マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
シーラ・アームストロング((ソプラノ)
ジャネット・ベイカー(メゾ・ソプラノ)
エディンバラ音楽祭合唱団
アーサー・オールダム(合唱指揮)
ロンドン交響楽団
レナード・バーンスタイン(指揮)
1973年8月31日、9月1日&2日
エリー大聖堂
1974年3月8日
エディンバラ、ジョージ・ワトソン・カレッジ
【お薦め】
G氏に「在庫わずかですぜ!」と指摘され、慌てて購入したのですが、これってDVDでも出ているのですよね。3枚目の画像は7月4日発売予定の2枚組DVDですが、ウィーン・フィルとの第1番と第3番も収録されていますので、3倍お得なそちらを購入するという方法もあるでしょう。私の場合、観ながらだと記事が書けないので音声だけのほうがありがたいのですが。
さて、この演奏は、ニューヨーク・フィルとの1963年と1987年の中間にあたるもので、この頃のバーンスタインのマーラー観が聴けるという意味でも誠に興味深い録音です。
さて、しばらく第1楽章を聴き続けて思ったのですが、この頃のロンドン響は(録音のせいか)弦が非力な印象がありますね。金管や打楽器が入るときはよいのですが、弦だけだと響きが薄いのが気になります。第2主題のすすり泣くような表現など、まさにバーンスタインの「復活」、このアクの強さは疑いなく他の演奏と一線を画くしていると言えましょう。
遅いところは遅く、速いところはより速くで非常に分かり易い演奏です。それは欠点ではなく、マーラーの音楽の本来の姿なのでしょう。
第2楽章も濃厚です。第3楽章は諧謔という意味でより的確な演奏です。第4楽章は名歌手ベイカーが聴き物で、オケも実に精妙な伴奏を付けています。
第5楽章は爆発的な冒頭で渇きを癒やされます。そうこなくちゃ!という感じ。後半で合唱が遠い録音が残念ですが、それほど上手い合唱団でもないので、これでいいのかな。
なお、この感想は一定期間後、第1回の記事に移動します。指揮者の頭文字がBeなので。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ヘレン・バーナード(ソプラノ)
モニカ・シュトラウベ(アルト)
ケムニッツ州立歌劇場合唱団
ケムニッツ州立歌劇場児童合唱団
ケムニッツ・ジングアカデミー
ロベルト・シューマン・フィルハーモニー管弦楽団
オレグ・カエターニ(指揮)
1999年11月10,11日(ライヴ)
ケムニッツ市公会堂大ホール
スイスのオペラ指揮者であるオレグ・カエターニ(1956年 ローザンヌ – )の「復活」です。
第1楽章冒頭のコントラバスの表情の付け方が面白いです。音楽の起伏・緩急をはっきりつけた演奏で、きちんと音によるドラマを仕立てており、好印象です。ちょっとした手作業のBGM代りに聴いていたのですが、第2・3楽章も気持ちのよい演奏で作業が捗りました。第5楽章も打楽器を派手に打ち鳴らし、メリハリのある音楽づくりで聴き甲斐があります。録音も弦楽器にマイクが近いのか、第1楽章冒頭から鮮明です。これで、名のある指揮者でオーケストラであったら迷わず【お薦め】を付けるところですが、少々迷います。うなり声さえ聞こえるカエターニとオケと合唱団の力演・熱演を買いたいところですが……。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
オレナ・トカール(ソプラノ)
ヘルミーネ・ハーゼルベック(メゾ・ソプラノ)
ブルノ・フィルハーモニー合唱団
フランス国立リール管弦楽団
ジャン=クロード・カサドシュ(指揮)
2015年11月20,21日(ライヴ)
【お薦め】
フランスの指揮者、ジャン=クロード・カサドシュ(1935年ー)の「復活」です。
冒頭から生々しい弦が聴けますし、どこでどのような楽器が鳴っているのか手に取るようにわかります。グランカッサの重低音も量感があります。録音が良いというのはお得です。
カザドシュは唸りながら指揮をし、すごく気合いが入っていて、演奏にもそれが反映され、こちらにも熱気が伝わってきます。
第2楽章もよく歌う演奏で、憧憬と悲劇の交錯した音楽となっています。
第3楽章良いテンポです。流線型の音楽はフランスの演奏者のなせる技でしょうか。少したどたどしいところやライヴゆえのミスもありますが、それも味というものでしょう。
第4楽章、金管のハーモニーがきれいじゃないです。第5楽章も金管が巧くない(はっきり言って下手!)です。どうして気がつかなかったのでしょう。実は粗っぽい演奏でした。次回はもっと上手なオーケストラによる再録音を望みたいです。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
メラニー・ディーナー(ソプラノ)
ペトラ・ラング(メゾ・ソプラノ)
プラハ・フィルハーモニー合唱団
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
リッカルド・シャイー(指揮)
2001年11月
【お薦め】
ポスト・カラヤン(1908年-1989年)と言われた5人の指揮者、年齢順にマゼール(1930年-2014年)アバド(1933年-2014年)、小澤征爾(1935年- )、メータ(1936年- )、ムーティ(1941年-)より、一回りも後の世代になるけれど、私はシャイー(1953年-)の好きでした。シャイーの録音にはまずハズレがないし、名盤と言われるものも多いです。カラヤンもシャイーの演奏会に行くのを楽しみにしていたそうですからね。シャイーも今やルツェルン祝祭管弦楽団音楽監督、ミラノ・スカラ座音楽総監督の地位にあり、益々の活躍が期待されるところですが、この「復活」は、1988年から2004年まで常任指揮者であったコンセルトヘボウ管との録音です。
Deccaらしい明晰な録音で第1楽章開始の掴みはOKです。管・弦を良くならし、ぐいぎ推進していきますので、こちらもどんどん引き込まれます。第2主題の吸引力も素晴らしく、その後の発展ももたれることがありません。展開部はまずさらに美しく第2首題が奏でられますが、さすがコンセルトヘボウ管といったところです。第1主題展開の力感も素晴らしいものがあります。ここまで目立つ小細工がなく、それでこれだけ聴かせるのですからたいしたものです。
第2楽章はシャイーらしい豊かな歌を満喫できます。ABABAのそれぞれにふさわしいチャーミングな表現です。
第3楽章冒頭のティンパニの響き、そのグランカッサの重さも聴いています。そして速すぎず遅すぎずの理想的なテンポ。
第4楽章はチョン・ミョンフン盤と共通のペトラ・ラングの独唱で、もう少し子音をはっきり立てたほうが言葉が美しいと思うけれど、声と表現は十分だと思います。
第5楽章は自然です。冒頭を暴力的な開始にせず、節度を保っています。この楽章は特に展開部からが優れていますね。打楽器の連打も凄まじく、圧倒的なクライマックスを築きます。
フルートとピッコロによる夜鶯の後の合唱も重厚で良い感じ、二重奏も声質が合っていてそちらも良いです。ラストも特にオルガンを強調することをせず、圧倒的なオーケストラの力により壮大に幕を閉じます。
なお、このCDのカップリング曲として、マーラーの交響詩「葬礼」が収録されています。この曲は「復活」の第1楽章を単一楽章として発表しようとしたものです。聴いてみたいですよね。第1楽章とほぼ同じタイムで、約90%同じと考えてもよいでしょう。
なおシャイーには、以下の映像作品があります。
クリスティアーネ・エルツェ(ソプラノ)
サラ・コノリー(メゾ・ソプラノ)
MDR放送合唱団
ベルリン放送合唱団
ゲヴァントハウス合唱団
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
リッカルド・シャイー(指揮)
2011年5月17,18日
ライプツィヒ、ゲヴァントハウス(ライヴ)
映像作品であり、購入予定です。今回は参考としてご紹介しておきます。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
イ・ミョンジュ(ソプラノ)
ペトラ・ラング(アルト)
ソウル・メトロポリタン合唱団
韓国国立合唱団
ソウル・モテット合唱団
グランド・オペラ合唱団
ソウル・フィルハーモニー管弦楽団
チョン・ミョンフン(指揮)
2010年8月25-26日(ライヴ)
ソウル・アーツ・センター
【お薦め】
「シェエラザード」「オルガン付き」「トゥーランガリア」「展覧会の絵」等のスペクタクル名曲で強みを発揮する(←偏見?)チョン・ミョンフンによる「復活」、演奏者はペトラ・ラング(ドイツ生まれ。今はドラマティック・ソプラノ)を除いてソウル勢で占められています。
ところで、チョン・ミョンフンは、2005年から2015年までソウル市立交響楽団の音楽監督であったわけですが、ソウル・フィルとは同じオーケストラなのでしょうか?(←同じです。英語名がSeoul Philharmonic Orchestraなのです。自己解決)
それはともかくとして、まず第1楽章ですが、これだけ主題を豊かに歌う演奏が他にあっただろうかというほどの入念な指揮です。パリ・オペラ座のオケやフランス放送フィルではなく、このオーケストラだからこそ可能であったのでしょう。
第2楽章も同様です。もう少し自然な感じが私の好みですが、これだけ細やかな表情を付けられると、それはそれですごいとしか言いようがありません。
第3楽章はそれらとの対比を図るべくか、スッキリ&速めという路線で、やや物足りなさも感じます。第4楽章はペトラ・ラングのソロが良いですね。この楽章だけ世界観が違うようにも感じられました。
第5楽章はチョン・ミョンフンの面目躍如といったところでしょう。総じて指揮者も演奏者も熱演だと思いますし、特に第1楽章と第2楽章の濃厚な表現は圧巻で、全体として私には十分感動的な演奏でした。でも最後の鐘はヘンテコな音(カウベルみたい)で惜しいところです。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
シモーナ・サトゥロヴァ(ソプラノ)
イヴォンヌ・ナエフ(メゾ・ソプラノ)
フィラデルフィア・シンガーズ・コラール
デイヴィッド・ヘイズ(合唱指揮)
フィラデルフィア管弦楽団
クリストフ・エッシェンバッハ(指揮)
2007年5月(ライヴ)
フィラデルフィア,ヴェリゾン・ホール
エッシェンバッハが2003年から2008年にかけて音楽監督の任にあったフィラデルフィア管との「復活」です。Wikipediaによるとエッシェンバッハ時代から低迷とありますが、それは収入の大半を住民からの募金に頼っていたという脆弱な経営によるもので、このオーケストラの技術が低迷したわけではないでしょう。
第1楽章を聴いてすぐにフィラデルフィア管は巧いと感心します。今はどうか知りませんが、レコーディングに最もお金がかかるオケではなかったっけ? ただ、聴いているうちにちょっと飽きてしまいました。良くも悪くも、あまりにもお手本的過ぎやしないかと思うのです。2枚組ですが某サイトでは新譜時4,309円だったのが現在は990円で、人気がないのかな。
第2楽章細かい表情をつけようと腐心しているようですが、ちょっとぎこちないかもしれません。高価な楽器を使っていそうな弦や木管楽器の美しい音色やが救いでしょう。
第3楽章のティンパニは控えめ。ティンパニに限らずこの演奏は打楽器は控えめなのです。そこが物足りないです。もっとドシャーンとやってほしいです。
そのようなエッシェンバッハの音楽づくりが最も合っているのは第4楽章かもしれません。弱音がとても美しいのです。ただ、特筆すべき演奏というほどでもないかも。
第5楽章冒頭も打楽器が炸裂してくれたら聴き応えがましたでしょう。逆に打楽器が控えめであるからこそ、他の楽器がよく聴こえ、見通しのよい演奏にはなっているのですが。もちろん、良いところもあります。金管のハーモニーなど美しいですし、例の打楽器が盛大に連打されて始まるあの箇所(すみません、楽譜を見ました。すごい、こうなっていたのか。でも、段が多くてパソコンの画面では追えません。)などこんなに長く伸ばして凄いと思うですが、やっぱりどこか常識的です。合唱が入ってからは弱音主体なので、エッシェンバッハの長所が出ていますね。ラストはオルガンの音もしっかり出ていて、なかなか充実していましたよ。
録音は悪くはないのですが、もう少し生々しく、そして効果を意識して録られていたら、もっと違う感想を抱いたと思います。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
フェリシティ・ロット(ソプラノ)
ヘレン・ワッツ(コントラルト)
ブライトン・フェスティヴァル合唱団
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ハロルド・ファーバーマン(指揮)
ファーバーマン(Harold Farberman, 1929年11月2日 - )はアメリカ合衆国の指揮者・作曲家・打楽器奏者です。
第1楽章は、なめらかによどみのない音運びが特長でしょうか。ドラマを感じない演奏です。ちょと退屈かも、です。
第2楽章は、古典的な格調に基づく演奏。第2楽章がだめな演奏というのは滅多にお目にかかれず、これも悪くはありませんが、マーラーというかブルックナーの楽章のようです。
第3楽章は、なんだかのっぺりとした印象があります。ホールトーンをやや多めに取り入れた録音にも原因があります。演奏の繊細さが伝わらないのです。
第4楽章では、ヘレン・ワッツの独唱が聴けます。ワッツは1985年に引退していますから、この録音もそれ以前のものなのでしょう。
第5楽章も、合唱は美しいし、ロットとワッツの重唱が聴きどころと言えますし、最後はなかなかの盛り上がりを聴かせますが、全体としては印象の薄い演奏でした。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ゲルトルート・ビンダーナーゲル(ソプラノ)
エミー・ライスナー(アルト)
ベルリン州立歌劇場管弦楽団
オスカー・フリート(指揮)
1924年(?)
「オスカー・フリート(1871~1941)はベルリンに生まれ、ナチス政権が誕生する時期まで、同市のさまざまな交響楽団を指揮していました。1905年には作曲者マーラーの立会いで『復活』ベルリン初演も指揮しています。その後1934年にソヴィエトに渡り、晩年を同国で過ごしました。ドイツ時代の彼は大曲録音のパイオニアとしても知られ、この『復活』はマーラーの交響曲の史上初の全曲録音として有名です。」とのこと。
録音年には諸説ありますが、とりあえず1924年としておきます。それでは聴いてみます。
拙ブログの「レコードの歴史」によれば、この頃は「ラッパ状のメガフォンに向かって音を吹き込み,振動板を振動させ,直接ディスクに溝を刻む」というアコースティック録音(機械式録音)で、電気録音(マイクで音を拾ってディスクに電気信号を変換して刻む)が発明されたのはその翌年です。「復活」を実演で聴かれた方はわかると思いますが、特に第5楽章冒頭の壮絶な音響は現在の技術をもってしても録音に収まるものではありません。
この録音を聴く価値は、マーラー存命中の「復活」は、おそらくこのようであったということを耳にすることができるということです。
でも、その価値を放棄してこれを最後まで聴くのはやめました。「復活」マニア向けのCDです。この演奏を聴くと「復活」はずいぶん高尚で神がかった演奏がなされるようになったのだなぁという感慨に耽ることになります。聴いてみたいという方は第3楽章から聴くといいですよ。ちょっと笑ってしまうかも。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
チェン・レイス(ソプラノ)
カレン・カーギル(メゾ・ソプラノ)
オランダ放送合唱団
クラース・ストック(合唱指揮)
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
ダニエレ・ガッティ(指揮)
2016年9月14-16日
アムステルダム,コンセルトヘボウ
2016年秋から首席指揮者の任にあるコンセルトヘボウ管を指揮しての「復活」、ガッティの指揮です。これは期待して聴きました。
第1楽章、推進力を感じさせる力強い指揮です。主旋律のバックで鳴っている楽器をさりげなく目立たせたりと小技も効いています。力感だけでなく第2主題の清楚な美しさも忘れられませんが、第1主題の動機により打ち破られるところなど、やはり力感があります。というように褒めていますが、聴いているうちになんだか音楽が単調に感じられるのも事実。各楽器のバランスなどきちんと整えられていて、聴き甲斐のある演奏なのですが。
第2楽章は品が良い舞曲のようで、コンセルトヘボウ管の弦が美しいです。木管の美しさも、もちろんで彩りを加えています。この楽章はなかなか良いですね。
第3楽章もやや速め、木管が巧いです。ここではむしろ単調さを避けるかのように、細かいところに神経が行き届いています。
第4楽章は、カーギルの表情豊かな歌唱(独語の発音が良い)と、伴奏のオーボエが美しいです。
第5楽章冒頭の壮絶な響きもなかなかのものです。分厚い金管の和声が素晴らしい。でも、展開部はもっとオケを煽ってほしいです。こういうところにガッティの物足りなさを感じてしまうのです。行進曲調と言われる部分だから歩く速さということではないでしょうに。なお、合唱はなかなか立派でした。
全体を通じて水準が高い、なかなかの演奏とは思うものの、もはやこの程度では満足しなくなっている私であります。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
エレーナ・モシュク(ソプラノ)
ズラータ・ブルィチェワ(メゾ・ソプラノ)
ロンドン交響楽団&合唱団
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
2008年4月20,21日
ロンドン,バービカンホール
【お薦め】
第1楽章、冒頭で名演の予感がします。弦の歯切れの良さ、グランカッサやティンパニのここ一発、その他打楽器の一撃も効いています。ゲルギエフにイメージする濃厚さがなく、必要にして十分、程よい加減の味付けが好ましく思え、さくさくとした進行には清々しささえ感じられます。
第2楽章はロンドン響の弦楽器の美しさに心洗われる思いがします。演奏から受ける印象は第1楽章と同じです。コントラバスが左側から聴こえます。つまり、古典配置(両翼配置・対向配置)というやつですね。私の好みは、左から順に第1vn、第2vn、ヴィオラ、チェロ、コントラバスで、そのほうが響きが美しく感じられるからです。別にG氏にケンカを売っているわけではないのです。
第3楽章は立派なティンパニと重々しいグランカッサ、軽妙な木管楽器、爽やかな弦で速めのテンポですいすい進みます。もたれなくていいです。
第4楽章はあっという間に終わります。こんなに短い曲だった?
そして油断していると凄まじい第5楽章の開始です。相変わらず耳と心臓に悪い曲で、「驚愕」というタイトルを進呈したいです。特にゲルギエフ盤は凄まじいです。そのほかにもこの盤でなければ聴けない表現が随所にあり、金子建志曰く「近代オーケストラの総力をあげて描いた先頭の描写」は圧巻です。そのような演奏なので、合唱が登場する場面はひときわ感動的です。ラストは盛大な音響で幕を閉じます。満足。
なお、余白には交響曲第10番より第1楽章「アダージョ」が収められているのですが、この曲の聴き比べをやればよかったのかもしれません。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
アンネ・シュヴァネヴィルムス(ソプラノ)
オリガ・ボロディナ(メゾ・ソプラノ)
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団&合唱団
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
2015年9月16-20日(ライヴ)
ミュンヘン,ガスタイク
ゲルギエフって再録音が多いですよね。意外にレパートリーが狭い指揮者なのでしょうか。
第1楽章冒頭はなかなか雄大です。ミュンヘン・フィルの渋めの音色がいい味を出しています。と思ったのですが、ロンドン響を思うがままにドライヴしていた旧録音と異なり、ゲルギエフはミュンヘン・フィルの格式と伝統に従い、模範となるべき演奏を残す意図としたのか、あまり「らしさ」がありません。良いところもあるのですが、ゲルギエフを聴くのだったら、ロンドン響と級録音を選ぶべきでしょう。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ジュリアン・バンゼ(ソプラノ)
コルネリア・カリッシュ(メゾ・ソプラノ)
ヨーロッパ合唱アカデミー
南西ドイツ放送交響楽団
ミヒャエル・ギーレン(指揮)
1996年6月3-7日
バーデン=バーデン,ハンス・ロスバウト・スタジオ
【お薦め】
マーラー交響曲全曲録音を行った指揮者が何人にるのかわかりませんが、ギーレンもその一人で、マーラー指揮者として高い評価を得ています。
ギーレンのマーラーは、私はあまり聴いたことがなく、今回はしっかり聴いておこうと思います。
それでその演奏は、一言で表すと「冷徹」でしょうか。マーラーの楽譜に忠実に、厳正さと共感と愛を込めて演奏をするとこのような感じになるという演奏。スコアを見ながら聴くのであれば、この演奏が最適でしょう。細部に至るまで丁寧な仕上がりでオーケストラのバランスは最上に保たれ、旋律は常に歌い込まれるという、規範になるような演奏です。
第2楽章はホールの響きが多め(このタイプの演奏であればデッドなほうがよかった)ということもあり、SWR響の弦の美しさが印象的です。
第3楽章冒頭の第1ティンパニはffの指定なのだからもっと強打させてもよいのにと思いつつ、マーラーのオーケストレーションの醍醐味が味わえる演奏の楽章となっています。それにしてもSWR響って良いオーケストラですね。アンサンブルが秀逸です。
第5楽章も楽譜が手に取るように分る明晰な演奏というべきでしょうか。ヴァイオリンが両翼対向配置なのも効果的です。提示部の「コラールと復活動機、不安げな動機が繰り返され、切迫する」箇所などなかなか感動的ですね。
展開部もやや遅め(でもこれが指定どおり?)だと音楽が地縁する印象がありますね。しかし、発見もあります。いつもなら聴き流してしまう箇所でも、ここはこうであったのかと理解できました。そして、ヨーロッパ合唱アカデミーが素晴らしい。今回初めてきちんと子音が聴こえました。やっぱり歌詞はきちんと発音してほしいですよ。
マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ミア・パーション(ソプラノ)
リリ・パーシキヴィ(メゾ・ソプラノ)
New York Choral Artists
ニューヨーク・フィルハーモニック
アラン・ギルバート(指揮)
2011年9月22,24,27日?(ライヴ)
【お薦め】
ギルバートの「復活」は、どちらかというと「ニューヨークに捧げるコンサート- 9.11の10年忌の記憶と再生に」という映像作品(最初の画像)のほうが有名で、音声のみのCDなんてあったの?と思われる方もいるでしょう。おそらくギルバートにとってマーラーは得意とするレパートリーであり、「復活」はそのタイトルからして特別な意味をもつ曲なのだと思います。では、ギルバートの「復活」は感動的な演奏か?
第1楽章は規範的な演奏。展開部の第2主題など美しいですね。音楽が荒々しくなるおところでも、きっちり整理整頓されており、それはそれで快いものです。でも、堅苦しくなく、奏者、特にソロは割と自由にのびのびと演奏しているように感じますしね。
第2楽章も同様で、きちんとしています。そこには品格のようなものさえ漂います。
第3楽章冒頭はティンパニ、もう少し音量がほしかったです。これも実に丁寧な演奏。木管楽器をよくマイクが拾っているので、ニューヨーク・フィルの奏者の巧さ(全楽章で特にフルートの巧さ)が際立ちます。どこか哀愁を帯びた演奏、全体にもの悲しい雰囲気です。「追悼」を意識しているのでしょうか。
第4楽章のパーシキヴィは、マーラーの独唱で引っ張りだこのようですが、それだけのことはあります。声に恵まれ、深い洞察力をお持ちのように聴こえます。
第5楽章も騒がしくならず、一線を越えない演奏です。しかし、萎縮した演奏、消極的な演奏ではありません。ニューヨーク・フィルの面々が自信をもって楽しんで演奏しているのが目に見えるようです。そしてそれは大変水準の高いものなのです。
導入時に聴衆の咳が入るのが興を削ぎますが、合唱も大変優秀です。バスの最も低い音は低いB(ベー:Hのフラット)なのですが、それがきちんと聴かせるのがすごいです。パーションとパーシキヴィの重唱も立派です。
どこか違うと感じながらも、これだけの優れた演奏を【お薦め】にしないわけにはいかないと思わされるものがありました。録音も優秀です。