章以降は録音が気になってしまいました。録音がよくなくても名演奏を聴きとることができる人もいますが、私はその域に達していないのです。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調 
ジュリアード弦楽四重奏団
ロバート・マン
イシドーア・コーエン
ラファエル・ヒリヤー
クラウス・アダム

1959年5月18,21日 RCAスタジオ B /NYシティ

かつてアメリカ最高の弦楽四重奏団でした。初代のメンバーは残っていませんが、現在でも活動を続けています。中学生の頃、ベートーヴェンはジュリアードSQが名演らしいと言われ、実際に初めてラズモフスキー第1番を聴いたのも、このクァルテットだったと思います。さて、ジュリアードSQは、ドビュッシー&ラヴェルを4回も録音しているのです。1951年、1959年(当CD)、1970年、1989・93年となりますが、この中で最も評判が良いのは1970年録音のようです。おそらく演奏スタイルは大きく変わらないであろうという推測のもと、この1959年盤のみ所有しています。
間接音がほとんどないスタジオでの録音は、技術に自信があるからなのでしょう。実際(今では技術的にもっと優れた演奏も少ないありません)見事ですし、快感でもあります。しかし、技術一辺倒というわけではけしてなく,古き良き時代の名残りを思わせ、ちょっとした間の取り方や、聴きどころはじっくり聴かせるという語り上手な面もあって、思わず聴き入ってしまいました。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調 
ボロディン四重奏団
ロスティスラフ・ドゥビンスキー
ヤロスラフ・アレクサンドロフ
ディミトリー・シェバリーン
ヴァレンティン・ベルリンスキー

1962年8月31日(ライヴ)エディンバラ・フェスティバル

ボロディンQも歴史のある弦楽四重奏団で、1912年に結成されてからメンバーの変遷を経て現在に至っています。この録音は第1ヴァイオリンが初代のドゥビンスキーであった頃の録音で、フランス音楽を得意としたこの四重奏団ですから期待がもてます。
団体名から連想したわけではありませんが、ロシアの、特にボロディンの弦楽四重奏曲を聴いているような気分になりました。これほど歌おうとしている演奏も他にないと思いますが、とにかく表現が濃密です。モノラル録音なのは、この年代のライヴ(技術的な瑕疵もあります)なので仕方がないところです。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
イタリア弦楽四重奏団
パオロ・ボルチャーニ
エリサ・ペグレッフィ
ピエロ・ファルッリ
フランコ・ロッシ

1965年8月 スイス

持っていないのですが、いつか聴いてみたい演奏です。忘れないように、ここに書いておきます。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
パレナン四重奏団(パルナン四重奏団)
ジャック・パレナン
マルセル・シャルパンティエ
デネス・マルトン
ピエール・ペナスウ

1969年7月3,4,7日 パリ,サル・ワグラム

ドビュッシーやラヴェルの弦楽四重奏曲をフランスの演奏家で聴きたいけど、カペーSQやカルヴェQは録音が古い、ステレオ録音(1950年代のモノラル録音もあるので注意。これは再録音)で聴きたいという人達から、支持されてきた演奏です。
なるほど、こういう演奏が「フランス的」なのでしょう。アンサンブルは精緻でないものの、許容範囲内と思わせてしまうところ、「のどか」で「ゆとり」を感じさせる演奏です。なお、元のレーベルはEMIだったのですが、いろいろな事情を経て、今はERATOです。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
ラサール弦楽四重奏団
ウォルター・レヴィン
ヘンリー・メイヤー
ピーター・カムニッツァー
ジャック・カースティン

1971年6月 スイス

持っていないのですが、(以下略)。
現代音楽を積極的に演奏してきたこの団体であればこそ、目から鱗のドビュッシーやラヴェルを聴かせてくれるのではないかと思いつつ、次の東京Qの演奏があるから、入手しなくてもいいかなどと考えてしまった録音です。おそらく全然違う印象の演奏なのでしょうけれど。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
東京クヮルテット
原田幸一郎
池田菊衛
磯村和英
原田禎夫

1977年8月2~4日 ニューヨーク,CBS30丁目スタジオ

解散コンサートに行ったのが、ついこの前のように思い出されますが、あれは2013年でした。東京クヮルテットは1069年設立で、当初の第2ヴァイオリンは名倉淑子でしたが、1974年に池田菊衛に交代した、その頃の録音です(東京Qには1992・94年の録音もあります)。簡潔に言えば、都会的で高性能。この曲の複雑な要素が的確に表現されていて「すごい」の一言に尽きます。人によっては、これは違うと思うかもしれませんが、私は圧倒されました。これだけの演奏を可能とした四重奏団が、かつて存在したという事実を誇りに思います。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
メロス四重奏団
ヴィルヘルム・メルヒャー
ゲルハルト・フォス
ヘルマン・フォス
ペーター・ブック

1979年2月 シュトゥットガルト,リーダーハレ

2005年に解散したドイツの弦楽四重奏団です。レパートリーはドイツ物が中心で、現代音楽は一切演奏しなかったそうですが、ドビュッシーやラヴェルはセーフのようです。その演奏は、書体に例えるとゴシック体。4人の技術が拮抗していて、音色が均質なのも好印象。ただ、ちょっと真面目過ぎるというか、羽目を外してほしいというか、一発勝負にかけてほしいというか、良い人なんだけれど面白みにかけるという感じです。演奏水準も集中力もかなりのもので、個人的には好きな演奏なのですが、ラヴェルの音楽の魅力を十分に伝えきれていないと思うのです。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
アルバン・ベルク四重奏団
ギュンター・ピヒラー
ゲルハルト・シュルツ
トーマス・カクシュカ
ヴァレンティン・エルベン

1984年 スイス,セオン,福音派教会

ラヴェルの弦楽四重奏曲のおよそ100種類ある(らしい)録音の中で、最も評価が高い演奏です。長い間、これが一番と言われ続けてきたこともあり、近年では、そうでもないんじゃないかという文章も目につきますが、総合的にはこのCDは結構良いです。ラヴェルのこの曲でどれか一枚を挙げろというのであれば、今もなお、このCDは選択肢のひとつでしょう。私が初めて買ったのがこのCDで、これが基準になってしまっているということもあるのですが。いろいろ聴き比べてみると、アルバン・ベルクQの演奏はちょっと重たく、重厚ねっとり系(ドイツ的?)で、そういうところがラヴェルらしくないと言われるのかも。よくよく聴くと平均的な演奏で、もうちょっと感興豊かな演奏だったらなお良かったかな、などと最初とは違う感想を持ってしまいました。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
クリーヴランド四重奏団
ドナルド・ワイラースタイン
ピーター・セイラフ
アターレ・アラッド
ポール・カッツ

1985年10月24-28日 ニューヨーク,第一福音ルーテル教会

1995年に解散したアメリカ屈指の四重奏団です。これは「大好きな演奏」です。冒頭の柔らかいハーモニーからしてやられます。こんなに表情豊かなクァルテットだったでしょうか。テンポも動くし、よく歌います。初めて聴く人にもわかりやすい演奏でしょう。
しかし、チェロが左側から聴こえるのですが、定位がよくわからず、頭が混乱します。優秀録音で名高いTELARCですが、楽器の配置がいまひとつ掴めません。頭でイメージしている定位と聴こえてくる音が違うのです。私の耳が悪いだけかな。せっかく演奏が素晴らしいのに、そういうことが気になって音楽に集中できません。(もしかしてこのCD、左右のチャンネルが逆じゃないでしょうか。または逆位相とか。)



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
カルミナ四重奏団
マティ-アス・エンデルレ
スザンヌ・フランク
ウェンディ・チャンプニー
シュテファン・ゲルナー
1992年2月 ドイツ、ヴァン・ゲースト・スタジオ

スイスのカルミナSQは、DENONの Crest 1000シリーズにより廉価で買える名演奏というイメージが定着していますが、どの録音もハズレがなく、高水準の演奏の素晴らしい団体です。ただ、今回いろいろ聴いて思ったのは、このクァルテットはダイナミックスは必要十分で、ここぞというときの迫力など十分なのですが、4人共線が細い感じがします。ラヴェルの演奏としては上出来で、細かい音の重ね方など、繊細な表現に長けていますが、団体としての個性が今一つ弱いような気もします。ピアノ五重奏曲のようなレパートリーだと気にならないのですが。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
エベーヌ四重奏団
ピエール・コロンベ
ガブリエル・ル・マガデュール
マチュー・ヘルツォク
ラファエル・メルラン

2008年2月4-9日 ferme de villefavard en limousin

1999年に結成されたエベーヌ四重奏団は、クァルテットとしての高い評価と、クラシック音楽にこだわらないユニークな活動で知られています。マチュー・ヘルツォクが脱退してしまいましたが、現在のヴィオラはマリー・Chilemmeとのことです。
このディスクは「グラモフォン、ミデム賞受賞作品」ということもあって、期待して聴いたのです。リズム感が冴えているのが特長で、フランスの団体による最も新しい録音で最も「フランス的」な演奏がこれなのかもしれません。若さに任せない抑制の効いた演奏にセンスの良さを感じます。



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ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
アルカント四重奏団
アンティエ・ヴァイトハース
ダニエル・ゼペック
タベア・ツィンマーマン
ジャン=ギアン・ケラス

2009年10月 ベルリン,テルデック・スタジオ

2002年に結成されたアルカント四重奏団は、常設ではなく、年に四週間ほどしか活動していないそうです。録音も少ない(廃盤も少なくない!)のですが、バルトーク:弦楽四重奏曲第5番・第6番、このドビュッシー、デュティユー、ラヴェル弦楽四重奏曲はレコード・アカデミー賞を受賞するなど、非常に高い評価を得ています。
ヴィオラが鍵を握るこの曲でタベア・ツィンマーマンはさすがと思いますし、感情がこもったアンティエ・ヴァイトハースの第1ヴァイオリンは、カペーやカルヴェらの古い録音を愛する人にも受け入れられやすいのではないかと思います。個々の技量が高いことがすべてプラスに働いています。
そんなわけで、ずばり、ラヴェルの弦楽四重奏曲の(個人的な)ベストワンです。このCDは普通の輸入盤より少しお高いのですが、それだけの価値はあります。



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