シューベルトが2曲続きましたが、頭が「シューベルト脳」のうちに、もう少し聴いてみようと思います。
シューベルトは「歌曲王」の二つ名をもつだけあって、圧倒的にリートが多いのですが、「未完成」や「ザ・グレート」などの交響曲も人気がありますよね。アーノンクール&ベルリン・フィルの「シューベルト・エディション(交響曲全曲+ミサ曲第6番+歌劇「アルフォンソとエストレッラ」)が2015年度レコード・アカデミー賞の大賞を受賞したのは、記憶に新しいところです。
そして、ピアノ曲と室内楽曲でしょうか。管弦楽曲は少ないし、協奏曲もヴァイオリンのためのものしか書いていないし(聴いたことがないし)、オペラに力を入れたようですが、ほとんど上演されてない……。
シューベルトの室内楽曲で有名と思われる作品を挙げてみました。思ったより少ない?
八重奏曲 ヘ長調 D803
弦楽五重奏曲 ハ長調 D956(★)
ピアノ五重奏曲 イ長調「鱒」 D667(★)
弦楽四重奏曲第12番 ハ短調 D703「四重奏断章」
弦楽四重奏曲第13番 イ短調 D804「ロザムンデ」
弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D810「死と乙女(少女)」(★)
弦楽三重奏曲第1番 変ロ長調 D471
ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 D898(★)
ピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調 D929
ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第1番 ニ長調 D384(☆)
ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第2番 イ短調 D385(☆)
ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第3番 ト短調 D408(☆)
アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D821(★)
「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲 ホ短調 D802(★)←器楽曲?
★は「レコード芸術」誌の「名曲名盤500」で取り上げられた曲
☆は同上ですが「ヴァイオリンとピアノのための作品全集」で一括りにされた曲
記事を書くにはエネルギーもさることながら、まず「きっかけ」が必要です。先日パスピエさんのブログで「シューベルトのピアノ三重奏曲第2番の同じく第2楽章のアンダンテ・コン・モートと同質の寂寥感に満ちたもの」という秀逸な表現を読み、次はこの曲にしようと決めました。少なくとも一人には需要がありそうです。
しかし、所有しているCDは第1番のほうが多いので、今回は第1番を中心に聴いて、カップリングの第2番を加えるという記事にしたいと思います。第2番のほうを高く評価する人も少なくありません。
「言うまでもなく、ト長調の弦楽四重奏曲、弦楽五重奏曲とともに、シューベルトの室内楽の最高傑作として挙げたい」(谷戸基岩氏)
「『第1番』よりこの『第2番』の方が充実しており、親しみがもてるだけでなく、音楽としてのスケールが大きい。(略)わけても第2楽章アンダンテ・コン・モートは、シューベルトの室内楽のエキスといっても過言ではない」(岩井宏之氏)
という人もいらっしゃいます。
私は、どちらも甲乙付け難い良い曲と思いますし、第1番の第2楽章は、あらゆるピアノ三重奏曲の中でも、最も美しい音楽でしょう。
フランツ・シューベルト
第1楽章 アレグロ・モデラート、変ロ長調、ソナタ形式
第2楽章 アンダンテ・ウン・ポコ・モッソ、変ホ長調、三部形式
第3楽章 スケルツォ、アレグロ、変ロ長調、三部形式
第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ-プレスト、変ロ長調、ロンド形式
第1楽章 アレグロ、変ホ長調、ソナタ形式
第2楽章 アンダンテ・コン・モート、ハ短調、三部形式
第3楽章 スケルツァンド、アレグロ・モデラート、変ホ長調、三部形式
第4楽章 アレグロ・モデラート、変ホ長調、ロンド・ソナタ形式
【第1番のみ】
カザルス三重奏団
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
ジャック・ティボー(ヴァイオリン)
パブロ・カザルス(チェロ)
1926年11月録音
コルトー、ティボー、カザルスという20世紀前半の最強トリオによる演奏。今から91年前の録音ですが、意外に聴きやすい音質です。でも、さすがに音の古さは否めないので、脳内補正しながら聴ききました。録音は古くても演奏スタイルは古びていません。コルトーの美しくも瑞々しいピアノが、ティボーの詩的で繊細なヴァイオリンとよく合っています。カザルスも歌心に溢れたチェロで、(私の好きな)第2楽章のソロなど絶品と思えます。3人の意気がピタリと合っているのも素晴らしいです。
【第1番のみ】
百万ドルトリオ(俗称)
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
エマニュエル・フォイアマン(チェロ)
1941年9月13日録音
ハリウッド、RCAスタジオ
カザルス・トリオを聴いた直後では、この録音が素晴らしい音質に聴こえてしまいます。改めて聴くと、時代相応の音質なのですが、聴き苦しいということはありません。このCDは、村上春樹さんの「海辺のカフカ」の影響で「大公」を買ったら、おまけにシューベルトが付いてきたというもの。この3人ですし、録音が進化したということもあって、音楽のスケールが一回り大きくなったように聴こえます。第1番は元気がある曲だから、これはこれでいいのでしょう。室内楽として聴くには、もう少し繊細さがあってもいいような気もしますが。
【第1番・第2番】
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)
ピエール・フルニエ(チェロ)
1974年4月13日~19日
スイス、ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール
名盤(決定盤?)とされていますが未入手。3枚組で、シューマンやブラームスのピアノ三重奏曲も収録されています。ケンプ、シェリング、フルニエというトリオもありましたね。そちらのほうがよりシューベルトらしい演奏を残してくれたような気もしますがどうでしょう。
【第1番のみ】
オイストラフ・トリオ
ダヴィド・オイストラフ(ヴァイオリン)
スヴィヤトスラフ・クヌシェヴィツキー(チェロ)
レフ・オボーリン(ピアノ)
1958年の録音
ブログを始めた頃のことですが、あちこちのブログで、今もなおオイストラフの人気が高いことに少し驚きました。オイストラフが亡くなったのは1974年ですが、その後もオイストラフの後にオイストラフ無しの状態が続いていたのでしょうか。この演奏も、やはりオイストラフが良く、ヴァイオリンだけ取ればこの演奏が一番かもしれません。
ピアノのオボーリンは、記念すべき第1回ショパン国際ピアノコンクールの第1位ですが、ソロでの録音は非常に少なく、オイストラフとの協演で名を残した人。しかし、このシューベルトはなかなか良いと思います。室内楽に合った人だったのでしょう。
チェロのクヌシェヴィツキーも、ソ連で活躍した人だそうですが、このオイストラフ・トリオでの演奏が知られています。
【第1番・第2番】
トリエステ三重奏団(トリオ・ディ・トリエステ)
ダリオ・デ・ロサ(ピアノ)
レナート・ザネットヴィチ(ヴァイオリン)
リベロ・ラーナ(チェロ:第1番)
アメデオ・バルドヴィーノ(チェロ:第2番)
第1番:1959年3月、第2番:1965年6月
これはCD蒐集のかなり早い段階で入手したもの。他人に推薦されて購入したということは憶えていますが、誰がどのような場面で私にこれを薦めたのか、今となっては全く思い出せません。
トリエステ三重奏団について全く知識がなく、HMVのサイトに紹介文があったので、勝手にコピペさせていただきました。以下のとおりです。
イタリアの伝説的常設トリオ、トリエステ三重奏団。故郷の町、アドリア海を望むイタリア北東部のトリエステの名を冠したピアノ三重奏団を1933年に結成。初期メンバーはヴァイオリンのレナート・ザネットヴィチ、ピアノのダリオ・デ・ローザ、チェロのリベロ・ラナで、当時3人は12歳の若さでありました。チェロのリベロ・ラナは1962年に30年間の活動に終止符を打ち、その後アメデオ・バルドヴィーノが加入しました。1995年にシエナで最後のコンサートを行うまで、彼らは世界中でコンサートを行い、ドイツ・グラモフォンに名録音を残し、イタリアだけではなく、世界的なトリオとして世界中の音楽ファンに愛されていました。その後故郷トリエステで音楽学校、国際室内楽コンクールを設立し後進の指導に力を注ぎ、1998年5月にアメデオ・バルドヴィーノが、2013年4月16日にダリオ・デ・ローザがこの世を去りました。
ダリオ・デ・ロサが全体をリードしているようですが、このロサのピアノが実に快いです。ヴァイオリンとチェロも、ピアノにぴたりと寄り添って、理想的な室内楽演奏となっています。どちらかといえば第2番のほうが演奏が良く、ピアノの音色もさらに磨きがかかっているように聴こえます。久しぶりに聴いてみて、やっぱり良かったので、第2番は3回も聴いてしまいました。それぐらい私にとって思い入れのある演奏であり、これからも聴き続けていきたいと思うCDです。
【第1番のみ】
スーク・トリオ
ヤン・パネンカ(ピアノ)
ヨゼフ・スーク(ヴァイオリン)
ヨゼフ・フッフロ(チェロ)
1964年9月7-9日 プラハ、芸術家の家
今回は古い録音が多いので、このCDは超優秀録音に聴こえるますが、今となってはこれも古い録音でした。楽器にマイクが近いのか、ダイナミックで鮮烈な印象があります。活きがよく、息のあったアンサンブルですが、欲を言えばチェロのフッフロが、例えば第2楽章の主題(CMにも使われたことがある名旋律)で少し弱さを感じさせてしまうのが残念です。ドヴォルザークのチェロ協奏曲を初めて聴いたのは、フッフロのチェロによる録音で、思い入れがあるチェリストなのですが、スークやパネンカが良いだけに惜しいと思います。
【第1番・第2番】
ボザール・トリオ
メナヘム・プレスラー(ピアノ)
イシドア・コーエン(ヴァイオリン)
バーナード・グリーンハウス(チェロ)
1984年の録音
CD店で、Beaux Arts Trio という背ラベルを見るたびに、何て読むのだろう?と首を傾げてしまいます。ボザール・トリオ(ボザール三重奏団とは言わない)は、ピアノ三重奏曲の百科事典的存在で、おそらく全てのピアノ三重奏曲をレパートリーとしていたはず。フィリップス録音全集60CDは、完売したそうです。
1955年に結成されたこのトリオは、ピアノのプレスラー以外にメンバーの変動があり、最後はヴァイオリンがダニエル・ホープで、チェロがアントニオ・メネセスであったそうです。2008年に解散した後も、プレスラーはソロ活動を続け、2014年1月には90歳でベルリン・フィルとの初協演を果たしています。プレスラーには少しでも長生きをし、あの美しいピアノを録音してほしいと心から思います。本当に。
この演奏は、常設のトリオにしては、プレスラー+他2名というピアノ偏重型。そして、そのように聴こえる録音。ピアノだけであれば、このCDが最高です。それぐらいプレスラーのピアノは素晴らしく、シューベルトにふさわしいです。
今週のひと(り)ごと←4年ぶりに復活
理由あって記事の背景色を「黒に近い青」、文字色を「白」に設定していますが、ある問題を発見しました!
文字色が「白」にならない記事が半数以上あったのです。黒っぽい背景にCDジャケットやデジカメ画像だけが、ぼつりぼつりと浮かんでいる奇妙な記事……。
それは、Yahoo!の「(誰でも手軽に書式が変えられる)かんたんモード」で作成した記事でした。数世代前の「かんたんモード」を用いた記事は、文字色が黒のままなのです(ひどい!)。
仕事中であることも忘れ、ひとつひとつの記事の書式を変更しました。修正作業が終わったところで海より深く反省。やはり〇らごるみさ部長のように、勤務中にブログをやるのはよろしくなかったです。
もう二度と職場でブログはやりません。
もちろん、〇レー課長のように私用のメールもしません。
前置きが長くなりましたが、何が言いたかったというと、ある曲について書こうと考えていたのです。下書きを終えた段階で、先述の書式修正作業が発生しました。その過程である事実に気がついてしまったのです。
私が書こうとしていた曲は、すでに書いていた、ということを。書きたかった内容もそっくり。