Quantcast
Channel: 私が好きな曲(クラシック音楽のたのしみ)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 183

フランク ヴァイオリン・ソナタの名盤 1929年~1959年

$
0
0
リクエストをいただきましたので、お応えしようと思います。ただし、この曲については既に書いています。当時としては頑張って書いたほうですし、感想を書いたCDも21枚ですので、この頃としてはかなり多いほうでしょう。しかし、限られた人向けの、ブログの友達に読んでもらうための記事でした。今となっては、恥ずかしくて読み返す気にもなれません。

2010/2/27(土) 午後 11:14
フランク「ヴァイオリン・ソナタ」【1923年~1970年】

2010/2/28(日) 午後 3:49
フランク「ヴァイオリン・ソナタ」【1971年~1990年】

2010/3/1(月) 午後 10:33
フランク「ヴァイオリン・ソナタ」【1991年~2007年】

8年も経っているので当時と今回では感想が違うと思います。それにしても、8年ですよ! 信じられまぜん。

今回、改めてフランクのヴァイオリン・ソナタについて書くことにしたのは、以前は入手が難しかったCDが容易に聴けるようになり、飛躍的に枚数が増えたことが大きいです。人気曲であり、録音が非常に多いため、録音日時がわからないものはカットしました。その録音年月日ですが、今回はあまり正確ではありません。参考ということでご容赦ください。

また、外国人演奏者名をカタカナで記すことができないCDも原則としてカットしており、カタカナ表記は、名・姓の順としています。例えば、チョン・キョンファはキョンファ・チョンです。日本人演奏者の場合は、姓・名の順です。漢字で表記するのに、わざわざ逆にすることもないですから。

あと、ヴァイオリン以外の楽器で演奏しているものも原則としてカットしています。

セザール・フランク
ヴァイオリン・ソナタ イ長調 FWV 8(1886年)
第1楽章:Allegretto ben moderato 8分の9拍子 イ長調
第2楽章:Allegro 4分の4拍子 ニ短調
第3楽章:Recitativo-Fantasia (ben moderato) 2分の2拍子
第4楽章:Allegretto poco mosso 2分の2拍子 イ長調

ヴァイオリン・ソナタの名曲中の名曲、傑作中の傑作。フランクはこの一曲でベートーヴェンに並んでしまいました。


イメージ 1

ジャック・ティボー(vn)
アルフレッド・コルトー(p)
1929年

Wikipediaでフランクのヴァイオリン・ソナタを調べると「古今東西、名だたるあらゆる演奏家たちがレコーディングを遺しており、数多くの名演に恵まれている。古い時代の名盤として知られているものの1つに、ジャック・ティボー(ヴァイオリン)とアルフレッド・コルトー(ピアノ)によるものがある。」と書かれています。
ティボー(1880年-1953年)とコルトー(1877年-1962年)による録音は少なくとも2種類あり、演奏自体は1923年盤が優れているという意見と、録音も含めて1929年盤が総合的に良いという意見があり、結論としては1929年盤のほうを選択すべきでしょう。
それにしても古い録音が多い今回の中でも、壮絶な針音がする当盤のノイズの多さに驚きますが、演奏に集中しているときは気にならなくなるから不思議です。音量を上げれば意外に生々しいヴァイオリンとピアノの音です。
どちらかというと、コルトーのほうが自由に振る舞っており、ファンスティックなピアノです。ティボーは折り目正しい演奏で、よく言われることですが、品格が感じられます。そしてスタイルの古さをあまり感じさせません。それが現代でも聴かれている理由なのでしょう。特に第3楽章が絶品と言えます。

【1923年】
Thibaud/Cortot - Franck: Violin Sonata in A, 1923 (entire)

【1929年】
César Franck - Sonate pour violon et piano - Jacques Thibaud Alfred Cortot
(冒頭にCMが入りますので、5秒後にスキップしてください。)


イメージ 2

ユーディ・メニューイン(vn)
ヘフシバ・メニューイン(p)
1936年1月6・7日パリ

今回一番興味をもって聴いたのがメニューイン(1916年-1999年)です。メニューインは名ヴァイオリニストということになっていますが、協奏曲や室内楽のCDを購入しようとするとき、メニューインを選ぶことは非常に少ないでしょう。第二次世界大戦以降のメニューインは、好不調(不調が圧倒的に多い?)の差が大きく、メニューインは「神童」であった頃、または戦前の録音を聴くべきと言われています。10代とすると1935年ぐらいまで、戦前では1939年まででしょうか。そういうことを知っていて聴くのと、知らないで聴くのとでは、当然感想が変わるのですが、メニューイン神童時の演奏は、とにかく凄かったようです。このフランクは、戦前のメニューインによる演奏で、ピアノは妹のエフシバが弾いています。
この古い録音からでは、メニューインの音色を脳内で補完して再現するしかないのですが、美しい音色を有していると思います。第1楽章はゆったりしたテンポによるシリアスな表現、第2楽章は苦み走った表情と伸びやかな歌の対比が見事、第3楽章の瞑想的な表現が心を打ち、感動的です。終楽章も明るさの中に憂いを湛えた表現は素晴らしいと思いました。ヘフシバのピアノも幻想的な雰囲気を醸し出し、なかなかのものです。この演奏の成功の半分はヘフシバによるものでしょう。
フランクの後にはルクーのソナタが収録されていますが、そちらはさらに素晴らしい演奏です。


イメージ 3

ヤッシャ・ハイフェッツ(vn)
アルトゥール・ルービンシュタイン(p)
1937年4月3日
ロンドン,アビー・ロード第3スタジオ

ヴァイオリンの王と称されたハイフェッツ(1901年-1987年)ですが、私は苦手です。なぜかというと、ハイフェッツが残したベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキーの協奏曲はいずれも名盤とされていますが、私にはその良さがよくわからないからです。シベリウスの協奏曲は素晴らしいと感じるし、ツィゴイネルワイゼンみたいな曲はハイフェッツの独壇場と思いますが、それ以外は、巧いことは巧いのですが、スッキリし過ぎていて、箸が進まないというか、後を引かないのです。このフランクも同じでした。録音がもう少し良ければ印象が変わるかもしれません。ルービンシュタインのピアノは最高なのですが……。



イメージ 4

ジノ・フランチェスカッティ(vn)
ロベール・カザドシュ(p)
1946年4月10・26日

Wikipediaによると、フランチェスカッティ (1902年-1991年)も「5歳でリサイタルを開く」ほどの神童で、「超絶技巧の演奏家」であり、「輝かしさと歌うような音色」が特長のヴァイオリニストだそうです。クラシック音楽のCDを購入し始めた頃、フランチェスカッティが弾くメンデルスゾーンやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴いてみたいとずっと思っていましたが、なぜか値段が高めでずっと見送ってきました。きっと振幅の大きな音楽を流麗なフレージングで抜群のテクニックと美音をもって聴かせる演奏なのでしょう。これはまさしくそのような感じの演奏です。ただ、聴いているうちに飽きてくるのも事実で、なんだか底が浅いようにも感じらるのです。なお、カザドシュのピアノは文句なく素晴らしいです。


イメージ 5

ゲルハルト・タシュナー(vn)
ヴァルター・ギーゼキング(p)
1947年4月10日ベルリン

タシュナー(1922年-1976年)は、一時期、ベルリン・フィルのコンサートマスター(1941年-1945年)であった人。ギーゼキング(1895年-1956年)は、モーツァルト、ドビュッシー、ラヴェルの録音が今でも聴き継がれている人。どちらかと言えば、ギーゼキングがどのようにフランクを弾いているかということに興味がありますが、まずタシュナーの演奏について書きます。一回目に聴いたときは、ポルタメントが気になって仕方がありませんでした。この時代、ポルタメントの多用は当たり前なのですが、タシュナーの場合、それがすごく意識的に行われているように感じられ、聴いていてつらかったです。すごく目立つのですよ。何度か聴くうちに慣れまして、ギーゼキングのピアノ共々、はっとするような美しい瞬間もあり、これはこれで良い演奏かなと思うようになりましたが、今回聴いた中では最も古風な印象を受けました。



イメージ 6

ダヴィッド・オイストラフ(vn)
ヴラディーミル・ヤンポリスキー(p)
1954年6月8日 ストックホルム

【お薦め】
オイストラフ(1908年-1974年)のフランクは、今回ご紹介の2種のほか、ピアノがリヒテル(1915年-1997年)の名盤(次回登場)もあります。その演奏には、ヴァイオリンの王者のような存在感があり、この盤も素晴らしい演奏です。モノラルとはいえ、オイストラフの豊かな音と演奏を鑑賞するのに不足はありません。今回聴き比べた中では、疑いなくベストと言え、何度聴いても飽きることがあきない名演です。技術が完璧で、低音から高音まで均質の太く美しい音色、感情表現も熱情に走ることがなく、常にバランスが保たれています。とにかく理想的な演奏で、リヒテル盤だけでなく、このヤンポルスキー盤ももっと聴かれてしかるべきと思います。
ヤンポリスキー(1905年-1965年)はオイストラフ専属のピアニスト。フランクのソナタは、ヴァイオリンとピアノが対等に書かれているのですが、ヤンポリスキーは伴奏に徹し、オイストラフをよく引き立てています。ピアノとヴァイオリンがそのような録音バランスになっているせいで、そう感じるのかもしれません。


イメージ 7

クリスティアン・フェラス(vn)
ピエール・バルビゼ(p)
1957年5月15-19日
パリ,サル・ワグラム

フェラス(1933年-1982年)というと、私は、カラヤン指揮ベルリン・フィルと録音したブラームス、シベリウス、チャイコフスキー、ベートーヴェン、バッハの協奏曲が思い浮かぶ(美音の持ち主だが少々物足りないイメージがある)のですが、それ以前から活躍していた人でした。フランクのソナタは、3種の録音があり、これは2番目(3番目は次回)となります。ピアノはフェラスと長く協演していたピエール・バルビゼ(1922年-1990年1月18日)です。共にフランスの演奏家です。
悪くない演奏なのですが、今回取り上げた録音がいずれも個性の強いものばかりだったので、それらに比べると少々弱い印象があります。美音に頼りすぎている(汚い音を出さない)ようで、音楽に抑揚がない、もしくは、表現の幅が少ないのです。女優さんで、美人だけれど演技が大根という、そんな感じ。と思いきや、突然情熱的なヴァイオリンになったりと、よくわからない人です。もう少し吹っ切れれば、なお良かったと思うのですが。バルビゼのピアノは文句なしで素晴らしいです。



イメージ 8

ダヴィッド・オイストラフ(vn)
ヴラディーミル・ヤンポリスキー(p)
1958年9月20日
ブカレスト・エネスコ音楽祭

【お薦め】
ライヴ録音です。録音の状態は先の1954年盤が優れており、オイストラフ&ヤンポリスキー盤の至芸を楽しむのであれば、そちらが良いと思いますが、この録音も悪くはありません。演奏も、ライヴならではの感興の豊かさがあり、ヴァイオリンとピアノのバランスも、当盤が正解と思います。それにしても、なんと立派なヴァイオリンなのでしょう。演奏だけを純粋に比較するなら、この1958年ライヴのほうが良いかもしれません。手に汗握る緊張感が漂っていますし、オイストラフも時には羽目を外して力強い表現を試みます。


イメージ 9

アイザック・スターン(vn)
アレクサンダー・ザーキン(p)
1959年

【お薦め】
Googleで「franck violin sonata」を検索すると、YouTubeのこの演奏がトップに表示されます。視聴回数34万回でトップだからでしょうか。
ハイフェッツより、そしてオイストラフよりも好きでした。私にとってスターン(1920年-2001年)は、協奏曲の録音で、まず最初に選ぶべき存在だったのです。今でもスターン全盛期(複数録音がある場合、最初のステレオ録音のほう)の演奏は素晴らしいと思っています。
このフランクは、第1楽章ですぐにスターンの立派な音と表現に心を奪われますが、次第にピアノのザーキンが気になってきます。第2楽章はスターンと張り合って、思いの丈をぶつけ合っているようです。以降の楽章も同様。第4楽章のあの主題を演奏するスターンの音色の美しいこと!
ピアノのザーキン(1903年-1990年)は、1940年にアメリカに移住してアイザック・スターンと出会い、1977年までスターンの伴奏者として活躍した人だとか。これぐらい個性の強いピアニストのほうが聴き甲斐があるというものです。
なお、今回初めてのステレオ録音でした。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 183

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>