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モーツァルト レクイエム K.626 の名盤 2010年~2017年

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ついに最終回です!


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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
セイラ・マクリヴァー(ソプラノ)
サリー=アン・ラッセル(メゾ・ソプラノ)
ポール・マクマホン(テノール)
テディ・ローズ(バス・バリトン)
ナイジェル・クロッカー(トロンボーン)
カンティレーション(合唱)
アンティポデス管弦楽団
アントニー・ウォーカー(指揮)
2010年(?)

最終回のトップバッターは、アントニー・ウォーカー指揮の合唱と管弦楽です。でも、アントニー・ウォーカーって誰? アンティポデス管弦楽団ってどこの国のオケ? 「アンティポデス」で検索したところ、「一般的には、地球の対蹠点に住む人々のこと」を指すらしいです。
確かに言えることは、お薦めの演奏ではないということです。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版/校訂:T.クルレンツィス〕
ジモーネ・ケルメス(ソプラノ)
ステファニー・ウゼール(アルト)
マルクス・ブルッチャー(テノール)
アルノー・リシャール(バス)
ニュー・シベリアン・シンガーズ(ノヴォシビルスク歌劇場合唱団)
ムジカエテルナ(古楽器使用)
テオドール・クルレンツィス(指揮)
2010年2月 シベリア,ノヴォシビルスク歌劇場

【お薦め】
今回の「レクイエム」の聴き比べで、一番最後に聴いたCDです。つまり、このCDについて書きたかったので、「レクイエム」の聴き比べを行ったのです。「さぁ書くぞ~」と意気込んだのですが、ふと、それは「ネタバレ」ではないかと思いました。
例えば「直前のppppppから展開部のffへは、CDの限界に挑んだ壮絶な音量変化を聴くことができる」というようなことを書いたら、これから聴く人の心に、準備や覚悟が生じてしまいますよね。知らないで聴くから、新鮮な驚きや発見があり、それは感動につながるかもしれません。
アーノンクールの1981年盤には衝撃がありましたが、このCDはそれ以上です。アーノンクールの2003年の再録音では、合唱と管弦楽がアーノンクールの意図を完全に表現していましたが、ムジカエテルナには指揮者への絶対的な奉仕(服従)があります。そして、この合唱団と管弦楽団にはそれを可能とする万全な技術とセンスがあります。全く凄い演奏です。
ところで、レコード芸術3月号巻頭には「ピリオド演奏が拓く オーケストラ新時代 HIP(歴史的情報に基づく解釈)最前線を追う」という特集がありました。しかし、クルレンツィス/ムジカエテルナの名前が全然出て来ないのです。このコンビは、ピリオド楽器でパーセルやラモーを演奏してきた団体なのに不思議です。わざと避けているように思えたのですが、案の定、最後の頁で鈴木淳史氏が「クルレンツィスはHIPなのか?」と題して書いていました。副題が「正真正銘の"ヒッピー"にして恐るべき"バロック野郎"」です。言い得て妙な気もするし、いや、少し違うんじゃないか?とも思いました。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
オックスフォード・ニュー・カレッジ合唱団
エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団
エドワード・ヒギンボトム(指揮)
2010年6月

【お薦め】
オクスフォード・ニュー・カレッジ合唱団による演奏で、1976年から音楽監督を務めているヒギンボトムによる演奏です。ヒギンボトムは、英国ケンブリッジ大学、コーバス・クリスティ・カレッジ大学院を修了し、フランス・バロック音楽で博士号を取り、ニュー・グローブ音楽辞典のフランス音楽の項目の執筆も担当しているのだそうです。
合唱のソプラノとアルトは少年合唱で、テノールとアルトは変声期後の青年、独唱者も、ソプラノはボーイ・ソプラノ、アルトはボーイ・アルト(と言うのだろうか?)、テノールとバス(というよりハイ・バリ?)は変声期後の青年です。
これがなかなかの美演で、「レクイエム」のソプラノとアルトは、少年に限るとさえ思ってしまったくらい。高音のきつさや音程の不安定さには多少目をつぶるとして。エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団のピリオドの響きも(時に煩く)美しく聴き惚れてしまいました。
なお、ヒギンボトムとオクスフォード・ニュー・カレッジ合唱団には、1996年にリリースされた「AGNUS DEI」という、バーバーの「Agnus Dei」をメインに据えたヒーリング・アルバムがあって、世界中でヒットしたそうですが、私は全く知りませんでした。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
マリネッラ・ペンニッキ(ソプラノ)
グロリア・バンディテッリ(メゾ・ソプラノ)
ミルコ・グァダニーニ(テノール)
セルジオ・フォレスティ(バス)
コロ・カンティクム・ノウム・ディ・ソロメオ
アッカデミア・バロッカ・ウィレム・ヘルマンス
(コンサートマスター:エンリコ・ガッティ)
ファビオ・チオフィーニ(指揮)
2010年7月6-8日 イタリア,ソロメオ,聖バルトロメオ教会

「バロック・ヴァイオリンの名手エンリコ・ガッティが2006年からコンサートマスターとして参加しているイタリアのピリオド・オーケストラ、アッカデミア・ヘルマンス入魂のモツレク。ガッティを迎え、近年進境著しいアッカデミア・ヘルマンスのモーツァルトの『レクィエム』が、イタリア、ペルージャ近郊の小さな村ソロメオの聖バルトロメオ教会を神聖な響きで包み込みます(東京エムプラス)。」だそうです。指揮者のファビオ・チオフィーニは、鍵盤楽器奏者としてのほうが有名かもしれませんが、彼が設立した合唱団であるコロ・カンティクム・ノウム・ディ・ソロメオを指揮しての演奏です。期待が高まります。
と思ったら、確かに管弦楽の響きは良い(というか、少々やかましい)なのですが、合唱団が非力です。エコーをかけてごまかしているようにも聴こえます。練度が足りない合唱で残念でした。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔独唱、合唱と、カール・ツェルニーによる4手ピアノ編〕
アンジェラ・ニシ(ソプラノ)
ガイア・ペトローネ(コントラルト)
マッシモ・ロンバルディ(テノール)
アントニオ・マソッティ(バス)
アルス・アンティカ合唱団
アレッサンドロ・マランゴーニ(ピアノ)
マルコ・ヴィンセンツィ(ピアノ)
マルコ・ベッリーニ(指揮)
2011年2月11-13日 Auditorium di Mortara

「レクイエム」には弦楽四重奏版(声楽なし)がありますが、それは今回の聴き比べの対象から外しています。このCDも伴奏がピアノなので趣が違うのですが、なかなか面白いのでご紹介することにしました。
まず、合唱と独唱が管弦楽にマスキングされることがないので、よく聴こえます。発音もすごくはっきりしていて、これは意識したのかもしれません。いい加減な演奏をすると、すぐ見破られてしまうからです。各声部の動きが明快なのもありがたいです。独唱も合唱も特に優れているわけではなく、練習に付き合わされている感じもしますが、でも新鮮でしたよ。
ところでツェルニーのピアノ編曲なのですが、ピアノがあまりモーツァルトらしくないんですね。バッハを聴いているようでもあり、シューマンのようでもあり、不思議な音楽です。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
エリザベス・ワッツ(ソプラノ)
フィリス・パンチェッラ(メゾ・ソプラノ)
アンドルー・ケネディ(テノール)
エリック・オーウェンス(バス・バリトン)
ヘンデル&ハイドン・ソサエティ
ハリー・クリストファーズ(指揮)
2011年5月(ライヴ)ボストン,シンフォニー・ホール

ヘンデル&ハイドン・ソサエティ(ピリオド・オーケストラ&合唱団)という、いかにも由緒正しそうな団体名ですが、1815年3月24日設立(拠点はボストン)ですから、200年以上の歴史があります。その第13代音楽監督であるハリー・クリストファーズ(ザ・シックスティーンの指揮者です。そちらの方が有名かも)指揮による「レクイエム」はどうであったか?
意外にも、Ave verum corpus K.618 から始まります。
「レクイエム」はしっかりとした足取り。合唱団がアマチュアっぽい……、いや、独唱も含めてきちんと発音されています。クリストファーズの指導の賜物でしょうか。全体に力んでいるというか、体育会系の声楽陣のようで、それが効果的な曲もありますが、繊細な表現が必要な曲はどうも苦手なようです。乱暴に聴こえてしまうのです。全体に速めのテンポなのが救いかも。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
イーリン・メナハン・トーマス(ソプラノ)
クリスティーヌ・ライス(メゾ・ソプラノ)
ジェイムス・ギルクリスト(テノール)
クリストファー・パーヴス(バス)
ケンブリッジ・キングス・カレッジ合唱団
エンシェント室内管弦楽団
スティーヴン・クレオベリー(指揮)
2011年6月26-27日、9月27日 ケンブリッジ,キングズ・カレッジ聖堂

本記事の3枚目はオックスフォード・ニュー・カレッジ合唱団でしたが、当盤は有名さで勝るとも劣らない名門ケンブリッジ・キングス・カレッジ合唱団による演奏です。合唱のソプラノとアルトを少年(変声期前)、テノールとバスを青年(変声期後)が歌っています。その印象を漢字二文字で表現しろと詰め寄られたら、断腸の思いで「下手」と答えるしかありません。この少年達と青年達は、遊び、いや、勉学に忙しくて練習をしているヒマがないのでは?
このSACDにはオマケがありまして、Amen fugue(モーンダー版)、第11曲 Sanctus(レヴィン版)、第12曲 Benedictus(ドゥルース版)、第14曲 Lux aeterna~Cum Sanctis tuis(レヴィン版)、第8曲 Lacrimosa(フィニスィー版)が収録されています。しかし、このような企画は、お手本となる合唱団が演奏してこそ意味があると思うのです。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
ゲニア・キューマイアー(ソプラノ)
ベルナルダ・フィンク(コントラルト)
マーク・パドモア(テノール)
ジェラルド・フィンリー(バス)
オランダ放送合唱団
ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
マリス・ヤンソンス(指揮)
2011年9月14-16日 アムステルダム,コンセルトへボウ

マリス・ヤンソンスが2004年から2015年まで首席指揮者を務めていたロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団と、オランダ放送合唱団による「レクイエム」です。現代の名指揮者と人気オケによる演奏というのは珍しいような気がしますね。
さすがにオーケストラは素晴らしいです、が、ヤンソンス、鳴らし過ぎです。モーツァルトなのですから、少し考えていただきたいものです。この強力なオケにはもう少し人数の多い合唱が必要だったのかもしれません。独唱は第4曲 Tuba mirum のバスにビックリです。こんなのは初めて聴きましたが、それに続く他の歌手は普通だったので安心しました。独唱陣はなかなか優秀です。
いや、それにしてもオランダ放送合唱団って優秀ですね。男声は立派だけれど女声は線が細いというのが第一印象でしたが、いや、繊細さと力強さを兼ね備えた立派な合唱でした。



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モーツァルト:レクィエム ニ短調 K.626
[バイヤー版&レヴィン版]
アンナ・プロハスカ(ソプラノ)
サラ・ミンガルド(アルト)
マクシミリアン・シュミット(テノール)
ルネ・パーペ(バス)
バイエルン放送合唱団
スウェーデン放送合唱団
ペーター・ダイクストラ(合唱指揮)
ルツェルン祝祭管弦楽団
クラウディオ・アバド(指揮)
2012年8月(ライヴ)ルツェルン音楽祭

Blu-ray 又は DVD で入手可能な映像作品ですが、以前BSプレミアムで録画したものを視聴しました。途中で2回ほど画像と音声が飛びました。今までそんなことはなかったのに、貴重な記録が……。
気を取り直して、まず、合唱は旧盤のスウェーデン放送合唱団に加えてバイエルン放送合唱団が参加しており、合唱はペーター・ダイクストラ、独唱の4人も充実したメンバーです。オーケストラも名手揃いのルツェルン祝祭管弦楽団ですし、これ以上の演奏者は望めないでしょう。
そんな豪華な布陣の「レクイエム」ですが、「版」の問題はさておき、この演奏は、作為とは無縁の演奏で、あまりにも自然過ぎることから物足りなさを感じる人がいても不思議ではありません。
演奏を終え、聴衆に背を向けたまま、しばらく身動きしない指揮者。2014年に世を去るアバドが、彼自身のために演奏した「レクイエム」のように思えました。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔レヴィン版〕
ヌリア・リアル(ソプラノ)
マリー=クロード・シャピュイ(メゾ・ソプラノ)
クリストフ・プレガルディエン(テノール)
フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ(バス)
バイエルン放送合唱団
ミヒャエル・グレーザー(合唱指揮)
ミュンヘン室内管弦楽団
アレクサンダー・リープライヒ(指揮)
2012年12月20-22日 ミュンヘン,ヘルクレスザール

【お薦め】
2006年から2016年まで芸術監督兼首席指揮者を務めたミュンヘン室内管弦楽団を
リープライヒが指揮した演奏で、合唱は既に「レクイエム」の名唱を聴かせてくれているバイエルン放送合唱団です。この演奏は【お薦め】にしようか迷い、何度も聴きました。小編成のオケに合唱団という、このようなスタイルの演奏が多くなった昨今ですが、優秀な演奏を聴かせてくれるものの、これでなくてはというものがあまり感じられなかったからです。ただ、「レヴィン版」の録音ですし、リーブライヒの小気味良い指揮もあって、最終的には良い演奏と判断しましたので、ちょっと甘いけれど【お薦め】としました。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
ハンナ・デイヴィー(ソプラノ)
サラ=ジェーン・ルイス(コントラルト)
クリストファー・ターナー(テノール)
フレイザー・スコット(バス)
OSJヴォイセズ
エミリー・ホワイト(トロンボーン)
セント・ジョンズ管弦楽団
ジョン・ラボック(指揮)
2013年5月30日(ライヴ)St John's, Smith Square, London, United Kingdom

第1曲で、もういいかなと思ったのですが、第2曲も聴いてみました。
自主レーベルであっても、こういう演奏は世に出してはいけないと思います。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔アイブラー&ジュスマイヤー、鈴木優人補筆校訂編〕
キャロリン・サンプソン(ソプラノ)
マリアンネ・ベアーテ・キーラント(アルト)
櫻田 亮(テノール)
クリスティアン・イムラー(バス)
バッハ・コレギウム・ジャパン
鈴木雅明(指揮)
2013年12月 神戸松蔭女子学院大学チャペル

最終回でようやく日本人指揮者による演奏が登場しました。日本人指揮者による「レクイエム」は、無いわけではないのですが、非常に数が少ないです。小澤征爾による録音もありそうでないですよね。
鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンは、18年もかけてJ.S.バッハの教会カンタータ全集を録音した、世界的に有名な指揮者と団体さんですから、この「レクイエム」も悪かろうはずがありません。オケも声楽も非常に優秀で格調が高く、立派な演奏です。日本人による演奏のせいか(?)、几帳面さ(?)が演奏に表れています。ただ、なんだろう、なぜか心惹かれないのです。十分【お薦め】に値する演奏ではあるのですが。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ)
サラ・ミンガルド(アルト)
ヴェルナー・ギューラ(テノール)
クリストファー・ピュルヴ(バス)
アクサンチュス
インスラ・オーケストラ
ロランス・エキルベイ(指揮)
2014年2月 ヴェルサイユ宮殿内王室礼拝堂

【お薦め】
ひとつ前に聴いたCDがダメダメな演奏でしたので、これを聴いたときは、普通に良い演奏であったのでホッとしました。当たり前のことですが、合唱がきちんとハーモニーを創り出していたのです。念のため、聴き直してみましたが、普通どころか、これは「名演」ではないかと思うようになりました。ロランス・エキルベイと彼女が結成したヴォーカルアンサンブルであるアクサンチュス、そしてやはりエキルベイが設立した古楽器オケであるインスラ・オーケストラが奏でる演奏は、不思議と心に沁みて来るものがあるのです。また、独唱、特にソプラノのサンドリーヌ・ピオーが「レクイエム」にふさわしい良い声です。録音会場が非常によく響く場所ですが、(オーディオ的に問題があっても)少なくとも演奏にとってはマイナスになっていないと思いました。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
オルガ・パシェチニク(ソプラノ)
アンナ・ルバンスカ(メゾ・ソプラノ)
クシシュトフ・シュミト(テノール)
クシシュトフ・ボリシェヴィチ(バス)
ルーカシュ・ホドル(トロンボーン)
シンフォニア・アマビーレ合唱団
シンフォニア・アマービレ管弦楽団
ピオトル・ヴァイラク(指揮)
2014年4月 Norbertine Sisters Church, Salvator, Cracow, Poland

調べてもわからない指揮者と合唱団&オーケストラ。嫌な予感がします。
その予感は見事に当たりました。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版に基づくデュトロン補完版 2016〕
ゾフィー・カルトホイザー(ソプラノ)
マリー=クロード・シャピュイ(アルト)
マキシミリアン・シュミット(テノール)
ヨハネス・ヴァイサー(バリトン)
RIAS室内合唱団
フライブルク・バロック・オーケストラ
ルネ・ヤーコプス(指揮)
2017年7月 テルデックス・スタジオ・ベルリン

ルネ・ヤーコプスは私が紹介するまでもない有名な人ですよね。カウンターテナーとして名指揮者の録音に参加していましが、指揮者としても活躍しています。でも廃盤になったものが多いみたいです。そのヤーコブスが「レクイエム」を録音し、版も「ジュスマイヤー版に基づくデュトロン補完版 2016」という珍しいものを採用したので、ちょっと話題になりました。声楽出身の指揮者の演奏は声楽陣が充実しているので期待がもてます。少数のオケと合唱によるピリオド・スタイルの演奏は、見通しがよく、清々しさを感じさせます。第1曲 Requiem aeternam は100%モーツァルトなので変えようがありませんが、第2曲 Kyrie からオケに聴き慣れない響きが聴こえます。優秀な合唱ですが、オケが気になって集中できません。第3曲 Dies iræ ではソロや重唱が入ります。第4曲 Tuba mirum ではオケのやや饒舌なアレンジが気になります。第5曲 Rex tremendæ も管弦楽に大きな変更があります。第6曲 Recordare の重唱は美しいです。第7曲 Confutatis の荒々しさと優美さの対比も巧いです。第8曲 Lacrimosa は重唱と合唱が交互に演奏されるのがやや不自然かも。後半は意外性もあります。第9曲 Domine Jesu は速めのテンポ。合唱の巧さが光ります。これも途中から変化があります。第10曲 Hostias は良いテンポ、と思ったら合唱ではなく重唱。第11曲 Sanctus はジュスマイヤー作曲なのでいじりやすいのでしょう。曲の単調さを回避するいろいろな工夫があります。第12曲 Benedictus も別の曲になってしまったかのよう。Hosanna が面白いです。第13曲 Agnus Dei もいろいな変化を見せ、第14曲 Lux aeterna は普通に良い演奏だと思ったら最後にまた驚かされます。
この指揮者に独唱陣・合唱団・管弦楽団であれば、ジュスマイヤー版でも名演になったでしょう。それをこんなヘンテコリンな版を使って!と嘆く人(怒る人)もいると思います。でも、私は最後まで面白く聴けました。【お薦め】にはしませんが、「レクイエム」は聴き飽きたという人に、是非聴いていただきたい演奏です。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
ザルツブルク大聖堂聖歌隊
ザルツブルク大聖堂ソロイスツ
ザルツブルク大聖堂管弦楽団
ヘリベルト・メッツガー(オルガン)
ヤーノシュ・シフラ(指揮)
録音年不詳
Live recording, Salzburg Cathedral, Salzburg, Austria

これも昔ながらのスタイルの「レクイエム」です。聴衆の咳が入るのでライヴということがわかります。大聖堂らしく残響豊かな録音で、演奏の粗が目立ちません。この盛大な残響が問題で、響きが常に混濁しており、聴くのがつらいです。
このライヴは、残す価値があったのでしょうか。



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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
〔ジュスマイヤー版〕
Teresa Hopkin
Valerie Walters
Bradley Howard
Kenneth Shaw
アトランタ歌劇場管弦楽団&合唱団
ウィリアム・フレッド・スコット(指揮)
録音年不詳

ウィリアム・フレッド・スコットは、1981年から1988年までアトランタ交響楽団の指揮者、1985年から2005年までアトランタ歌劇場の芸術監督と首席指揮者を務めた人ですから、その頃の録音なのかもしれません。また、かの有名なシャンティクリア( Chanticleer とは、サンフランシスコに拠点を置く男声アンサンブルグループ)の5番目の音楽監督でもあります。それだけ声楽に精通している人ということですね。オルガン奏者としても知られている人です。
昔ながらの重厚な「レクイエム」で、重く引きずる演奏です。と思ったら第3曲 Dies iræ は意外なほど速く、緩急の差を設けた巨匠風の解釈のようです。オケの伴奏を止めて合唱だけを聴かせたりと、他の版からの応用も聴かれます。合唱はかなり人数が多く、数は力となっており、残響の多さも手伝って量感たっぷりの美しい歌声を聴かせます。重唱も同様です。オケも巧いです、が、どこか残響の多さにごまかされているような気もします。総じて良い演奏だと思いますが、名盤が多い中で、これでなくてはならないという魅力に欠けるように思います。



明日から「レクイエム」を聴かなくてもいいんですよね?




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