相変わらず美しいメロディを渇望しているのですが、弦楽四重奏曲「屈指の名旋律」ということで、今回はチャイコフスキーを取り上げたいと思います。第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」は、かの文豪トルストイが感動のあまり涙を流したという名旋律です。
【アンダンテ・カンタービレ】
Tchaikovsky String Quartet No.1 in D
Mvt 2 (Andante cantabile) - Borodin Quartet
「アンダンテ・カンタービレ」は、私が初めて買ってもらった2枚組LPの中に弦楽合奏版が入っていて、その時は少しも良い曲とは思わなかったのですが、今では名曲と認識しております。その他の楽章も、知情意備えたクァルテットで聴くと素晴らしい効果を発揮します。
ピョートル・チャイコフスキー
弦楽四重奏曲第1番ニ長調 作品11
第1楽章 Moderato e semplice ニ長調 9/8拍子
第2楽章 Andante cantabile 変ロ長調 2/4拍子
第3楽章 Scherzo (Allegro non tanto e con fuoco) ニ短調 3/8拍子
第4楽章 Finale (Allegro giusto) ニ長調 4/4拍子
【全曲】
Pyotr Ilich Tchaikovsky - String Quartet No.1 in D Op.11
Drolc Quartet - Drolc Quartett
Pyotr Ilyich Tchaikovsky string quartet no 1
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番ニ長調
スメタナ四重奏団
イルジー・ノヴァーク
ルボミール・コステツキー
ミラン・シュカンパ
アントニーン・コホウト
1966年9月12-16日 プラハ,デイビツェ
迷ったときはアルバン・ベルク四重奏団のディスクを買えば間違いないというくらい偉大なクァルテットで、今でも名曲名盤ではアルバン・ベルクQのディスクが1位である曲が多いですよね。でも、その前はスメタナ四重奏団でした。結成当時(1943-45年)は、かのヴァーツラフ・ノイマンが第1ヴァイオリン(その後ヴィオラ)を弾いていたという名クァルテットです。
それで、2011年7月16日以来、久しぶりにこのCDを聴いたのですが、いやぁスメタナ四重奏団って巧いですね。これほどとは思いませんでした。集中して弦楽四重奏曲ばかり聴いてきたので、よく判ります。例えば、この曲の第1楽章は、全楽器がぴたっと揃うとカッコイイ部分がいくつかあるのですが、そういうところは期待を裏切らず、素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれます。どこかのパートが弱いとすぐバレてしまう曲ですが、スメタナQは4人の技術が優れていて、どのパートも見事ですし、音色も均質感があって、耳にとても心地よいです。アンダンテ・カンタービレの歌も素晴らしいし、もうこのディスクの紹介で終わりでよいのではないかと思っているぐらいです。
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番ニ長調
ガブリエリ弦楽四重奏団
Kenneth Sillito
Brendan O'Reilly
Ian Jewel
Keith Harvey
1976年5月20・21日 ロンドン,キングスウェイ・ホール
このクァルテットはあまり名前を聞きませんが、DECCAにチャイコフスキーの弦楽四重奏曲全曲(といっても3曲だけれど)を録音したことで、これら3曲の水準の高い演奏のCDを入手したいという需要に応える存在となっています。それ以上に、ボロディン四重奏団のボロディン2番とショスタコーヴィチ第8番とのカップリングとして、このガブリエリ弦楽四重奏団のチャイコフスキー第1番が組み合わされるという使い方がされているので、そちらのほうがよく聴かれているのかもしれません。演奏はいいですよ。第1楽章など速めのテンポでぐいぐい通していきます。超快速テンポでのコーダの忙しさなど大したものです。第2楽章は打って変わって遅めのテンポでよく歌っています(アンダンテ・カンタービレが悪い演奏というのはおそらく無いと思いますが)。どうせ買うならチャイコフスキーの3曲を揃えたいという人には、このCDなどよいのではないでしょうか。
というわけで、この曲はCDを2種類しかもっていません。スメタナ四重奏団の演奏で十分満足してしまっているので、他のCDを買って聴いてみようと思わないのですが、ボロディン四重奏団の1993年の録音(TELDEC)など良いようです。
たった2種類しかご紹介しないで「名盤」というタイトルは恥ずかしい気もするのですが、チャイコフスキーの第一弦楽四重奏曲は、アンダンテ・カンタービレ以外の楽章もなかなか良い曲ですよということが言いたかったのです。
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番ニ長調
ドロルツ四重奏団
エドゥアルト・ドロルツ
ユルゲン・パールマン
ステファノ・パッサージオ
ゲオルク・ドンデラー
1967年10月5-9日 ベルリン,UFAスタジオ
自分でYouTubeの音源を紹介しておきながら、なんですが、この演奏は素晴らしいです。感動しました。スメタナQやガブリエリSQのようなメカニックな面白さはありませんが、懐かしい歌に溢れ、終楽章のような騒々しい曲にも、実はこんなに豊かな旋律が散りばめられていたのだと気づかせてくれる演奏です。思わず全曲耳を傾けてしまいました。宣伝するわけではありませんが、タワーレコード限定で発売されています。カップリングはボロディンの第2番で、これ1枚でノクターンとアンダンテ・カンタービレの名演が手に入ります。私も注文しようと思います。
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ここ数日、私にしては記事の新規投稿が多いと思われているでしょうが、ショスタコーヴィチ、ボロディン、チャイコフスキーの曲だけを一週間聴き続けるのがつらかったので、同時並行で3つの記事を書いていたのです。クルレンツィスの記事は衝動で書きました。