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Channel: 私が好きな曲(クラシック音楽のたのしみ)
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イベール「寄港地」の名盤

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フランスの作曲家,ジャック・イベール(1890―1962)が32歳のときに書いた作品で代表作。イベールでよく聴かれているのは,他に「ディヴェルティメント」「フルート協奏曲」でしょうか。日本の皇紀2600年奉祝曲として書かれた「祝典序曲」(山田耕筰の指揮で1940年12月に東京歌舞伎座で初演)もありましたね。

寄港地」のような作品は,解説があったほうがとっつきやすいので,ウィキペディアからコピペしてみます。

ジャック・イベール
交響組曲「寄港地」(Escales, 3 Tableaux Symphoniques)
第1曲「ローマ ― パレルモ」
6/8拍子。緩やかに。ローマを出航し、地中海をシチリア北岸の港パレルモへと向かう航海の描写。弱音器をつけた弦楽合奏で開始され、フルートが海の情景を描きだす。音楽が徐々に高まるとトランペットがタランテラを導入し、南国の喧騒の情景が描かれる。南国の喧騒が静まると、冒頭の海の情景が回帰し、曲を閉じる。

第2曲「チュニス ― ネフタ」
7/4拍子(4/4拍子と3/4拍子が交代)。リズミカルな中庸の速度。ティンパニとコル・レーニョやピッツィカートを交えた弦楽の伴奏に乗せて、終始オーボエがアラビア風のエキゾチックな旋律を自由に展開しつつ奏でる。チュニジアの港町チュニスから、南の奥地の町ネフタへ向かう旅の情景。

第3曲「バレンシア」
3/8拍子。活気をもって。打楽器を交えた、色彩豊かなスペイン舞曲セギディーリャスのリズムに乗せて、多彩な主題が登場する。中間部での弛緩を経て、曲は再び活気を増し、交錯する主題のなかで激しさと興奮を加えて全曲が閉じられる。スペイン東部の港町バレンシアの情景である。


こういうのを読むと,どんな音楽だろう,聴いてみたい!という気持ちになりますよね? じゃあ,聴いてみましょう。

Escales ("Ports of Call")/Ibert/Leibowitz/Pt.1
(第1曲「ローマ ― パレルモ」)

Escales ("Ports of Call")/Ibert/Leibowitz/Pt.2
(第2曲「チュニス ― ネフタ」と第3曲「バレンシア」)

はい,いかがでしたか。解説どおりでしたでしょうか。私は初めて聴いたとき,ドビュッシーやラヴェル,ファリャが混じってる!と思いました。

それでは,CDを購入したいと思った貴方様のためにお薦めのご紹介です。



イメージ 1
シャルル・ミュンシュ指揮
ボストン交響楽団
RCA 1956年10月

曲想がミュンシュに合っていると思うのです。第1曲は冒頭から熱い風が吹いてくるみたい。オーケストラの響きも厚いです。もう少し繊細さが欲しいような気もしますが,悪くないですね。タランテラはミュンシュらしく豪放で爽快です。第2曲は申し分ない出来,第3曲はややリズムが重たく,小気味良さを求めたくなります。全体に古い映画音楽を聴いているみたいな雰囲気がありました。それはどの演奏にも言えることなのですけれど,この演奏は録音が古いだけに,一層その感があります。
ところで,この演奏を購入する場合,SACD化されているサン=サーンスとのカップリングより,ドビュッシーとのカップリングのCDのほうが音が良いような気がするのですけれど。いずれにせよ,少しもっさりした音ですがステレオ録音なのはありがたいですね。


イメージ 2
ポール・パレー指揮
デトロイト交響楽団
Mercury 1962年3月

この曲の初演は1924年1月6日,ポール・パレー指揮コンセール・ラムルー管弦楽団なのです。初演指揮者による演奏ということで有り難味がありますが,実際大変見事なものです。冒頭の数小節を聴いただけで名盤の予感がする,そんな演奏です。この曲のスペインっぽい部分,これをパレー指揮ほど「らしく」演奏した例はないと思います。どこを取ってもこれ以上の演奏はないと思わせる理想的な名演なので,これ1枚の紹介でよいのではないかと考えます。第3曲など「鮮やか」のひと言に尽きます。

録音は定評あるマーキュリーだけに,大変リアルです。やや硬質な音づくりですので,古いスピーカーで聴くと楽しめます。

ところで,マーキュリー・リヴィング・プレゼンス・コレクターズ・エディション2(55枚組)は,玉石混交のBOXですが,ポール・パレー指揮の演奏を8枚も含んでいるのは魅力的です。それだけのためにこのBOXを購入しても高くないお値段です。おまけに47枚付いてくると思えばよいのかも(?)


イメージ 3
ジャン・マルティノン指揮
フランス国立放送管弦楽団
EMI CLASSICS 1974年10,11月

マルティノンは,EMIに「祝典序曲」「寄港地」「架空の愛へのトロピズム」,DECCAに「ディヴェルティメント」を録音していまして,いずれもイベール好きには大切な録音でしょう。EMIの,よくいえば全体の雰囲気重視の録音のせいもあり,この曲がフランスの作曲家の手による作品であることを最も感じさせる演奏です。ゆえにこの曲のテンポが遅い部分は,ねっとりとした歌い方が魅力的なのですが,早い部分は少々歯切れが悪く,鈍重な印象があります。パレーの演奏は青空が広がっていたけれど,この演奏は太陽が低く,もやがかかっているように感じます。だからといって切り捨てるのが惜しいのは,この演奏には独特な品格のようなものがあるからでしょうか。この曲,安っぽく演奏されそうな作品なので。


イメージ 4
シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団
DECCA 1992年5,10月

演奏によってかなり印象が異なる曲なのですが,デュトワはとても小さな音で始めるのですね。全体にすごく上質な感じがします。どれを聴いてもデュトワとモントリオール響の演奏は非常に水準が高く,録音も優秀なので,迷ったらデュトワを買ってくださいと言いたくなってしまう……。反面,どれを聴いても同じような演奏(サウンド)であるような気がしないでもありません。そうはいうものの,新しめの録音でイベールの作品をまとめて聴きたいという人には格好のCDです。パレー盤の次にこのCDをお薦めします,でも,輸入盤は廃盤,国内盤は在庫限りのようですので,見つけたらすぐ購入してくださいね。デュトワ/モントリオール響のCDって,結構廃盤が多いのです。


イメージ 5
佐渡裕指揮
ラムルー管弦楽団
NAXOS 1996年4月

初演オーケストラによる演奏です(よね?)。
これは、僕が17年間、首席指揮者を務めた、ラムルー管弦楽団との最初の録音で、僕が自分で音源を家に持ち帰り、自ら編集した、特別に思い入れが強い録音です。そして、毎回こうした斬新なレパートリーで、パリの聴衆を熱狂させたことを、とても懐かしく思い出します。フランスで130年を超える歴史あるオーケストラと、京都出身のまだ若かった佐渡裕の共演をどうぞお聴き下さい!」と指揮者が書いていました。こういうのを読むと聴かなくちゃという気持ちになるでしょう?

このCDは発売直後に購入した覚えがあります。その頃から私は佐渡裕に目をつけていたわけですね(!)。でも,結構長い間,わが家ではお蔵入りしていたCDでありまして,今回久しぶりに聴いてみたのですが,感心しました。NAXOSの録音のせいもあるのでしょうが,実に気持ちのよい演奏です。細かく聴くと,この部分は表現が洗練されていないとか,いろいろないこともないのですが,セッションとはいえ,指揮者の熱意,表現意欲が伝わってくる感動的な演奏です。




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