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Channel: 私が好きな曲(クラシック音楽のたのしみ)
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ムソルグスキー「展覧会の絵」の名盤 1958ー1963

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早くも第2回となります。
先を急ぐのは、飽きっぽい私の集中力が途切れないうちに、聴き比べを完了したいからです。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
アンドレ・クリュイタンス
ケルン放送交響楽団
1958年2月24日(ライヴ)

クリュイタンス(1905年-1967年)に対する思いは、後で登場する正規録音に任せるとして、名指揮者ですから需要が多いのでしょう、6種類ぐらいが存在するようです。その最初の録音を聴いてみます。盛大な拍手から始まります。音質は意外に悪くありませんが、高い音で歪みが出ます。「展覧会の絵」は「組曲」であったということを再認識させられる演奏です。クリュイタンスは曲間で休憩を入れるのですが、その間にお客さんは一生懸命咳をします。それが、すごく興醒めするのです。アタッカでない部分でも、わずかの瞬間でもお客さんは咳をしようとします。演奏は良いのですが、客席ノイズ(子供の叫び声?も聴こえる)が多いのが残念でした。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
エルネスト・アンセルメ
スイス・ロマンド交響楽団
1958年4月
ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール

かつて英DECCAの看板指揮者であったアンセルメ(1883年-1969年)には、4種類の「展覧会の絵」があるようです。
1947年1月29日 ロンドン交響楽団 
1953年12月 スイスロマンド管弦楽団
1958年1月24日 スイスロマンド管弦楽団
1959年1月26日 スイスロマンド管弦楽団
このうち、ロンドン交響楽団との演奏は、あまり評判がよくないようなので、割愛しました。1953年盤も、後の1958年と1959年のステレオ盤があるからいいかな、と。
私がCDで持っているのは1958年盤で、LPは1959年盤です。この記事を書くまで、同じ録音だと思っていましたが、音質が違うので調べてみたら違うことが分りました。
アンセルメは、どうしてこんなに早く再録音したのでしょう。
まず、録音ですが、たった1年の違いですが、1959年盤のほうが優秀で、こちらの1958年盤はそれに劣るように聴こえます。ただ、例えば「グノム」の大太鼓はこちらのほうがずしんと響き、好ましいと思えます。以下、1959年盤は爽やかすぎるので、総じてこちらのほうが良いと思える曲が多いです。「バーバ・ヤガー」「キエフの大門」も大太鼓の量感がすごくて、ヴォリュームを上げて聴いたら近所迷惑になりそうです。完成度はきっちり整理整頓された1959年盤のほうが断然上ですが、響きの厚みや打楽器の迫力などの点で、こちらの1958年盤のほうが私の好みと言えます。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
アンドレ・クリュイタンス
パリ音楽院管弦楽団
1958年4月17-21日

【お薦め】
私が初めて買ったラヴェルのレコードは、クリュイタンス(1905年-1967年)指揮のパリ音楽院管弦楽団による演奏で、中でも「クープランの墓」がお気に入りでした。その指揮者とオーケストラによる「展覧会の絵」ですから、期待しないほうがおかしいというものです。なお、録音は非常にモノラルで、分離が悪く、明快とは言えない残念な録音です。
演奏は素晴らしいです。重厚かつ軽快、繊細なもので、「プロムナード」の輝かしい金管、「グノム」のおどろおどろしさ、「古城」のよく歌う旋律、「テュイルリー」の優美さ、「ビドロ」のロシア風の重厚さ、「卵の殻を~」の軽妙さ、「サミュエル~」「リモージュの市場」は普通、かな、「カタコンベ」と「死せる~」の重厚さと繊細さ、「バーバ・ヤガー」「キエフの大門」の壮麗さなど、演奏者の熱気を感じさせるもので、「展覧会の絵」のお手本のような演奏です。
繰り返しになりますが、低音が膨れて中音域をマスキングしているような録音が残念です。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
レナード・バーンスタイン
ニューヨーク・フィルハーモニック
1958年10月

【お薦め】
バーンスタイン(1918年-1990年)は、1958年から1969年までニューヨーク・フィルハーモニックの常任指揮者だったので、この録音はその最初の年に行われたことになります。まだ30歳の若いバーンスタインの才気溢れる指揮と、それに応えてやろうというニューヨーク・フィルによる充実した演奏です。作曲家でもあるバーンスタインですから、事前にスコアを入念に確認したのでしょうけれど、一気呵成に演奏されているような印象もあります。まさにこの頃のこのコンビにふわさしい曲で、次の曲はどんな演奏をしてくれるのだろうと楽しみながら聴くことができました。細部の仕上げが粗いと思われる箇所があっても、そんなことは大した問題ではないのです。
なお、念のために書いておきますが、録音はステレオです。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
アンタル・ドラティ
ミネアポリス交響楽団
1959年4月21日

コンセルトヘボウ管との録音は1956年でしたが、レーベル(前回はPHILIPS)が異なるとはいえ、ずいぶん早いドラティ(1906年-1988年)再録音です。オケは、1949年から1960年まで首席指揮者であったミネアポリス響(現在はミネソタ管弦楽団)です。
なんだか不思議な演奏です。ドラティの基本的な解釈は、前回と変わっていないと思うのですが、受ける印象はだいぶ異なります。この演奏はもっと軽やかで機能的で、ムソルグスキーの音楽とはだいぶ違う方向に来てしまったようです。ラヴェルに近いような。そのようなことを考えなければ、これはこれで名演と思うのですが、最後まで違和感が拭えませんでした。それでも「バーバ・ヤガー」や「キエフの大門」はさすがと思える演奏でしたよ。
高音質で知られた Mercury の録音ですが、オーケストラの音がやや古めかしく聴こえますね。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
ヘルベルト・ケーゲル
ライプツィヒ放送交響楽団
1959年5月28日

今でも根強いファンのいる、ケーゲル(1920年-1990年)が音楽総監督を務めていた(1962年-1977年)、ライプツィヒ放送交響楽団との録音です。ケーゲルには同じオケを指揮した1968年の録音や、N響との1980年の録音、ドレスデン・フィルとの1981年の録音もありますが、今回入手できた音源はこれだけです。これをもってケーゲルを判断するのはどうかと思いましたが、取上げることにしました。
速めのテンポ、ドイツ風のきびきびした「プロムナード」「グノム」は今ひとつだったのですが、ほの暗い情感を漂わせた「古城」は弱音を大事にした、しんみりとした表現が素晴らしいと思いました。続く「テュイルリー~」も情感たっぷりでいい感じです。一歩一歩踏みしめていくような「ビドロ」も良く、意外なほど愛らしい「卵の殻~」、表情付けの巧みな「サミュエル~」、色彩感が愉しい「リモージュの市場」、重厚な「カタコンベ」、しっとりとして柔和な「死せる言葉~」です。「バーバー・ヤガー」「キエフの大門」は軽量級で、やや期待外れといったところでしょうか。
左右めいっぱい広げた感じのステレオですが、優秀な録音だと思います。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
エルネスト・アンセルメ 
スイス・ロマンド管弦楽団
1959年11月

私が初めて買った「展覧会の絵」(ラヴェル管弦楽編曲版)です。初めて聴いたときは、当時の私が理想とするオーケストラの響きとスイス・ロマンド管の音色が異なっているなど、かなり物足りなさを感じ、友人が買ったカラヤン指揮ベルリン・フィルのレコードが羨ましかったのを憶えています。そうしたこともあって「展覧会の絵」という楽曲にはマイナス・イメージがつきまといます。
この演奏は、爽やかなプロムナードで始まります。以降も爽やかで透明感のある演奏が続きます。水彩画の「展覧会の絵」といった趣で、「卵の殻をつけた雛の踊り」「リモージュの市場」のような曲は良いのですが、全体的に物足りなさを感じました。
録音はとても優秀です。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
ルネ・レイボヴィッツ
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
1962年1月17日

「リーダーズ・ダイジェスト・レコーディングスによって頒布されたベートーヴェンの交響曲全集が著名」と必ず書かれてしまうレイボヴィッツ(1913年-1972年)の指揮です。
なんだか一風変わった、形容しがたい「プロムナード」で始まり、地鳴りがすごく、怪奇的な「グノム」に驚き、ものすごくよく歌う「古城」「テュイルリーの庭」、地響きを立てて通り過ぎる「ビドロ」、木管楽器を前面に押し出した「卵の殻~」、大仰な「サミュエル~」、管弦楽の醍醐味のような「リモージュの市場」、金管の強奏が凄まじい「カタコンベ」、しみじみと聴かせる「死せる言葉~」、ここまで聴いて演奏の予想がついてしまう「バーバ・ヤガー」、前曲に引き続き大太鼓の量感がすごく、打楽器大活躍で強弱が極端な「キエフの大門」と、非常にユニークな演奏で、最後まで楽しめました。
録音はステレオですが、高域にシュルシュルというノイズが常に乗っており、遠局のFM放送を聴いてみたいで、オリジナル・マスターがかなり劣化しているようです。なんだかカセット・テープみたいな音質。せっかくの「怪演」なのに惜しいですね。
さて、レイボヴィッツ指揮で、本当にすごいのはリムスキー=コルサコフ編曲の「禿山の一夜」です。モノラル録音なのが残念ですが、とにかくやりたい放題で、これは「レイボヴィッツ編」と記すべきでしょう。最後の最後まで予想がつかない「とんでもない演奏」です。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
アンドレ・クリュイタンス
RAIミラノ交響楽団
1962年2月3日(ライヴ)

名指揮者クリュイタンス(1905年-1967年)が残した「展覧会の絵」の、おそらく最後のもので、ありがたいことに良質なステレオ録音です。パリ音楽院管弦楽団との録音はモノラルでしたので、ステレオ録音でなければ嫌だという人にお薦めします。
とてもエレガントな演奏で、リズム感の冴えた「グノム」、久しぶりに「らしい演奏」を聴いた「古城」の最後の音は、どこまでも伸び続けます。「テュイルリーの庭」の品のある表現、茫洋とした開始に惹かれる「ビドロ」、繊細な「卵の殻~」は最後がとても可愛らしく、珍しく居丈高ではない「サミュエル」、色彩が美しい「リモージュの市場」、もの悲しい「カタコンベ」、速めのテンポですが、癒やしの音楽となっている「死せる言葉~」、意外なほどの迫力を聴かせる「バーバ・ヤガー」、格調の高さを感じる「キエフの大門」と、充実した演奏でした。
RAIミラノ交響楽団にはさらに洗練された響きとアンサンブルを求めたくなりますが、指揮者の意図を懸命に反映しようとしている演奏を讃えるべきでしょう。


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「展覧会の絵」(ラヴェル編)
ジョージ・セル
クリーヴランド管弦楽団
1963年10月3日

【お薦め】
セル(1897年-1970年)の指揮です。クリーブランド管弦楽団がとても巧くて、ここまで聴いてきたオーケストラの中では間違いなく最高と思いました。一糸乱れない正確無比なアンサンブルは聴いていて実に気持ちが良いですね。
大仰な表現でなくても十分(本来そういう曲であったかという議論は抜きにして)グロテスクな「グノム」、洗練美の極致の「古城」、同じく美しさの極みの「テュイルリーの庭」、これも美しさ再発見の「ビドロ」、鉄壁のアンサンブルの「卵の殻~」、トランペットが完璧で弦も美しい「サミュエルと~」、優秀な合奏力で聴かせる「リモージュの市場」、金管が最上のバランスの「カタコンベ」、優美とさえ言える「死せる言葉~」、オーケストラを聴く醍醐味の「バーバ・ヤガー」、品格のある「キエフの大門」でした。
特筆すべきは、各プロムナードが素晴らしいことです。各奏者の技術的な水準の高さは元より、各曲の性格づけが実に巧みです。
以上、泥臭さとは無縁の「展覧会の絵」ですが、ここまで磨き上げられた演奏は、後にも先にも無いでしょう(たぶん、きっと)。



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