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Channel: 私が好きな曲(クラシック音楽のたのしみ)
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ドビュッシー 弦楽四重奏曲 ト短調 の名盤

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ラヴェルの弦楽四重奏曲の次に、ドビュッシーの作品を選らんだのは、多くのCDはドビュッシーとラヴェルのカップリングなので、ウォークマンのアルバムを入れ替えなくても大丈夫、とか、ラヴェルの記事をちょっと直せばドビュッシーに使えるとか、ジャケット画像も既にあるもので賄える、というような理由ではないのです。

ラヴェルの弦楽四重奏曲を聴いたドビュッシーは、熱狂的な賛辞を送り、「(出版に際して)あなたの四重奏曲を一音符たりともいじってはいけない」と進言したと伝わっています。ラヴェルの弦楽四重奏曲に影響を与えたドビュッシーの作品をきちんと聴かねばならない、そう思ったわけです。

二人の弦楽四重奏曲を比較してみます。

ドビュッシー(1862年8月22日 - 1918年3月25日)
1893年(31歳)に作曲
1893年12月29日にイザイ四重奏団によって初演

ラヴェル(1875年3月7日 - 1937年12月28日)
1902年12月から1903年4月(27ー28歳)にかけて作曲
1904年3月5日にエマン四重奏団によって初演

どちらも(比較的)若い頃の作品で、唯一の弦楽四重奏曲です。ラヴェルの作品は、ドビュッシーのおおよそ10年後に作曲されたということになります。その程度のことしかわからないので、比較した意味があまりない?

ドビュッシーの曲で不思議なのは、「作品10」という番号が付けられていることです。Wikipediaの「ドビュッシーの楽曲一覧によると、85番目の作品なのです(86番目は「牧神の午後への前奏曲」)。また、ドビュッシーが曲名に作品番号を付けたのは、後にも先にもこの弦楽四重奏曲だけなのだとか。どのような意図があったのでしょうね。

クロード・ドビュッシー 弦楽四重奏曲 ヘ長調 作品10

第1楽章 Animé et très décidé
第2楽章 Assez vif et bien rythmé
第3楽章 Andantino, doucement expressif
第4楽章 Très modéré - Très mouvementé - En animant peu à peu - Très mouvementé et avec passion

Cleveland Quartet - Debussy String Quartet in g

Debussy - String Quartet In G Minor (1/4) - Juilliard Quartet

Debussy - String Quartet In G Minor (2/4) - Juilliard Quartet

Debussy - String Quartet In G Minor (3/4) - Juilliard Quartet

Debussy - String Quartet In G Minor (4/4) - Juilliard Quartet



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
カペー弦楽四重奏団
リュシアン・カペー
モーリス・エウィット
アンリ・ブノワ
カミーユ・ドゥロベール

1928年の録音

1928年に亡くなったリュシアン・カペーの最後の録音?
YouTubeの音声で聴きました。現代の精巧な演奏ばかり聴いている耳には、アンサンブルや音程、多用されるポルタメントが気にならないでもありませんが、フランスを感じさせるとは、きっとこのような演奏のことをいうのでしょう(と、無理矢理自分を納得させる)。




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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
カルヴェ四重奏団
ジョゼフ・カルヴェ
ジャン・シャンペイユ
モーリス・ウッソン
マニュエル・ルカサン

1936・37年録音

先にご紹介したカペー弦楽四重奏団による録音と8年しか違わないのですが、録音に進歩が感じられます。演奏も、カペーSQほど時代を感じさせず、現代に通じるものがあります。どちらかといえば、私はカルヴェ四重奏団のほうが好きなのですが、どうでしょう。




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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
ジュリアード弦楽四重奏団
ロバート・マン
イシドーア・コーエン
ラファエル・ヒリヤー
クラウス・アダム

1959年5月7・8日 RCAスタジオ B /NYシティ

時代は変わってステレオ録音ですが、ラヴェル同様、間接音がほとんどないスタジオ収録です。このCDは、購入した当初はあまり好きではなかったのです。でも、雰囲気はどこかカルヴェ四重奏団に通じるものがあり、なかなか雰囲気が良いと思いました。人懐っこさを感じさせる温かみがあります。この弦楽四重奏曲は第4楽章のリズムの刻み方など、ドビュッシーの管弦楽曲の「夜想曲」みたいなところがあって、そういうことを感じさせてくれる演奏です。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
イタリア弦楽四重奏団
パオロ・ボルチャーニ
エリサ・ペグレッフィ
ピエロ・ファルッリ
フランコ・ロッシ

1965年8月 スイス

先週に引き続き、未入手です。いつか聴いてみたいです。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
パルナン四重奏団(パレナン四重奏団)
ジャック・パレナン
マルセル・シャルパンティエ
デネス・マルトン
ピエール・ペナスウ

1969年7月3,4,7日 パリ,サル・ワグラム

ドビュッシーやラヴェルの弦楽四重奏曲の名盤とされているもので、やはり雰囲気が良いです。これがあれば、カペーSQやカルヴェQは聴かなくてもよいとさえ思ってしまうくらい。ただ、この演奏にもユルさを感じます。タテの線がピシッと決まっていないとか、音程が甘くてハーモニーが合っていないとか。そういう細かいところが気になる人には向きませんが、雰囲気重視の人にはお薦めです。録音も良いです。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
ヴィア・ノヴァ四重奏団
ジャン・ムイエール
エルヴェ・ル・フロク
ジェラール・コセ
ルネ・ベネデッティ

1969年頃の録音

第1ヴァイオリンのジャン・ムイエールは、カルヴェQのジョゼフ・カルヴェの直弟子なのだそうです。ヴィア・ノヴァQは、1968年4月の結成で「ヴィア・ノヴァ」とは「新しい道」という意味なのだとか。カッコイイ名称です。パルナンQの演奏について書いたことがそのまま当てはまりますが、より重く引きずるところがあり、どの分ドラマティックで、分かりやすい演奏です。始めて買ったのがこの演奏(他の曲が目当て買ったらこの曲も収録されていた)ということもあって、好きな演奏です。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
ラサール四重奏団
ウォルター・レヴィン
ヘンリー・メイヤー
ピーター・カムニッツァー
ジャック・カースティン

1971年6月 スイス

ラヴェルのときは未購入と書きましたが、今では所有しているのです!
でも、まだ聴いていないので感想が書けません。さすがに2週間ラヴェルとドビュッシーばかり聴いていたら、他の音楽が聴きたくなってしまって、私の興味は次の曲に移ってしまっているのです。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
東京クヮルテット
原田幸一郎
池田菊衛
磯村和英
原田禎夫

1977年8月2~4日 ニューヨーク,CBS30丁目スタジオ

やっぱり感じが違いますね。楽器の音もそうなのですが、日本的な情緒の濃さみたいなものを感じます。それが私の耳にはしっくり馴染むのですが、ちょっと違うという思いもあります。合奏力はさすがで、ここまででトップです。集中力もすごいです。ただ、第4楽章の一番盛り上がるところが、やっぱり違和感があって……。でもこれはこれで新鮮味があっていいか!と納得させられる演奏です。良いCDです。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
メロス四重奏団
ヴィルヘルム・メルヒャー
ゲルハルト・フォス
ヘルマン・フォス
ペーター・ブック

1979年2月 シュトゥットガルト,リーダーハレ

東京Qのあたりから、急に演奏水準が高くなったみたい。ドイツの団体っぽく、きっちり合わせてきますね。ぶ厚いハーモニーは、ドビュッシーでないみたい。でも、技術一辺倒の演奏ではなく、ちょっと固さを感じるものの、楽しんで弾いているようのが伝わってきます。好感がもてる演奏です。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
アルバン・ベルク四重奏団
ギュンター・ピヒラー
ゲルハルト・シュルツ
トーマス・カクシュカ
ヴァレンティン・エルベン

1984年4月 スイス,セオン,福音派教会

ラヴェルの時にも書きましたが、重さを感じます。やや粘着系。もう少し軽やかさがあってもいいのではと思いますが、美しい響きです。耽美的かな。小さなオーケストラが演奏しているかのようです。録音は全体にベールを被っているようで、もう少し鮮明な音であったのなら、アルバン・ベルクQに対する印象が変わったと思います。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
クリーヴランド四重奏団
ドナルド・ワイラースタイン
ピーター・セイラフ
アターレ・アラッド
ポール・カッツ

1985年10月24-28日 ニューヨーク,第一福音ルーテル教会

ラヴェルの感想では、録音がおかしいと書きましたが、ドビュッシーはヴァイオリンが左、ヴィオラとチェロは右から聴こえてきます。左右のチャンネル・バランスも普通(自然)です。そうであれば、この演奏は好きな部類です。意外に粘る演奏で、最もロマンティック(かつドラマティック)なドビュッシーといえます。言いたいことがはっきりしているので、この演奏もわかりやすく、最初の一枚としてはお薦めです。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
カルミナ四重奏団
マティ-アス・エンデルレ
スザンヌ・フランク
ウェンディ・チャンプニー
シュテファン・ゲルナー
1992年2月 ドイツ、ヴァン・ゲースト・スタジオ

再生装置によっては、強音時に弦が金属的に響くのが気になります。あまりきれいじゃないのです。精緻な演奏が売りのカルミナQとしては意外です。最新型のスピーカーより、古めのほうが合うかもしれません。繊細かつ精緻な演奏は素晴らしいです。理想的と褒めてもよいでしょう。演奏だけであれば、まずは廉価なCDで聴いてみようという人、そうでない人にもお薦めです。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
ハーゲン四重奏団
ルーカス・ハーゲン
ライナー・シュミット
ヴェロニカ・ハーゲン
クレメンス・ハーゲン
1992年11月 ミュンヘン、マックス・ヨーゼフザール

ハーゲンQの活動は、自分のクラシック音楽体験とオーバーラップしているので、同時代の演奏家という意味での親近感があります。つまり、好きな弦楽四重奏団なのです。Deutsche Grammophonに多数の録音を残していますが、レパートリーが広いですね。不思議なのはベートーヴェンを得意としているのに、全集録音をしていないこと。モーツァルトは全集があるのに。演奏の感想が後回しになりましたが、ドビュッシーとしてはやや重く粘り、ドラマティックな傾向がありますが、四人の技量がしっかりしているので非常に聴き応えがあります。個人的には同じ傾向のアルバン・ベルクQよりも好きです。



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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
エベーヌ四重奏団
ピエール・コロンベ
ガブリエル・ル・マガデュール
マチュー・ヘルツォク
ラファエル・メルラン

2008年2月4-9日 ferme de villefavard en limousin

ドビュッシーもラヴェルも若いときの作品なのですが、弦楽四重奏団も若さが武器となります。つまり、エベーヌ四重奏団にふさわしい曲なのです。この演奏もやや粘る傾向がありますが、裏を返せばよく歌っているということ。瑞々しい感性により、音楽が新鮮に聴こえます。録音で気になるのは、足を踏ん張ったときのズシンというノイズをマイクが捉えていること。深夜にヘッドホンで聴いていると、ドキッとします。とはいえ、お薦めです。




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ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
アルカント四重奏団
アンティエ・ヴァイトハース
ダニエル・ゼペック
タベア・ツィンマーマン
ジャン=ギアン・ケラス

2009年10月 ベルリン,テルデック・スタジオ

harmonia mundi FRANCE の録音のせいもあり、最も精緻で繊細な演奏に聴こえます。各奏者の卓越したテクニックにして可能となる表現の多彩さ、雄弁さ、幅の広さと奥行きの深さ、鮮烈で、そして美しい演奏。これを聴き始めると、途中でストップボタンを押せなくなるのです。全国的に今季一番の寒さなので、ブログを書き上げて早く布団に潜り込みたいのに、困ったものです。ちょっとこれ以上の演奏は考えられない決定盤。


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