2013年6月27日 (木) 19:00 開演 (18:30 開場)
サントリーホール
シャルル・デュトワ(指揮)
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ユジャ・ワン(ピアノ)
メンデルスゾーン: 序曲「フィンガルの洞窟」作品26
ショパン: ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
第1楽章 Allegro maestoso ホ短調 4/3拍子
第2楽章 Romanze, Larghetto ホ長調 4/4拍子
第3楽章 Rondo, Vivace ホ長調 4/2拍子
(ピアノ:ユジャ・ワン)
(20分間の休憩)
ドビュッシー:海 - 管弦楽のための3つの交響的素描
1.海の夜明けから真昼まで
2.波の戯れ
3.風と海の対話
ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲
1.夜明け
2.無言劇
3.全員の踊り
(アンコール)
ベルリオーズ:ハンガリー行進曲(ラコッツィ行進曲)
名曲コンサート! イギリスのオーケストラといえば,すぐ思いつくのはロンドン交響楽団,フィルハーモニア管弦楽団,ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団で,ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団はちょっとマイナーな印象がありますね。
なにかCDを持っていたかなぁとしばし考え,はっと思い出しました。初めてステレオを買ってもらったとき,おまけにもらったレコードが,ビーチャム指揮ロイヤル・フィルの「ペール・ギュント」(廉価盤)だったのを。あれは大好きな演奏でした。
デュトワは現代を代表する名指揮者の一人ですが,モントリオール交響楽団の音楽監督だった時代(1977-2002)が一番印象に残っています。現在は,ヴェルビエ祝祭管弦楽団の音楽監督とロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者・芸術監督が活動の中心なのでしょうか。そんなデュトワももう77歳になるんですね。時が経つのは早いです。
今日はユジャ・ワンとデュトワのサイン会がないのですが,CDをお買い上げの先着100名様はユジャ・ワンの直筆サイン入りカードがもらえるのです。ユジャ・ワンには4回サインをもらっていますし,彼女のCDは(DVDやBDも含め)全て持っていますので,今回はパスすることにしました。目の前でサインしてもらわなければ意味がないですもん。
(とかなんとか言いながら。「お約束」ってやつです。)
メンデルスゾーン: 序曲「フィンガルの洞窟」作品26
ヴァイオリンの音が飛んで来ないのはLA席のせいでしょう。このブロックは演奏している姿がよく見えるので,その視覚的効果がとても魅力的なのですが,音響のバランスが悪いのです。片チャンネルの音が出ないステレオのようなもの(今回はチケット代をケチりましたから。)。そういうこともありまして,オーケストラの音が地味に聴こえます。名曲ですが,眠たくなってしまいました(隣の人は熟睡)。メンデルスゾーンの序曲って,繰り返しが多くて飽きる……。
ショパン: ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
協奏曲を聴くときは,LA,RA,Pブロックのチケットを取ってはいけない。ピアノと自分の間にオーケストラが存在すると,ピアノの音がマスキングされて聴こえづらくなってしまうのです。耳をそばだたせて聴けば,変な反射音がない分きれいに聴こえるのでソロならよいのかも。そんなわけで,ホルンがうるさい。この曲に4本もホルンが必要なのか作曲者に抗議したくなりましたが,相変らずユジャ・ワンは巧かったです。しかし,絢爛たる技巧より節度あるルバートのほうが印象に残りました。ユジャ・ワンは意識してテンポを揺らさない演奏を心がけているのでテクニック至上の演奏家にように思われがちですが,けっこう歌心のある人なんです。本人も「音それ自体をとり出して、それが興味深いものかといえば,私にとってはそうじゃない。ピアノを歌わせようと努め,オーケストラのように響かせるようにすることが,ピアノの音を興味深いものに導くのだと思う」とKAJIMOTOさんのインタビューで語っていましたし。
第2楽章で,オーケストラの音が止んで,ピアノだけになる箇所があるでしょう。あそこはこの世のものとは思えないくらい,本当に美しかった。ユジャ・ワンで「夜想曲」を聴いてみたいものです。
ところで,開演前に一人でソロをさらっていた女性ファゴット奏者,大きな拍手をもらっていました。こういう人がいるオーケストラって,いいなって思いました。
盛大な拍手によりユジャ・ワンは何度もステージに呼び出されていましたが,アンコールはありませんでした。
20分間の休憩
ロビーで女の子達が「今日は赤だったね~」と盛り上がっていました。
ドビュッシー:海
ドビュッシーとかラヴェルが大好きなのですが,「海」を実演で聴くのは初めてです。それで,ドビュッシーの管弦楽法って,やっぱり面白いと思いました。ショパンの協奏曲とは比べ物にならないくらい大きな編成の曲なのですが,音の厚みや大きさより音色の組み合わせで聴かせる曲です。それを目で確認することができたのが楽しかったのです。ロイヤル・フィルが奏でる音は,なんだろう,ちょっとくすんだ(悪く言うとがさがさした)音色で,それはそれで「海」という曲には合っていたのだけれど,これがモントリオール交響楽団だったらもっと美しかっただろうなとも思ってしまいました。ヴォーン・ウィリアムズとか似合いそうな音色。でも,変な譬えですが,食べ飽きない味だったかもしれません。
Debussy [La Mer] - Mov.3 Myung-Whun Chung, Seoul Philharmonic
ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲
編成はさらに大きくなり,サントリーホールのステージが小さく見えます。打楽器だけで9人いたでしょうか。ドビュッシーに比べるとラヴェルはサービス精神があるというか,大編成ならではのサウンドを堪能させてくれます。打楽器に近い席なので,耳を覆いたくなるようなすごい音。「全員の踊り」って生で聴くと圧巻ですね。ロイヤル・フィルも「ダフニスとクロエ」に焦点を合わせていたようで,最もノリが良い開放的な演奏を披露していたのではないでしょうか。これが本領なのかもしれません。華やかさとか艶やかさ,精巧あるいは重厚なアンサンブルは譲るにしても,気持ちの良い演奏でした。最も心惹かれたのは「パントマイム」のフルート独奏(女性)で,このソロのおかげでぐっとロイヤル・フィルの株が上がったように思います。
Ravel Daphnis et Chloe - Danse generale
デュトワの指揮について全然書いてないのですが,ユジャ・ワンのピアノに耳を傾けているときに変なうなり声を上げんな!とか,そんなことはちっとも思わないのですが,音楽づくり,音のまとめ方がうまい人だと改めて思いました。聴いていて少しも違和を感じることなく音楽に没入することができます。曲の最後に振り下ろした手が大きな弧を描いて下手へ流れ,そのままコンサートマスターと握手するという芸当に大笑い。